■FISHING REPORT 12月4日 あ〜マダイまた釣れね。


遠き想い、憧れ、焦燥感、挑戦、挫折。そんな言葉が私のマダイ釣りには付きまとう。まるで日曜夕方の釣り番組のように釣れない。「ア」のつくマダイ、「アマダイ」ならたくさん釣れるのに、どうしても釣れない魚、それがマダイだ。巨人軍のスラッガー高橋がヤクルトの石井から1本もヒットを打てないのと同じ(そんな高レベルではないか・・・)ように苦手意識のある魚である。しかもそれが王者マダイであるというのが何とも辛いところである。元々私はタナが重要な釣りはあまり得意でない。バスフィッシングなら横の釣りが展開できるが、沖釣りとなるといわゆるバーチカルな釣りで基本的にはリフトアンドフォールの攻めになってしまう。そこのところにタイ釣りのマッチングの難しさがあるのだ。運不運で片づけようとは思わないが、ハリガカリさえできないもどかしさと、自分に対する怒り、今回もまた味わう事になってしまった。

NARIと私は、ちょろ松さん『えびす丸釣り日記』の常宿、京急大津の『いなの丸』へ出かけた。ちょろ松さんに三浦半島方面の釣り宿をいくつか紹介して頂き、そのなかで船が大きい事を第一条件にして訪問したのであった。当日は朝干潮2時満潮で北東風、右舷ミヨシが潮周りが良くなるのが見え見えだ。しかしそこには既に無情にもクーラーが置かれていて私たち二人は左舷ミヨシ側の座に着いたのであった。

航程30分くらいのポイントで釣り始める。場所は良く分からないが正面に3本の大きな白い煙突みたいなのがある。ビシ80号、クッションゴム1M、ハリス2.5号6Mの一般的な仕掛けに小ぶりで目のしっかりついれいるオキアミの尾羽を歯で噛み千切り、真っ直ぐになるように丁寧に付ける。餌が回転してオマツリなどしないように、マダイに快く食ってもらうように。ここまでは基本どおりで、着底後、3Mまで巻き上げコマセを振る、大きく天を仰ぐように竿を立ててゆっくりと、そして5Mでもう一回、そして6Mで待つ。そんな作業を何度となく繰り返す。シャクリタイ五目と違うので外道のサバやアジなんかは一切あたらない、言ってみれば我慢の釣りだ。

船中1号は、左舷胴の間のベテラン師に700グラム級がすぐ釣れた。右舷でも上げているようだ。1時間半くらい経った頃だろうか?NARIくんの竿に強烈なアタリがあり突っ込みをかわしながら巻きあげる。端から見ていても3段引きが確認できマダイと確信したが、本人は全然わかっていないようだ。竿がちょっと固めだったので心配されたがハリス3号のおかげか1Kg級のマダイが姿をあらわし中乗りさんのタモで見事にすくいあげられたのだ。彼の口から思わず中乗りさんへのお礼の言葉が出た後は興奮状態で茫然自失、きっと体が震えていたんだと思う。船中に『貸し竿に釣れたぞ!』という声が響いた。それからしばらく彼は釣りをしなかった。目の前にあるマダイを手にして缶ビールでくつろいでいる。私には何もない。ソーダガツオが1本釣れただけだ。そのうち集中力が切れてお酒におぼれていく。

そんな単純な仕掛けの上げ下げに突然として襲い掛かった重量感。水深40Mのところで急にリールが巻けなくなり魚信は感じられないまま底へどんどんラインが出ていく。着底後はうんともすんとも言わない。当然リールでは巻き上げられないので、Nくんに竿を持たせて手で巻き上げる。すると少しづつ上がってきた。しばらくするとそれは猛烈な引き込みを見せこの時点でその物体が生物であるという事がわかった。グングングンという重量感ある引きに、私の手は血が吹き出す始末。15分ぐらい経った後に、やっと魚体が見え始めたのは150cm以上はあるサメだ。サメは私たちの姿を見るや猛烈な突っ込みを再度見せ、私のビシごと海底へ引きずり込んでいった。

しかしドラマはこれで終わりではなかった。私の3人隣の人の竿に奴は掛かったのである。奴はその人にも5分くらい引きを楽しませたが勝負はあっけなくついた。竿が三節棍のように3本に折れたのだ。その瞬間、空虚感が船中に流れたが今度はその人の隣に掛かった。さきほどのベテラン師だ。ベテラン師も糸を切られ、その次はその隣の人へ・・・・・・・。今でも東京湾を何個かのビシとラインを体に巻きつけ悠々と泳いでいるのだろうか?あの青い魚体は獰猛な種類のサメのようだった。私の緊張感はこれでプツンと切れてしまいもう釣りにはならなかった。切れた指の痛みに耐えながら、再び単純作業を繰り返すだけであった。

結局この日の釣果2Kg級を頭に船中18人で11枚、右舷ミヨシの二人がそのうち7枚と偏った釣果となった。NARIに1枚釣れたのは幸運だった。彼は魚を呼ぶ力がある。釣りの準備は万全でないと行けない。割引券を忘れた、ビシを車の中に忘れて船から取りに帰った、など縁起の悪い事があって、心の中にそういう処へ逃げようとする自分があってはしょうがない。さて来年は釣れるのであろうか?しっかりしろ相模庵!


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