1.  実釣

  • 仕掛けの投げ方
  • 何だか、ますます初心者向きの講座になって来たような…(^^;

    正直言って、これをきちんと解説できるようなら、オイラは船のどの場所に入ってもキッチリ真正面へ仕掛けを投げることが出来るでしょう。しかし哀しい哉、不器用を絵に描いたオイラには、そんなことはとてもとても不可能です。それでも、とにかく少しでも遠くへ、少しでも広く探りたいと思う一心で、オイラはまる4年間投げ続けて来ました。そのお陰なのか、方向はどちらかというと左向きなのですが、道糸は調子のいい時は30m以上出るようになりました。『継続は力なり』とはよく言ったもの。

    目安としては、新素材の糸は25mごとに色を変えてありますので、せめて2色は出しましょう。これが出来る出来ないで、釣果が大きく変わります。

    糸を竿の軸と竿を持った手の指で挟み込み、スピニングリールのストッパーを外します。竿先からテンビンとの結び目までの距離は、大体15cmくらい。あまり垂らし過ぎると、投げる時に仕掛けに付けたエサのジャリメが水面をはねて千切れてしまうし、あまりテンビンが竿先まで来てしまうと、ガイドが壊れたり竿先が折れたりと、竿の命の竿先を傷めてしまうことになり兼ねません。

    必ず指で糸を挟み込んでからストッパーを外します。ストッパーを外し忘れて投げると、強い遠心力でテンビンから先が『プッチン』と吹っ飛びます。

    基本はアンダーハンドキャスト。竿先を下に向け、腕のスナップで下から上に竿先を振るように仕掛けを飛ばします。この時の一番重要なポイントは、投げた瞬間に指から糸を離すタイミング。これが早過ぎると道糸がたるんで思いっきり失速。遅過ぎると勢いでオモリが振り回されて、最悪は竿が飛んで行くか、道糸が切れてテンビンから先が切れてすっ飛ぶか。

    これは身体で覚えるしかありません。理屈でいくら説明してみたところで、実際やってみてわかることの方が実はたくさんあったりします…。

    そしてもう1つ注意したいのが、船釣りの場合はお隣の仕掛けと絡まないようにすること。――アジや真鯛のような深い釣り場ならオマツリしても仕方が無いのですが、たかだか水深15m前後でオマツリするということは、隣の人の投げた仕掛けと自分が投げた仕掛けが、どこかで重なってしまっているということなのです。

    仕掛けを投げる時は特に、お隣の道糸が伸びている方向に注意しましょう。

  • 誘い方
  • オモリが着水したら、道糸をサミングしながらオモリを着底させます。風が強い時などは、ここで水面から上に出ている道糸が思い切りフケますから、それを防ぐ為のサミングだと思って下さい。かけ過ぎると、着底する時に自分が思ったよりかなり手前にオモリが落ちてしまうことになります。風が強過ぎて道糸がサミングし切れなければ、竿を水面に下げてやります。

    着底したことを確認したら、糸フケを取り誘いに入ります。

    ――ここで困ったことがあります。誘いのパターンを考えてみると、恐ろしい程の数のやり方があることに気付いたのです。全部書き出そうとなると、鉄人ダンナが無意識にやっているものまで無理に説明することになり、これまた説明下手の鉄人ダンナから無理矢理聞き出しわかりやすく文字に変換するという、おぞましいまでの面倒な作業を行わなければなりません(;_;)

    どの釣り雑誌にも書き尽くされているので少々食傷気味とは思いますが、まずキスの習性を考えてみましょう。

    基本的に、キスは底から20〜30cmくらいのところで群れを成して行動しています。そして、自分の目線よりちょっと下を見てエサを探しています。ですから必要になって来るのは、キスの食指が動くような誘いです。ズルズル這わせるだけではいけません。

    相模湾ではの動きの誘いが基本ですが、東京湾ではの動きの誘いが結構効果的みたいですね。勿論、相模湾で、東京湾でにしても然程の変わりは無いでしょうけど(――しかしこれがキモになったりすることがあるから、サカナ釣りは怖い…)。

    東京湾のキス釣りでは、50cm前後のタナ取りをするようです。底から少し上を回遊していると考えれば、至極理に適っていますよね。

    よく、『ジャリメや青イソメが動く速さで誘う』と言うそうですが、鉄人ダンナ曰く、『ジャリメが動く速さって言ってもよぉ、かなり速いんだぞ!』。オイラ、実際見たことはありませんが、思った以上に速いらしい…。

    ですから、相模庵さんの釣行記にも書かれてありましたが、『人間がゆっくり歩くくらいの速さ』で誘うのが一番妥当です。

    という訳で、参考に出来る誘い方を2つ挙げてみます。

    例外があるとすれば、水中でも動きのよい新鮮なエサを用意することでしょう。これをハリに付けた仕掛けを底に這わせれば、エサの動きで仕掛けが丁度キスのいるタナに合うことがあります。これ、意外とキモ。――しかしこの戦法の欠点は、大型のキスがエサだけくわえて走る素振りを見せたら、もうどうしようもないということ(×_×)

    この打開策としては、キスがエサをくわえる時に起こる前モタレを拾って合わせるしかありません。これが難しいんだ!

    1. 合わせ方

    『誘い』と『合わせ』は一連の動作なので、別々に書くのはとても難しいのですが、一緒に書こうとすると混乱を来たす恐れがあるので、敢えて別の項を設けました。ご了承の程を。

    小・中型キスは警戒心が少なく、エサの動きだけででも食い気を起こしてくれます。数釣りで小・中型の上がる確率が高いのは、マメに誘ってアタリを取るから。何と言っても手返しが命

    しかし、大型キスは釣られて来なかっただけに警戒心も強く、スレ切っております。型狙い釣りは、誘いも重要ですが合わせが命です。

    例を挙げてみましょう。――運良く、大型キスが自分の仕掛けのエサに近付いて来たとします。そして、これまた運良く食い気があったとします。

    1. まず大型キスはエサをくわえます。
    2. 変な動きが無ければ、次の動作としてエサを吸い込んで呑み込もうとします。

    普通は(2)で竿先がゴンッと水面に突っ込みます。しかし、ここで合わせてはいけません! ここで強く合わせてしまうと、警戒心の強い大型キスはパッと口からエサを吐き出してしまい、アタリだけで終わってしまうのです。例え仕掛けを上げても、エサがビロビロに伸び切っているか途中で千切れてるかどちらかです。

    大体釣り雑誌に書かれているのは、ここで竿先を送り込んでやるということ。上手くやり取りできれば、型のいいキスが上がって来る筈(^^)v

    しかし、もっとスレ切った大型キスは(1)だけでエサを食べてしまうことがあります。アタリはほとんどわかりません(オイラでもわからん時の方が多いのに…(;_;))。

    ここで前モタレがポイントになって来ます。――つまり、エサをくわえた時のわずかな抵抗感。これがわかるかわからないかで、これまた釣果は大きく変わって来ます。

    恐らくこの前モタレ、竿先ではわからないでしょう。固定テンビンにしろ遊動テンビンにしろ、明確なアタリが出る訳ではないので。

    さて、このモタレを見事に取る鉄人ダンナ、竿先ではアタリを取りません。全て手元の感覚だけ。モタレというのは、鉄人ダンナの言うところの『んんんもぉぉ…(?_?)(?_?)(?_?)』ってな感覚らしいのですが。オイラはまだまだ修行の身でございます…。

    1. 潮流れ・船

    タイトルだけじゃきっと何のことだかわかりませんよね。2・3で示したやり方は、あくまで基本。しかし、これにその日の潮流れとか船の流し方などで、誘い方・合わせ方が全く変わって来るのです。これも例を挙げましょう。

    まず、船長のOKが出て仕掛けを投げますね。オモリが着底してから糸フケを取り、いよいよ誘い。しかしここでよく見て下さい。

    道糸はピンと張っていますか? それとも手前にたるんでいますか?

    船の動き、上潮の流れ。この2つの要素がセットになり、更に海底の潮の濁り具合や流れ方が絡み合うのですから、頭の中で考え出したらキリがありません。とにかく、その日の釣れるパターンをいち早く掴むこと。これは、どんな釣りにも言えることですよね。

     

    最後に

    最後に、前章で書き洩れたことを少々。

    鉄人ダンナもオイラも、2本竿で釣っております。1本竿より誘いの間合いが取りやすいので、意外とマイペースで釣ることが出来ます。オイラの場合は、1本竿だと周りが釣れてるのが気にかかってペースが崩れやすくなってしまうので、余程のことが無い限りは2本竿。だからオイラの釣りのスタイルは、キャップをかぶってウェアのフードを目深にかぶって、黙々…。

    決して1本竿が釣れないということではありません。竿のところでも書きました、つり情報APCの平林さんは、『1本の竿で釣るからキス釣りは楽しい』と仰っていますし。

    ちなみに鉄人ダンナは、潮が緩く入れ食いの時は3本竿を出します。釣れるポイントがはっきりわかっているので、とにかく道糸がお互いに絡まないように、微妙に投げる方向を調整するそうです。『何故そこまでやるのか?』という素朴な疑問はありますが、『釣れる時に釣らないと、釣れない時間帯が辛い』とか。

    誘いだけは、オイラも鉄人ダンナの横で真似ました。『技術は真似て盗め』が身上のダンナでもあるのである程度覚悟はしてましたけど、目に見えない部分は自分で確立しなければならず、ここで思いっきり壁にぶつかりました。――『口では説明できない』と言われた日にゃあ、ああた打ちのめされますわな(ToT)

    まず、食い渋りの時にいかに食わせるかで、まる1シーズン棒に。

    次に、誘いのパターンと合わせ方を身体に覚えさせるのに、まる1シーズン棒に。

    更に、手返しの速度を上げる為に、まる1シーズン棒に。

    いい加減に諦めようかと思った時期もございました。コンスタントに数を稼げるようになったのは、今シーズンに入ってからです…。

    まずは多少迷惑になるのは覚悟で、ベテラン釣り師の横で誘いを真似てみるのも良いでしょう。あまり何人もの人につくと、逆にどの誘いがいいのか迷いますから、決まった船宿に通うのも手です。

    もっと手っ取り早い方法は、船長に教えてもらうこと。ただ、昔からの漁師気質の船長だと『見て覚えろっ』なんて怒鳴られそうなので、若い船長に聞く方が良いかも。丁寧に教えてくれる筈です。

    相模湾のシロギスシーズンは1〜7月(今年から8月まで伸びましたが)。この時期にとにかく通い詰め。1シーズン15回以上はシロギス船に乗るのが最低条件でした。――普通の人はここまで通えないでしょうから、少ない回数で根気良く、シロギスに遊んでもらうつもりで通いましょう。『継続は力なり』です!

    相模庵から収録に寄せて

    相模庵が萬司郎丸に通って幾年か経ちますが、本来社交的じゃない性格なので人とあまり話すことも無く、黙々と自分の釣りを楽しむスタイルを貫いておりました。
    そんな中で朋ちゃんは良く釣る奥様として気になる存在でありました。また鉄人ダンナ様には見知らぬ私にアドバイスをくれたりしたこともありました。
    ひゃんなことから朋ちゃんが『釣りバカ亭主天国』に遊びに来てくれるようになり、私の思いつき発想ではありましたが、私のほうからこの船キス釣り特集の原稿を依頼させていただいた訳であります。

    今回の掲載においては長年培われたテクニック、ノウハウを惜しげも無く晒して頂き、原稿料も無く、ホルモンと酒で誤魔化して頂いた朋ちゃんと鉄人には本当に感謝の念が絶えません。この場を借りてお礼を述べさせていただきます。