110番街交差点    監督 バリー・シャー
音楽 J・J・ジョンソン
主題歌 ボビー・ウーマック   
アンソニー・クイン
ヤフェット・コットー
アンソニー・フランシオサ   
1973年公開
STORY
ニューヨーク110番街通り。ハーレムを縄張りとするマフィアの幹部が
シノギ(売上)の儲けを計算しているところへ、黒人の3人組みが強盗に押し入り、
幹部達を皆殺しにしてしまう。
いつもその地区を担当していた老練の刑事、マテリ(A・クイン)が捜査に乗り出すが、
上層部は人種問題で世間が騒ぐのを防ぐため、新人の黒人刑事、ポープ(Y・コットー)を捜査担当として任命した。
マテリとポープは人種の違い以上に、捜査のやり方でことごとく対立する。
ハーレムを失いたくないマフィアと、ハーレムを根城にする黒人マフィア、そして黒人マフィアから金をもらいながら
暗黒街と共存してきた老刑事、黒人として差別の目を向けられながら正義を貫こうとする新人刑事が
犯人の黒人達を巡って火花を散らす。
犯人達を執拗に追うマフィアは残虐に彼らを追い詰めていく。必死に捜査するマテリとポープ。
火花はついに110番街交差点で爆発する。

NOTE
この映画の中の戦いには正義も悪もない。ニューヨークのハーレムで渦巻く人種の対立、
その対立の中で縄張りのために共存する黒人マフィアとイタリア系白人マフィア、
暗黒街を仕切るために、押さえつけながらも金で丸く治めている刑事の汚職、
貧困に潰されそうになりながら夢を見ようとするハーレムの黒人達を客観的に、どこまでもリアルに描写していく。
白人は「黒人は粗暴だ」と言うが、黒人マフィアは金を武器に縄張りを守り、白人マフィアは暴力で制圧する。
血の交差とも言える対比だ。
汚職に手を染め、暴力を持ってハーレムを取り仕切ってきた白人刑事を現実とするなら、
金の誘惑を受けつけず、人権とモラルを尊重する黒人刑事は理想として描かれる。
お互いがぶつかり合いながら同じ目的に向かって行かなければならないこの二人はまさに
一人の人間の中に潜む悪魔と天使の存在ではなかろうか。
110番街交差点はハーレムと白人社会を隔て、更に結んでもいる地点である。
それは単に街の区画ということではなく、社会、そして心の交差点として象徴的な設定であり、
深い意味の題名ではないかと思う。それにしても渋い映画だった・・。