五百羅漢でのスナップ写真



土曜ワイド劇場の撮影で,山口県に行った。ロケ地には江戸時代から残る銀山の洞穴があり、
観光地なのだが、霊感が強い人には何かを感じるらしく、スタッフの中にもそういう人がいて色々話してくれた。

或る日、五百羅漢のあるお寺で撮影があった。小さなお地蔵さんがいっぱいあって、自分の母親に似た
お地蔵さんが必ず見つかるというものだ。
そこにはお寺から長いつり橋を渡って行かなければならず、林に囲まれていて晴れていても暗い所だった。
人並み以上に霊感が強いという衣装担当の女性スタッフは、「私は絶対行かない」と言って、
衣装だけ他のスタッフに渡してロケバスの中から出ようとはしない。
しかし、撮影は滞り無く進み、帰るまで別に変わったことはおこらなかった。

チーフ助監督がスタッフ達のスナップ写真を撮ったりして、実になごやかな現場だった。
しかし、その写真が出来あがり、みんなに配られるとしばらくは心霊写真騒ぎがおさまらなかったのだ。
撮影助手のチーフの写真だけに、不思議な赤い光のようなものが写っている。それも頭だけをよぎるように。
「気をつけたほうがいいんじゃない?」「でも不思議だねェ。やっぱり心霊写真かな」
すると、今度はメイクさんが「ちょっと見てよこれ」と、自分一人で写った2枚の写真を持ってきた。
「ゲッ、これ顔じゃないの?」「影とかじゃないよこれ。いっぱい写ってるじゃん!」
両方の写真には、確かに顔のように見えるものが無数に写っている。しかもメイクさんの写真にだけ。
「東京に帰ったらお寺さんで供養してもらったほうがいいよ」

地方ロケから帰京し、最初の撮影の日は新宿で朝の集合だった。
そのメイクさんが僕の顔を見るなり、「ねえ、あの写真なんだけど・・・気になって今朝また見たの。そしたら、
あのときは写ってなかった子供の顔が浮かんできていたの」
その写真は見るチャンスはなかった。どんな顔だったのだろう。

土曜ワイド「数の風景」集合写真

集合写真。中央は古谷一行さんと松尾昭典監督。

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