どこを見てるんだ?


知り合いのスタッフに聞いた話。当事者ではないが事実ということである。
ある映画の撮影場所は、一階が道場のようなところで、最初にそこで撮影し、それから二階に移動するという予定だった。
一階の撮影が終了し、二階での撮影のためスタッフは機材と共に移動する。
照明部のチーフは、後輩の助手二人に、一階に残っている機材を片付けるように指示した。
「片付け終わったら二階にあがってこいよ」
助手達は指示にしたがい、一階を片付けはじめた。
結構な時間がたつが、二人の助手はなかなかあがってこない。
もうとっくに片付けおわっていてもいいような時間なのに、何してるんだろう・・。
チーフは様子を見に一階へ降りていった。
二人の助手がいる。何もせず、ただ立っているだけである。どうしたんだ・・。「おい、何してんだ?」
なにか変だ。二人は返事もしない。近づいてもこちらを見ることもない。
それどころか、二人とも一点を見つめてまばたきもせず、金縛りのようにかたまっているのだ。
どうしたんだ、何を見てるんだ?
チーフは二人が見ている天井の方を見た。
そこには、子供が浮いていた。
「あっ!!」
このままではいけないと思った。
チーフはかたまっている二人の頬を打ったりしてなんとか正気を取り戻させようとした。
「おい!しっかりしろ、おい!」
二人は我に帰った。
「あ・・あの、あそこに・・・・」
正気に戻って天井を指差したときには、もうそこには何もなかったという。


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