望月六郎監督の『でべそdeストリップ』は、渋谷の道頓堀劇場というストリップ劇場を
作って一世を風靡した社長の自伝が元になっている。
撮影の前に一度道頓堀劇場の営業中の舞台をメインスタッフ皆で見ることになった。
いわゆる花電車や生板ショーのようなものは一切なく、アイドルストリッパー達の
華麗な踊りだけで最後まで見せるというのはこの道頓堀劇場が最初だそうである。
ストリップを見るのは2度目であった僕はちょっとドキドキして入り口をくぐった。
初めて見たのは東京に出てきたばかりの時で、生板ショーもあった。
生板ショーというのは、ストリップ嬢と客が舞台の上で本番(SEX)をするのである。
客はわれこそはと一斉にジャンケンを始め、勝ち残った勇士が舞台にあがる。
突然の喧騒についにジャンケンには参加できずに終わり、見せモンになってたまるか、フン!と
ただただ舞台に上がったはいいが緊張して震えるアンちゃんを笑っただけのストリップ初体験だった。
道頓堀劇場のステージはきらびやかに飾られ、照明もかなりのものだった。
これからここでアイドルストリップ嬢達の訓練された華やかなショーの始まりである。
舞台に次々と現れて独自の魅力をさらす踊り子さんもすばらしいが、驚いたのは客であった。
舞台の脇で、ずっとタンバリンを打ち鳴らして盛り上げている男がいた。
劇場の職員で盛り上げ係りなのだろうと思っていたが、実は客なのである。
出演している女の子のファンで、その舞台を女の子のために盛り上げているのだという。
しかし、プレゼントを渡す時に目を合わすだけで、踊っている間は全然舞台を見ないのだ。
僕は君のために盛り上げているのだよ。君に気持ち良く踊ってもらいたいのだよ。
きみのアソコを見にきたんじゃあない。心の恋人なのだよ、君はってことらしいのである。
彼らは全国、ごひいきの女の子の行く先々に欠かさずついていくそうだ。
更に、よくドラマのシーンにあるような品のない掛け声などひとつもなかった。
客の全てが、子供のような表情で手拍子をし、リズムをとりながら、
そりゃあもう天使を見るような笑顔なのである。
悪いやつなんかきっと一人もいないんじゃないかといった感じの客席の面々であるのだ。
きっと、風俗と同じ感覚と思ったら大間違いな別の世界があった。
その道頓堀劇場もその年いっぱいで渋谷での歴史を閉じた。
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温泉ロケでの、スタッフとキャストの
記念写真
一座は12人の設定で、俳優さん達
は本当の一座のような雰囲気でまとまっていた。
片岡鶴太郎さん、川上麻衣子さん、寺田農さん他 |
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