ハト

この話は「だんだん振り向く子供」同様、都市伝説化し、稲川淳二氏も話していたり、有名な話になっていて
結構他のサイトにも登場しているが、僕の直接の知り合いの体験談が元である。
この怖い話シリーズによく登場する「T君」である。だから、ここに紹介する話が本家本元で、T君が話してくれた
とおりに書くことにする。

大学の同級生がラグビー部の寮に住んでて、夏休みだから実家に帰るって言うんですよ。
僕は実家通いで、彼女も実家だったし、ほら、ホテル代も高くつきますからね、友達が帰ってる間1週間、
鍵を預かって使わせてもらうことにしたんです。親には旅行に行くなんて言ってね。
でも、そこの寮はエアコンもなくて、暑いんですよ。一階はあるのに2階は冷房無しなんです。
それは知ってたんだけど、さすがに暑くて、彼女が怒っちゃいましてね。暑くていやだから帰るって言うし。
しょうがないから彼女を駅まで送って、僕は鍵を預かってるし、親には1週間旅行だって言った手前もあるし、
そこに一人で泊まることにしたんです。

暑いから窓を開けて寝るしかなくて、そしたらね、ハトが入って来たんですよ。ホー、ホロッホウって鳴くでしょ?ハト。
あれ〜、ハトだ、と思ったけど、姿は見えませんでした。ホー、ホロッホウ、ホー、ホロッホウっていう声だけ聞こえる。
2日目もやっぱり暑くて、窓を開けて寝てました。また入って来ましたね、ハト。ホー、ホロッホウ・・・・
なんだかね、最初の日より近いところまで来てるみたいなんだけど、どこだろうって見ても見えないんですよ。

3日目もやっぱり入って来たんですよ。ホー、ホロッホウ、ホーホロッホウ、って。前の日よりも近いんです。
あれ?と思いました。ハトが歩くような、畳をトットットッって音じゃない。なんだかね、ズズッ・・ズズッ・・ってね、
引きずるような感じなんですよ。ホー、ホホッホウ・・・ホー、ホホッホウ・・・え?なんだ?・・
なんだかね、ハトの声が変なんですよ。なあんか変なんです。でももう寝るしかないですからね。
妙な気がして、一度帰ることにしました。ちょっと嫌だったんです。

友達が実家から帰って来て電話が来ました。
いやあ、すまん、鍵預かっていながら3日間だけで帰っちゃったんだって言ったら、そんな事はいいから、
みんなで麻雀をやるんだけど、来いよって言うんです。なんかまた行くのは嫌だったけど、一人じゃないし、と思って、
麻雀をやりに行きました。鍵も返さないといけないし。そしたら僕だけしこたま負けちゃいましてね。一人負けですわ。
みんなは出かけようって言うけど、結構飲んじゃってたし、麻雀には負けたし、俺は寝るからいいよって断ったんです。
一人になって、あ、しまったって。ハトの事を思い出したんだけど、もう帰れないし、寝ることにしました。
その時は、窓はハトが入ってこれないくらいの開けかたにして、ほら、両側をちょっとだけみたいに。

でも入って来たんですよ、ハト。あれえ、来たな・・・って感じです。
いつもより近いんですよ。ホーホホッホウ、ホーホホッホウ・・・・・どんどん近くなって、
段々近づいてきて、でもどこを見ても姿は見えない。
そしたら、ガツン!って感じでいきなり金縛りですよ。う、ヤバイって思いましたよ。
声だけが近づいて来てね、ホー、ホホッホウ・・・もう耳元まで来てるんですよ。え?あれ?・・違うんですよ。
ハトの声だとずっと思ってたんだけど、違うんです、なんだか。人の声みたいなんですよ。男の低い声です。
ホーホッホウ・・・・ホーホッホウ・・・・って、耳にね、息がこう、吹きかかるくらいのところで声がしてるんです。
どう聞いても人の声なんです。ハトじゃない。
うわあっ!ヤバイ!なんとかしてくれ、どっかに行ってくれえ!もうね、南無阿弥陀仏だアーメンだ、全部言いました。
ホーホホッホウ、ホーホホッホウ・・・・・ホーホホッホウ・・・・・・・・
声がすうーっと遠くなって行きました。ああ、よかったあ・・・でもまだ金縛りが解けない。そしたらね、ドーン!って、
胸に落ちて来たんです。ドーン!、ドーン!って、3回来ました。
なんだと思いますか。生首ですよ。絶対生首なんです。わかるんですよ。
うわあああ!!って、気絶したんですね。
気がつくともう朝でしたよ。初めてでしたよ、胸に真っ赤な跡が残るくらいの体験は。くっきりとね。

その部屋の持ち主の友達に言いました。ここ、ハトが入ってくるって言ってたよなって。
ああ、窓開けて寝るからな、いつもだぜ。他の部屋の友達にも聞くと、みんなハトが入ってくるって言うんです。
考えてもみてください。夜中にハトを見ますか?僕がどう言っても信じてくれませんでしたけどね。
あれはハトじゃない、人間なんだよ!涙ながらに訴えてもみんな信じませんでしたね。でも、あれは生首なんです。

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