長い間一緒に仕事をしていた仲間が星になった。 久道雅弘君という、真面目でやさしい男だ。 大腸ガンが胃にまで転移していた。 若い分、転移が早く進んでしまったという。 東京女子医大では、1ヶ月検査を待たされてたらしい。 いいよな、名前出しても。誹謗中傷じゃないし。事実だからな。 その間、結構きつい仕事を受けてしまったそうだ。 最近問題起こしたよな、あの病院。だから大学病院は嫌いさ。 ろくなもんじゃない。 最初の手術の時に見舞いにいったら元気に笑っていた。 まだ効ガン剤などで痩せていなくて、いつもの久道君だった。 相当悪いとは訊いていたが、治らないはずはないと思っていた。 「焦らないで休めば現場復帰もきっと早いよ」 気休めではなく、本当にそう思っていた。 俺たばこ吸わないでしょう?痰がさあ、からむんだけど、 カァ〜、ペッって吐き出す方法がわかんなくてさあ。 普段痰がからむなんて事なかったから。 できないんだよね、カァ〜、ペッって。 ある日、一緒にお世話になっていた先輩から電話。 「久道君、亡くなったの・・・・」 ショックだった。しばらく何も言えなかった。 確かに、医者の見解よりもずっと長く生きたそうだけど。 でも、そんな事になるなんて全然考えてなかった。 治るって信じていれば絶対治ってくれるなんて本気で思ってた。 もっと会いに行けばよかった。もっと話しておけばよかった。 耳が痛くなるほどの長電話ももうできない。 お通夜に行った。涙が出てしょうがなかった。 話したい事がいっぱいあったけど、お棺の中で眠る久道君の顔を 見たら、涙が出てきてなんにも言えなかった。 『香港パラダイス』という作品で一緒だったとき、当時助手だった僕と 久道君の下に後輩がついた。 或る日、先輩に僕達2人が説教されたことがあった。 「お前達はもっと後輩に厳しいところがなきゃだめだ。楽しくやるのも いいが、ビシッと教えることもしないと・・」 あとで久道君が僕に話した。 「他の現場に行けばどうせ厳しいんだからさ、せめて俺達と一緒に 仕事する時くらい楽しくしてやりたいよな」 本当にやさしい男だった。 僕がキャリアを積むにつれて時々寂しい感じに思う時があった。 いつか2人とも技師で一本立ちすると、同じ現場で仕事することが できなくなるのか・・・。 彼とは、できればずっと一緒に仕事をしたいと思っていたから。 久道君、君はいつも一緒にいる・・・・と思っている。 ひさみっちゃん、現場の思い出話をするとき、いつも君がいるんだよ。 今でもどっかで元気にいるような感じだよ。 |
『香港パラダイス』 香港ロケ、現地のスタッフと 1番左が久道君 『ワールドアパートメント・ホラー』 真中が久道君 |