一晩中・・・

ある旅館にロケで泊まった。撮影もそこですることになっていた。
最終日に撮影する広い部屋をまだ見てなかったので、僕とカメラマンのIさんが
下見がてらその部屋で寝ようということになった。

僕は入り口がわの居間に布団を敷き、Iさんは奥の間で、寝るときにはふすまを閉めて別々になった。
僕は「おやすみなさい」というと、すぐに記憶がなくなったくらい、寝つきがよかった。

朝・・・。
「いやー、櫻井ちゃんは寝つきいいねー、ふすま閉めてすぐいびき聞こえたもんなあ」
「ははは、そうなんっすよ」
「こっちは全然眠れなかった。ほとんど寝てない・・」
「どうしたんですか?」
「奥の部屋にさ、ゆかたとか置いてあるおしいれみたいなのあるじゃない、
そこからさあ、ずーっと覗いてるんだよ、俺の方」
「覗いてる?」
「落ち武者だよね、あれ・・・一晩中覗いててさあ、いやだったなあ。」
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