札幌にも照明の会社があって、地元のコマーシャルの仕事が主なのだという。 或る日の撮影で、湖までとはいかない少し大きな池でのCMの仕事で、ある海岸に近い場所にいった。 周りは林で、池の周りには何箇所か橋がかけられている。 そのどこかに、必ず霊の出るところがあると、O君は聞いていた。 赤い服を着た長い髪の美人が自殺して、その霊が現れるのだという。 「なんかいやだけど、俺、霊感ゼロだから別にいいや」 池の真中あたりの陸地が撮影現場で、O君はそこから橋を渡って離れた場所にセットしたライトについていた。 はなれた場所といっても、顔が判別できない程遠くではなかった。 臨海学校の生徒たちが海岸の方にいるらしく、撮影が珍しいのか、女性の教師が話し掛けてきたりしていた。 深夜を過ぎ、撮影が終了したのはもう明け方だった。 先輩の照明さん達と機材をかたづけていると、 「おい、うまくやったのか?ちゃんと誘ったのか?」 「は?なにがですか?」 「まったく、こっちからはちゃんと見えてんだからな。いい女だったじゃないかよ」 「女?ああ、あれ、臨海学校の先生ですよ。すぐ行っちゃいましたよ」 「さっきまで一緒にいたろ?お前とずーっと」 「え?いないっすよ。俺一人ですよ。」 「いいんだって、ごまかさなくても。ちゃんと見てんだから」 そのときO君はピンと思い出した。地元の人から聞いた幽霊の話だ。 「じゃあ・・・どんな女かちゃんと言ってみてくださいよ」 「ああ、言えるよ。髪が長くてワリといい女。赤いロングの服着てただろ」 そこまで聞くまでに、さらに変なことを思い出していた。 撮影中、何度か自分のすぐ後ろで女の「うふふ・・」という笑い声がしていた。振り向くと誰もいないのだが、 たしかにすぐ後ろで聞こえていたのをただ変だなあ、としか思っていなかったO君は、改めてゾーっとしたという。 |