知り合いのスタッフから聞いた話。 海の撮影で、しかも雨を降らすというシーンがあった。 まず舞台となる舟、更にカメラが乗る舟、そして、雨降らし用のタンクを乗せた舟。 それぞれの体制で撮影本番にむけて準備をしていた。舟は人力のちいさいものだった。 カメラは水に濡れないように慎重にに仕度しなければならないのだが、まだセッティングが充分でないうちに 雨降らし部隊がホースから水を放出してしまった。 ホースというのは特殊効果用の、消防隊が使うあの太いホースを思い浮かべていただくとわかりやすいだろう。 それはもう物凄い勢いなのである。 ホースはら吹き出た水は周りにしぶきを飛び散らせ、えらい騒ぎになった。 「わああ!まだカメラの準備できてないですー!!」必死にカメラを守ろうとする撮影部さん。 特殊効果部隊のチーフはうろたえ、急いで止めればいいものを、何を思ったのか、そのモノスゴク勢いよく 水を放出しているホースを、そのまま海につっこんだのだ。 ズボ!!ゴオオォォォ・・・・・・ なんのヘンテツもない小さな舟は、まるでジェットボートのごとく猛スピードで沖に小さくなっていった。 「あらら、おおーーい・・・」 とにかくそのシーンの撮影はひとまず一段落し、全員岸にあがることになった。 ふつう、岸に上がるときには、舟が動かないようにロープで固定してから上がるものである。 あのジェットボートと化した、実はなんのヘンテツもない舟の番になった。 ホースから水を出してしまったスタッフは、そのロープで固定する作業をしていなかった。 岸に上がろうとして片足をかけたとき、再びジェットボートと化した実は普通の舟は見る見る岸から離れて行った。 スタッフは股裂き状態になり、轟音と共に海に消えた。 ジャッポォォーン |