管理人

仲間のT君と一緒にやっている会社で、新しくハウス・スタジオを管理できればと、あるビルの最上階のフロアを
紹介してもらい、T君は話をつけてくれた自分の親父さんと一緒に下見に行った。

桜井さん、見ましたよ。ええ、この世のものじゃないです。
親父とね、行ったんですよ。親父と、そこの持ち主と僕の3人。部屋に入るとね、おばあさんがいるんですよ。
今僕の前に櫻井さんがいるでしょ?こんな感じです。普通にいるから、ああ、ここの管理人のおばさんかなって思って、
ああどうも、って感じで会釈して、でも、おばあさんは黙ってるだけでね。
最初にあれ?って思ったのは、持ち主はいざ知らず、親父も挨拶ひとつしないで素通りするんですよ。
挨拶もしないような人じゃないんですよ。なんか変なのはね、「ああ、ここに絵が飾ってあったみたいだね」なんて言ってね、
おばあさんの顔の前に手を伸ばして、すぐ前ですよ、なんて失礼なことするんだって思いました。

おばあさん、何かブツブツ言うんですよ。「あいつのせいだ」とか、「娘までが・・・」とかね、普段は普通に黙ってる感じだけど、
持ち主のおじさんを見る目がなんだかすごいんです。般若って言うんですか。なんだろうって思ってました。
これは・・・と思ったのは、次の部屋に案内されたときにね、その部屋にもうそのおばあさんがいるんですよ。
ドアは一つしかありませんしね、考えてみたら、おばあさんが歩いているところを僕は見たことがないって事に気がつきました。
いつもただ立ってるんですよ。その部屋に入ったときも、僕達より先に入ったわけじゃないのに、もういたんですよ。
親父の行動やさっきまでのおばあさんの様子を考えてもね、あっ、これはって思いましたよ。
おばあさんは、僕にしか見えていないんだって。

あそこはダメですよ。契約するもんじゃないです。あの持ち主のおじさんですけどね、やばいですよ。
おばあさんとどういう関係かわかりませんが、もしかして人殺しなんじゃないかって思うんですよ。
おばあさんは僕達に教えてくれてたんじゃないかって。
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