金髪どう?

「新・極道記者」の監督は、ロッテルダム映画祭で特集上映も組まれた実力派、望月六郎監督だ。
この作品の打ち合わせで久しぶりに顔を会わせたとき、虎の子のぬいぐるみのような綺麗な金髪になっていた。
ハイ・ブリーチで、自分で抜いたのだと言う。

「ねえ、なんで金髪にしたか聞いてくれる?」
「え・・なんでですか?」
「外国人になりたかったから」
なんだあ〜ぁ?

監督の金髪は撮影中、誰よりも目立ち、異彩を放っていた。
スケジュールもほぼ半分を消化した頃。
「サクライさんもどう?金髪」
「いやぁ〜そこまで抜くのはちょっと・・・」
「茶パツくらいだったら?」
「まあねえ、茶パツくらいならまだねえ」
そう言うと監督の目がキラキラ輝いた。
自分でやる方法をそれは楽しそうに語り、ハイ・ブリーチもプレゼントしてくれると言うのだ。
僕がどうしようかと困っていると、撮影監督の石井さんが
「サクライさんがやれば俺もやるよ」
その言葉いただきましたあ〜!
撮影休みの日、監督からプレゼントされたハイ・ブリーチで茶パツ作戦実行だ。
30分のところ、うとうとしてしまって気がつくと45分経過。ウワッ!!
しかし、初めてということもあって、心配した程抜けすぎてはいなかった。

「ええっ!!ホントに茶パツにしたのぉ?」
「そりゃしましたよ。石井さんもやるんですよね、約束ですもんね、ねー石井さん。ね、ね、」
翌日、僕より綺麗な茶パツになった石井さんがいた。
「女房が反対してくれると思ったんだけどさあ。それ、荒めのクシでやんなきゃだめよ、だって」
カメラの周りには茶パツの(一人金髪)メインスタッフ軍団。
なかなか評判が良かったが、美術部の女性スタッフだけには怒られた。
「ったくイイ年してもう!!」

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