スタジオマン時代の怪

十代の頃、ある撮影所でスタジオマンのアルバイトをしていた。
スタジオマンとは、CMなどの撮影の日、スタジオの雑用、スタッフのお手伝いなどをするなど、
仕事が終わるのは夜中や時には朝方にもなった。その頃の怖かった話。


7番ステージの男

スタジオマン仲間のH君の体験。
「仕事が夜中の2時くらいに終わった日はいつもなんだけど、帰りに7番ステージの前を通ると、
中から必ず男が出て来て通り過ぎるんだよ。メガネをかけていていつも同じ背広着てる。
通り過ぎたあと振り返って、誰もいなかったら余計怖いからさ、振り向きもせずに走って帰るんだ。」

ドアの前で止まる自転車

スタジオの掃除も終わり、控え室で日報を書いていた。夜中の2時頃だったと思う。
そろそろ書き終わるかという時、キィ―ッ、ガタッという、自転車の止まる音がした。
「守衛さんかな?」
しかし、そのあとはカタリともしない。しばらく聞き耳をたてていたが人の気配もなく、ドアをあけるのが怖くて
なかなか帰れなかった。それというのも、以前、やはりその控え室のドア外で妙な声を聞いたあとの事だったからだ。
その日も夜中だった。ドアのすぐ外で、酔っ払いが唸るような声がするのだ。

ドアの外は撮影所の通路で前は塀で囲まれており、建ってまもない団地からは結構距離もある。
それに、撮影所の外の道路もそこからは距離があり、なによりも、まさにドアのすぐ横か前で聞こえているようなのだ。
最初は「酔っ払いかなア、なんかいやだな」くらいにしか思わず、それでドアをあけにくかった。
しかし、その声は遠くなる事なく続いていた。さすがにもう帰りたいのでよし!っとドアをあけると、
どこにも人影などないのである。あたりを探してみたが人は見つからず、唸るような声も消えている。
いちもくさんに走って帰ったのは言うまでも無い。

「怖い話」目次へ     トップページへ