意味と考え方

文字通り、ライティングとは、照明機材を使って、被写体をちゃんと写るようにする作業です。
そして、様々な技術を駆使して無限の効果を生み出します。

ライティングとは、「光をあてること」ではありません。
光を使って雰囲気を作ることです。
例えば、同じ場所、登場人物、同じ内容のセリフのシーンでも、
それが青春映画か、ホラー映画か、コメディーかの違いで、ライティングも変わるはずです。
つまり、ライティングとは演出であるのです。

更に、映画など、ドラマのライティングで一番重要な事は、
観客に、ライティングしているという事を感じさせないことです。
どんなに大掛かりでスゴイことをしても、ドラマの伝えたいことをきちんと伝えるために、
人偽的なことが表立って目立っては、観客が現実に戻ってしまうからです。
それは、撮影、録音、美術など、すべてにおいて言えることでしょう。

僕にとっての今まででの一番の誉め言葉は、
「櫻井よう、あれ殆どノーライトでやったんだろう?」でした。


プロの技術は限りなく奥が深く、
技術者として一本立ちするには10年はかかるほどむずかしいものです。
ここでは、自主製作映画をつくっている人達が少し進んだ表現をしたいとき、
照明について何かの参考にしてもらえたらいいなという事を紹介していきます。
たとえば、こういうときにプロはこんな事するんです、という感じで・・。


自主映画作家のみなさんへ

カット割り、カメラワーク、ライティング・・
全ての表現にはセオリーはあっても、これが正解という方程式はありません。
プロがどうこういうのに縛られず、自由に表現するのが一番だと思います。
自分が見る、動くことが一番の勉強であることを忘れてほしくないのです。
忘れているプロも多いので・・。

勉強するということ
最重要
もちろん、机に向かう勉強ではありません。
色んな物、場所、自然を自分の目で見、経験、体験することが重要です。
ああ、雷はこう光るのか、夕陽ってこんな色なのか、この店はこんな照明なのか・・・。
それはもうきりがないほど、日常の中には教材、参考書がころがっているのです。

それは、カメラワークや演出も同様であります。
こんなとき、人ってこういう顔するんだなあ、ホントにビックリしたときってそんなことしたりするのか、
主婦は買い物のときにこんなこと気にするんだあ、1人暮しの部屋ってこういうの多いよなあ・・・etc.

勉強には好奇心が大切です。自分の趣味や行動範囲だけの中でかたまっていては、
薄っぺらな表現しかできず、人の胸に響く映画はつくれないと思うのです。
演劇が嫌いだと言って、観に言ったことのない人、開演前の客の様子がわかりますか?
ギャンブルはしないと言って見向きもしない人、競馬場と競輪場の客の雰囲気の違いがわかりますか?
クラッシックが好きと言ってオーケストラのコンサートしか行かない人、
ライブハウスに来る若者とクラブの若者のファッションの違いがわかりますか?
なんだか小姑のこごとのような感じになってしまいますが、
勉強どころか取材もしてないで描いているような映画がいっぱいあるじゃないですか。
それは、僕が色んな撮影現場で色んなスタッフと接して思うことであるので、
これから映画をつくっていこうとしている皆さんには是非とも考えてもらいたいのです。
映画をたくさん観ることが勉強だというのは一理はありますが、
決してそれが全てではないということです。
大切なのは、自分の目で見る事、自分が人と接し、話をする事、自分がその場で体験する事です。
映画はあくまで参考書、教科書は自分自身です。
そういう勉強のしかたをしないと、描き方がリアルじゃなかったり、例えば照れた時には頭をかくとか、
怖いときにはキャーと叫べばいいというような演出しかできないことになると思います。


だってさあ、ホントにそういう映画多いじゃないっすかあ・・。