ドラマのライティングで重要なのは、自然をリアルに表現することです。
光はライトをあてれば、ただうつるというだけはどうやってもできますが、
季節感を出したり、たとえば暗くなってから昼間の設定のライティングをすることなどは、
色々なアイディアと技術が必要になってきます。

※頻繁に出てくる色温度についてはこちらで→★色温度★
                         季節
           自然の光がそのまま利用できればいいのですが、どうしてもライティングでつくらなければならないときがあります。


春というのはどこかほのぼのとのどかな印象があります。
天気が良くてもその陽射しはやわらかく、ライティングで春の雰囲気を出すときも、
コントラストはそれほど強くない方がいいと思います。

夏といえばやはり一番の印象は、ギラつく太陽です。
陽射しは強く、コントラストは強い方が「熱い」という感じがします。
日中の太陽は高い位置にあるので、室内に差し込む直射は高い位置から光を流し込みます。

秋は日も短くなり、午後3時を過ぎると急激に太陽がかたむいてゆきます。
日中の太陽も低い位置で動きますので、影も夏より長くなります。
それは春も同様ですが、センチメンタルな雰囲気がある秋の方が印象づけとして気にすると良いかと思います。


雪が積っていると簡単ですが、北国でなければ空気感だけで雰囲気を感じなければなりません。
陽射しは強くせず、色温度も若干高い方が(光が少し青くなるので)空気が冷たい感じがすると思います。
雪が積っている設定では、雪の反射という意味で、低い位置からカポックの反射でライティング
する方法もあります。

全体に抽象的な解説になってしまいましたが、道行く人々の服装だけでもある程度の季節感を感じることができるところを、
ライティングでもまた更に空気感を出そうと、プロの技術者は考えます。
たとえばこういう事を気にすると、ちょっとは違うという程度に聞いてください。

                                     天気


晴れの日と曇りの日の大きな違いは、太陽の直射があるかないかということは誰にもわかります。
室内のシーンを撮影するときは、晴れの設定の時と曇りの設定の時では、窓外の明るさに差をつけた方がいいと思います。
ライトを使うと、どうしても影がシャープになりがちなので、外での撮影でシネキンを使う場合でも、
直接あてずに光量が対応できる限り、照明用ビニールなどで光をやわらかくします。
雨のシーンをつくるときに、ホースやジョウロで悪戦苦闘しますが、雨は逆のライトでより浮き上がります。
雨に限らず、水を目立たせたい時、また、たばこなどの煙も、逆のライトは不可欠です。
雪はその逆で、カメラ側から光をあてなければきれいに白くうつりにくくなります。(特に作り物の場合)

                                          時間

早朝
太陽が昇る前の朝はもちろん直射はなく、色温度も全体に高いので雰囲気は若干青いです。
色温度でいうと、ノーマルに対して1000〜1500゜Kくらい高く設定すると雰囲気が出ます。
ただ、曇りを想定したライティングにも言えることですが、直射がなくともコントラストはつけることは必要だと思います。

朝・昼
朝よりも昼の方が太陽の位置は高いことを想定します。
また、太陽の光の強さということでも、コントラストのつけ方に差をつけると朝と昼間の変化は出せると思います。

夕方
夕方にも種類があります。
夕陽が出て赤い夕方と、暗くなっていって青い夕方です。
夕陽のタイプの場合、アンバー系のフィルターをライトにかけて表現するのが一番手っ取り早いのですが、
キーライトが夕陽の時はおさえはノーマルに近く、また、キーライトをノーマルに近い色にしたい場合は逆目のライトを赤くして
夕陽を感じさせるなどと変化をつけないと、全体が真っ赤になってしまいます。
人物にはそれほど感じてなくて、バックだけに夕陽があたっているという事でも表現できます。
画のバランスを考えることです。
また、色温度を低くしてアンバー系の色をつくるだけではなく、数種類の色フィルターを組み合わせて色々な夕陽の表現ができます。
暗くなって青い夕方は、色温度を高くして青くし、その場合、早朝と違うのは、更に青く、コントラストも強くした方がいいと思います。


すっかり太陽が落ちきった夜のライティングは、場所によって無限の表現があり、言い尽くせません。
本当は暗くて見えないようなものを、ライティングでうつるようにし、夜だという表現をするのですから、
表現のアイディア、技術はパターンで説明するのは難しいです。

なにがしかの電気が光源であることを設定できればやりやすいのですが、電気がないか、あってもついていないという場合、
外のシーンでは月光が光源として想定されることが最も多いです。
夜のシーンをライティングするときに、暗闇に人物が溶けこんでわかりずらくならないように、輪郭をつくる逆のライト
比重が大きくなります。
逆をうまく使うと、画に力強さとしまりが出て表現が深まります。

電気がついている設定では、ほとんどの場合が高いところに電灯があるので、画面にうつらないとしても、
光源を高く作る事が多いです。
キーライトに対してのおさえの光量を落とし、コントラストを強くすると、光源の存在感が薄れず、昼の雰囲気との差が強く出ます。
また、真っ暗な場所の設定でも、どこかに強めの光でポイントをつけないと(ハイをつくると言います)、ぼんやりとするか、
ただ暗くて見ずらい画になってしまいます。
ハイは、窓であったり、差し込む月光や外灯の光に照らされた壁であったり、電灯そのものであってもいいのです。

これらの事も、文章よりも実際の画で説明した方がわかりやすいので、早目に写真を用意します。
色温度で差をつけるという事をよく言いますが、そうしなければいけないという事ではありません。
そうするとわかりやすいということです。
モノクロ映画は色などなく、コントラストだけで色々表現するのですから。