ライティングは「光をあてること」ではなく、「雰囲気をつくること」と前に書きましたが、
ライティング技術とは、コントラストの技術であると言えると思います。
「遠近感」「立体感」「質感」、すべてにかかわる重要なことです。

影の性質

ライティングをするうえで、影の性質を知っておくことは大切です。

光源との距離
太陽の下での影はくっきりとシャープですね。
それは、光源である太陽と影を出す対象物との距離がものすごく遠いからです。
対象物が光源から遠ければ遠いほど、影はシャープになります。
光をあてたときに、シャープな影を出したいのか、グラデーションをつけたいのかという問題は、
影を出す対象物を光源からどのくらいの距離に置くかという技術で対応します。

シャープな影とやわらかい影

距離の関係とは別に、影をやわらかくぼかしたいときには、ライトにパラフィン紙、
トレーシングペーパー、ビニールなどをかけます。→ディフューズと言います。
また、間接照明にすると、影はやわらかくなります。

コントラスト

コントラストとは、あたっている光の強さと、暗部の落ちぐあいのバランスにほかなりませんが、
それは露出計で測った光量で安心できるものではありません。
被写体にあたっている光の角度によって、暗部になっている部分のバランスは大きく違って見えます。
暗部の光量が同じ光量でも、強い光があたっている面積によって、明るく見えたり暗く見えたりするのです。
カメラの露出設定を把握して、被写体に対する光の角度、明部と暗部のバランスを考えていくことが必要です。

以上のことも後に写真でわかりやすく解説できるようにします。

もれ切り
ライトひとつつけると、あてたくないところにまであたってしまいます。ライティングをする上では、余計な光を排除しなければなりません。
余計なところにあたっている光を「もれ」と言い、それを排除することを「もれを切る」と言います。
人物にはあてたいが壁にはあたって欲しくない、3人いるうちの1人だけにあてたい、被写体の下半分にあてたい、など、
ライティングには欠かせない技術です。
もれ切りにはいくつもの方法があり、「もれ切り3年、レフ8年」とも言われるほど、うまくできるには経験が必要です。
もれ切りに使うものには、黒いカーボン紙や照明用の黒いアルミホイル黒フラッグなどを使います。
黒いものを使う理由は、光が無駄に反射しないようにということです。
シャープにくっきり切りたいときはライトから離し、グラデーションでなじませたいときはライトに近いところで切ります。

ポールキャットに吊ったアイランプに黒ケント紙を巻き、下の壁とカーテンに
余分な光(もれ)があたらないようにしています。


左の写真で手に持っているのは、エレンクリップに園芸用の太い
針金を取り付けて作ったものです。
これを使うと、写真のように黒ケント紙やブラックアルミホイルをつけて、
光を部分的に遮断(光を切るといいます)するのに便利です。

カメラに入るハレーションを切るのも便利です。

ぼかし

「切り」というのは光を完全に遮断することですが、グラデーションをつけたり、完全に遮断せずに少しは透過させたいときに
「ぼかし」という技術で対応します。
壁の上の方まで均一にあたっているのを、切ると真っ黒になるのでグラデーションでぼかしたい、
人物の芝居の動きで、どうしてもライトに近づいてしまって段々光が強くなるのを均一にしたい、
人物に光をあて、顔の光量はちょうどいいが、衣装が白っぽいので浮き上がりすぎるのを抑えたい。
例えば以上のような、光の強さを部分的に調節するときに必要な技術です。
「ぼかし」に使うのは、パラフィン紙、トレーシングペーパー、照明用ビニールなどです。
これも影の性質を利用し、ライトからぼかす道具が遠いほど、シャープな輪郭でぼかせます。

影を使った効果

ライティングで影を自在に操ることで、色々な効果を出すことができます。

左の写真は、センチュリースタンドに
黒ケント紙に穴をあけたものを垂らし、
2Kwライトをあてています。

壁にあたっているのはこのような感じ→ 

例えば上の写真のようなことの応用で、木漏れ日など。
上の方法では、黒ケント紙の穴のあけ方で、窓やブラインドの影など、
色々と応用できます。
この項目は全て写真で解説しますので、お待ちください。
ディフューズ

光が直接あたっている状態だと、光の質は硬く、その影はシャープにはっきりと出ます。
太陽の光でも、雲にさえぎられずに直接あたっていると、はっきりとした影が出るのと同じことです。
しかし、映像において、すべての光による影がはっきりとシャープに出てしまうと、影ばかりが目に付いてうるさいものです。
ライトの位置、角度で影があまり目立たないようにしていますが、影が出ても雰囲気に影響があまり出ないようにしたいものです。
ライティング技術として、ライトの光をフィルターなどに透過させ、光を散らして影をやわらかくすることをディフューズと言います。
ディフューズするために使うものとして、次のようなものがあります。

パラフィン紙
トレーシングペーパー
ビニール
フィルター