8月19日 撮影7日目 デートクラブ



撮影は休みをはさんで一週間目を迎えた。
スタッフ達はすっかり馴染み、奥田監督のもとに心をひとつにしている。

この日は、名古屋でオーディションをした女の子達が集まった。


デートクラブのマスター、リョウはジミヘン狂いのチンピラ。
個性派、浜本康輔さんが演じ、このシーンではジミヘンのように
歯でギターを弾くワザを披露している。

ジミヘンジミ・ヘンドリックス
若くしてこの世を去った、’60年代後半にカリスマ的人気と影響力を持った黒人ロッカー。
今尚根強い、そして熱狂的な信奉者は多い。


左から2番目のスタッフはマスクをしている。
風邪をひいているわけではなく、実はほとんどのスタッフが、
この日はマスクを手放せなかった。

防塵のためである。
写真の部屋はそうでもなかったのだが、一階の物置になってしまっている
通路が、耐えられないほどの匂いと埃であったのだ。
まあ、貸していただいたお店には失礼だけど・・・。
撮影は夜遅くまでかかっていた。
現場はホテルの近くだったが、集まっていた女の子達は遠い家の人もいた。
全員をタクシーで送る予算がない。彼女達は、どうしても
電車のあるうちに返さなければならないのだった。
友川が少女達に説教をするシーン。
この長いシーンのカット割りは、階段の上から、そして下から、更に、横位置の
移動撮影で、最初から最後まで、同じ芝居を通すというものだった。
しかし、タイムリミットは迫ってきていた。



手すりにカムレールという機材をとりつけ、横移動のためのセッティング。
しかし・・・
「監督、監督・・・彼女達、もう返さないと、タクシー送りは無理なんですよ。
あと30分・・・セッティングとかの時間考えると、撮影はもう無理です」

奥田監督は厳しい表情で現場に戻って行った。そして・・
「おい!チーフ助監督!やるぞ、クランクインしてから一週間くらいで妥協なんかしてたまるか!!」

現実的には最後まで予定通りに撮影するのは難しい。
セッティングの途中だった機材は撤収作業にかかった。
確かに時間切れによる中止である。
しかし、編集を含めた、完成イメージと演出の検討の結果、
すでに撮影済みのカットだけで成立させたほうが、結果的に良いとの判断だった。

撮影中には様々な問題が起こるが、作品のために前向きに考えていけば、
妥協ではなく、作戦変更というプラスの方向へ進んでいける。
奥田瑛二さんは初監督だが、演出家としての判断力、計算力は
スタッフからの信頼をどんどん引き付けていった。


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