撮影9日目 リョウの車転落




この日はかなり大掛かり。
チンピラのリョウがシンナーでラリッたまま運転した車が川に転落するシーンだ。
川というのは山のなかなんかではなく、瀬戸市の町のど真ん中に流れる川である。
人も車も普段頻繁に通行する、しかもバスの停留駅のすぐ横で、昼間のシーン。
撮影前に、瀬戸市長のところまで行って、特別に撮影許可を受けたのだ。

一度しか許されないカットは、二台のカメラが使われた。


街に流れている川はけっして綺麗な川ではなかった。
いわゆるドブ川で、転落してからの芝居もあり、スタッフ達も奥田さんも、
小さなヒルがたくさんいる川にしばらく入らなければならなかった。
橋の上や川沿いの道には、スタッフ達のほかに多くの地元の方々も
足を止め、緊張の中での撮影を見守っていた。


車は美術監督の日比野氏のもと、芸大生総出でペイントが施された。
超サイケなジミヘンカーの転落の撮影は、人と車の通りが少ない早朝に行われる。
スタントチームのセッティングを見守る中で、緊張感が高まっていく。
予備の車も、スケジュールの余裕もないのだ。

炎天下、本番はみごと大成功であった。
スタントマンが逆さまの車から這い出ると一斉に拍手がおこった。
こういう場合、撮影の成功に感動しているのではない。
スタントマンが無事であったことに対する賞賛の拍手だ。
スタントマンの生還を確認できて、初めて大声でOK!と叫べるのである。

この日の撮影は昼間だけで終了。
夜からは、撮影現場にもなった酒蔵、明鉾でパーべキューパーティが開かれた。
原作者の連城三紀彦氏や、奥田監督と親交のある脚本家の荒井晴彦氏も参加し、
日頃の疲れを吹き飛ばすような数時間がまたひとつ、スタッフやキャスト達をひとつにしていった。



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