撮影13日目 駅、氷屋、風呂



撮影を取材する地元テレビ局のクルー

瀬戸市内にある小さな無人駅。
電車の切符は、ホームへつながる長い階段の前にある
よろず屋のおばちゃんに行き先を告げて買うのである。
大きな川沿いに線路が走り、トンネルから電車が顔を出すと同時に、
奥田さんが乗る自転車がそれに間に合わせて走り出し、カメラは電車と
自転車の併走を追ってパンするという、ギリギリのタイミングを狙ったカットだ。

そのカットを撮影する間、友川と少女がかき氷を食べるシーンのセッティング。
奥田監督の要請で、かき氷屋のすぐ横ではみそおでんの屋台がつくられた。


味付けは監督直伝。暇を見つけてはスタッフが
立ち寄ってつまみ食いするほど馬鹿ウマだった。
中でかき氷を作るご主人の役は美術の右田さん。


左、友川役の奥田瑛二さん。
しかし、右で自転車に乗って芝居している友川は奥田さんではない。
テスト(本番までのリハーサル)はすべて、スタンド・インといわれる代役が演じ、
奥田さんが監督として、カメラの後ろからシーン全体の演出をするのである。
監督兼出演というスタイルの撮影では、しばしばこの方法がとられる。

本番テスト(演技、スタッフの仕事全体の最終的なリハーサル)からは奥田さん本人が芝居をする。
芝居全体として相手役や本人の役作りはもちろん、カメラや照明、録音など、
代役では最終的なチェックがしずらいということがあるからだ。

今作品すべて、友川役のスタンド・インをつとめた
中山さんは、名古屋在住の俳優さんである。

どうですか、調子は

「いやあ・・・もういっぱいいっぱいで・・」

奥田監督にしばしば怒鳴られながら、
一生懸命重要な仕事をこなしていた。

場所は明眸に移り、風呂場の撮影。



風呂場は狭く、カメラは小さな窓の外に設置された。
しかし、撮られた画面は、外から撮影されたようには見えず、映っている空間だけの世界となる。
実際にカメラを設置すると近すぎて芝居ができなかったり、レンズの関係で思うようなサイズでは
撮影ができなかったりする場合に、無理なくカメラを設置することができ、観客にその存在を感じさせない
空間を、撮影現場用語で「引きじり」という。
ちょっと難しかった・・・ですか?

左が「おじさん」
「櫻井さん、お客さんですよ」
は?・・・お客さん・・て?
照明のセッティングをしているときに、僕を訪ねてきてくれた青年がいた。
このホームページの掲示板にも書き込みしにきてくれている大学生の方で、
ハンドル・ネーム、「おじさん」である。

ロケ地の瀬戸市は彼の地元で、夏休みで帰省していたのだ。
市内で撮影をしていることを知っていた彼は、市内中を2時間以上も
捜し歩き、我々の撮影現場にたどりついたという。


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