同じ『王手』のロケで、メインの舞台となる将棋道場として、通天閣地下にある実際の将棋道場
を使って撮影された。 ロケも終盤を迎え、いよいよその道場の撮影も最後の日となった。 仕込んでいた照明機材をかたずけ、飾り込んでいた美術もばらし、あとは制作部さんと 助監督さんが残って掃除をするだけになった。 あとのスタッフは全て宿泊していた旅館に帰り、風呂に入ったり酒を飲んだり・・・ しかし、掃除のために残ったスタッフはなかなか戻ってこない。 「あいつら遅いねえ、掃除大変なのかな」 「いやあ、最後だからみんなで一杯やってるんじゃない?」 しかし、もう12時を回ったあたりで、彼等はげっそりとした顔で旅館に帰ってきた。 「いやー、皆さんが帰ったすぐ後に大騒ぎですよ」 我々が引き上げたほんの2,3分後のことだったらしい。 掃除をしていると、床がじわじわと濡れてきた。 「??」 入り口近くの、飲み食いできるカウンターの中で制作部のひとりがなにやらあわてている。 「は、配水管が・・・」 彼は足元の排水パイプをあやまって踏んでしまい、そこから水が噴出しているのだ。 「すいませーん、排水口ってどこですかあ」 「はあ・・・なにぶん古いですしねえ、わたしらもわかりまへん・・」 見る見るうちに水はたまり、膝下くらいまできている。 残ったスタッフは水をバケツなどで掻き出すのにおおわらわだったというのだ。 そんな騒ぎが続いたにもかかわらず、通天閣の職員の方々は撮影終了の打ち上げパーティーにも にこにこして参加してくれていた。 いい人たちでよかったなあ・・・。 |