水の妖精

先輩のHさんは高校からの知り合いで、さらに三船プロでも一緒に仕事をして、今でもお付き合いさせてもらっている。
Hさんに電話をして話していた時に、「櫻井、おふくろに面白い話を聞いたんだ」と切り出された。
「おふくろが水の妖精を見たというんだけど、信じるか?」
信じるかどうかより、是非とも聞きたい話だった。
「俺が今電話で話すより、おふくろの話をテープにとったから聞きにこいよ」というので、早速Hさん宅へ出向いた。
テープからはHさんのお母さんの声が静かに流れてきた。以下は敬語を略したテープの内容である。

自分はいつも水を使う時には、いつも感謝の気持ちをつたえていた。
お風呂に入る時も、「いつもどうもありがとうございます」と言って入っていた。
或る日、いつものようにお風呂に入ると、なにかがいっぱいいるのが見えた。
羽がついてる小さな人間のかたちをしていて、髪の毛の色や肌の色はまちまちで、そういうのが
そこらじゅうに飛んでいたり、座ったりしている。

不思議だなーと思ったが、別に怖いとは感じなかったので、「ちょっとごめんなさいね」と言って湯船に浸かった。
それからはお風呂にはいると、毎日不思議な小さな彼らがそこにいた。
しばらくすると、彼らの話していることが聞こえるようになった。
「このおばちゃん、私達のことがわかるみたい」「どうして?」「だって、いつもありがとうとかごめんなさいって言う」
もしかしたら話をすることができるかと思って、声をかけてみた。
すると、彼らの中の一人がすーっと、近づいてきて、目の前にこしかけた。
「あのー、何かお話してくれませんか?」
「どんな話しがいいの?」
「何でもいい。知ってることを話してもらえませんか?」

その不思議は小さなものは、昔自分たちがいたというある王国の話をしはじめた。
そして、一通り話すと、
「私達は人間達よりずっと前から地球に住んでる。昔の地球はもっと綺麗だった。みんながおばちゃんみたいに
私達のことがわかるようになれば、もっと綺麗になるのに・・」と言った。
妖精なんておとぎ話や絵本の中のもので、実際にいるなんて考えたこともなかった。

王国の話など、省略した部分もあるが、Hさんのお母さんは別に宗教家ではない。
ごく普通のおふくろさんである。
話をすべて聞いて思うのは、そんな人が自分でつくれる話ではないのだ。
はたして、みなさんは信じることができるだろうか。
僕は信じる。夢のある話ではないだろうか。

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