6月1日  クランク・イン(初日)


初日、赤羽の商店街で撮影はクランク・インした。
主人公がヤクザに追われている女と初めて出会うシーンだ。

  
 
   
主人公の北爪修役の北村一輝さん。 ヒロインの景子役、宮前季依さん(右)

朝7時15分新宿集合。初日から早い・・。
主演の北村君は、同じ望月監督の「鬼火」、「皆月」でご一緒だった。
近年最も注目され、評価されている俳優さんだが、新人の頃から役作りには
真剣に取り組み、作品の深みを生み出せる個性派であった。
ヒロインの季依ちゃんは、これから難しいシーンがたくさん控えている。
最初のシーンでは、走りにくいので裸足で走ってみようかという声に
「大丈夫です!」と力強く言うほど、可愛らしい中に熱いものを秘めた女優さんだ。

真中で空を見上げているのはチーフ撮影助手の西村君。
太陽と雲の様子をチェックしているのだ。
雲が太陽にかかると、光の質も強さも変わってしまう。
本番の間に変わらないか、スタンバイまでどのくらいか、
これからの撮影の流れや全体のシーンとの関係を照らし合わせ、
どのくらいの光の状態で本番にGOサインを出すか・・。
神経の休まる暇がない仕事なのだ。
うなぎ屋さんのロケでは、今日が初めての仕事というエキストラが出演。
出されたうな丼を黙々と食べていた。
「うまいっす!ホントにうまいっす!!」
その他、実際にお店に来ていたお客さんにも出演をお願いした。
撮影中も店は営業しているのである。
うなぎ・・・。イイ匂いだった。

    演技指導をする望月六郎監督
この日の最後は、荒川の高架下での、回想シーンの撮影だった。
ややぬかるんだ地面での喧嘩のシーンもあり、段取りの手違いもあって
時間が思ったよりかかってしまった。
太陽はどんどん沈もうとしている。ただでさえ暗めの高架下は暗さを増して行った。
「ゼネをまわそう、ライトを用意してくれ!」
なんとか撮影したが、お疲れ様の声を聞いた頃にはすっかり夜になっていた。
昼間のシーンを7時半くらいまで撮影していたのだった。
更に、昼間は暑い陽射しを照り付けていた空は、急に激しい雨を降らした。
「撮影が終わるのを待っててくれたみたいだなあ・・。」