6月14日 撮影12日目

北村君の怪我は、傷が残らないような縫い方で8針だという。
撮影再開のこの日、幕張の鳥たちの丘でのロケに、彼は元気に登場した。

主人公のオサムが、少しヒネた目で生きる少女と出会うシーンだ。
海に近い場所の電話ボックスという設定だが、実際にはそこには
電話ボックスはなかったので、美術さんが用意して運んできた。

少女はオーディションで、監督が一目で決定したというだけに、
芝居もさることながら、可愛らしいだけではなく、存在感は将来有望である。

少女が猫を殺すシーンがあった。
猫は本物に麻酔を打ち、グッタリと眠らせる。
茶トラの和猫で、人懐こいかわいい猫だ。大阪から拾った猫を連れてくる
くらいの猫好きの自分としては、気持ちのいいことではない。

「お墓に猫の名前書かなくちゃいけないんだけど、名前どうしようか・・」
監督が助監督に相談する。しばらく考えて、「しっぽな」になった。しっぽが立派だから。
そのシーンの撮影までは「しっぽな」だった猫は、少女によって改名することになる。
「あのおー・・いいにくいです・・」
本番で決まった名前は、「きなこ」。・・・黄色いから。う〜む。

撮影スケジュールは楽ではなく、太陽との勝負をしなければならなくなっていった。
すべて昼のシーンだが、太陽の傾きと共に陽の色がどんどん赤くなる。
最後のシーンはどう見ても夕日の中のシーンだったが、どうにか夜になる前に
予定のシーンは終了することができた。

が、しかし、幕張から門前仲町の甘味屋へ移動して今度は夜の撮影に突入。
ヤクザの親分がヒットマンに撃たれるシーンの撮影。
ヤクザの親分と若頭が団子を食べながら抗争の話というのも、
望月監督独特のカッコ悪さの中の美学の反映されたシーンである。

過密スケジュールのこの日は、ついに電車のあるうちには終われなかった。

現場写真はもうすこしお待ちください