6月15日 撮影13日目

本当は中止になった13日に予定していた海のシーンの撮影。
伊豆方面に、廃船が打ち揚げられている場所があるという。
最初の予定では、実景扱いで、小人数スタッフでいくことになっていた。
しかし、ロケハンは製作部さんがしただけで、芝居があるのに照明が必要かどうか、
判断がつかない場所だというので、結局はほとんどのスタッフが行くことになった。

当日はまだ梅雨のさなかで、天気は芳しくないどころか、悪いと言ってよかった。
現場に到着した頃にも、少しではあるが雨が降っていた。
製作部さんの案内で、監督がまず現場を下見に行った。
どんなところかわからないので、スタッフは機材を運ぶのを待つようにという。

「いやあー、ダメダメ、無理だよ。行けないよ。行ったら人が死ぬね、ありゃあ」
現場は潮が満ちているうえに、悪天候で大荒れだという。
監督のあとから、先に現場に行っていた製作進行さんが全身ずぶ濡れで帰ってきた。
「あいつさあ、もう少しで帰って来れないとこだった。最初は潮が引いてたもんでから大丈夫
だったんだろうけど、取り残されそうになって走ったら転んでやんの。ぎゃっはっは・・」

しかし、撮影できるのはこの日一日だけ。予定を延ばすことはできなかった。
監督が以前、このあたりで撮影したときのことを思い出し、近くに良さそうな場所がある
というので、とりもなおさず行ってみることにした。
今日中に撮らなければいけないのに、時間は刻々と過ぎていく。すがるような思いである。

その場所は、廃船はなかったが、そのかわり洞窟になっているところがあった。
「しょうがないよ。これもいい感じだし、ここに決めよう」

撮影するのは、主人公、オサムの心象のイメージシーンと、大事なラストシーンである。
ヒロインの陽子が全裸で横たわっているカットもあり、洞窟は一目につかないということでも
条件の良い場所だった。雨が多少降ってもしのげるという利点もあったが、幸い撮影する
頃には空も我々の味方をしてくれたようだった。
ちなみに、自分は稀代の晴れ男である。日本映画界のテルテル坊主とも呼ばれている。
どうだ、まいったか。

これでクランクアップではない。
オサムが所属する組の親分の家の撮影がまだ残っているのだった。
長門裕行さんのスケジュールと共に、実はこの僕と、撮影の石井さんが次の仕事の
ロケハンの予定も入ってしまっていることもあり、23日にしか撮影できない。
まだまだ「お疲れ様でした〜!」の声は遠い・・・。

現場写真はもう少しお待ちください