『空中浮遊』1〜羞恥〜

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 ゴンドラが停止してからもう10分くらい経っていた。停止して数分でスピーカーから修復作業を待っている様に指示が出ていたから安心しているけれど、でも海の上でゴンドラが停止しているというのはほんの少し怖い。地上にいた時は軽いそよかぜだったけれど、海風はそれよりも少し強くて、ゴンドラは時折ゆらゆらと揺れてしまう。
「……」
 8人乗りのゴンドラのシートの一番隅で私は所在なく窓の外を眺める…眺めるしかなかった。
 大好きな神津君が同じゴンドラに乗っているのがとても嬉しいけれど、でもこのゴンドラに乗っている女の子は私ひとりである。
 春休み初日、クラスの全員でオープンしたばかりの遊園地に来ていた。仲良しグループで一応行動していたのだけれど、定員の都合で私一人だけ遅れて別のゴンドラに乗る事になってしまった…最初残念で仕方なかったのだけれど、でも神津君のグループと一緒と気づいてほんの少し嬉しかった。とても告白なんて出来ないけれど、一緒に居られるだけでも嬉しい。
 でも…先刻からトイレに行きたくて仕方なくて、私はほんの少し膝を擦り合わせる。
 早くゴンドラが動いてくれないだろうか。

 あれから10分…もう停止してから20分。そろそろ私は我慢がキツくなっていた。でも運行再開のアナウンスはなく、そして海の上で停止しているゴンドラに外部から救助が訪れる様子はカケラもない。
「――槙原、お前さ…具合悪い?」
「は、はいっ!?」
 唐突にかけられた声に私の身体が大きく跳ねる。神津君のグループは男子で楽しそうに話していたから私の様子なんて気にかけていないと考えていたらから、とても驚いてしまう。
「ん。少しそわそわしてたよな…俺達うるさかったか?」
「調子悪いなら窓もっと開けようか?」
「寒いんじゃない?ここ海の上だし」
 クラスの中でも成績のいいグループの神津君達が、神津君が話しかけてくれたのを最初に私に少しぶっきらぼうにだけれど声をかけてくれる。学校行事ではないから私服参加で、春本番というにはまだ肌寒い日にちょっと無理してミニスカートをはいている私が寒そうに見えたのかもしれない。優しいのは少し恥ずかしくてでも嬉しいけれど、でもトイレに行きたいなんてとても言えるものではない。
「だ、大丈夫…調子悪くないから。ありがとう」
 そう言った途端に、私の身体がぶるっと震えた。

 数分後、私は神津君達のジャケットに全身を埋もれされていた。全員が貸してくれたジャケットが温かくて、そして女の子とは異なる男性用コロンや男の子のにおいが少し恥ずかしい。
 そして私のトイレに行きたい衝動はますます強くなっている。
「槙原さ…本当に具合悪いだろ。汗掻いてる」
「誰か薬持ってないか?」
「温かくしてるの逆効果か?」
 クラスの男子にこんなに声をかけて貰うのは初めてで、でもトイレに行きたくて仕方ない私は口を開いてしまうと歯がカタカタ音を立ててしまいそうで言葉を発する事が出来なかった。
心配そうにしている男子に申し訳なくて、でもゴンドラが揺れるたびにその変化で身体からすぅっと力が抜けてしまいそうになる。
「トイレだったりして」
 不意にグループの中で少しお調子者の田中君がそう言った。
「馬鹿かお前っ」
 瞬間的に神津君がツッコミを入れてくれたけれど、でも病気とかの心配を否定したい申し訳なさもあって私は黙っているしかなく……。
「……。え……?」
 耳まで真っ赤になってしまった私の顔を、全員が見ていた。

 少し横長のゴンドラに気まずい空気が流れていた。
 4人掛けのシートが前後2つ並んでいるゴンドラは通路のスペースが狭くて立っている為の場所はほとんどない。2つのエリアに分かれている遊園地を繋ぐゴンドラは4つの支柱で支えられていて、ちょうどその1つに差しかかっているこのゴンドラは前後のゴンドラからは見えなくなっている。
「……」
 ドアから正反対の通路の隅にコンビニの白いビニール袋が上部をくしゃくしゃにまとめた器状にしてある。――その場しのぎの簡易トイレだった。
 先刻から神津君達は極力反対側に詰めてくれていて、そして全員が向こうを向いている。でも狭いゴンドラに女の子は私一人で、そして神津君達は男の子だった。そんな中でトイレをしなくてはいけないのは穴があったら入りたいくらいに恥ずかしい…でも失禁してしまうのと比べればどちらがマシかという話しだった。
 神津君達も何を話していいのか判らないのかずっと先刻から黙っている。気分としては何も音がしない方が困るのだけれど、でもそれをお願いするのも恥ずかしくて出来ない。
 もう我慢は限界だった。とても緊張して膝や歯がカタカタと震える。嫌な汗が全身から滲んで、胸やお尻を伝っているのが判る。
 大好きな神津君の近くで、おしっこをする…恥ずかしくてはずかしくて、死にそうだった。

 せめて幼稚園や小学生ならいいのに高校生の女の子がトイレというのはあまりにも躊躇いがある。でも力を緩めると今にも漏らしてしまいそうで、私は何度も震えながら深呼吸を繰り返す。前後のゴンドラの視界に入っていないのがせめてもの幸運だった。
 カタカタと震える歯の音がゴンドラに響いている気がした。もう限界だった。
 私はミニスカートの裾の左右から手を入れて、下着をそっと下ろす。布が肌を滑っていく音が歯の音と一緒にはっきりとゴンドラに響く。誰かが生唾を呑む音が、した。
 膝まで下着を下ろして私はビニール袋を跨ぐ。
 今ならまだしなくて済む、神津君の前でおしっこをしないでいずに済む、そんな事を思いながらしゃがみこんだ私は恥ずかしくて震えながらまだ綺麗なゴンドラの床を見る。
 でもそんな我慢はすぐに限界を越えてしまうのは判っていた。
 ウチの高校は2年から3年は持ち上がりでクラス替えはない。2年の時に既に進路別になっているから卒業までずっと同じ面子になる…そんなクラスの中の7人の男子のすぐ近くで、おしっこをしてしまう。どんな気持ちとなるとやっぱり彼らも恥ずかしいだろう。罪悪感が押し寄せてくる。言いふらしたりする様なグループではないけれど、でも彼らの中では簡単には忘れられない気がする。こんな形で憶えられてしまうのは不本意でならない。
 見なくてもやっぱり想像はしてしまうのだろうか、いやトイレはエッチとは別かもしれない。
でも着替えならまだしも、至近距離でお尻もあそこも曝け出してしまっているのはいやらしい事に思えてならない。

 どきどきして頭がおかしくなりそうだった。仲良しグループの中では神津君が好きというのは内緒で話してあるけれど、神津君は私の気持ちを知らない。幼稚園の子供がおしっこをしてしまう程度の感覚で受け止めてくれるならいいけれど、でも立場を逆に考えるととてもでないけれど性的な事を絡めないでおくのは出来ない。どんなのだろうという好奇心がこっそりとある。――二人きりならまだしも、ここには他に6人の男子もいた。
「だめ……」
 ちいさな声が漏れてしまった。意図しての言葉でないのに、今にも泣き出しそうな細くて震える声が勝手に漏れてしまう。
「も……だめ…、だめ……ぇ……」
 ゆらりとゴンドラが揺れた瞬間、反射的に力を込めてしまった脚の間で液体が漏れた。
 ぴちゃっとビニール袋に液体が弾ける音がはっきりとゴンドラに響く。
 ぴちゃぴちゃぴちゃと音が続いて、そして連続した音になる。
 白いビニール袋の中に溜まっていく黄色い液体を見ながら、私は泣き出していた。
 私以外の音が、まったくしない。全員の耳に私のおしっこの音が届いてしまっている。
 限界まで堪えていたおしっこをする気持ちよさと消えたいくらいの羞恥心で全身にぶるっと震えがはしった。ぷつんと糸が切れた様に私は泣き出してしまい、涙がぽろぽろと零れて両手の甲で拭って、拭って、でも止まらない。

「槙原、泣くなよ」
 どれくらい泣いていたのか、神津君の声がした。泣き声が聞こえていたという事は当然その前の音も聞こえていたのだろう、そう確信した瞬間にゴンドラが風に揺れた。
「――きゃ……!」
 しゃがみこんでいた私を、神津君達が反射的に支えた。とんでもない格好で転げてしまうよりはマシなのかもしれないけれど、でもミニスカートで膝まで下着を下ろした状態の私を全員が見てしまい、そして揃った様に皆で視線を逸らす。
 見られてしまった。こんな格好を。
 そう思った瞬間、腰が抜けた。本当に腰が抜けるというのはあるんだと思う程あっさりと全身がかくんと崩れかけて、そして神津君達の手がそんな私をどうにか支えている。
「槙原?おーい」
「平気かー?」
「ぃ…っく……ふ…、ふ……ぇ…っ」
 泣きじゃくって答えられない私の身体を、誰かの腕が引っ張った。
「……。ティッシュ持ってる?」
「俺ウエットティッシュ持ってる…けど……」
「槙原ー、おい、槙原さー」
 まるで小さな迷子をあやす様な困った様な声が聞こえてくる。でも涙でぼけた私の目には彼らの様子が映らない。
 不意に、スカートをめくったままの私の身体が両脇から持ちあげられて、そしてシートの上に下ろされた。

「俺、従兄弟のおしめ換えた事ある」
「馬鹿」
 身体がシートの上にあると言っても私の腰はシートの上になく、背中を預けた状態になっていた。そして…足首にまで下着が落ちていて、膝の間が開いたまま私は向かいのシートに向かって脚を開いている状態になっている。両脚や脇の下が誰かの手で支えられていて、腰が宙に浮いたままだった。
 まるで赤ん坊の様に泣くしか出来ない私の下腹部を、誰かがティッシュペーパーで拭う。慣れた動きではなくて、たどたどしい動きでそっとお尻まで拭ってくれているその横で、ビニール袋を縛っているだろう音が聞こえる。男子に後始末をさせてしまっている恥ずかしさが私を更にパニックに陥らせていた。
 拭ってくれているという事は誰かに見られているという事で、そして拭いてない状態で座らせるワケにもいかない私を複数がかりで支えているという事は…きっとあの場所も見られてしまっている。
 ぬちゃっ。
 不意に、いやらしい音がした。
「――や……ぁ…っ」
 啜り泣きが漏れる。おしっことはまるで異なる、いやらしい粘液の音だった。
 ごくっと生唾を飲む音が複数した。
 そしてティッシュが動く。何度も、何度も、繰り返し動いて、そのたびにぬちゃぬちゃと音が沸いてゴンドラに篭った。

 びくんと身体が震える。もう何十回とティッシュが下腹部を上下して…そしていつの間にか私の足首からは両足を搦め取っていた下着が外れていて、徐々に膝だけでなく脚全体が左右に開かれていく。無理矢理ではなくて、自然と、全員の力が自然と入っていって私は両脚を開かれていた。
「……。すご……」
 誰かの上擦った声がかすかにした。
 何枚もティッシュを使っているのに、私は宙に浮かされているお尻までとろとろに濡れてしまっている。おしっこではなくていやらしい粘液が擦られるたびに奥から溢れて、腰が自然と動いてしまう。男の子との初体験は当然なくて、でもこっそりと毎晩自慰に耽ってしまっている私の身体は自分以外の人からの刺激に反応しきっていた。
 全身から汗が滲み出ているけれど、それは体育などの運動の汗とは違ういやらしい牝のにおいを振り撒くそれだった。もうおしっこの分などとうに終わっていて、代わりに拭われているのは私の愛液に変わっている。
 身体が昂ぶっていく程におしっこでのパニックはおさまっていったけれど、代わりに押し寄せてきたのは恥ずかしくて仕方ない性的な混乱だった。
「やばい…よな……」
「……」
 ゴンドラ内を占めているのは異様な空気だった。私の恥ずかしい牝のにおいだけでなくて、男の子達の汗のにおいが混ざっていて、そして先刻の静かさと違うのは…複数の息づかいが聞こえてしまう所である。

 誰がティッシュを使っているんだろう。不意に私はその疑問に気づく。やっぱり神津君と他の男子だと意識してしまう感覚が違う。神津君はこの行為に参加しているのかいないのか、もし参加しているとしたら恥ずかしいし、参加していないのだとしたらどんな様子なのかこんな状態になってしまっている私をいやらしい奴だと蔑んでいないのかが不安になってしまう。
「……っ…ぅ……、ぁ……」
 声が漏れそうになっていた。どんどん身体が熱く火照っておかしくなっていく。服の下も剥き出しになっている下半身も汗で濡れていて、腰の奥からもどかしい切なさが込み上げてくる。このまま続けられると声が出てしまう、自慰では指一本だけこっそりと挿入している膣がひくひくと蠢いているのが自分で判る。クリトリスと膣口の間を執拗に往復しているティッシュの刺激は堪らなく焦れったくて、もしも自分一人だけならこの場で自慰を狂った様にしてしまうだろう。
「槙原さ…こんないやらしい顔するんだ……」
「意外だよな…すっげぇ……」
 小声の上擦った囁きにぞくっと腰から背筋に妖しいモノがはしる。大勢の腕で支えられながら自分ではどうにも出来ずに身体をくねらせてしまう私のいやらしい姿を、見下ろされていた。これから1年間クラスで顔を合わせる男の子達に。
 恥ずかしさに閉じていた瞳を開けた私の視界に、私の上半身を抱えていれている男の子の顔が映った。先刻から私のブラジャーの脇をたまになぞる指の主。
 神津君だった。

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投稿2005/03/25(金) 21:00:17〜21:43:45

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