気まずいでも好奇心が抑えられない、そんな様子の神津君の表情を見た瞬間、私の身体ががくんと震えた。見られてる。こんな姿を、神津君に見られている。
腰が通路の上で宙に浮いている私の体勢は不安定で、両脚は恐らく4人がかりで抑えていて、そして両脇に座っている2人が左右から私の上半身を抱えてくれていた。全員がただ抱えているのではなくて、時折悪戯を何気なくしてしまっている指がある。ティッシュで拭っている指は愛液を拭うだけでなくて襞の一枚いちまいまで捲って擦っているし、脚を抱えている手も感触を確かめる様に掌が動いていた。
そして、神津君の手は片腕で私の脇の下を持ちあげて、そしてもう一方の手が…多分他の人の視界に入らない場所で、たまに何気なくブラウスの上からブラジャーの線をなぞっている。
いやらしくて不愉快に思っているならそんな行動はしないだろう。嫌われてしまう可能性が薄れたと同時に、神津君がこの状況でえっちな気分になっているのだと判った瞬間、全身が熱くなった。
「――ぁ……んっ…!」
声が漏れた。鼻にかかった甘える様ないやらしい声。よりによって神津君の顔を見ながら、私は鳴いていた。
ごくっと誰かの生唾を飲む音がして、そして身体を支えている全員の手に力が篭るのが判った。
「……。だよな……」
「ん……」
男の子達が何か探っている様な意味不明な囁きをしていたけれど、私はそれに耳を傾ける事も出来ずに振り払えない甘く切ない刺激に軽く首を振る。ずっと沸き立ち続けている愛液が掻き混ぜられている音は、私の下腹部が弄ばれ続けている事を意味していた。
混ぜられ続けている愛液がお尻の窄まりも剥き出しのお尻もぬるぬるにしているのが判る。胸も背中も全身がむずむずと甘くもどかしくて、身体をくねらせる事を抑えられない。
「あ……っ、あふ…ぅ……っ…あぁん! ぁ……ぅ…ん……っ」
神津君の恋人になれたらいいなと密かに思っていたけれど、でもキスくらいを想像してみてもまだ男女交際らしい事はしていない私には、それは曖昧な甘いイメージでしかなかった。神津君とえっちを想像しての自慰までには到底及ばなく、ただ自分の身体の気持ちよさに耽ってしまうだけ。それなのに、神津君に見られながら私は今他の人の指で弄ばれていた。――それなのに神津君にされている様な錯覚に私はとらわれている。
「――っ……はあっ!あうんっ!」
急にクリトリスをティッシュ越しに摘ままれて私の身体が激しく震えた。自慰では怖くてとてもそんな事は出来ないけれど、お風呂で洗っている時に強く擦ってしまう事はある。飛び跳ねてしまいそうな強い刺激はしばらく残って、それは自慰のこっそりと耽る気持ちよさとはまったく異なる。でもじんじんと充血した様なその刺激が引いていく時間は何だかとても熱くて気持ちよかった……。
私がいやらしい声をはっきりと漏らしてしまった瞬間から、ゴンドラの空気は更に変わっていった。
「ん……ふっ!ぁ……はぁん!くぅ……ん!あぅん、あん……っ」
まるで実験動物の様に私の反応が引きずり出されていく。誰も私の助けようとせず、そして私もそれを止める事が何故か出来なかった。一度踏み外してしまった階段を危うい調子でつまずきながら降りていくのに似て、誰かが止めに入れば終わりそうなのに誰もそれを止めずに勢いだけが増していく。
指が増えていた。
愛液まみれの私のお尻を誰かの手が撫で回して、私の脚は左右に限界まで広げられていた。
徐々に上げられた腰は肩より上の高さになっていて、私のミニスカートはウエストの辺りまで捲れ上がり白い腹部までゴンドラの中の暖かな日差しに晒されていた。
「うわ……毛、薄ー……」
「襞小さいな…」
どんなアダルト本と比べているのかいろいろと言ってる声が小さいのは、せめて私に必要以上の屈辱感を与えない為なのかもしれない。下品で侮蔑する様な声だったら逆上出来るのに、本当にそれが好奇心とわずかな気後れを含んでいるものと判るから逆に私は彼らに抵抗出来なかった。――自分以外の指の気持ちよさと、ここで責めてまるで陵辱の被害者の様なぎこちない状態になってしまう事が怖かった。
きっとゴンドラがもうすぐ動きだして皆気まずさを誤魔化して…それで終わる。そんな願望と複雑な気持ちの混ざった想像をしている私の身体が少し引き起こされた。
ほとんどシートから落ちかけていた身体を戻され、そして4人掛けの長いシートの中央に移動する。この状況に参加していない男の子は一人もいないのに私は気づく。グループでこういう事をしているのだから、ノリが違っていて内心引いていても流されてしまうものなのかもしれない。
「あ…ふぅ……っ!ゃ……っ!だめ…ぇっ、ひ……ゃんっ!」
ぬるっと指が膣内に滑り込んできた感触に、私は反射的に初めて意味のある言葉を口にする。自分の指1本だけしか挿れた事がない膣に、男の子の指が入ってきた。私の指より長くて太くて、一瞬処女膜が傷つけられないかが怖くて身体が竦む。それなのに他の指にクリトリスを擦られて身体ががくんと震えた。
「指までしかヤバいかも……」
「……。処女?」
「指で判るかよ。――何となく」
私の言葉に気づいてくれたのか、誰かがそう言う。指が挿入された瞬間にこのままおかしな具合になってセックスにもつれ込まれたら怖いと思ったけれど、でも流石に理性があるらしい。この状態は何かに似ていると思ったけれど、それが不意に頭に浮かんだ。痴漢。あれに似ている。やり過ごせばいいだけの…でも、私はどうしても神津君を意識してしまう。
脚は皆に固定されているけれど腕は塞がっていない私は、自然と宙に半ば浮いている状態が怖くて縋り付いていた。バランスの悪さのせいにして、私は神津君のシャツをぎゅっと握る。教室では到底出来ない事だった。
膣内に指を挿れられて、複数の手が私の下腹部を撫で回している。柔毛の感触を確かめたり、悪戯をする様にクリトリスの皮を引っ張ったり、襞を左右に開いて伸ばしているのが潤みきって滲んだ視界に映っていた。過激なTVドラマの濡れ場の様ないやらしい光景はどこか他人事の様なのに、もたらされるたまらない甘い疼きに私は卑猥に腰をくねらせ、跳ねさせ、牝の声で鳴きつづけてしまう。膣内に指が挿入されているのに。
私の身体だけが動いてしまっていてしばらく経ってから、ゆっくりと確かめる様に指が動きだす。
「目茶苦茶狭い」
ぬちゅっといやらしい音をたてて私の膣を指が往復しはじめた。
「はぁ…ん!あ……っ、あひ…っ、やぁ…あ……やぁん!あ…ふ……っ!」
自分の指だと挿入してみるのが精一杯で他の場所をいじる事などなくて、複数の手で下半身を弄ばれながら膣をせめられる刺激に私の身体は嫌なくらいあっさりとそれに溺れてしまいそうになる。クラスの中でも小柄な私の中指は彼らの小指よりも貧弱かもしれない。だから挿入された指は私の指よりも絶対に太くて長い。そんなモノがいたわる様にだけれど、しっかりと挿入されて、そして膣を掻き乱していく。
「うわ……生々しー……」
まだ処女の私の下腹部が男の子達の視線に晒されて、そして指が愛液まみれになってつけ根までずっぷりと埋められて、そして引き戻されていく。
不意に私のブラジャーの線をなぞっていた神津君の指がブラウスのボタンに延びた。
「ぁ……ぁん…っ、や…ぁ……神津…くぅん……っ」
確かに膣内に指が挿入されてしまったけれど、でもそれはおしっこの延長線上と言えなくもないと思う。下着は下ろしてしまっていたし、そこが濡れていて拭いて貰ったのだから、男の子の悪戯心が少し働いてしまったと弁解出来なくもないだろう。でもブラウスがはだけるのはそれとは別の段階だった。それがよりによって神津君によって行われている。
昇りきったと思えた頭に更に血ががんと押し寄せてきた。
どこか危なっかしい手つきで私のブラウスのボタンに手を掛けた神津君の指が、一つまたひとつブラウスのボタンを外していく。悔しさでなく切なさで滲んだ視界の中で男の子達が少し顔を見合わせているのが判る。こんな事をしてしまう事に躊躇いがあるのだろう。私だってこの展開には躊躇い…いやもう少し強い羞恥心と道徳心の抵抗がある。
遊園地のゴンドラの中で、クラスの男の子達に靴下と靴だけしかない下半身を弄ばれて、そして今上半身もはだけさせられようとしている。直前までこんな事になるなんて想像もしていなかった。それも…、大好きな神津君が、私のブラウスを脱がそうとするなんて。
「わ…意外と胸あるし」
「反則だろ、これ」
どうしたものか中学時代から胸以外は少しも成長してくれない私の身体は、腕も脚も腰もまるで子供の様に貧弱だった。栄養を与えられたぷくぷくとした子供のそれではなく、必要最低限の筋肉と脂肪しかない様なひょろひょろとしたそれである。それなのに、肋骨が浮かびあがってしまう少し骨張った貧弱な身体なのに胸だけは大きくなってしまっていて、身体にフィットした服を着ると男の人は大抵胸に視線を容赦なく注いでくる。
私はそれが嫌で大きめの服を着たり上に重ね着をしていたのだけれど、春物のボレロとブラウスの前を開かれ、不釣り合いに大きな胸を彼らに見られてしまっていた。
貧弱な身体と同じくらいに嫌いな、淫らがましいいやらしく揺れる胸を。
大振りな桃の様な胸にお気に入りの水色のブラジャーがぴったりと貼り付いているけれど、指が膣内をくちゃくちゃに掻き混ぜるたびに勝手にくねってしまう身体にぷるんと卑猥に揺れる。神津君は私の事を特別に思ってないんだろうな、と何となく感じる。少なくとも好意を持ってる相手ならば率先して他の男の子の前で服をはだけさせたりはしないだろう。
ブラウスをはだけさせられても抵抗しない私の様子に、少しゆっくりとしていた膣内の指の動きがまたはっきりとしたものへと変わっていく。
「だんだん柔らかくなってきた…かな」
「……、俺も挿れてみていい?」
「注意してな」
卑猥な音をたてさせて膣内を指で蹂躙している指がぬるりと引き抜かれ、その代わりに数秒と待たずに次の指が私の膣に潜り込んできた。
「ひ……ぁ…んっ、ぁ……うぅ……っ」
「う…わ……、あったかー……」
「何、お前初めて?」
「うるさいな…すげ、中でぐいぐい波打ってる……」
「俺もさ…挿れてみたい、いい?」
ざわめきが増していく。クラスの男の子達が共通の娯楽の様に私の膣内の感触を楽しんで、代わる代わるに膣に指を挿れて、そして擦って容赦なく身体を弄ぶ。自分の身体におきてる事であるのが嘘の様で、それなのに私は休みを与えてくれないその刺激に為す術もなく反応するしかなかった。
「は…ぁん!あんっ!あぁ…んっ!んっ、んっ、んふ…ぅっ!」
海風でゆっくりと揺れているゴンドラの中で、私の身体が揺れる。膣内を掻き回される…と表現するにはまだまだ恐らく気遣っては貰えているだろう、指1本の抽挿に私は抑える事も出来ずに甘い声で鳴き続けていた。もしも膣内の指だけならセックスの経験した事もないのだからこんなに乱れてしまう事はなかっただろうけれど、でも6人がかりで下半身を責め立てられしまう信じがたい同時の刺激に、私は堪える事も出来ずに性的な反応を引きずり出されていく。
そう、6人。膣やクリトリスを弄んでいるのは6人で残る一人…神津君は、ずっと私の上半身だけを弄んでいた。
ホックを外されてだらけたブラジャーからは両方の胸がこぼれ、神津君は私を背後から抱きかかえたままずっとそれを揉んでいる。私の胸に最初に触った異性が神津君である事がたまらなく恥ずかしく…そして切なくて少し嬉しいのは理性がおかしくなっているのかもしれない。他の男の子は皆下腹部への悪戯で盛り上がっているのに、神津君は私の胸を両手で揉みしだいて、乳首をゆっくりと指の間で捏ねまわして、そして何気なく…首筋にキスをする。
あんまり膣とかに興味がないのかもしれない。私の発育が人並みなのは胸くらいだから他は物足りないのだろうか。胸を自慰で扱う事はほとんどなくて、神津君の手つきは丁寧でまるでマッサージの様に火照って桜色に上気した胸に汗を擦り込んでいく。
気持ちいい。――きゅっと乳首が尖って、神津君の手が捏ねるたびに胸がぴりぴりとして、私は上半身も下半身も気持ちよくて、おかしくなっていく。
乱れているのは私だけでないのはずっと感じていた。男の子だって女の子の性器を弄っていれば身体が無反応ではいられないのだろう…ぼんやりと見てしまったズボンの前は皆大きく膨らんでいる。
「槙原…お前、つき合ってる男いる?」
不意に神津君に聞かれ、私は反射的に首を振った。初恋が神津君なのだから誤解されたくなかった。私の身体を代わる代わる弄んでいて小声でやりとりをしていた他の男の子の声がぴたりと止んだ。
「う……、ううん……」
「セックスした事は?」
「ゃ……、な……ない…の……」
「処女か…じゃあ、こんな風にされるの、は?」
ほんの少しだけ神津君の声音が楽しそうに思えて私は恥ずかしくなる。男の人に変な事をされるのは痴漢くらいで、でも自転車登校の私は痴漢の出そうな電車など数えるくらいしか乗った事がない…でも何度かはそれの被害にあっていた。
「ち…痴漢に…ほんのちょっとだけ……」
「――好奇心は?」
神津君の問いに、他の皆の意識が集中しているのが嫌という程感じられる。えっちな事への好奇心は、この場ではセックスの合意と受け取られてしまうだろう……。
「……、でも…、で……でも…怖い……」
YESともNOともつかない私の言葉に、神津君の口の端が少し吊り上がった。
「槙原、オナニーは? した事あるだろ、すぐにあんなにぐちゃぐちゃに濡れたもんな」
「はぅ……っ、やぁ…っ、いやぁ……そんなこときいちゃいやぁ……っ、あふぅ…んっ、あうんっ」
神津君の質問は徐々に尋問の様になってきていた。
恥ずかしくて聞かれたくない事を既に推測した上で訊いてくる。決してヒステリックでも下品でもなくまるで明日の天気を訊く様な何気なく穏やかで、そしてとてもいやらしく性的に私を暴いていく質問。
そんな私と神津君のやりとりを、無言で聞きながら他の男の子達は神津君の尋問に協力して…私の身体を責め立てる。お尻を揉まれて、クリトリスを捏ねられて、膣奥を指の腹で擦られて、脚を、腹部を撫で回される。
「ほら、答えて」
「ひ……ぃ…んっ、や……ぁん…っ……ぁ…う…、し……してる……の…ぉ……っ」
「頻度は?」
「はぅんっ!あ…あひっ……だめぇ……っ…、あっ、あっ、ぁ……あ…ん……ま…まいにち…まいにちしちゃ…う……の……、いゃ……ぁ……」
誰かが小さく口笛を吹いて、そして誰かが小さく掠れた呻き声をあげた。
進学校の理数系クラスで目立つ方ではなく少し引っ込み思案な所のある私が、クラスの男の子達に自分の性癖を訊かれるままに答えて見悶えしていた。あと1年同じクラスで、教室で見かけるたびに彼らは今日を思い出すのだろうか、自慰の回数、自分で慰めている場所、何回達したらその日は満足するのか、何か道具は使うのか。
「槙原…結構エッチ好きなんだな。意外」
乳首をきゅっと摘まれながら神津君に耳元で囁かれた瞬間、全身が震えて私は膣内の指を何度も何度も繰り返し締め付けてしまっていた。
処女は初めての時に達してしまう事はまずありえない、そんな話をどこかで読んだ気がする。でもそれが指だったら、7人がかりで同時に弄ばれてしまったら、それは条件が異なってしまうだろう。だから、だから…仕方ないのだ。
「あ……ふぅ…んっ!ひ…ぁっ、ひ……んっ、あぅんあぅ…んっ、あ…ふぅっ!」
初めて、神津君の指が入っていた途端に私はもう何度目か数えられない軽い絶頂に押し上げられて鳴いてしまった。
「な…? イってるだろ」
「――だな」
もう全員の指が私のいやらしい痙攣を味わっている。火照りきって汗にまみれた私を全員が見下ろしていた。
まるで共有物の様に全員で私を玩具の様に弄んでいるのに、何故か私はそれに抵抗する意識を芽生えさせる事が出来ない。おしっこを見られてしまった事で気後れしてしまったのかもしれない…性的な玩具になる事はとても許し難い事なのに。でも、まるで飼い主に躾られるペットの様に私は彼らに従ってしまっていた。
田中君に素っ気なく答えながら神津君が私の膣内で指を動かす。
「はぅ……っ、はぁ…ん……あ…ふ……ぅっ……ぁ……ん……」
快楽の余韻に全身をくったりとさせながら私はほんの少し戸惑っていた。他の男の子に乳首を吸われて、もう一方は滅茶苦茶に揉まれて、神津君の悪戯で愛撫に目覚めてしまった胸はたぷたぷと揺さぶられるだけで妖しい感覚で疼いてしまう。でも、神津君の手や口でないのに同じ様に反応してしまうのが、どこか淋しかった。
《ご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ありません。現在ゴンドラを点検しておりますが、修復には1時間ほどかかる見込みになっております。駅付近のお客様はハシゴ車にご案内させていただきますので、今しばらくおまちください》
不意に始まった放送に動きを止めていた全員から、その所要時間を聞いた瞬間に奇妙な息が漏れた。失意とは違う、悪事の共犯者が漏らす安堵の息。
「あと1時間、だってさ」
「合計2時間弱か…ニュースになるな」
ゴンドラの駅は陸上にあるからハシゴ車での救出が可能だろうけれど海上のこのゴンドラはそうはいかないだろう。エレベータと異なり一つひとつにインターフォンなどついていないゴンドラは、上部スピーカーからのアナウンスを頼りにするしかない。あとは携帯電話だろうが、残念ながら私は携帯電話を持っていない。
「……。あと、1時間かぁ」
誰かの呟きの後空気が気まずく止まった。全員の手が私に触れていて、そして私は他の人によって与えられる底なしの快楽に逆らう事など出来ずに、乱れた呼吸を繰り返しながらぴくぴくと身体を震わせてしまう。
高校2年の男女の性的欲求は底なしなのかもしれない。でも乱れたこの場の空気でセックスへと流れていかないのは私への最低限の気遣いと、仲間内での戒めと、そしていつ回復するか判らない時間的問題があっただろう。でもその一つが、今消えてしまった。
誰かが口を開いてしまうのを待っている、暗黙の了解の様な次の瞬間にも崩れてしまいそうな空気がゴンドラに流れる。消えたくなるくらいに濃密な牝の匂いと、そして男の子の汗のにおい。
先刻から時折、誰かの手がジーンズの上から私の手をそれにこっそり当てているのは判っていた。一人ではなくて、恐らく全員が、そしてお互いにそれを気づいている。
「――槙原」
呼ばれて、私の身体がぴくんと震えた。
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『空中浮遊』3〜挿入〜
投稿2005/03/27(日) 10:23:06〜10:46:12