『媚熱空間』前編〜In Train〜

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 カタンカタンと軽快なリズムで電車は鉄橋の上を駆け抜けていく。狭い土手に菜の花がびっしりと咲いていて春の日射しが気持ちよさそうだったけど、まだ肌寒い日もある為なのか電車内の人はコート姿が多かった。
 背の低い私の視線では通勤客の成人男性の顔や頭など顎を突き出す状態にしないと見えず、ただ目の前にはコートばかりの光景。でも今日はドアに貼り付く状態になっているお陰で車外の風景を眺められて少し気分が晴れる…けれど、満員電車の圧力は容赦なく私を金属とガラスに押しつけていた。
 川を越えてもう少しで降車予定の駅という所で、電車の速度が急に落ち、そして止まる。
 過密ダイアなのもあって電車が一旦停止する事は珍しくもなく、最初は静かだった車内が一分を過ぎた頃からざわめき始めた。満員電車なのに携帯電話のボタンを押す音がし始めて、通話まで始めてしまう人もいる。
 まだ八時前で、駅から学校までは徒歩十分もかからないから私は登校時間に間に合っても、遠くに通勤する人にとっては大変なのかもしれない。ドアに押しつけられた状態で私は瞳を閉じる。頬にあたるガラス越しの日射しがほんの少し暖かくて気持ちがいい。
《ただ今、**駅にて人身事故があった為電車が止まっております。お客様にはご迷惑をおかけしますが、少々お待ち下さい》
 流れた車内放送に私の身体が思わずびくりと揺れてしまう。故障などの為に止まった交通機関というものに、私は少し精神的外傷の様なものを持っている。いや外傷とは少し違うかもしれない。
 私は春休みの二日間、同級生の性的な興味と実践の対象になっていた。いや、抵抗をしなかったから和姦というものなのかもしれない。苛めなどではないけれどどうしても彼らの言われるがままになってしまうのは…今私を見下ろしている背の高い同級生に恋愛感情を抱いている為だった。

「――しばらく止まるかな、これは」
「多分ね。人身だから」
 あっさりとした口調で話す同級生達の声を聞きながら、私は急に速まって収拾がつかなくなってしまっている動悸を何とか整えようと深呼吸を繰り返す。
 今日は始業式で私が彼らと会うのは久しぶりだった。――春休みの一回だけの過ちだったのかもしれないという考えがお互いにあるのか、いつ呼び出されるか緊張していた私は思わぬ肩透かしで安堵して、そして不安でもあった。
 事の後で彼には思いを伝えたものの、彼は私の事を少し気に入ったらしい発言があっても両思いとは到底言えない状態での春休みはいろいろ考えるには十分過ぎた。輪姦嗜好があるらしい彼でも、友達にも抱かれてしまった私を不快に感じてしまったのではないか、厄介事として避けられてしまうのではないか。そういった不安は、駅の改札で何気なく私を待ってくれていた姿を見て氷解して…そして穴があったら入りたい気恥ずかしさへと一気に変化してしまった。
 ドアに押しつけられた状態になっても潰れずに済んでいたのは、彼とその友達が私の為に壁になっていてくれたからである。私の思い人である神津君とその友達の佐々木君…二人とも私の初体験の相手だった。軟派な雰囲気ではないものの長身で人目を引く神津君と男子としてはやや小柄で大人しそうな佐々木君の二人を駅で見た時から、実は身体の奥がざわざわしていてどうも落ち着かなくて、一緒に居づらくて、でもはしたない嬉しさが込み上げてくる。
「……。槙原」
「え……? あ、はい」
 身長差が三十センチ近くあるのに至近距離で密着している場合、神津君の胸板の辺りに私の顔があるから顔を見あげて話をするのは少々つらい。上目遣いで見上げるとこちらを見下ろしている様子でもない顎と口元が見えた。
 改札でも「行くか」と短く声をかけられただけだったから、こうして声をかけられるとどうすればいいのか判らない。――でも、身体の奥がどくんとうねる。

 身体を斜めにドアに押しつけていた私の正面に長身の神津君、隣に佐々木君がいて満員電車の圧力から庇って貰っていて、だから私の身体は二人に接触していた。ほんの少し神津君が首を傾けて私に覆い被さる形になる。
「――顔が赤い」
 とても小さな声での囁きは佐々木君と私にしか聞こえないレベル。でも私の状態が彼らに把握されているという意味では短い言葉だけで十分だった。思い人を含めてだけど大勢から一気に快楽を身体に教えこまれてあられもなく乱れまくってしまったのだから、たった半月ぶりの再会で普通の顔などしていられる筈がない。
「……」
「ドアの方、向く?」
 どう答えていいのか判らない私に神津君が小声で問いかけに似た言葉をかけてきた。窮屈だから身体の向きを変えた方がいいという意味ではないのは判っている。多分、大勢の人が乗っている電車の中でしてはいけない事をされる…そう感じて私の全身がぼぉっと熱を帯びてくる。
 少しだけ戸惑った様な表情で神津君を見上げてから佐々木君が憐憫に似た表情で私を見る。断ってもいいんだよと口が動いて囁きよりも小さな声が私に届く。
 流されての行為だったからあの時は仕方なかったとして、でもここでいやらしい事をしてしまうともう言い訳が出来なくなる。私は神津君の、そして多分佐々木君や他の男子の性的な玩具になってしまうだろう。
 電車に乗ってからぴったり合わせていた膝が小刻みに震える。その上で、細い紐が貧弱な腿を撫でて揺れる。
 小学生の様な貧弱な身体なのに胸だけは大きな事がコンプレックスになっていた私は、サイズ的に仕方がないブラジャーは諦めていても、下着だけはせめて可愛らしいものをつけていたかった。でも、今つけている下着は左右を紐で結ぶだけの卑猥な下着である。そう、始業式だから、私はこんな下着をつけていた。
 彼らと、再会する日だから。

 夢遊病の様な動きでゆっくりとドアに向いて、私は両手をガラスに添える。
 二人に隠された状態でほんの少しだけ悪戯されるだけだと判っていても、胸がどきどきして床に足がついていない気がしてしまう。
 百五十センチしかない私の場合は電車通学で痴漢が多いと言っても実際の被害は少ない。身長が小さ過ぎて成人男性が玩具にするには手の届く範囲が少ないからだと思う。それでも背中や胸を触ってくる人は決して少なくない…でも下半身に手が伸びてこないから普通の女の子より被害はましだろう。
「――え……?」
 校則ぎりぎりの春物の白いコートのボタンへと伸びた神津君の手に、私は呆然とする。コートの上から触るだけだと考えていたから事態が飲み込めずにいる間に、私のコートのボタンは加勢した佐々木君と左右から外されてしまい、そしてそれはブレザーのボタンにまで及んだ。
 ガラスに私の姿が半透明に映っている。左右から男子の手でボタンを外されて、ブラウスとリボンが四月上旬の日差しの中、露になって、そして……。
「ぁ……っ」
 胸がゆっくりと揉みしだかれる。
 満員電車で庇う体勢のまま、神津君の手が私の胸をブラウスの上から最初はゆっくりと優しく、そして徐々に掌全体と指をいやらしく膨らんだ胸に食い込ませ、手首から先を遣って大胆に捏ねまわす。車内の人には見えないけれど、でも窓の外にははっきり判ってしまう状態で。
 各駅停車と急行の線路が併走している駅の周辺は、線路沿いの道と線路の間に広告の看板と背の高いフェンスが間を遮っている。線路沿いの道はオフィスビル群や私達の学校への通勤通学路で八時近い今は人通りは決して少なくない。
 たった十メートル足らずの距離に人が行き交っている場所で、ガラスに向かった状態で胸を弄ばれているのに、拒む事が出来ない。
 熱い息が漏れそうになって俯いた私は、佐々木君の手がスカートをゆっくりとたくしあげていくのに気づいた。

 駄目。
 二人だけに届く様に抑えきった声でお願いする私を神津君は無視して、そしてブラウスのボタンに手を伸ばした。通学路の前で胸を揉みしだかれるだけでも眩暈がするのにこれ以上エスカレートさせていく神津君が少し怖いのに、私の身体は勝手に火照っていく。
 大勢で目覚めさせられた私の身体は自分で慰めるといつも物足りない虚しさだけが残っていた。私を目茶苦茶にする人がいないと満足出来ない。淋しくて仕方がない。触って欲しい。――神津君に。
 びくびくと身体が震える私を甚振る様に胸元のボタンを外していく神津君を意識しながら、腿がコートとスカートの中の温かな空気から車内の生暖かい空気に露出していくのを感じる。長身な神津君は胸を弄ぶのがちょうどいい高さで、そして小柄な佐々木君は少し屈めば十分に私の腰に手が届く。器用にスカートをたぐり寄せていく手が、膝丈のスカートの裾を持ち上げた。
 引き攣った吐息が漏れる。
 誰も他の人がいないあの日の密閉空間とは違う。神津君と佐々木君の後ろには大勢が電車が動くのを待っている満員電車は人の気配に満ちていて、電車の走行音がしない代わりに些細な雑音だけが世界を占めている。学校や会社に向かう人達の群れの空気は無秩序な筈なのに奇妙に揃ったベクトルが発生していて、待たされている人の集団の場を作り出していた。その中で、いやらしい行為は場の空気の中で酷く逸脱していて、いつ気づかれてしまうか不安で仕方ない。
 駄目、許して。お願い。
 神津君の希望を断るなんてしたくない。それでもいくら何でも満員電車の中でこれ以上大胆な事をされるのは堪え切れなくてお願いした私の正面のガラスの中で、ブラジャーのフロントホックが外された。

 ぞくんと全身に震えがはしる。信じられなかった。顎が小刻みに震えて大きく瞳を見開いてしまう私の視界に、通りを行き交う人達とガラスに映っている露になってしまった私の胸の谷間が映る。
 第二ボタンから第四ボタンまでが外されてしまったブラウスは、私のみっともない胸の膨らみのせいで突き上げられている布が左右に分かれて菱形に開いていた。胸元から胸の下まで肌が剥き出しになってしまったそこにはブラジャーはない。
 泣き出したい気持ちになって俯く私を宥める様に神津君の手が菱形の空間に潜り込む。
「――あ……っ」
 もう尖りきってしまっていた乳首を神津君の指が捏ねた瞬間、狭い空間で私の身体が跳ね上がる。ブラジャー越しでは感じられない男子の指の少し硬い感触がたまらなく卑猥で全身が粟立ち、そしてじわりじわりと甘く弛緩して溶けていく。
 この冬までは自転車通学の範囲内だったけれど、自転車通学希望の生徒数と駐輪場の確保の問題から範囲が狭まってしまい私の住んでいる地域は自転車通学禁止に切り替えられてしまった。
 つまりは、私にとっては地元で、そんな場所で男子に胸を愛撫されている姿を晒すなんて到底耐えられない。それなのに…半月ぶりの神津君の手が甘くて少し乱暴でぎこちなくて好きで、本当に好きで、私ははっきりと拒む事が出来なかった。
「持って」
 短い言葉の後にたくし上げられ差し出されたスカートを思わず受け取ってしまってから、私は佐々木君を見る。
 クラスの中でもあまり目立たない男子で、それまで私もあまり彼の事は知らなかった。――媚薬、バイブレーター、拘束具…大人しくて優しげな風貌に似つかわしくないハードな道具好きな要注意人物で油断がならない。決して無視出来る人ではないと判っているのにどうしても神津君へ意識が向いてしまって、そして後悔する事になる。

 自分は何をしているんだろう。非現実感で床とドアが揺れている錯覚に襲われながら、私は両手でスカートを持ち上げたまま乱れた呼吸を繰り返す。
 窓の向こうでは明るい日差しの中同じ制服の男女や会社員達が楽しげに、つまらなそうに、歩いていく。私もあの中に溶け込む筈だったのに、停車した電車の中でスカートを持ち上げたまま胸を直接揉まれて、そして下着の紐の先で習字の様に腿を撫でられていた。ぞくんと全身が震えて頬が火照っていくのが判る。
 長身な神津君は角度的に私の胸が見えてもスカートの下がどうなっているのか見えないだろう。神津君に見られたらどうなるのか…そんな事を何度も考えていた下着なのに、彼に見えない位置で弄ばれるのが少し嫌で、切ない。でも複数プレイが好きな彼にとってはこんな事も愉しいのかなと考えると佐々木君の動きすら神津君の延長に思えてきて、身体の歯止めが利かなくなりそうになる。
 とろりと身体の奥から愛液が溢れるのが判って、ちらっと見下ろした私の視線の先に、電車の窓のガラスに映るピンクと白のストライプの下着が映った。目の高さからの反射でガラス面より下が映っているだけと判っていても、実際に見えてしまうと恥ずかしくて仕方ない。
「やっぱ……り……」
 やめて、と言いかけた私は視線をあげて佐々木君の後ろのサラリーマン風の男性がこちらを見ているのに気付く。神津君達にはない青いヒゲの剃り跡の上で口が動いた。
「このエロガキが」
 長身の神津君は他の人達から私の姿を隠す壁になってくれても、私より少し身長が高いだけの佐々木君では私の身体を隠しきる事は出来ない。ほんの少しだろうけれどガラスに映っている私の異変に気付くには、それは十分なのかもしれない。
 蔑む様な、でもいやらしいものを見る好色なその視線に反射的に蹲りたくなる…のに、気持ちを裏切る様に身体がびくびくと震えて、そして下着に愛液が染み込んで、私の視界の隅で下着のピンクが濃い色に変わっていく。

 見知らぬ男の人の声は呟き程度の大きさで、周囲の他の人達に私達の行為を教える為のものではなかった。でも他の人に知られてしまった緊張で私の膝が大きく震え出してしまう。
「て……る…っ、み……見てる……のっ」
 抑えていいのかはっきり言うべきなのか迷いながら、ちいさく首を振って私は神津君と佐々木君にお願いする。私の落ち着きのない視線と短い言葉で意味が伝わったらしく、ガラスの向こうで二人が視線を交わし、そして佐々木君が鞄を足下に落とす。
「槙原さん、乗って」
 壁になってくれるなら佐々木君の方が鞄に乗るべきだと思うし、人の鞄を踏むのは抵抗があった。それに従ってしまうと続行に同意してしまう事になるだろう。神津君の言葉ならまだしも佐々木君からの言葉は私には強制力が弱くて、私は首を振る。
「槙原」
 神津君の声に私はぐっと唇を噛む。
 恥ずかしさで真っ赤になった頬が熱くて泣き出したいのに、それが神津君の要望なら何でも聞きたくなってしまう。そんな自分がとても馬鹿に思えてくる…でも神津君を酷い人だとか悪い事をさせようとしていると少し思う瞬間があっても、悪戯や淫らな責めのレベル程度にしか感じる事が出来ないのは、惚れた弱みというものだろう。片思いなのに。
 くにゅっと神津君の指が私の乳首を捏ね回す。いつの間にか制服のブラウスの胸元は、ガラス越しに硬くなった乳首が見えてしまうくらいにはだけてしまっていた。
こんな状態なのに、神津君が捏ね回す乳首がむずむずと甘くて痒くて、胸全体を揺さぶられると尖端から身体の奥へ切ない疼きが走り抜けていく。
「ぁ…ふぅ……ぅっ」
 止めて貰えないなら、せめて少しでも他の人に見られない様にしたい。乳首の疼きが全身に伝わっていく緩い気持ちよさに肌がざわめいて、私はそっとローファーを脱いでしまう。
 足下に置かれた佐々木君の鞄に潰れるものがあるのではないか心配しながらそっと乗せると、本らしい硬い感触ばかりで足の下に危ない脆い様子はなかった。始業式だからお弁当の類もないだろうけれど、でも宿題もない春休み明け初日にこんなに本を持っていく必要があるのかな?と馬鹿な事が頭を過ぎる。
 両脚を鞄の上に乗せて二十センチほど景色が変わったのを実感したのは、足場が怖くてよろめきそうな私を支える神津君に耳朶を噛まれた瞬間だった。

「神津く……ん」
 心臓が壊れるんじゃないかと思えるくらいに動悸が激しくなる。胸を揉まれるのより耳朶を噛まれる方がどきどきするなんて変かもしれないけれど、神津君の顔が近くにある分だけ破壊力があるかもしれない。
 鞄を踏み台にしてもなお埋まらない身長差に神津君は少し背を丸めてくれていて、覆い被さる姿勢の為かふわりとミントのにおいが漂ってくる。歯磨き粉なのかシャンプーなのか、深呼吸をすると神津君のにおいまで貪欲に浸ろうとしてしまうみたいで恥ずかしい。
 胸全体をゆっくり捏ね回されながら朝一番から神津君のにおいを嗅ぐなんて、贅沢過ぎて眩暈がしそうだった。自転車通学禁止になってよかった…と考える所までいかないのはここが満員電車の中だから。
 びくびくと全身が震えて、鞄の狭い足場の上に立っているのが怖くて少しずつ動いてしまう足が、もう一つの鞄に当たって止まる。電車内は満員状態の熱気が篭もってしまって弱冷房にして欲しいくらい蒸れた空気が蟠っていて、その中で素肌をかなり露出してしまっている私の肌は火照ってうっすらと汗が滲みはじめていた。
「俺と佐々木以外には手出しさせない」
 ずるい。耳朶を噛まれながら囁かれた言葉は威力があり過ぎて、聞いているだけで腰の奥がとろとろになってしまう。朝礼がはじまるまで三十分くらいしか余裕がないのに、このままずっと続けて欲しくて身体中が甘くなる。ガラスの中で胸が卑猥な形に揉みしだかれて、親指と人差し指が尖った乳首を擦って摘みあげると、痛みと痒みが混ざった強い刺激が私の全身に一気に駆け抜けていく。じわんと下着が濡れていく恥ずかしい感触が酷くなる。
「――……っ!」
 下着の表面を佐々木君の指が撫で上げた。
 柔毛がほとんどない私の下腹部は濡れてしまうとそれはそのまま下着に浸透してしまう。脇は紐で扇情的な造りでも素材は木綿の下着はすっかり愛液を吸ってぐちゅぐちゅに重くなっていていて、佐々木君の指が柔らかな丘の表面を撫でただけで音をたてさせてしまった。
 ぬちゅっと沸いた小さな音が、しばしの沈黙の後、もう一度、そしてじっくりとなぶる様に繰り返し鳴り始める。

 音がたってる。満員電車で神津君と佐々木君に囲まれたその向こうには見知らぬ人達がいるのに、下着の上から撫でられるだけで私の下腹部からくちゅくちゅと愛液の音がたってしまう。ぶるっと全身が震えて、恥ずかしくて消えたいのに久しぶりに受ける他の人からの愛撫の快楽が抵抗の力を奪っていく。
 窓に落ち着きなく視線を向けると、先刻のサラリーマン風の男性がちらちらとこちらを盗み見ているのが見えた。ぞくんと背筋に妖しい感覚がはしる。神津君と佐々木君が痴漢として捕まるのは絶対に避けたくて、それには今すぐにやめてしまえば一番いいと判っているのに止められない。
「っ……ぁ…ぁん……っ……」
 声を堪える事しか出来ない私の唇から呼吸音に近いかすかな声が零れてしまう。
 窓の外が明るい。通りを歩く見慣れた制服姿が徐々に増えていくのは、線路を併走している急行や他方面からの電車やバスは止まっていないからだろう、停車しているのがやっぱり珍しいのか、時折歩きながらこの電車を見ている人もいて心臓が止まりそうになる。
 不意に警笛が遠くで聞こえ、そして私の目の前を電車が通過する。
「や……っ!」
 停車駅から発車したばかりの急行はまだ速度が出ていなくて、硬直する私の瞳に満員状態の車両が映った。寿司詰め状態の車内でこちらに背を向けている席の前後では新聞紙や雑誌を読んでいる人も多いけれど、でも何も読まずにぼんやり外に視線を向けている人の方が遥かに多い。
 神津君が、見せつける様に私の胸を裾野からぎゅっと絞り上げた。白に近い薄桃色の胸の先で鴇色の乳首は限界まで縮こまっていて乳輪が小さく粟立ってしまっている…そのほとんどが制服のブラウスからこぼれて窓に晒されてしまう。フロントホックを外されたブラジャーが左右に頼りなく下がっているのも、神津君の指が柔らかな肌に食い込んでいるのも、私がスカートを自ら持ち上げているのも、佐々木君の指が下着を食い込ませているのも、何もかも。

 カタンカタンと軽快なリズムが速まっていくたびに通過する急行電車の速度はあがって、人に見られる時間は減っていく代わりに、目の前を過ぎる人の数が増えていく。
 見ないで。お願い。見ないで。呪文の様に繰り返す思考が言葉にならないまま、私の呼吸が乱れる。この前の時とは違う、いつ誰が通報してしまうかもしれないし、それより知らない人に恥ずかしい姿を見られてしまう異常さに逃げ出したいのに…逃げ出したいのに、自分の身体が判らない。――何で、どうして、緊張すればするほど感じてしまうのか。
「ぁ……ぅっ、…っ……!ぃゃ……ぁ……ぃ…ゃ……ぁっ」
 びくんびくんと身体が跳ね上がりそうなのを抑え込んで、その我慢がすべて内圧に変わってしまう。スカートを掴んだままガラスに押しあてた拳が小刻みに震えて白く血の気がなくなっている。拳の血の気は引いているのに、全身が熱い。
 谷間を擦っている佐々木君の指が徐々に下着の窪みを深くして、すっかり濡れてしまった木綿の布地を恥ずかしい所に捩じ込む様になっていく。一突きごとに背筋がざわめいて、まるであれで貫かれているみたいな錯覚で頭がぐちゃぐちゃになる。もう自分の指なんかじゃ足りないと思い知らされた春休みの日々が一気に埋められてしまう。電車の中で、他の人に滅茶苦茶にされる悦びが再燃する。
 神津君以外の男の子の指で感じてしまう後ろめたさをどうすればいいんだろう。好きになってくれているワケでもない男の子に積極的に迫るのは到底出来なくて、それにここは電車内で、でも、神津君をもっと感じたくて仕方なくて、そんな自分が恥ずかしくてたまらない。よろけたフリをしてしがみつきたい。でも、変な事をして嫌われたくない。
「――くぅ………ん…っ」
 佐々木君の指がするっと下着の端の紐をほどいた瞬間、鼻のかかった細い息が漏れて私の全身ががくがくと震え出す。もう片方の紐と膣内に捩じ込まれた分だけで腰に留まっている下着はとても頼りなく、ピンクと白のストライプの布は裏地を見せる形で腿に垂れ下がり…そしてほとんど柔毛が生えてくれていない無防備な私の下腹部が晒け出されてしまってガラスに映る。
 肌色の丘と下着が食い込んでわずかに見えるサーモンピンクの粘膜にまみれた愛液が朝の日射しに卑猥に光り、あまりの光景に蹲りたいのに、身体の奥がどくんとうねり、下着の紐がかすかに上下に揺れた。

 神津君の唇が耳朶を挟み、何度も歯が優しく甘く噛む。何か話しかけて欲しいのに、満員電車だからなのか神津君は話しかけてくれないで、まるでその代わりの様に私の耳を執拗に噛む。少し乱れている神津君の呼吸がたまらなく性的で、恥ずかしくて、身体の奥が溶けそうになって腰が崩れそうになる。
「も……、もう…ゆるして……ぁ…おねがい……ぉ…ね……がい…はずかしいの……っ」
 佐々木君の指がゆっくりと布を引いて、私の膣内から捩じ込まれていた下着が引き出されていく。
 食い込む量などあまりないのに、でも膣内にあったものが抜けていく感覚の切なさと不安で腰ががくがくと震えだしてしまう。抜けた後には何があるのか…もう終わりとは思えない、終わりなら下着の紐をほどく必要はなかっただろう。ぞくんと身体がざわめいてしまう。もっと酷い事をされてしまうのが判っていて、それを期待している気がして、自分が怖い。
 逃げ出したい思いがスカートを持つ手を少し降ろさせた途端に、神津君の歯が私の耳朶を少し強く噛んだ。
「槙原、見せて」
 泣きたくなる。いくら友達とはいえ神津君以外の男子に大切な所を悪戯されて、その姿を神津君に見せないといけないなんて。でも…それが神津君の性的嗜好で喜んでくれるなら拒みたくないし、拒めない。
 指が小刻みに震えるのに、私の手はゆっくりと上に上がっていく。――先刻より、高い位置に。
「――凄く濡れてる?」
 鞄の上に立っている私より更に背の高い神津君では私の下腹部の様子は見づらい筈で、それなのに見えたのは…私が見える様に窓から少し身体を離したからだった。見せる為に必要だからだけど、神津君に身体を押しつける形になってしまうのが恥ずかしくて、でも、嬉しくて死にそうになる。
 神津君の問いに、私はちいさく頷いた。
「……。脚を開ける?」
 恥ずかしくて瞳を閉じてしまっていた私は、またちいさく頷いて鞄の上で足をもぞもぞと動かす。どこまで鞄が足場になってくれるのか判らない不安とエスカレートする要望の恥ずかしさで消えたいくらいなのに、身体の奥が溶けて自分が判らない。どこまで足を開けばいいのか…見づらい神津君の為に、出来るだけ広く開けないと駄目だろうと考える自分が少し怖い。
 ただ本が詰まっているにしてはしっかりとして広い鞄の足場の隅から隅までは、多分私の肩幅くらいはあっただろう。
「――っ!」
 不意に、ぬるんと硬い何かにクリトリスの辺りを撫でられて見開いた私の瞳に、佐々木君が手にしている白い道具が映った。

 見覚えのない道具は奇妙な形状をしていた。
 釣り針か平仮名の『つ』の形をしているそれの尖端は一方が男性のそれの先みたいに膨らんでいて、もう一方は歯ブラシの様になっている。歯ブラシ状の部分からコードが延びていて、反対に膨らんでいる方は全体に小さな突起がたくさん浮かんでいた…以前使われたローターとバイブレータを足して三で割った様な構造のそれはどう見ても大人の玩具だった。
 反射的に首を振った私の胸を神津君の手が強く揉んで掴んで反抗を封じ込める。指くらいは挿入されてしまうかもしれないという想像はしていても、まさか満員電車で大人の玩具が出てくるなど範囲外でパニックになりそうで涙が滲んでくる。
ぬるんぬるんとクリトリスの上を突起が浮かんでいる膨らみが何度も撫で回して、そして、薄い包皮を押し上げる。
「ん……っ! ぁ……ぅっ、ゃ……、ゃぁ…っ、ひ……ぃん……っ! ぁ…ぁぁぁ……っ、ぁっ、ぁふ……ぅ……っ!」
 悲鳴をあげてはいけない、神津君に迷惑をかけてはいけない、それだけを優先して声を堪える私を甚振る様に膨らみの突起がクリトリスを擦りたてる。足を開いてしまっている私の下腹部は酷く無防備で、そしてあの時の面子は私がクリトリスが弱いのを全員が熟知していた。先刻までとは段違いの身体の核に電気を流される様な強い刺激に、頭の先から爪先まで一擦りされるたびに身体中で痛いくらいの痛痒感が駆けめぐり、容赦なく膣口がぐびぐびと卑猥に蠢き始めてしまう。
 欲しくなる。春休みすぐに身体に強烈に刻み込まれてしまった女の快楽を持て余していたのは事実で、他の男子はともかく自慰のたびに神津君の大きなモノが欲しくなってしまう自分のいやらしさと満たされない淋しさと恋人として選ばれなかった悲しさで何度も泣いてしまっていた。たった一日セックスばかりの日に溺れてしまっただけで味を占めてしまった自分の身体が怖くて、でも身体は嫌になるくらい単純に、膣内を滅茶苦茶に掻き回すモノを欲しがってしまう。
 神津君にして欲しい、また疲れ果ててしまうまで突いて掻き混ぜて射精されて挿れたまままた元気になってもっとぐちゃぐちゃに可愛がられたい。到底女の子らしくないいやらしい衝動が怖くて、それなのに、残酷なくらいにそれは強かった。
全身に汗が滲んで、愛液のにおいが漂ってくる。あまり濃いものではないけれど満員電車の空気とは違うそれは多分判る人には判るものだろう。それなのに…気持ちがよくて全身ががくがくと震えてとまらない。

 電車のドアの窓は縦長に大きくて圧迫感を与えない造り、つまり開放的な大きさになっている。
 百五十センチ程度の私が普通に貼り付いていると腰の辺りはぎりぎりで窓に届かないけれど、今は鞄の上に立って二十センチくらい嵩増ししている上に丸ごと引き上げた状態だから、腰どころか太腿の辺りまで窓の範囲に入ってしまう。窓に映っている腰のあたりは角度的に自分自身で見るのは難しくて、でも佐々木君の手がほとんど剥き出しの私の下腹部の谷間を白い物でゆるゆると割って弄んでいるのは見て取れる。
男の人のモノの傘を模した卵形の膨らみは神津君のモノよりも少し小振りなくらいで、その表面に浮かんでいる突起は胡麻粒くらい。そんなささやかな突起なのに、クリトリスを擦るたびに頭の天辺まで強烈な痺れが突き抜けた。神津君にはない突起、神津君にはない冷たい感触、神津君ではない操り主、それなのに…身体が蕩ろける。
「これ、市販品を少し改造してあるんだ。リモコンと電池ボックスをつけてみた」
 ぽそりと佐々木君の囁きが聞こえた。淡々としていて意地悪そうなところなど欠片もない。
 膣口からクリトリスの間を執拗に往復する刺激と、神津君の胸と耳への愛撫で鳴き出しそうなのを堪えるのがやっとの私は、その言葉の意味を考える余裕などなくて、閉じられない唇で途切れとぎれの吐息を漏らすだけしか出来ない。
 窓の中で、とろとろの愛液が伝う内腿の間で片方だけでぶら下がっている下着が揺れる。神津君が揉みしだいている胸が熱くて、揉まれれば揉まれるだけ熱くぽってりと腫れてこなれてねっとりと汗ばんで卑猥な果実に変わってしまいそうで恥ずかしい。神津君にならどれだけ揉まれてもいい、もっと揉んで欲しい。大きな胸が恥ずかしくて嫌いなのは今でも同じで、でも、神津君が大きな胸が好きで噛むのも舐めるのも揉んで苛めるのも好きなら、大きな胸も少しいいのかもしれない…そう考えてしまう自分が恥ずかしい。
「槙原、足をそれに乗せてごらん」
 耳の中に舌を差し込んだ後、神津君が視線で指示したのは、ドアの脇にある縦長の手摺りだった。
「……」
 大きな鞄の上でもう肩幅くらい足を開いているのに、鞄よりもに高い位置にある手摺りの底に足を乗せると膝を腰の高さまであげる事になってしまうだろう。それにみっともないくらいに足を開く事になる。絶対に嫌な事なのに、してはいけない事なのに……。
 命令されて、気持ちがいい。
 神津君にいやらしい事を望まれるのが、とても恥ずかしくて消えたいくらいなのに、嬉しい。
ぐっと胸を掴んで私の背中を胸板に押しつけてくれる形で支える神津君に、足がゆっくりと動く。窓の中で白い貧弱な足が動いて、ぐちょぐちょに濡れている内腿が更に大胆に晒け出されていく。自分の足だなんて思えない卑猥な光景で、でも感覚は自分のものだった。

 壁と棒の間は指が余裕で通ればいいだけだから、電車のドアの脇の手摺りの底部分はとても狭い造りになっている。靴下だけの足の指先を狭い空間に乗せて、私は全身で息をつく。
 いやらしい。
 神津君と佐々木君に左右から背後を守って貰っている状態とはいえ、佐々木君側にあるドア傍の手摺りと乗っている鞄の間は少し離れている。卑猥な愛撫をねだる様に片脚を高くあげて拡げて、自らスカートを持ち上げて下半身を晒している姿は淫乱と蔑まれてもおかしくない姿で、恥ずかしさで泣き出したいくらいに卑猥だった。
「凄い格好だ」
 酷い言葉なのに神津君の声は少し自慢げで意地悪でそして優しい。優しくされるともっと泣きそうになってしまう。嫌いにならないで欲しい、好きになって欲しい、馬鹿だと蔑まないで欲しい…気持ちが全部ぐちゃぐちゃになる。
「――っ……!」
 ぬろんと大きな動きで私のクリトリスから膣口までを一気に白い道具が撫で上げた。
 全身が大きく跳ね上がりかけて、そして背筋が伸びきったまま戻らない。緊張の糸を解いてしまうともう快楽を堪え切れなくなりそうな怯えで、鞄と手摺りの上で踵が上がったままになる。全身の力を入れて硬直させるその中心で、淫猥な玩具が全体に愛液を絡める様に前後に動いて小さな突起が粘膜を擦る。
 つぶつぶの感触はささやかなのに、指ともアレとも違う女をよがらせる道具に相応しい切ない凶々しさで私の下腹部から全身に淫らな感覚を浸透させていく。つぶつぶですら、気持ちいいと感じてしまう…とてもいやらしいのに、やめてと言えない。
 スカートを握りしめる手の内側がうっすらと汗ばんで、小刻みに震える指の間に汗が滲む。全身が発情していく。喘がない様にちいさくて浅い呼吸を繰り返そうとする私の胸を神津君の手が卑猥に揉みしだいて、徐々にブラウスの裾が上がっていき、ガラスの中の私はどうしようもない乱れた姿に変わっていく。見せつける様にブラウスの合わせからこぼれる両乳房の尖端で、乳鈴が粟立つ。きゅっと摘まれて捏ね回されると胸の奥まで鋭い痛みがはしって、その後は堪らない痛痒感で全身をくねらせたくなる。
 快楽を逃したい。いや、快楽のまま身体をくねらせたい。身体がたまらない。熱くて、切なくて気が狂いそうになる。
「槙原?」
 私がよがりたがっているのが判っている意地悪な問いをする神津君に、私は思わず至近距離で見つめてしまう。
「……、かんでほしいの……お……おっぱいも…あそこも……もっと…いっぱい……いじめてほしいの……」
 蚊の鳴く様なちいさな声で漏らしてしまった私の哀願に、神津君が空いている手を窓に突く。片手で乳房を揉んでいるままだから、私の身体は神津君の腕の中に包まれている形になる。
 次の瞬間、神津君の唇が私の唇を塞いだ。

 電車の中で胸や下腹部を直接滅茶苦茶に弄ばれるのと、電車の中でキスをするのとどちらが大胆なんだろう。
 一瞬そんな馬鹿な事が白くなった頭の中を過ぎって、そして容赦なく差し込まれてきた舌に舐めとられていく。リップクリームのぬめりに少し躊躇した後、神津君の舌が口内粘膜と前歯を貪る様に擦りたてて、呆然としてしまう私の口を更に捻り込まれた舌が開かせる。
 ちょっと辛いスペアミントの味が口内から鼻孔に広がって、動かせずにいる舌を神津君の舌が意地悪をするみたいに擦る。鞄の上に乗っていない時の私なら百五十センチ程度だから人混みの中では目立たないだろう。でも今は鞄で嵩増しされているから他に人達にそう身長差で劣っていない。つまりキスをすると目立ってしまう筈だった。見下ろされて身体を見られてしまう意味では助かるけれど、これは困ってしまう。
 くちゅくちゅと唾液が絡み合う。正直キスは上手ではない私の歯が神津君の歯に軽く当たってしまうたびに頭を引こうとするのに、神津君の指が乳房や乳首に食い込んでそれを止めさせる。とっても高圧的なキスなのに、頭の芯がぼんやりしてしまう。
「っ……ふ……、――っ!」
 膣口に当てられたものがぐっと圧力を増した。
 神津君のものと比べれば小さいけれどそれでも白い玩具の膨らみは男性器の尖端と比べて遜色のないサイズで、しかもその形状に似た楕円の球状をしている。入ってくる感覚は本番のそれと大差がない。待って欲しい。今神津君とキスをしているのに。電車の中なのに。身体が敏感になっているのに。
 思わず神津君に唇を貪られながら見てしまった私の瞳に、膣口に添えられてゆっくりと前後に動かされている白い玩具が映る。
 佐々木君のいる側の手摺りに乗せた脚は、そのまま佐々木君が自由になぶる為の姿勢そのものだった。同級生の男の子の前で嫌になるくらいに大胆に脚をあげて開いて無防備に晒け出した下腹部は、小柄な彼にはとても弄りやすいもので、身を屈ませる事も不自然な姿勢をとる事もなく佐々木君の手は動き続ける。白い玩具の尖端がぐいぐいと膣口のくねりに捩じ込まれては少し引き戻される。
 ぞくんと全身に妖しい感覚が駆け抜けていく。
 もしかして、達してしまうかもしれない。満員電車の中で、他の人にもいやらしい事をしていると知られている状態で、窓の外に通学路がある場所で、神津君とキスをしながら。――達してもいい様に、神津君に唇を塞がれながら。他の男子に膣口を弄ばれて。
 神津君で満足したい。あの大きなもので掻き回されて達したい。そんな願いを弄ぶ様に、ぐぷりと音をたてて私の中に白い塊が埋まる。
 柄の部分が華奢なそれはまるで男の人のものの尖端だけで犯されている様な感覚で、塊が中に入ってしまうと膣口は完全にではなくて中途半端にまた閉まっていく。膣内にははっきりと存在を主張してるのに。

 どうしてこんなにいやらしい子になってしまったんだろう。呻き声も鳴き声も唾液と一緒に神津君に舐めとられて啜られて、そして神津君の唾液と一緒に快楽が流し込まれる。
 新学期、受験生として引き締めてかからないといけない大切な時期の節目に、その大切な日なのに…恥ずかしい下着ははしたなく解けて、胸も晒け出されて卑猥な交わりそのものの姿で通学電車で身悶えてしまう。
「痛い?」
 佐々木君の小声の問いに、私は神津君に唇を貪られながら何とか首を振った。
 少しは間が空いているし、その前は処女だったのだから少しは不慣れな所や初々しい所があって欲しいのに、ずっぷりと捩じ込まれてしまったものを私の膣肉は素直に迎え入れてしまっていた。痛みを否定した私に、まるで子供を誉める様に神津君の舌がねっとりと口内で揺らめく。
 痛がらない事を軽蔑されないかな?キスしているのに他の人に返事したら怒られないかな?そんな危惧を甘く舐めとられて、私の理性がまた削げ落とされていく。
 ぶん、といきなり身体の中で何かが唸り暴れ始めた。
「ん……!」
 耳に届くその音は明らかにモーターが唸る時のものだった。私は以前それを聞いている…そろそろ七人とも一段落した頃に佐々木君が取り出したピンク色のグロテスクな物やウズラの卵みたいな形のバイブレータ。あれの音だった。それが、膣内で暴れている。
「――っ……ぅ!…!……ぁ…ぅ!」
 かつっと神津君と私の歯がぶつかった。謝らなければと一瞬で頭に浮かぶのに、私の悲鳴を飲み込む様に滅茶苦茶深く唇を…いや口を重ねられて声が出せない。声が出せないのに、悲鳴が口の中に溢れる。
 膣内にある固まりとクリトリスを圧えているブラシが容赦なく柔らかな肉をくじり、
擦り、責め立てる。ぶるぶると震える内腿につられる様に膣口がざわめいて淫らな肉が異物を締め付けながら涎を溢れさせてしまう。
 モーターの音だけは勘弁して欲しい。携帯電話の振動音と勘違いしてくれるかもしれないけれど、でも男子といやらしい事をしているだけならまだしも、卑猥な玩具の存在は周囲の人達に知られたくない。公衆の面前でしてはいけない事の大差ないのに、辛いくらいに恥ずかしくて怖い。
 がくんと腰が跳ね上がりそうになり、神津君の腕の中で貧弱な身体が限界まで伸び上がる。内腿を伝う愛液が膝丈の靴下にまで染み込んでいく感触が生温くて居心地が悪い。ぶんとモーターが低く唸る。がくがくと足が震えて、どうしても腰が動いてしまう。
 神津君は私が酷く責め立てられている事に気づいてくれているだろうか、少しは手を弛めようと考えてくれないだろうか…自然と滲んでくる涙で揺らぐ視界の中に、佐々木君の手が映った。
 何だろうか、ずっと私の下半身を弄んでいた手が視界の範囲内まで上げられた事を疑問に感じた私は、その手の中にある大きな釣りの錘を連想させる白い物体に気づく。先端で赤いライトが点灯していて、上下にスイッチがある。ぞくんと腰から背筋へ妖しい感覚が突き抜けていく。それはリモコンだった。何のリモコンなのかは考えるまでもないだろう。本体が釣り針でリモコンが錘とは何となく出来すぎた冗談みたいだった。
「神津」
 ドアに突いている神津君の手の甲を、リモコンで佐々木君がつついた。受け取らないで欲しい。今は佐々木君だけの悪戯で済んだけれど、神津君が荷担すると私にはもう逃げる事も…言い訳する事も出来なくなってしまう。
 くにゅっと神津君の指が乳首を摘んで引き延ばす。――そして、ドアに突いていた方の手が、リモコンを受け取る。

 電車は停車したままでまだ動かない。春の通勤電車はもう暖房の必要がないくらいに暖まっていて、走行音のしない電車は満員の人達が生み出す何気ない音で無秩序にざわめいている。
 メールで連絡をしているのか、携帯などのキーを叩く硬い音やラジオや音楽プレイヤーのかすかな音や器用に立ったまま寝ている人の軽いいびき。騒音というレベルではない雑多な音が蓄積されいる。身長の低い私には窮屈な世界の上の方の音でしかなかったのに、二十センチくらい高さが変わっただけで、それが怖いものに変わってしまう。いや、その上疚しい事をしているからなのだけれど。
 モーターの音は変化する。オンとオフを繰り返しているのではなくて、どうやら振動のリズムが何段階も変えられる器用な代物らしい。でもそれを用いられる側はたまったものではないと思う。
 膣内とクリトリスが滅茶苦茶なリズムで揺さぶられる。振動は最初は衝撃に過ぎないけれど、肉が馴染んでくるとそれは粘膜の奥を強引に痺れさせて快楽の昂ぶりに追い立てていく。多分膨れきってしまっているクリトリスに柔らかなブラシ状の突起が食い込むのは痛くすらある筈なのに、見境なく噛まれている様な痛痒感で身体を捩りたくなってしまい、膣内の固まりは最初から粘膜が潤みきっていて痛みはないもののごりごりと異物感を強調する。
 はぁっ。長いながいキスの合間に唾液の糸を引きながらつく呼吸は甘い。こんな場所で恥ずかしい事をされているのに、全身がとろとろになる自分が恥ずかしい。
 あれから何分経ったのか、遠くて近い通学路を歩く人の数は増えていく。始業式の後でホームルームだから、鞄さえどうにか出来ればそのまま体育館に向かえばまだまだ間に合う。流石に始業式が始まる時には校門が閉められてしまうからそれに間に合わないと遅刻となるから…つまり、まだまだ生徒が大勢通る時間。いつ誰にこんな姿を見つかってしまうのか判らない。
 神津君の口の中に私のいやらしい喘ぎが飲まれていく。
 こんな恥ずかしい事をしているのに、スカートを持ち上げている手を下ろせない。
 びくびくと全身が震えて、全身が汗でしっとりと濡れている。こんな状態で電車が動いても始業式に向かわなくてはいけないのだろうか…? いざとなれば遅延証明が発行されるから遅刻扱いは免れるけれど、正直な話今日は休みたい。家に帰ってシャワーを浴びたい。電車が止まってしまったから今日はこんなにハードなのであって、これからの毎日はそうではないだろうから、今日くらいは許して欲しい。
 くちゅっくちゅっくちゅっと卑猥な音が車内の雑音の中で響く。
 神津君にリモコンの操作を任せた佐々木君が、バイブレータを孤ね回すたびに愛液の音が溢れてしまう。淫猥そのものの音。満員電車の中で、膣内に玩具を挿入されてとろとろに濡れて愛液を溢れさせてしまういやらしい牝の証明。音とにおいは周囲の人に判りやすいから許して欲しいのに。
 バイブレータとしては多分小さいこれは抽挿向きな形状ではなく、両端を繋ぐ細いクリップ部分を少し強引に佐々木君が前後に揺さぶってくる。
 クリトリスが押し潰され、膣口に固まりが引き戻される。嫌な動き。狭い膣口のくねりに男の人の鰓が引き戻される感覚を何倍も強烈にした感覚に、全身から汗が滲み出す。それは、鰓が大きい小さいとは多分別次元だった。男の人の幹は指よりも細い事はないけれど、この玩具は両端が大きくても途中は指くらい細くて、膣内の固まりとの落差の激しさが強調され過ぎる。
「っ……ぁあ!」
 ぐぷっと音を立てて膣内から固まりが引き出されそうになって反射的に私の唇から溢れてしまったのは…物欲しそうなおねだりの声だった。

 固まりが膣口の途中まで引き戻されてしまうと、くねりは自然とそれを排出してしまいそうになる。熱い膣内で温まったそれが出ていく感触は何故か鶏の産卵を思い出させた。鶏ならそれが仕事だけど、私だと違う。神津君が与えてくれる振動を美味しく食べられない駄目な女の子になってしまう。
 ほとんど排出されかけた固まりにぎゅっと強ばった瞬間、佐々木君の指が固まりを膣内に捩じ込んだ。
「――くぅぅぅぅぅぅぅ……ぁ!」
 ぐちゃりとはっきりと響いてしまった挿入の音と同時に、膣内をまた満たしたそれとそれを捩じ込む為に膣口に少しめり込んだグリップと佐々木君の指の感触に、全身が弾けてしまった。壊れた玩具の様にがくがくと痙攣して、膣内のものと佐々木君の指までぐびぐびと伸縮して媚肉が美味しそうに咀嚼する。
 佐々木君の鞄の上で、汗でぐっしょりと湿った靴下の中で縮こまった足のつま先と浮かした踵が限界点でがくんがくんと跳ねるその間で、膣口から溢れた温かい液体が堪える事も出来ないままこぼれるのが判る。汚してしまうのが判るのに、止められない。ぽたぽたと垂れるのは、ちょうど膣口とクリトリスの間をバイブレータが塞いでいる為だった。佐々木君の指にもかかっている筈なのに、怒られそうな様子がない…それが更に恥ずかしい。
 達してしまった。
 快楽の波に全身を震わせながら、私はやるせない喪失感と恍惚感に呆然とする。身体は幸せなのに、心が苦しい。今私の膣口が締め付けているのは、神津君の指ではない。神津君の手が乳房全体を揉み、舌が口内を蹂躙しているのに、膣は佐々木君の指を咥えてる。
 涙が出た。
 欲しいの。神津君が欲しいの。嫌わないで。怒らないで。すぐに達しちゃってごめんなさい。自分ばっかり気持ちよくなってごめんなさい。いやらしい子になっちゃいそうなのが怖くてごめんなさい。甘えたくなっちゃうの。欲しいの。神津君のものをぺろぺろ舐めたいの。今挿れてくれてる舌みたいに口で頑張って舐めたいの。手で撫でて擦って悦んで欲しいの。胸で挟むのもします。お願い、嫌わないで。――セックス、して欲しいの。神津君に、して欲しいの。

「槙原、お前甘えるの滅茶苦茶上手だな」
 何度目かの快楽の閃光がようやく引き潮の様に収まってきた頃、神津君が不意にそう囁いた。
 その言葉の意味が判らなくて快楽の余韻もあってぼんやりとしてしまう私の下腹部で、佐々木君がごそごそと動いて、私の制服のスカートのポケットにコードが繋がっている小さな箱を入れた。
「電池ボックス、一応防水加工にしてあるけど濡れた手で開けない様にね。中見れば判るけど、単三が四つ。交換したいなら簡単だから槙原さんでも出来ると思う」
 もう終わりなのだろうか…ぼんやりと考えている自分が少し…正直に言えばかなり名残惜しくてもどかしい消化不良な感覚なのを否定出来ない。前が強烈過ぎたからと言うと言い訳になってしまいそうだけど。
 もう手を下ろしていいのか判らないけれど脱力感も伴ってのろのろと手を下ろしても二人ともそれを咎めなかった。神津君はブラウスを、佐々木君は解けた下着を直すのに忙しいだけかもしれないけど。
 でも、バイブレータは挿入したまま、ブラジャーは肩紐が肩から落ちてぶら下がったままだから身支度を整えているとはとても言えないだろうと思う。第一、バイブレータの振動は弱いものに切り換えられても止めてくれていないから生殺しだった。自分だけがいやらしい行為から抜け出させて貰えずに置いてけぼりにされる不安と寂しさともどかしさで、途方に暮れてしまう。
「自分で外せるか?」
 少し見ただけだけど、バイブレータはそんなに引き抜くのに特殊技術が必要な物には見えなかった。刺激欲しさに挿入しっぱなしで私が生活すると思われても困ってしまう。つまり神津君の問いは、引き抜く時のあの凄い感触を自分一人で味わう事に関してなのだろう。素直に引き抜けるか、馬鹿になってまた戻して耽ってしまうかはさておいて。
 低くうるさいモーター音を体内で感じながら、まだ抜け出せない肉体的な余韻と違う所で胸がどきどきする。
「他に…選べるの?」
 キスは終わってしまったけどまだ近い位置にある神津君の顔を恥ずかしくて見上げられない。満員電車の中であんなにたくさん凄いキスをしてしまったのが、離れるともう夢の様で、もう少しキスをして欲しいとか、もっと凄い事をして欲しいとか、頭の中が一気に沸騰してしまいそうだった。
「どこかで外してやろうか?」
 神津君の声は愉しげで、少し躊躇った後私は頷いてしまった。

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