『媚熱空間』後編〜In Studio〜

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 いいのかな…そんな気分のまま私は二人の後を歩いていた。
 あれから二十分程過ぎてから電車は動き出して、ぎりぎりで遅刻になってしまったけれど人身事故の連絡があったのか校門は無事に入れたものの、神津君達は鞄を置きに教室に向かうのではなくて、二階の放送室に向かっていた。
 でも、歩いている間は振動を止めてくれていても、膣内の異物感とクリトリスにブラシが密着したままだから、一歩歩くたびに身体の奥にぞくんと妖しい感覚が込み上げてくる。拭う機会がなかった下腹部と内腿は酷いままで、電車から降りてから学校までの道すがらも先生に説明して校門を通る時もいつ気づかれてしまうか気が気ではなかった。
「――あのおじさんずっと僕の脇腹押してきてたよ」
「こちらの事情が判らないなら仕方ないだろうな」
 車内でどうやら私の知らない所でいろいろあったらしい話をしている二人に、微熱っぽく火照った頬が更に熱くなる。先生は私の紅潮を体調不良だと誤解してくれた様子だったけれど、車内であれに気づいていた人には当然判ってしまっていただろう。
 昇降口から階段を上がってすぐが職員室で、その前を通って中庭沿いの回廊に向かうと図書室や放送室が並んでいる。体育館では始業式が始まったばかりでまだしばらくは生徒全員とほとんどの先生は校舎には戻ってこないと判っていても、見つかったら流石に問題があるだろう。それなのに、逃げ出したり咎めたり出来ない。どんどん危ない方向に流されていってしまう。
 ポケットから鍵を取り出した佐々木君が放送室の鍵を開けた。そう言えば彼は放送委員だった気がする。そのまま何も気にせずドアを開けて入っていく二人に、思わず私は立ち止まったまま動けない。
「? 誰もいないよ。始業式の放送は体育館内の放送室で扱うから、こっちは…今日は下校時間まで空き。今日は昼食もないし」
 誰もいないからそこを選んだという意味と躊躇いが一瞬天秤に乗ったけれど、見つかってしまう不安の方が大きくて私は放送室の中に入ってしまった。
 初めて入る放送室の中は意外と狭かった。
 教室と同じサイズの間取りが半分に仕切られていて、手前が放送用の機械やロッカーが並んでいて、機械側の壁は大きな填め殺しの窓になっていて、そこはTVドラマか何かで見たスタジオの造りに似ている。機械の横にはドアがあって、それは教室や背後のドアと同じ引き戸ではないタイプだった。
「奥使っていいよ。今は電源オフになっているから安全」
 そう言いながら、佐々木君は機械の横にある机に鞄を置いた。
「ご、ごめんなさい」
 鞄の上がぐっしょりと濡れているのを見て、思わず謝る私に少し不思議そうな表情を佐々木君が浮かべた。
「槙原さんが潮吹きするの知ってるから対策は一応してあるよ。中にバスタオル一枚挟んでおいたから、中は問題ないよ」
 かなり恥ずかしい事をあっさりと言う佐々木君に頭を下げながら、私は少し不安になる。つまり、私を滅茶苦茶にする事を前提に準備していたのだろうか…私が羞恥心を取り戻していやらしい事を拒んだらどうなっていたのだろう。いや、脅迫される可能性は低いだろうと思うし、もしも無理強いするのが神津君なら私が拒める筈がないのだからあまり意味がないのだけれど。でも、私が神津君の事を好きなのは当人しか知らない。
「槙原」
 奥へのドアを開けた神津君に呼ばれて、私の背筋がぴんと伸びる。――期待してしまう自分が恥ずかしい。
 私を招き入れた後、神津君は佐々木君に構わずドアを閉めた。閉まる直前に「ごゆっくりどうぞ」との声が聞こえたから佐々木君も了承済みという事なのだろうか。
 ドアが閉まると気圧が変化した感覚がしたのは、防音室だからなのかもしれない。薄いカーテンを引いたままの窓から差し込む春先の陽の光は少し弱くて、透明度が高くて薄暗い。機械の部屋には佐々木君がいて間の大きな窓にはカーテンがないのに、二人きりの空間を意識してしまう。
「――槙原。まずは、脱いで」
 ドアに背中を預けて、神津君が私を見た。

 簡単には名前で呼んでくれないなと最初に思ってから、その発言に気づいて頬が熱くなる。
 ただバイブレータを引き抜くだけなら服を脱ぐ必要はないだろうし、始業式が終わればホームルームが始まるから時間の制限がある。どこまでしてしまうつもりなのか予想が出来なくて、でも脱がないといけないから、私は神津君に背中を向ける。教室の半分よりも狭いのは、手前の部屋の方が広いからだろうか。
「背中を向けるな」
 短い指示にぞくんと背筋が震える。そういう間柄になっていても、自ら脱ぐのは別次元だった。でも、神津君の言葉は絶対。時間もない。
 俯きながら振り向いてコートのボタンに手をかける。エアコンを入れてくれたのか少し暖かい風が流れているからしばらくすれば部屋は暖まるかもしれない。
 コートを脱いで椅子の背もたれにかけるまでは何とか普通通りに動けたけれど、そこで指が止まる。ブラウスの下のブラジャーは肩紐でぶら下がっただけのだらしない状態で、ブレザーもブラウスも合わせて整えられただけで、スカートのウエストから引き出された弛みも何も酷い状態だった。
 小刻みに震える膝の上で、ぐしょぐしょに濡れている下着の中で、膣口がざわめく。お尻が揺れるたびに膣内のバイブレータの固まりが動力のないまま動く。粘膜を擦り圧し拡げる異物感が、どうしようもなく神津君のものを思い出させる。もっと大きくて熱くて膣奥までたっぷり苛めてくれる逞しいもの。
「……。酷い格好だな、槙原」
 声と同時に、いつの間にか手の中に戻っていたリモコンのスイッチを神津君が押した。
「ぁ……あ! ゃ…ぁあああっ…ひ……んっ!」
 防音の放送室内にぶんとモーター音がはっきりと籠もる。誰も支えてくれない状態での蹂躙に身体ががくんと跳ね上がる。
「い…いじめな…いで……ぇ…、こん、こんなことしたら…ぬげな……ぃっ」
 先刻と条件が違う他には誰にも聞かれない防音状態に、自分の身体を抱きしめて縮こまりながら私は神津君を見上げる…床から顔へと視線を動かしていくとぞくんと身体の奥が熱くなる。スラックスの腹部を突き上げる状態のものに。

「どんな選択肢があるのか聞いていたっけ」
「……ぅ…ぁ……っ…こうづくん……おかしく…ぁんっ!だめ……ぇ…お…おかしくなっちゃ……うぅっ……」
 撫でたい。手で擦りたい。口に無理矢理捩じ込まれてもいい。精液を顔に浴びせられてもいい。挿れて欲しい。滅茶苦茶に突き挿れてたっぷり苛めて欲しい。腰が立てられなくなる過酷な攻めの後で満足した神津君の意地悪な笑みがたまらなく好き。――ホームルームまでには戻らないといけないのに、いけない事まで求めてしまいそうになる。
「おかしくって?」
 ぶるっと身体が震えた。神津君の指がほんの少し動くたびに振動が変化していくのを、まるで神津君本人に弄ばれているみたいに錯覚しそうになる。膣内にあるのに膣口は淋しくて、神津君のものなら膣口もずぶっと拡げられている筈なのに、もっと大胆に大きく動いて奥まで来てくれるのに…考えがそちらにしか向かなくなってしまう。
 とろんとした瞳が、そこから離れない。
「俺のしている事は虐めだと思うか?」
 失言を咎める神津君に、私は何度も首を振る。神津君が世間で言う所のいじめをするワケがない。少しからかう程度の極弱い遊びならクラスの男子もたまにはしているけれど、そもそも問題になるレベルのものを見た事がないのは進学校でそれなりに皆考えがあるからだろう。それに、その程度ですら神津君は荷担しない。だから、そんな神津君が好き。
「えっちで…はずかしいから…ぁ……ぅ…か…からだが…あつくなる……いじめで……」
 上手に説明出来ずに私は全身で呼吸を繰り返す。内腿の乾いていない愛液は学校までの間にかなり乾きはじめた濃いものになってきていたのに、そこにまた溢れたものが絡みついていく。
「要するに?」
「えっちな……こと…を……してほしぃ…の……」
 恥ずかしい事を言わせようとする神津君のこれは多分苛めという分類で正しいだろう。でも相手を苦しめる目的ではないから悪くない…恥ずかしいけど。
「前のあれで懲りてないのか?」
「すこし…こうかいしてる……でも…、いやじゃない……」
 ずっと春休みの間抱えていた漠然とした不安を神津君も抱えていた様な問いに、抱きつきたい衝動に駆られてしまう。嫌になる筈がないのに、神津君はぜんぜん私を判ってくれない。なけなしの理性が溶ける。
 視界の隅に耳全体を塞ぐ大きなヘッドフォンをつけてこちらを見ている佐々木君がいた。でも防音だからどんなに恥ずかしい事を言っても伝わらないで済むだろう。
「こうづくんは…ちがうの?」
 次の瞬間、部屋の中央にある大きな机に私の身体は組み伏された。

 アナウンス用のマイクが床に落ちて、両手を絡めとられた私の唇を神津君の口が塞ぐ。電車の中よりも更に滅茶苦茶なキスで口内すべてが舐められて貪られる。元から重ねているだけだったブラウスやブレザーがまたはだけ、剥き出しになってしまった乳房を神津君の制服とコートが擦ってぞくぞくさせた。
「あ……んっ…!ぁぁんっ!」
 声が溢れる。電車内の様に周囲にはばかる事なく漏れてしまう喘ぎに応える様に、神津君の片手が私の胸に移動して、荒々しく揉みしだき始める。電車内での動きは神津君にも制限を与えていたのだろうか、もっと激しくしたかったのだろうと判るのは、以前の経験からだった。それに、それを求めてしまうのは私も同じだった。
「相変わらずいやらしい身体」
 唾液の糸を引いて神津君が少し意地悪そうに嗤う。私の手を押さえる神津君の手にはリモコンがあって、紫色のライトが点いている。体内の蹂躙に加えて神津君の指で乳首を孤ね回されて机の上で身悶えてしまう身体を見下ろされて昂ぶってしまうのが恥ずかしい。
 無抵抗な私の手の中にリモコンを残して、神津君の手が制服のスカートをめくり上げた。春休み中あまり換気をしていなかったのだろうか少し淀んだ空気はまだぬるくて、ふわりと腿に当たる。
 ぐちゅぐちゅに濡れた下着が下腹部に貼り付いていて、しかもその面積はあまり大きくない。ピンクと白のストライプで可愛い感じだけれど結構きわどくて薄い私だから収まるくらいだった。濡れた両端の紐を解いて布を剥ぐとにちゃりと卑猥な音がはっきりと沸く。モーターの音が私の膣口が蠢くたびに強弱を繰り返す。それはモーターのリズムのせいではなくて、ぐびぐびと揺れるバイブレータを粘膜が押さえ込む力のせいだった。
「――美味い?」
「はぁん……っ!」
 クリトリスの上のブラシをこんと爪で弾かれて全身が跳ね上がる。そのままブラシのカバーを孤ね回されて机の上で私の腰ががくがくと跳ね続けて、膣口から愛液がたっぷりと溢れだしてお尻へと伝っていく。

 腰の下のスカートが濡れてしまう問題が少し気になるのに強烈な刺激に目が眩んで止められない。甘えた鳴き声が唇からひっきりなしに溢れて、上履きの足が宙を掻く。
 少し手を弛めて欲しい…このまま達してしまいそうな緊張で私の指がリモコンのボタンを押すと振動のリズムが変化した。何回押せば止まるのか判らなくて何度もボタンを押し続ける私は、目で見れば判るもう一つのボタンに気づく余裕がなかった。
「そんなに気に入ったのか?」
「ちがうの……っ…あぅんっ!ぁう…んっ! とめられ…な……いの…っ……あ! ――あぁぁぁぁぁ!」
 泣きじゃくりながら首を振る私を揺さぶるバイブレータの連結部を神津君の指が摘み、そしてゆっくりと引きずり出す。細い連結部から男性のそれに似た膨らみへと一気に増す膣口の圧迫感に腰を机に縫い止められたまま全身ががくがくと足掻く。また達してしまいそうで、でも神津君の目の前で玩具で乱れるのが恥ずかしくて疚しくて、堪えたいのに……。
「いっちゃう……それでいっちゃう…っ!きついの…っ……こうづくんのよりちいさいのにいっちゃうぅぅっ!はぁああああんっ、いく…っまたいくぅぅぅぅっ!」
 まるで活け作りの魚の様に机の上でびちゃびちゃと肢体が跳ねる。ずぶずぶと意地悪なゆっくりさで引き抜かれるバイブレータの膨らみが膣口をこじ開けていく。凄い快感なのに身体の昂ぶりがほんの少し、致命的に足りない。――自慰で満足出来ない上に、玩具を操って貰っても達しきれないくらいに身体と心がたった一度で贅沢に慣れてしまっている。
 バイブレータがずぽっと抜けた後に身体の中央に穴が空いた様な虚しさが襲ってきて、私はせわしない呼吸を繰り返しながら机の上で神津君を見つめた。机の隅にバイブレータを放り出したのは私のスカートのポケットの中の電池ボックスとコードで繋がっているからだろう。そんな事より、スラックスの前をはだけさせる神津君の方に意識が奪われてしまう。視線が釘付けになる。待ち望んでいるなんて恥ずかしくて知られたくないのに。
「欲しいか?」
「……、ほしいの……」
 手の中からリモコンが転がり落ちる。
 防音室は密閉性が高いから窓を開けるなり換気をしないとにおいは簡単に籠もってしまう。放課後になれば放送委員の初会合があるだろうから、それまでには何もなかった様にしないといけない。でも今日はホームルームと清掃だけで授業はないからあまり時間はなくて……。
 神津君がスラックスを脱ぐのを見つめながら、私は机の上でもぞもぞともどかしくブレザーを脱ぐ。まるで服に火がついている様な焦ったせわしない動き。
「セックスが好きか?」
「わからない…けど…ずっと……してほしかったの……」
「生で?」
 こくんと頷く私の瞳に神津君のものが映った。制服のシャツに反り返った猛々しい槍が貼り付いていて血管や筋をグロテスクに浮かび上がらせている。ずっと春休み中頭から離れなかった逞しいものに、鼻のかかった吐息が漏れた。
「めちゃくちゃに…して……」

 ぐじゅっぐじゅっと美味しそうな恥ずかしい音を立てて傘が愛液を掻き混ぜる。
「――ほしいのぉ……っ!こ…こうづくんの、こうづくんのでずぶずぶいじめてほしいの…!」
 欲しくて焦っているのが私だけの様に、神津君は傘で私の膣口を攻めて言葉で苛め続けた。涙で顔がどろどろになる。全身が汗に濡れて、腰の下でスカートに愛液まみれの皺がつく。
 こんなに酷い状態になってるのに欲しいものを与えて貰えない切なさで頭が回らない。神津君は本当はしたくないのかもしれない、時間が経って冷静になったら私が疎ましくなってもおかしくない。言ったらもっと嫌われそうで怖いのに、身体の疼きを自分ではもうどうにも出来ない。
 訊かれるままに春休みの間の自慰の回数から方法まで全部答えてしまい、もう理性はぼろぼろになっていた。どこまで話せば満足して貰えるのか、いつ挿れて貰えるか、机の上でくねる私の両胸にはキスマークがたっぷりとついていた。歯形まである。着替えなどでブラジャーで隠れる位置を考慮してくれていそうではあるけれど、少し危ない。――ここまでしておいて挿れてくれないのは、少し酷い。
 でも神津君の表情は真剣で、何を考えているのか本当に判らなくて怖い。
「いやなの……?」
「俺の玩具になる覚悟は?」
 彼女ではなくて玩具。でも神津君とその仲間のではなくて、神津君の。嬉しがっていいのか悪いのか判らない微妙な問いなのに、私はあっさりと頷いてしまっていた。
「少しは悩めよ」
 少し困った表情を浮かべた神津君に、私は慌てて首を振る。
「え、ええっと…じらされてなしくずしじゃなくって、まえにつたえたとおりのきもちで…おもちゃなら……ごようのあるときはつかってくれるっていみとかんがえていいのかな?って……」
 慌てているのか、何だか実も蓋もないとんでもない事を口走ってしまう私に神津君が苦笑いを浮かべた。あまり隙のない人の苦笑いはかなり魅力的でぽうっとしてそれを見つめてしまう私に、神津君が脚を抱え上げる。
「卑屈な奴。――少しは野心持てよ」
 あれ?と何かが頭に浮かびかけた次の瞬間、ずんと一気に神津君のものが膣奥まで貫いた。

 がたんと椅子が音を立てて、机が軋む。全身を串刺しにされた様な衝撃に、机の上で身体が跳ねて、乳房がぶるんと弾み、それが収まる前にまた引き戻されて突き挿れられる。声が溢れた。悲鳴に近い矯声が防音室に籠もる。
 体重不足なのか、机の上で突き上げられるたびに徐々に上に行ってしまう私の身体に、神津君が片脚を抱えて引き戻す。気持ちいい。気持ちよくて狂いそうになる。とろとろの膣口から腰や内腿にかけて神津君の引き締まった身体が打ちつけられるたびに卑猥な音が鳴り、引き戻すたびに粘液室な濡れた音が鳴る。
 また生で貫かれてしまった。とても硬くて太いものがごつごつと女の肉を抉って、粘液が絡みつく。射精の時でない男の人の液体には精子が混ざっていて、いくらピルを飲んでいても避妊確率は完璧ではないと判っているのに…神津君の体液を身体に注がれる事を意識するだけで頭の中がとろんと溶けて全身が悦びに浸ってしまう。
 神津君の抽挿はとても大胆で、以前未体験だった時に想像していた交わりとはまったく違う。最初はロープウェイの中で、今は机の上だから普通でないのは仕方ないけど、ホテルのベッドでも滅茶苦茶な激しかったから、多分そういう感じの人なのだろう。一応比較出来る対象が複数存在するのが少し胸に痛いけど、でも今こうして貪るのが神津君だからかなり救いがあると思いたい…それより今神津君しか考えられなくて、幸せ。

 ぐちゅぐちゅととても恥ずかしいあからさまな音を立てる愛液が結合部で泡立っていく。石鹸ならともかく粘液で泡が出来るなんて想像もしてなかった。ほとんど柔毛の生えていない私の下腹部とは違って神津君の下腹部にはしっかりと生えている。黒と肉色のコントラストがとても鮮明で、それが生白い私の下腹部にぶつかり突き挿れられていく画は…大人が子供を暴行しているみたいにすら見えてしまう。とっても大きくて太くてグロテスクな幹が肌色と淡い肉色のシンプルな谷間を目一杯圧し拡げて飲み込ませる。咥えさせて馴染ませる。悲鳴をあげながら吸い付いてしまういやらしい牝肉をキツくお仕置きしてもっといやらしいものへと染めていく。
「――ぃ…い……!きもちいぃ、はぁ…ん! こ…これっ、これ…してほしかったの……っ、きもちいい……っ」
 ぎしっと軋む机の音と腰が打ちつけられる音を聞きながら身悶えた私の視線の先で、カーテンの隙間が映る。カーテンの隙間から見える青空。いい天気。不健全だなと少し思うのに気持ちよくてどうでもいい気がしてしまってだらしない。
 最上級生になったのに貧弱な私の身体は神津君の動き一つで簡単に揺さぶられて机の上で動いてしまう。突き挿れから逃れてしまうみたいでもったいなくて、思わず机の縁を手で掴んで、少しでも動かない様に懸命に踏ん張ってみる。そんな私を見下ろす神津君が意地悪そうに嗤う。
「お前順応早いな」
「……、そうぃ…うの……っ…だめ……?」
「あまり痛がると萎えるかもしれないから、助かる」
 意地悪そうな嗤いが愉しそうなものに変わる。その間も激しい抽挿を止めてくれない辺りが意地悪なのに、たまらなく異性のにおいを感じてしまって恥ずかしくて気持ちがいい。そんな神津君を感じるたびにもっと苛めて欲しくなるなんて、どうしようもない感覚なのかもしれないからとても言えない。
 平衡感覚が狂って、机にしがみついていないと身体がどこかに行ってしまいそうな錯覚。快楽に全身を跳ね上げてしまいながら、両手で机の端を掴む私の胸が卑猥に弾む。仰向けだから水平に崩れている筈なのに、ぷるんぷるんと胸が揺れて、つんと尖った子供っぽい色の薄い乳首がせわしない動きに残像を残す。
 神津君の呼吸が少し弾む。広い肩幅に白いYシャツがとても似合っていて見とれていたいのに、机よりもっと確かな存在に思えてしがみつきたくなる。机もカーテンもそこに確かにあるのにすべてが溶けて消えてしまいそうな怖さに声が溢れてしまう。

 擦れる。ぐちゅぐちゅと音を立てて神津君のものが膣内を拡げて密着して牝肉を神津君の形にして動く。膣口まで引き戻される時も膣奥まで突き挿れる時も神津君の形。鰓が擦る。いっぱいなのに、滅茶苦茶に激しい動きなのに、傘の先端も鰓も寸前までの神津君の形になっていた私の膣肉を苛める。
 甲高い矯声が防音室に籠もる。ホテルでも少しは我慢したけれど、ここは防音がしっかりしているから大丈夫だろう。堪えずに声を上げられる事がたまらなく気持ちいい。神津君が腰を打ちつける音もとってもいやらしい。全身が汗まみれになって、濡れた衣擦れの音が机と身体の間で繰り返し鳴り続ける。
「槙原、ピルは?」
「はぁ…う!あぅぅっ!あぅ…っ、あん!だ、だいじょ……ぶ……ぅっ……はあんっ!」
 少し上擦った神津君の声に答える。今日はせいぜい始業式しかないのに。流石にその程度で貧血で倒れる事は滅多にないから飲まないでいいのに。――体調管理の為じゃなくて、神津君との為に飲んでいた。
 抱えられた脚が更に身体へと折り曲げられて、密着度が増す、膣奥を突く回数が増えて動きの幅が小さめになる。膣奥とその手前を重点的に抉られていると、何だかおかしな場所があるのに私は気づく。膣奥の手前のどこかに何だか敏感かもしれない弱い場所がある。神津君の傘がそこを擦るたびにぞくぞくともどかしくて辛い重い痒みが身体の奥を浸食する。その正体が判らないと思った瞬間、頭に血が昇る。
 いつの間にか膣だけで感じてしまってる。クリトリスの補助なしで。セックスで。
 今更な自覚が不思議と衝撃的で、でも…神津君とのセックスで女として目覚めさせられたなら、恥ずかしいけれど嫌じゃない。
 ずんと子宮口を神津君の傘が突く。精液を流し込む場所が生で子宮を叩く。避妊しているのに、たまらなく生々しい。神津君が射精したがってる。まだまだ学生の身分なのは重々承知で、でも動物的な生殖本能は消えてはくれず、逆に若いから本能は強烈なのかもしれない。

 腰同士がぶつかる。私のお尻は肉付きが薄いから痛そうなのに、神津君は腰骨に響くくらい打ちつけてくる。獣みたいに熱に浮かされた感じなのに不思議と儀式めいた真面目な空気が流れていて肌がぴりぴりした。初めての時なら判るけれどどうして今こんな感覚がするのか判らない。でも、神津君とこういう空気が共有出来るのが嬉しい。相手に選んでくれているのが嬉しい。
「ぁ……あ! く…る……っ、こうづく…んっ……こうづくんっ、こうづくぅん……っ!」
 全身が机の上でがくがくと暴れて内腿が痙攣して、上履きの脱げた足の爪先が限界まで縮こまる。腰が跳ねるのを脚と腰を抱えた神津君が力任せに押さえ込んで捩じ伏せるのが、たまらなく男らしくて力強くて卑猥で頼もしくて申し訳なくて少し怖くて恥ずかしくて気持ちよくてきもちよくて……。
 あられもなく喘いで鳴きまくる私の膣内で神津君のものが更に大きくなって、膣肉で反り返って、そして膣奥に傘の先端を押しつけたままどくんと跳ねた。
 膣奥に熱いものがはぜる。そう大して量はない筈なのに膣内でやんちゃに跳ねまくるたびにどぷっと注がれる感覚に、全身が弾ける。精液。神津君の精液。下半身を押さえ込まれたまま、背筋が限界まで反り返る。ただ熱い精液が膣内にたまっていくと徐々に化学反応みたいに熱くなっていく。まるで異物への拒絶反応なのに、それがとっても熱くて沁みて充実感で頭の中が高い空に放り出される。
 気持ちいい。
 神津君の精液が、射精したのにあまり萎えない元気なものが、悦んでる膣内にあって、手が精液の最後の一滴まで注ごうとしているみたいに私の脚腰を抱え続けてる。
 びくんびくんと跳ねる私の腰の奥が溶ける。もっと注いで欲しい。最後の一滴まで。今日は神津君だけしか受け入れていないのがとても嬉しくて…それなのに、貪欲になってしまう。
「――まだ余裕あるな…もう一回くらいいいか?」
 少し満足そうな緩い息を漏らした後、時計をちらりと見る神津君に、聞かなくても気持ちは決まってるのになと素直に思いながら私はうっとりと呼吸を漏らす。
 始業式などの式典が長い学校でよかった。以前は貧血になりやすい体質もあって挨拶の長い校長先生達が苦手だったけれど、今日はそれがありがたい。
 ぶるっと身体が震える私の頬を撫でた神津君の手が少し汗ばんでいて、私一人だけが汗を掻いていない事実が嬉しい。
 まるで枕の中身の鳥の羽が飛び散ったみたいに、ふわふわと漂いながらゆっくり私が落ちていく。このまま眠れたらきっといい夢が見れるんだろうけど…でももっともっといやらしい事に溺れてみたくもある。
 ひくひくとざわめき続けて余韻から抜け出ない私の中で、少しだけ弛んだ神津君がまたぎちぎちに硬くなっていくのを感じながら、私は頷いた。

 片脚を抱えていた神津君が私の脚をまっすぐ上にあげさせて引き寄せた。机から腰が浮いて肩と背中だけで転がっている状態なのに安定しているのは、神津君に力がある為だろうか…と考えてもう一ヶ所支えというか留めてる場所があるのを思い出して頬が熱くなる。
「半月足らずだと流石に変わらないな」
 結合部に容赦なく注がれる視線に、激しい抽挿でのぼせていた頭が羞恥で灼き切れそうになる。腰をひねって背中を丸めているから胸だけでなく薄っぺらな私の腰骨や肋骨が視界に入ってしまう。実に貧弱で情けない。視線を感じてびくびくと震える私を甚振る様にゆっくりと神津君が腰を動かすと、空気が揺れて精液のにおいが漂ってきた。
「は……ぁぁ……ん…っ……、ゃ……ぁ…いやらしぃ……におい……ぁぁん…はずかしい……」
 一度射精をして余裕いっぱいなのかとても意地悪な遅さで腰をじりじりと動かす神津君に、私は机の上で顔を隠そうとして、その手首を捕まれる。
「ほら」
 私の手を導いて神津君が結合部を触らせた。酷く密度の濃い粘液が指先に絡みついて、水饅頭みたいなぷりぷりの粘膜と、加熱した金属の棒みたいな太い幹の上で指が滑る。太い。太くて逞しくてとっても熱くて…こんなものを抽挿されてしまうのだから頭が変になっても仕方ない気がした。
 牡と牝のにおいが籠もった防音室で、私の指が互いの性器を愛撫するたびににちゃにちゃと音が涌く。血管が浮かんでいる幹がとても凶暴で、でも血管の段差なんて大して効果ない気がするのにとっても卑猥でぼうっとしてしまう。
「わたし、こうづくんのおもちゃでいいの……?」
「……。あまり的確な言葉が思い当たらない。女友達やセックスフレンドは『友達』だろう? 何か違う」
「そうかも……」
 微妙な表情をする神津君に、私はまったりとした恍惚に浸りながらくすっと笑う。

 友達というのはもっと互角な関係だろう。相手に過剰に心酔している今の状態はとても互角とは言えない。私の気分的には飼い主とペットなのだけれど、それは言わぬが花だろう。それよりも気になるのが、今日は乱交ではないから神津君としては物足りないのではないかという心配だった。――でも神津君には悪いけれど、異物挿入や電車内で佐々木君も攻めに加わっていても、今日は神津君とだけしかセックスしないで済んでいるのがとても嬉しい。
 神津君は恥ずかしくなるくらいにしげしげと結合部を見下ろしている。見ていて変わるものでもないと思うのに、まるで視線に圧力がある様に肌に痛い。せめてもう少し柔毛が生えていてくれれば見えなくなるのになとどうにもならない事を考えながら、私は神津君を撫で回す。
 背中を丸めているから普通に手を下ろしているよりも指の届く範囲は広い。仰向けで両脚を上に抱えあげられる体制はあっても、更に片脚だけ上げて腰をひねって上げる体勢は初めてだった。腰の高さはそう変わらなくても、角度の問題なのかこれだと神津君はあまり膝を曲げないで済むらしいけれど、私としてはかなり恥ずかしい。
 その恥ずかしさから逃れたくて結合部から下へと手を伸ばすと、引き締まった身体にそんな部分があるんだなぁと思わず考えてしまう少し肌が薄い場所があって、そしてざらついてる袋にたどり着く。指でそっと撫でると中にある瘤みたいな塊がくにゅりと逃げる。
 自分の身体じゃないし、かなり馴染みのない男の子の身体だから怖くて力なんて入れられなくてそろそろと撫でるしか出来ないから、気持ちいいのか痛いのかもまさに手探りになってしまう。しかもどれだか判らないけど、確か激痛になる場所もある筈。少し知識として興味があるけれど、神津君を痛い目に遭わせるなんて絶対にしてはいけない。
 こっそりと神津君の顔を見上げると、何だか気難しそうな表情になっている。
「これ、いたい……?」
「いや、まんざら悪くない…お前本当にあれが初めてだったんだよな?」
「……。それをいちばんよくわかっているの、こうづくんだとおもうんだけど……」
「……。悪い」
 多分不愉快ではないらしい神津君の質問に私は少しだけ拗ねたくなる。あんな痛い思いをしたのに疑われるのは不本意だったけれど、あっさり謝られるともう酷い言い方を自分がしてしまったのではないか困らせていないかおろおろしてしまう。確かに卑屈かもしれない。
 でも何だかとんでもなく卑猥な事をしている気がして、手を引っ込めようとする。
「槙原」
「で、でも……、さ、さわりにくいから……」
 確かに幹と脚の間に手を差し込んで触れる場所は狭くて、でもあと少しなら触れるけれど、それよりおかしな場所まで愛撫したがるはしたない子だと思われるのは怖かった。神津君の希望なら避けてはいけないのに…どうしようもなく恥ずかしい。

 ふぅんと見透かしているのか納得してくれたのか判らない様子の神津君に、私はそろそろと指を戻す。
「まぁ、時間がないか」
「え?」
 時計を見るともう九時近い。今日は授業なしで始業式とホームルームだけだから式がズレ込む事はあるかもしれないけれど、もう三十分近く過ぎているなら確かに余裕はないだろう。――でも、でも、何だかまだまだ消化不良な感じがして……。
 神津君が私を見下ろしてにやっと嗤った。
「まだ物足りなそうだな」
「そ、そんなことないから」
 少しまったりしていたのにまだ燻ぶってる感覚が強くて、何となくまだまだし続けるんだろうなと考えていたのを見透かされたみたいで、私は慌てて首を振る。意地悪そうな…いや意地悪な表情を浮かべた神津君は机の隅に放り出してあったバイブレータを拾い上げた。
「これなら着けていってもバレない」
「え…? だ、だ、だって、そんな、はずすためだったのに、そんな」
 どくんと心臓が鳴ると同時に膣が神津君のものを締め付けて、まるで嘘発見機の様に私の動揺が伝わってしまう。本末転倒なのに、それがバイブレータで振動しようがしまいが神津君がもたらす性的な悪戯というだけで身体が無条件に反応したがって疼いてしまう。
「放課後だとここは放送委員が使うだろうし、時間持て余すだろう?」
「じかんって……なにの?」
 始業式はサボってしまっても、出来ればホームルームや掃除はちゃんと出席しておきたい私はかなり神経が太いのかもしれない。男の子に膣内射精させて汗まみれで…ここは今日は欠席にしておいた方が自然だろうし、私の貧血歴は結構気合いが入っていて先生方もご存じだから交通遅延の満員電車で体調を崩したと言えば誰も疑わない。でも、出来れば欠席は少ない方がいいに決まっている。
 呆けてしまう私に、神津君が少し気まずそう視線をそらす。
「俺としてはまだ物足りないんだが」
 そんな事を言われてしまうと嬉しくて何をされてもいい気がしてしまう…ただ単に絶倫派だから肉体的欲望百%なのかもしれないけど、でも、好きな人に求められるのはとっても気持ちがいい。でも、手にある物はとても剣呑。

「えー…と、その……つまり……」
「場所は考えておくから後で続きをしたい。いいか?」
 でもそれがその手のバイブレータとどう繋がるのか判らない。私がどう答えていいのか戸惑っていると、神津君が腰を動かした。ずぬりと傘が膣奥にまた突き刺さり、もう完全回復している猛々しいものに声が迸る。もう制限時間で終わりだと諦めていた身体に灼熱のものがたまらなく効いて、まだまだ余韻で陶酔している牝肉が一気に煽られてしまう。
 瞼と粘膜と全身がぎゅっと縮こまろうとして、そして神津君に貫かれた柔肉だけが貪乱に蠢いて吸い付いて絡みつく。はあぁと卑猥な吐息が漏れる。膣内を抽挿で抉られ攻められる感触に紛れて、結合部から重たい粘液がどろりとこぼれてお尻へと伝っていく感触がして恥ずかしい。溢れるのは当然だから仕方ないけれど、何となくもったいなく感じる自分が変で嫌になる。
 ぞくぞくして全身が小刻みに跳ね上がってしまう。また達してしまいそうな予感に頭の奥がぼぅっとして考えられなくなってくる。頭の中が神津君のおちんちんでいっぱいになるのが恥ずかしいのに、とても気持ちいい。
「ぁ……っ、あぁ…んっ!いぃ…、きもち…ぃぃ……っ、くる…ぅっ……こうづ…くぅん…っ……おくにずんずんあたるぅ……っ」
 舌が宙を掻いてしまうのは電車内の神津君のキスが凄かったからかもしれない。口の端まで滅茶苦茶に密着させて食べられてしまいそうなキスはライオンや虎みたいな肉食獣の食事みたいで、とても野生的でエッチだった。声を抑える為とはいえ、あんなキスをする人だとは思わなくて、その側面を見てしまった恍惚と見せて貰えた嬉しさと恥ずかしさがたまらない。またあのキスをして欲しいなんて無理かな?と期待してしまう。インテリはエッチな人が多いという俗説は本当なのかもしれない。――もっとエッチな事をぶつけられたい、受け入れたい。

 そろそろまた達しそうになって机の上でがくがくと腰が跳ね出した途端に、いきなり神津君が腰を引いた。
「――え……?」
 頭の中がちかちかしていて幸せだったのに、突然どこかに放り出されてしまったみたいな違和感に、私は呆然とする。
「そろそろ時間だろう?」
 それは確かにそうだけど、だったら先刻で終わらせた方がキリがよかったのではなかろうか…不満が表情に出てしまったのか、神津君が苦笑いを浮かべた。優等生な神津君の乱れた制服姿は、男の人なのにとても色っぽいというか男の人の色気が濃厚で見ているだけでぞくぞくして、そして意地悪な表情がそれにたまらなく似合っている。本当にこの人とエッチな事をしていたのか、まだやっぱり夢を見ている気分になってしまう。
 のろのろと身体を机の上で起こしていくと膣口がまだ開いていてどうしようもなく疼いてしまう。それよりも服が酷い。乱れているのは直せるとしてもブラウスは汗を吸って重たく濡れているし、スカートもブレザーも同じく濡れて皺だらけ。満員電車で汗を掻いたなどの言い訳は通用しないだろう。
 かちゃりと音がしてドアが開いた。
「きゃ……!」
 廊下との間には佐々木君のいる機械とロッカーの部屋があるからいきなり誰かが入ってくる筈がないのを忘れて悲鳴をあげてしまった私に、佐々木君が少し驚いた顔をした。
「……。タイミング悪かった?」
「いや。そろそろ終わり」
 その手にある白いジャージを、胸元と腰を隠す私に佐々木君が差し出してきた。
「これに着替えていいよ。女子用だしサイズも多分合ってると思う」
「え…?女子用って……どうして?」
 背が高くない佐々木君のジャージならサイズ的にあまり問題なく借りられそうだけど、女子用となると誰のジャージなのだろうか?無断で使える委員会用のジャージなどが存在するのだろうか? そんな疑問が浮かぶけれど、確かにこのままだとホームルームどころか帰宅すら怪しい格好なのは事実だから私は白いジャージを受け取ってしまう。
 脚を合わせて片手で胸元を押さえながら見ると、白地に灰色の洒落たデザインのジャージは着て恥ずかしい物ではなさそうだった。
「何で今更隠すのか?」
「羞恥心じゃないのかな」
 佐々木君はともかく、まるで他人事の様な神津君の声がたまらなく恥ずかしい。そう言う神津君は別段恥ずかしそうな素振りもなくウェットティッシュで下腹部を拭って服装を整え始めていた。

 自分だけが取り残される焦りはあるけれど…全身がびっしょり汗で濡れていていやらしいにおいが漂っていてはただがむしゃらにジャージを着るだけでは間に合わない。それに借り物のジャージを必要以上に汚すのも躊躇われる。
「あ、忘れてた。濡れタオル」
 くるりと踵を返した佐々木君が数秒後に戻ってきて差し出したのは畳まれたタオルだった。とりあえずジャージを置いた手で受け取るとかなり熱い。
「電気ポットでお湯沸かせるんだ、ここ。――で、さ…もしかして僕邪魔?」
 至れり尽くせりの佐々木君を邪魔者扱いをするのも躊躇われ、私は視線を床に落とす。
「そんな事…ないけど……」
「ここまで用意して貰って追い出す程恩知らずじゃないだろう?」
「う…、うん……」
 身体を拭きたいから出来れば二人とも背中を向けて欲しいのに、神津君はネクタイを締めながら、佐々木君は床に転げている私のローファーを直してくれながらこちらを見ている。
 恩知らずという言葉が少し胸に刺さる…やっぱり神津君にとっては他の男子は大切な友達だろうし、それに乱交好きとしては私だけだと物足りないのかもしれない。つんと鼻の奥が痛くなる感覚を誤魔化したくて、今の気持ちを否定したくて、しなくてはいけなくて、何度か胸に空気を吸い込む。切り替えないと嫌われそうで怖い。もっと前向きに考えないと。――もっと前向きに…そう念じていると、何か気づきたくないいけないものが意識の底から浮かんでくる感じがした。気づいたらいけない、神津君に喜んで貰う方法。
「あの……、出来れば向こうを……」
 それだけ言えば判って貰えそうなもので、そして二人が顔を見合わせたのは伝わったからだと思い…そして二対の目が机の上で身体を縮こまらせる私を見下ろす。悪戯っぽい視線で。
「見られながら自分で拭くのと、拭かれるのとどちらがいい?」
 神津君の言葉に、佐々木君が片方の眉を少し上げる。
 もう時間がないなら早く済ませてしまった方がいいのに、そう考えるのに胸が早鐘を打ってしまう。もういやらしい気分を振り払わないといけないのに。頬が熱くて口篭もる私の頭を、まるで犬猫や子供の様に神津君の手が撫でた。
「それとも佐々木のにサービスしている間に俺が拭こうか」
「ぇ……」
「こんなに至れり尽くせりなら佐々木にも役得がないと変だろう?」
 ぞくんと背筋がざわめく。確かに佐々木君もそう言った事の面子の中の一人で、してしまった間柄だったけれど、今日は神津君だけを感じていればよさげだったのに…と憶えてはいけない不満が少し浮かんでしまう。――そして、妖しい感覚も。

 いいのかな、そんな表情を浮かべている佐々木君と、冷静だけどかなり愉しそうな神津君の表情に、私は何度も深呼吸を繰り返してから胸元を隠す手を下ろす。どくんどくんと心臓が騒いで、淋しい膣口が蠢いてとろんと濃い潤滑液が溢れていく。
「脱いで拭きやすくて舐めやすい体勢をとってみて」
「は……ぃ……」
 机の上で自分の身体が濡れた制服を脱いでいくのがまるで他人事の様だった。神津君と佐々木君の視線が肌に絡みつく。噛み痕もキスマークもついてる身体を他の男の子に晒してしまう。神津君にいやらしい事をされてしまった身体を見せてこんな事をされてしまってると主張してしまう。
 周りに円形についてる軽い充血した噛み痕の中心で、こりこりに硬くしこった子供っぽい浅い色の乳首。キスマークの方が色が濃い。エアコンで暖められている部屋でも急速に冷たくなっていく布の感触は不快なのに、それを脱いでいくと不安な感覚と恥ずかしさと奇妙なこそばゆさが全身に沁みていく。
 貧弱な身体。太ってしまうのは困るけれどもう少し女の子らしい柔らかい曲線というのが欲しい。肋骨も腰骨も大きな造りでないのに脂肪が薄くて目立ってしまう。脚もそう。唯一の利点と言えば邪魔になりにくい程度で、身体を重ねると痛いだろう。そこに不似合いなみっともない淫らな胸。――それなのに、二人の視線が全身に絡みついてくる。防音室はエアコンを効かせていても気圧が変なのか、静かで何となく息苦しくて、私の呼吸の乱れが大きく聞こえてしまう。服を脱ぐのに、身体が更に熱くなる。
 最後のブラジャーまで机の隅に置いて、私は机の上で視線をさまよわせてしまう。どこを見ればいいのか判らない。
「槙原、どんな体勢が舐めやすくて拭きやすいと思う?」
 そんなの私が聞きたいくらいで、次にどうすればいいのか本当に判らない。そして、神津君に言われて嫌々口戯をするのではなくて、何故かそう進むのが自然な気がしてしまう自分が判らない…怖いではなくて、判らない。
「どんな体勢でも拭かせながらフェラチオは難しいと思うよ」
「お前、結構キツくないのか?」
「それは…あんなの見聞きしてたから少しきてるけどね」
「……。どう思う?」
 あっさり淡々とまるで朗読しているみたいな佐々木君の口調とその内容に動揺する私に、神津君の問いが追い打ちをかける。見るのは確かにガラス越しで可能でも防音室なのだから音漏れはない筈なのに。それとも高校の放送室の防音など大した事ないのだろうか? いや、そんな事よりも神津君の質問の方を考えなければ。つまり……。
「あんまり…アクロバットは得意じゃないと思うの……」
 それより佐々木君のものを舐めながらだと拭く担当は神津君になってしまう。ホテルで洗って貰ったりしているけれど、そういうサービスは恥ずかしくて仕方ないし、神津君がすると綺麗にして貰う間にまた汚してしまうだろう。想像するだけで顔が火照ってくる。
「うーん…また今度でいいよ? 今日は見物だけで十分」
「そうか?」
 どくん。やっぱり淡々と諦める佐々木君と同じくあっさりしている神津君のやりとりで芽生えたのは……。
「そんな……悪くない?」
 私の問いに、ばらつきかけた視線がまた私に集中した。

「あと何分?」
「十四……いや三分」
 私の前と後ろで声がする。
 口と下腹部が灼けてぐちゃぐちゃに溶けていく。溢れた唾液が伝って口元から顎を伝って喉へと流れる。口内いっぱいの男の子の性臭が肺を満たして小鼻から犬みたいな鳴き声と共に漏れた。
 肘をついたままでも佐々木君の高さに合わせた半端な体勢は少し辛くて、何度も横たわりたくなる。がくんがくんと全身が跳ね上がる中、口だけでも位置を留めようとそれに集中する…集中しようと意識しないとすべてが吹き飛んで判らなくなる。
 バイブレータがぐぽりと音を立てて引き抜かれて、そして捩じ込まれた。神津君が操っているだけで魔法がかかるのに更に振動している。佐々木君が見下ろしている。脚を限界まで開いて身体中を男の子に苛めて嬲って貰いたがっている浅ましくていやらしい牝になってしまう。精液のにおい。バイブレータにどろどろに絡みついている愛液と精液の混ざった白濁液。恥ずかしくなるくらいいやらしい状態なのに、止められない。
 神津君のより小振りな佐々木君のものは、口に頬張っていても呼吸も何も出来なくなって死に物狂いにならないで済む。舌を使う余裕があって、鰓のくびれをひたすら舐め続けると佐々木君が呻き声を漏らす。前は他の人のものは口にするだけで精一杯だったし、神津君のだと舐めるだけならまだしも、頬張ろうとすると大きいから唇の端も顎も痛い上に呼吸が出来なくてもう何が何だか一生懸命なばかりになってしまう。
 神津君にこうしてあげたいな。
 佐々木君の立場がないとは思うけれど、やっぱり私の判断基準は神津君になってしまう。とろっとした潤滑液と唾液の混ざったものを飲んで喉が動く。
 佐々木君はあまり印象的な人ではないけれど、エッチな事をしている時は印象が違う…凄くサービス精神旺盛な気がする。自分の快楽をそれなりに優先しているのが判る他の男の子と違い、愛撫っぽい動きが多くて執拗で何だか怖い。恐怖と言ってもストーカーとか粘着の類ではなくて、女の子を感じさせようとするそれを気持ちいいと感じてしまうのは神津君への裏切り行為になってしまう気がする。
 頭を、頬を撫でる。あまり手慣れていない感じなのに、その動きはとても優しげで振り払いたくなってしまう。神津君だけを感じたいのに、神津君だけに応じたいのに。
 身体中がとろとろに蕩けていく。

 机の上に座って肘をついて上半身では佐々木君のものを口に咥え、下半身は限界まで脚を広げて神津君が操るバイブレータに牝肉を滅茶苦茶に弄ばれる…いやらしくて恥ずかしくて隠れたい筈なのに、気持ちよすぎて全身ががくがく跳ねて腰が上下してしまう。
 肉付きのよくないお尻が達しっぱなしで硬い机の上でゴム鞠の様に弾み続ける。膣口がぐびぐび唸って白いバイブレータをキツく締め付ける反応を苛める様に神津君が傘を模した塊を膣口のくびれでぐいぐい引っ張った。
 抜かないでぬかないでもっと膣肉いじめてぐちゅんぐちゅんに掻き混ぜて、そんな言葉が佐々木君の潤滑液と唾液と一緒に喉を滑り落ちていく。本当は違うものが欲しい。神津君のおちんちん。意地悪なくらいに元気で何度も復活して私を苛めまくって狂わせてくれる大きなあれでもっともっともっと掻き混ぜて欲しい。激しい抽挿を思い出すだけで膣がぎゅっと収縮して膣口から濃厚な粘液が溢れて神津君の手を更に潤滑液まみれにしてしまう。恥ずかしい。こんなにたっぷり濡れる。学校で、朝に、皆がそろそろ戻ってくるのに。
 佐々木君の手が耳から顎までを優しく撫でながら動きを操る。他の男子みたいに自分の快楽を優先して私を激しく揺さぶらない、咥える動きを補助する優しい仕草なのが辛くて苦しい。神津君以外の相手の個性や人格など深く考える必要はないのに、神津君の考える複数での行為は神津君以外の人も気持ちの中に入れないといけないみたいで、佐々木君の人格や嗜好を受け入れるとその分神津君を思う部分が削られてしまいそうで。自分の器の小ささが情けなくて、でも考えたくない。
「そろそろ」
 佐々木君の上擦った声の直後、神津君がバイブレータを捻った。クリトリスの辺りにあるべきブラシがお尻の方に回って振動しているのがたまらなく恥ずかしくて、全身がぎゅっと縮こまって頬が燃える様に熱くなる。お尻の穴に当たってる。変な振動がお尻を苛める。一番駄目な場所をエッチなものが揺さぶってる。
「んぅー……っ!」
 恥ずかしくて死にそうで喘ぐ私は、汗まみれの内腿とその付け根に柔らかく触れる髪の毛の感触に目を見開く。神津君の頭が私の脚の間にある。ぬるぬるでバイブレータを挿入されたままの場所を至近距離で見られる恥ずかしさに身体が凍り付く…凍り付くのに、腰ばかりが淫らに前後していた。

 クリトリスをぬろんと舌に舐め上げられた瞬間、頭の中で火花が散る。
 クリトリスから頭の奥まで背筋で一本の電線が弾けたみたいに全身を貫いた後、じわじわと痺れが広がっていく。とぷっと愛液が溢れて、それが精液のにおい混じりなのが恥ずかしいのに嬉しくてもったいない。気持ちいい。どろどろの場所なんかを神津君に舐めさせてしまったのに、とても気持ちいい。膨れきってるクリトリスに神津君が息をかける。まるで誕生日ケーキの蝋燭を吹き消す様な、少し強い意図的な空気の刺激ですら気持ちよくて、全身をくねらせたくなる。
 ぶるっと身体が震えて瞳を開けた私の視界で見下ろしている佐々木君が笑っている…悪戯っぽくもとても愉しそうでも陰湿でもない、仏像的な曖昧な笑みで、それは線の細い佐々木君らしい笑みだった。射精しそうなのに何でそんな表情なのか判らなくて、何か怖い。
「可愛いね、槙原さん」
 咥えているから口が開いていてだらしのない顔をしている筈なのに、そううっすらと考えた瞬間、神津君の歯が息がかかるだけで感じてしまうそこに当てられた。
「――!」
 噛まれると察した瞬間、ぞくりと身体中がざわめく。今噛まれたらキツすぎる。それなのに身体の芯がそれを欲しがっている…歯を当てて全身を跳ねさせた私を弄ぶみたいにゆっくりと歯が動く。膨れきったいやらしいクリトリスを卑猥に甚振るこそげ落とす様な動き。やめて、やめないで、まだしないで、すぐにきて、怖いから待って。一瞬で期待と不安と怯えと疼きが絡まり互いを押し退け合う。
 唇が震えながら佐々木君の幹をきゅっと吸い付いて、頬がへこむくらいに口内をいやらしいものに密着させる。興奮した呼吸が小鼻から漏れて、頭の奥がぽぉっとして舌が傘の先端の裂け目を何度も何度も舐り続けてしまう。いつ達させられるか判らない不安と期待で頭の中がどろどろになる。きっと佐々木君のタイミングに合わせて達させられる、口の中に精液を出されて、神津君の前で。
 少し駄目なのに、気持ちいい。狂いそうに焦れて、見られて、感じてる。

 佐々木君の裂け目に少し尖らせた舌の先端を捩じ込んだ瞬間、佐々木君の腰ががくんと跳ね上がって、頭をしっかりと固定された。
 舌を捩じ込んでいた傘が幹もろとも口内で叩く様に反り返って下唇の中央で縦一直線の襞の辺りがどくどくと脈打ち、舌の先から重たくて粘りけのある熱い液体が口内に溢れていく。精液。わずかに遅れて鼻の奥に癖のある精液のにおいが溢れかえる。神津君の膣内射精よりも距離が近いせいか、頭の芯まで一気に精臭が広がる。口蓋にぬるりとした熱い粘液のつぶてが弾けて口内に滴り、同級生の男子の濃い精液をまだ続く痙攣で傘が自ら塗りたくる。口内を、舌を、歯を、喉を男の子のいやらしい獣欲の粘液が汚すのに……。
「――ぁんんんんんんんんんんー!」
 射精に一瞬遅れてクリトリスを噛まれて、私の全身が跳ね上がる。押さえている神津君の手を跳ね除ける様に腰がガクガクと暴れてしまうのに、神津君が噛んだままのその一点だけが押さえつけられたままだった。痛い。痛すぎる。まるで昆虫採集の虫がピンで止められたみたいな無理矢理の激痛なのに、頭の中が真っ白になって膣内がぎゅっと限界まで縮こまって、膣の収縮でバイブレータが勝手に奥へ奥へとめり込んでいく。
「いやあああああああああああ!」
 悲鳴なのに、とても甘い。
 泣き叫んだ次の瞬間、佐々木君のものが口内から跳ね上がって鼻先にまだ溢れている精液がかかった。至近距離で脈打つたびに白濁した粘液が生々しい肉色の傘の先端から飛び散って、顔から胸元までに降りかかる。愛液が混ざらない精液は白く濁っていて、飛び散るのが不思議なくらいに濃厚だった。
 びくんびくんと目の前で佐々木君のものが震えるのが、急に怖くなるのに、身体はうっとりするくらい気持ちよくて、全身で呼吸を繰り返すたびにクリトリスの辺りから爪先までありとあらゆる所を静電気みたいな切ない疼きが駆け抜けていく。
 終わった。ようやく一段落つけられる…そう思いながら、身体がずるずると机の上に崩れる。頭まで机の上に落ちて、そして視界にカーテンの隙間から見える空が入る。
 とても綺麗な空が、眩しかった。

 二人がかりの大急ぎの着替えでも間に合いそうにないのは、私の腰に力が入らないのと、上半身と下腹部から漂う精液のにおいの為だった。
「ぶっかけ禁止」
「膣内射精もあれだと思うよ」
 お互いに軽口で責任転嫁し合っている神津君と佐々木君を眺めながら、私は何とか髪をとかす。とても身体が重くて、でも貧血の不自由さとは違っている感覚が何だか新鮮だけれど、迷惑をかけない程度に動ける様になりたい。ロープウェイの時は手並みのいい人達だと考えていたけれど、慌てると少し力加減を忘れてしまうのか、まるで子供の食べこぼしを拭うお父さんの様で、そんな想像をさせる彼らがどこか微笑ましい。
「――え?ぇ……えと?」
 いきなり私を背負う体勢をとる神津君と、呆然とする私を神津君に背負わせようとする佐々木君に、私は二人を見比べる。
「急ぐぞ」
「保健室の方がいいよね、においもあるし掃除サボれるよ。今なら校医さんグラウンドに行ってて無人だろうし」
「で、でも」
 反論しようとする間に、ジャージ姿の私は神津君の背中に背負われていた。久々の感触やにおいや広い肩幅に一気に耳まで熱くなってしまい、思わず俯く。前はスカートで今日はジャージ…でも下着を着けていないからお尻や腿を抱える神津君の手の感触が中途半端に生々しくて、直接触られるより卑猥な気がして全身が縮こまる。
「着替えた理由となるとただの貧血は通用しないからのぼせて鼻血とか人混みで酔って吐いたとかになるだろう? クラスの女子にそう言い訳するのは不名誉なんじゃないか?」
 嘔吐はやっぱりイメージが悪いけれど、一番イメージを傷つけたくない相手にそれを提案されてしまうと、どう答えればいいのか判らない。
「流石に制服の持ち合わせはないよ」
 佐々木君が変な人に一段階降格してしまいそうな事を言ってるけれど、善意なのは何となく判るから、私は曖昧に笑いかけようとする。ジャージは私の身体のサイズに合っていて、結果胸は少し窮屈だけれど、裾を折らないで済むから私が購入するならきっと同じサイズになっただろう。女の子のサイズを当てるのが特技という人がたまにいるから佐々木君もその内の一人なのかもしれない。
 換気用なのか佐々木君が窓を開けると、ふわりとカーテンが風にそよいだ。
「荷物は任せていいか?」
「教室に持っていく?」
「俺の分は頼む。槙原の分は持っていく」
 機械室へのドアを開けて貰い神津君が背負ったまま私の鞄を手に取る。持ち直そうと軽く身体を動かされ、私は思わず神津君の肩にしがみつく。コートの上からでも判る広い背中なのに肩の厚みはそうがっしりしていなくて、そう鍛えている様には思えないのに簡単に私を背負ってしまう辺りが男の子なんだなとしみじみ感じてしまう。
「送って保健医の先生に話したら教室に戻ると思う」
「OK、校門の所と同じ事情で話しておくよ。じゃあ、お大事に」
 佐々木君が廊下へのドアを開ける。もう始業式が終わっている時間だから校舎内には人もいて、内緒話はもう終わりになるだろう。
 回廊からは木々とネット越しにグラウンドが見えた。神津君の視点だと世界が違う。踏み台一つの差なのに、私の場合だと木とネットと空しか見えない。神津君の視線の世界は遠くまで見える、そう感じただけで胸がどきどきした。
「吐いたのと鼻血のどちらにする?」
「……。どうしてもその二つしか選択肢ないの?」
「考えつかないな…何かあるか?」
「転んで破いたとなると明日無事な制服着ると変に思われるだろうね」
 情緒のなさが何だか情けなくて、でも神津君達が私の事を酷い扱いをしないのが少し嬉しい…性的な玩具だともっと酷い扱いをされるのではないのかなと春休み考えていて不安だったけれど、少なくとも神津君と佐々木君は紳士らしい。神津君がこのスタンスならば他の男子が変に暴走しそうになっても押さえてくれるだろう。
「でも貧血の人って鼻血出るのかな?」
「失血とかが原因で血液そのものが足りないワケじゃないから…でも鼻血は確かにあんまり身に覚えがないかも……」
「じゃあ嘔吐でいこう。宣伝して回らず酔ってダウンした事にすれば嘔吐おうと言わずに済むだろう」
 嘘とは言え神津君に嘔吐を連呼される方が何だか抵抗があるのだけれど…でも言い訳をしっかり考える辺り結構悪い所もあるなと考えて、何だか不思議な気持ちになる。憧れて好きになっているのに私は神津君の事を知っているのか知っていないのか。知らない人を好きになれる筈がないから一応知っている事にはなっていて、そして、多分知らない事がたくさんある。一対一よりも乱交の方が好きとは知らなかったし今でもそれはかなり同調しづらい嗜好だけれど、意外な面はもっともっとたくさんあるのかもしれない。――それを知るのが怖いと感じない自分は鈍いのかもしれない。女の子はもっと自分を大切にしないとと考えると両親の顔が頭に浮かぶ。確かにこれはよくない。
 でも、好きで、好きで、もっと神津君と一緒にいたい。神津君を知りたい。
「昼までにクリーニング出せば夕方には仕上がる所知ってるよ。商店街の」
「そこ、私も使ってる。間に合うように帰りたい…けど」
「……。判った。考えておく」
 二人で駄々をこねて神津君を困らせてしまったかな?と思いながら、そんな時の神津君は頼りがいがあって本当に格好よくて、背負われているのがもったいなくて見とれていたいなと考えてしまう。
 教室と保健室への分かれ道にさしかかり、佐々木君が私ににこりと笑いかける。
「顔にかけてごめんね」
「あ、後で保健室で顔洗うから、大丈夫」
 結構たっぷりと出された精液は拭って貰ってもまだ肌を突っ張らせて不快だけど、それを言っても仕方ない。基本的には悪い人ではないだろうなと考えながら、それでも完全な別格である神津君以外の男子とある一定以上仲良くなりたいとは思えないし、一対一でもしそういう事になりそうなら多分拒んでしまうだろう。もうロープウェイでの失態の様な落ち度はないのだから。流石にそこまで親不孝な娘になるつもりはなかった。
 神津君の肩に乗せた手がほんの少し動いてしまう。
 予定が遅れているのかグラウンドは整列がまだ崩れておらず、顔を洗う時間くらいは作れそうだった。人一人背負って階段を降り始める神津君に、何度か話しかけようとしてようやく声が出た。
「危ないから、降りて歩けると思う」
「腰に全く力が入らない人間は大人しく背負われろ。それにお前、軽いし」
「平地と階段の危険度って……」
「玲、言うことを聞け」
 どくんと身体が脈打つ。こんなタイミングで名前を呼ぶのはずるい。私はいいけれど神津君を転ばせたくないのに、口が何度動いても言葉が出てきてくれない。きっと顔が真っ赤になっているだろうけれど、誰にも見えていない。どういう基準の時に名前を呼ぶのかなと的外れな事を考えながら、私は神津君の背中で口を閉じる。
 職員室や保健室は中央校舎にまとまっていて、そう距離は離れておらず、階段を下りてしまえばすぐについてしまう。事務室の職員が二階から降りてきた私達を怪訝そうな目で見て、そして保健室への回廊に向かうのを見て納得してくれたのか会釈してくれた。

 グラウンドに皆向かってしまった校舎内に残っている必要はなくて、保健室はもぬけの殻になる。一応ノックして入室するとやはり無人だった。屋外へのテラス窓が開いたままになっていて、カーテンが風に揺れている。流しの前にある丸椅子に私を降ろして、神津君が一応ベッドを見回す。
「今の内に顔洗っておくか?」
 頷く私に神津君が膝の上に鞄を置いてくれた。フェイスタオルを取り出して、流しで石鹸を泡立てていると、神津君から面白そうな視線が注がれている。
「え…っと……、何かあるの?」
「いや、何で石鹸で生クリームみたいに泡立てるのかと」
「ホイップクリームくらいに泡立てた方が綺麗に洗えるの…知らない?」
「女の常識って奴なのか…面白いな」
 そう言えば女としては化粧している姿を意中の人に見られるのはよくない筈だけれど、私も化粧水と乳液くらいは使っている。神津君の前で使うのはやっぱり恥ずかしいかな?と悩みながら、私は顔を洗う。
「……。胸元はどうする?」
「……。どうしよう」
「とりあえず、口を濯いで」
「?」
 フェイスタオルで顔を拭った後、言われるままに携帯用ボトルのリステリンでうがいした私に、不意に神津君が背後から抱きすくめる形でキスをした。身長差のせいで肩越しに仰のいてのキスは、私が少し背伸びをして神津君が背を丸めてくれると意外と簡単に出来てしまう。
 開けたままのテラス戸のカーテンがふわりと風に踊るのが視界の隅に見えた。ほんの少し冷たい風と、日差しの暖かさが火照った首筋に気持ちいい。
 神津君の手がジャージのファスナーを降ろしていくと動悸がいっそう激しくなって、ジャージの下は一死まとわぬ姿で、その剥き出しの下腹部で、神津君の精液がどろっと膣から溢れて内腿に伝っていくのが判った。保健室の外にある黄水仙のにおい。舌が絡み合う。乳首を摘む神津君の手に石鹸の泡の感触。
 始業式が終われば校医の先生は恐らく昇降口を使わずこのテラス戸から直接戻ってきてしまうから、余計に急がないといけないのに。
 ふわふわに泡立てた石鹸をより一層柔らかく神津君の手が乳房に馴染ませる。首筋から胸元へ、ゆっくりと、信じられないくらいに優しい手の動き。頭の奥がぽぉっとして春色に染まる。リステリンでぴりぴりしている舌先で舐める神津君の歯がとても滑らか。
 唇が離れて、はぁっと緩い息を漏らす私の唇に、唾液の糸が切れて弾ける。
「――嫌な時は嫌と言えよ」
 もしかして神津君は私が嫌々でも我慢していると考えているのだろうか。その口調の思いやりに満ちた響きに、私は首を振った。
「とっても…気持ちいいけれど……」
「馬鹿、今の話じゃない」
 今後滅茶苦茶な事をする予定という事なのだろうか?今日の電車はかなりやんちゃで今後も同じ事をしようと言われたら流石に躊躇してしまうだろうし、嫌な時はしっかり断れる様にしようと思う。でも今はもう少し甘えたいななどと考えてしまう。――しかし、今のキスとかが気持ちいいのは当然と考えている辺り神津君は少し自信過剰かもしれない…自信に見合うだけのキスかもしれないと考えてしまうのは贔屓と経験のなさかもしれないけれど。
 でも、もうちょっとキスをして欲しいなと考えてしまうのだから、私としては十分神津君のキスは上手だった。
「……。百面相してるぞ」
 神津君の言葉に思わず頬に手を当てるとかなりに熱い。デレデレした変な顔になっていたらどうしようと俯く私の顎を神津君の指が撫でた。まだ石鹸の泡が残っている。
「あいつの言う通り、お前見ていると飽きないな」
「あいつって……」
 誰?と問いかけようとした唇を、神津君の唇がまた塞いだ。
 神津君と誰か他の人の会話に自分の話題が昇る事がやや意外で、まさかロープウェイでのあれを関係者以外に話す人ではないだろうし、私が見ていて飽きないなんて言う人は思い当たらない。誰とどの様な話をしているのかな?と興味が最初浮かんでいたけれど、長いキスで溶けていってしまう。
 このキスが終わってしまうまで憶えていたら、聞いてみよう。

Fin
初校200703101116

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