第31回 日本文人画府展(東京都美術館 会期2002.10.5〜10.14)

出品作品 「策」 30号

 

トップページにも記しましたが、この作品は諸葛亮孔明さまであります。

 

手には劉備から贈られた「羽扇」(羽おうぎ)を持ち、何やら策略をめぐらしております。

ところでこの絵を見て、次男(小2)の息子が「この人…偉い人なの?」と聞いてまいりました。もちろん三国志などまったく知らない息子。「そうよ」と応えると「じゃあ…この人が王様になるんだ・・」といいます。なので「ちがうよ。この人は王様にいろいろ作戦を教えて戦う人だよ」というと・・

「ふーん・・じゃあ、王様が死んだら、この人が王様になるんだね。」

「…・・」ちがうっていうか…・(^^;)

でもこの発想なかなかオモシロイなぁと思ったのでした。一番の知恵者で参謀である孔明ほどの人物が王様(皇帝)になってもおかしくはないのですが、たいてい洋の東西をとわず、この手の知者は自らが権力を握って皇帝となって君臨することは望まないのですね。きっと、彼らの一番の幸せは皇帝になって権力を握って国を思うままにして、ハーレムを作って酒池肉林…わっはっは…という生活よりも、頭脳を使って「あれやこれや」と考えを巡らすことが一番楽しいのでありましょう。

 

この孔明さまを手中に納めた劉備は水魚の交わりと称してまさに寝食をともにしたといいます。そんな才たけた孔明を熱烈なまでに欲っした男がもうひとりおりました。その名も劉備玄徳の宿敵ともいえる曹操でありました。最後に彼の孔明への求愛にも似た詩を紹介したいとおもいます。

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短歌行    曹操

 

対酒当歌

(酒に対しては当に歌うべし)

人生幾何

(人生幾何ぞ)

譬如朝露

(譬えば朝露の如し)

去日苦多

(去るの日はなはだ多し)

慨当以慷

(慨して当に以て慷すべし)

憂思難忘

(憂思 忘れ難し)

何以解憂

(何を以てか憂いを解かん)

唯有杜康

(ただ杜康有るのみ)

青青子衿

(青青たり子が衿)

悠悠我心

(悠悠たり我が心)

但為君故

(ただ君が為の故に)

沈吟至今

(沈吟して今に至る)

幼幼鹿鳴

(ゆうゆうとして鹿は鳴き)

食野之苹

(野のよもぎを食らう)

我有嘉賓

(我に嘉賓あらば)

鼓瑟吹笙

(瑟を鼓し笙を吹かん)

明明如月

(明明 月のごときも)

何時何採

(いづれの時にか採るべけん)

憂従中来

(憂いはうちより来りて)

不可断絶

(断絶すべからず)

越陌度阡

(陌を越え阡を度り)

枉用相存

(まげて用て相存せば)

契闊談讌

(契闊して談讌し)

心念旧恩

(心に旧恩を念う)

月明星稀

(月明らかに星稀にして)

鳥鵲南飛

(鳥鵲 南に飛ぶ)

繞樹三匝

(樹を繞ること三匝)

何枝可依

(いずれの枝にか依るべき)

山不厭高

(山高きを厭わず)

海不厭深

(海深きを厭わず)

周公吐哺

(周公 哺を吐き)

天下帰心

(天下 心を帰す)

 

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短歌行

酒を飲んでは大いに歌おう

人の一生がいったいどれほどあるのか

たとえれば朝露のように儚いもの

過ぎ去りし日ばかりが多い

思えば嘆かずにはいられない

憂いの思いは忘れ難い

何をもって憂いを晴らせばよかろうか

ただ酒が憂さを晴らしてくれる

若く才知に溢れる人を

ずっと思いつづけてきた

ただ君の為に

物思いにふけって今に至っている

ユウユウと鹿は鳴き

野のヨモギを食っている

私に賓客があれば

瑟をひき笙を吹こう

明るく輝く月の光のような人を

いつになったら採用できるだろう

憂いは心中よりおこって

断ち切る事が出来ない

東西の道を越えて南北の道をわたって

わざわざ私のもとへやって来てくれたら

心を許して酒を酌み交わし談笑し

昔の恩を忘れまい

月が明るく輝いて星影が薄れてくる頃

カササギは南に飛んでいく

樹の廻りを3度も廻り

どの枝にとまろうかと考える

山はいくら高くなっても厭わないし

海は水がいくら深くなっても厭わない

昔 周公旦は一食中に三度も席を立って

賢人に接した

だから天下の人々は彼に心を寄せたのである

 

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上記の詩文と訳は春蘭さんのサイト

花木蘭 http://www1.odn.ne.jp/hanamokuran/

から引用させていただきました。

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ご存知な方はご存知だと思いますが諸葛亮孔明の「亮」とは「冴え冴えとした月の明かり」

という意味があるそうです。詩文のなかの

「明るく輝く月の光のような人を

いつになったら採用できるだろう

憂いは心中よりおこって

断ち切る事が出来ない」

この文はまさに孔明その人を歌っているのでは

とおもうのであります。

「おみくじ」風にいえば…「待ち人来らず」ってかんじ…うーん確かにやけ酒も飲みたく

なりますねぇ。曹操さま

泉照