始めに
 製造業の管理業務で、その中核をなす「生産管理」は、アメリカのF.W.テーラーが時間研究(生産技術の2大基礎の一つ)を開始(1983年、明治16年)して以来、長い年月の間、時代の変革と共に考え方、技法、体系、仕組み、業務内容、処理のシステムなどが改革され組織内で培われてきた。
 特に近年では、わが国経済の構造的変革の過程、国際競争の激化、ものづくり技術のデジタル化(コンピュータ処理化)、管理業務へのコンピュータとネットワーク技術の活用、さらに顧客重視の経営などで「生産管理」は経営レベルから現場の末端組織にいたるまで、根本的な改革を要する時代に直面している。
 さらに、今日IT(情報技術)といわれている原点を振り返ってみると、それはコンピュータとネットワークの関連技術にほかならない。その基礎技術が改良と進展を重ね、インターネット関連技術と統合している。
 こういう環境下での、生産管理ソリューションを進めるにあって、本書はつぎの7点を重視して解説を試みている。
  1. 長年培ってきた生産管理の基本とか基礎でIT時代でも活用してもらいたいものは取り入れた。
  2. 従来の生産管理からコンピュータ生産管理という概念で、新たな基本とか基礎を取り入れた。
  3. 製造業の経営レベルで生産管理の課題を具体的、実務的に解説した。
  4. 3部構成にして生産管理に取り組みやすい新しい体系を作った。
  5. ソリューションの視点とか手がかりを見つけ出し易いように、本文の中に<見出し>を多く設けた。
  6. コンピュータ出力帳表と図表、図解を多く採用し初心者でも分 かり易いようにした。
  7. 特に第3部(第6.7章)では、生産管理のパッケージソフトの選択法に関する課題を取りいれた。
 以上、筆者の本書執筆の趣旨をお汲み取りいただき、経営者、管理実務者、SE(システムエンジニア)、コンサルタントの方々が本書を活用して生産管理ソリューションにとり組んでいただきたい。
 筆者は72才の講師定年になるまで15年間、大学の経営学科で生産管理論とコンピュータ基礎理論・演習を講義してきた。その間の感想を2.3述べたい。
  1. 日本の製造業に活気が漲っていた時代は、在籍学生数(250名)も多く、不況や景気低迷で元気のない時期は、生産管理論の人気は低くかった(70名ぐらい)。
  2. 外国人留学生(韓国、中国、台湾、マレーシアなど)の勉学
    態度、出席率は極めてよかつた。
  3. 一般的に、大学の経営学部、経営情報学部には「生産管理
    論」を設置いているところはすくない。どうやら、製造業
    は経営学の対象から疎外されている感がある。
     そこで、大学、専門学校で「ものづくり経営」の生産管理を学びたいと思う学生諸君には、新しい体系と内容を学ぶ参考書として活用して頂きたいと思う。
      平成13年(2001)10月
                 篠 康太郎

「追伸」
 今回の出版は自主制作で自由に編集しました。
  素人くさいところがありますが、手引き書として読み易くするための配慮はしたつもりです。本文中のコンピュータ出力表(票)は、(有)篠研コムウェアの生産管理教育用・パッケージソフトを使用したものです。