第5講 直接加工費というコスト

<マンコストとマシンコスト>
 従来の直接労務費は、作業者が直接作業に従事した作業時間に、賃率を掛けて計算する。対象はあくまで作業者である。使用した機械設備の稼動に要した費用は、製造間接経費、或いは直接経費の費目体系で処理する。
 この処理の考えかたは、製造工程での作業の主体が作業者にあり、人が機械を道具として使う時代であったからである。
 今日のように、機械設備が人の道具の域を越え、自動的に作業をこなし、人が補助役に回った機械主体の工程では、機械の稼動は「稼働」に変化し、機械稼働費のコスト概念が重要視されてくる。
 つまり、人が主体の工程ではマンコスト、機械が主体の工程では、マシンコストが夫々重み付けられる。

<直接加工費とは>
 ここでいう直接とは、人の場合は、直接作業者の直接作業時間のこと。機械の場合は、工程内で稼働する機械の直接稼働時間のことである。加工費として捉える対象は、次の3費目である。
1) 直接労務費
・ 人(手作業)を主体とする工程(従来通り)
・ 機械設備を主体とする工程での有人操作(人側)
2) 機械稼働費
・ 機械設備を主体とする工程での有人操作(機械側)
・ 機械設備を主体とする工程での無人運転
3) 外注加工費
・ 部品加工の場合
・ 組立て加工の場合
この「直接加工費」というコスト体系は、今日の財務会計目的の原価費目体系にはない。筆者が1988年、「コンピュータ生産管理読本」にて発表したものである。

<機械賃率(マシンレート)の算定法>
 機械稼働費は、機械設備ごとの稼働時間に、機械設備ごとに予め設定した機械賃率(マシンレート)を掛けて計算する。機械賃率算定の基礎となる原価要素は次の通りである。

@ 機械設備の操業度に応じて変動する原価要素
  • 金型、治工具の償却代
  • 電力、ガス燃料代
  • 消耗工具、消耗品 
  • 機械設備の修繕費  
  • 補助作業者の労務費 など
A ある期間内で定額的に消費する原価要素
  • 機械設備の減価償却費(定額法の場合)
  • 機械設備のリース料
  • 機械設備の保守料
  • 火災保険料
  • 固定資産税 
  • 稼動状況の監視作業者の労務費 など
 機械賃率(マシンレート)は、機械設備ごとに算定することが望ましい。 因みに、作業者の賃率は工程別に算定する。そして、機械賃率と作業者の賃率は、実際賃率を過去のデータから算出したあと、この数値をベースにして、将来のある期間を予想し修正を加え、「予定賃率」を決めてこれを適用する。

<直接加工費は工程別に原価データを収集する>
 直接労務費、機械稼働費、外注加工費の費目は、工程別(原価部門を工程単位にする)に基礎情報(原価データ)を収集する仕組みをつくる。 (本書 図2-8.4 参照)
 この工程別の原価データは、原価情報として多目的に利用できる。
実際原価の計算、工程改善、採算比較、目的別原価の計算、原価見積り、などである。
 そこで、原価データの収集は、「作業票」とか「作業日報」などの時間記録から次の項目を捉える。
  • どの部門で(部門コード)
  • どの工程で(工程コード、工程記号など)
  • どの原価費目が(原価費目コード)
  • 何に(製番、ロットNO.、品番など)
  • いつ(作業年月日)
  • 作業時間(段取り時間、加工時間、作業中断時間)
  • 完了日、完了数
  • 使用機械(機械NO.)、機械時間(稼働時間、休止時間)
  • 作業者(社員コード) など

           ----- 第5講 おわり -----