第6講 生産管理システムの特質を掴む (1)「もの」と「情報」の動き (本書 図3-5.1 参照) <生産管理システム構築・失敗の原因> 生産管理のシステム機能には、物流系(ものの流れ)と情報系(伝票、帳表、モニター画面など)とがある。物流系の実務者は、資材の調達、部品や製品の在庫、現場のスタッフなどである。 もう一方の情報系の実務者は、計画部門とシステム部門のスタッフなどである。この両者が車の両輪の如く、一体的に協力し合いシステムを構築しないと結果的に失敗する。 手作業の良き時代では、物流系の実務者が情報系の仕事を一諸に行っていたので、システムを都合よく改善したり、新たに構築できた。これが、コンピュータ利用の進展と共に情報系は、コンピュータの専門分野に移行されていった。そこで、この問題が重要視されるわけである。 <在庫の帳簿残と現品残の不一致について> 材料や部品が入庫して、帳簿係が入庫記入しないと、当然のことながら、帳簿残と現品残とは一致しない。現品の動きは物流系、帳簿の方は情報系である。ここに両者の明白な関係がある。 また、出庫の場合も同様である。出庫伝票なしで現品が現場へ動くと、帳簿係は出庫記入ができず、両者の残高は一致しない。 出庫伝票に100個と記入してあるが、数を数え違えて101個出庫した場合も問題である。現場で余分な1個を戻入すればよいが、これを現場の棚に放置しておくと、これも両者の残高は一致しない。 ある工場長と在庫管理の話をした時である。「うちの工場では、現物の残高と帳簿の残高は、殆どの品目が一致しない。一致するのが不思議なくらいである」とこぼしていた。これでは、何のために帳簿を記帳しているのであろうか。 工場診断で管理レベルを的確に、しかも簡単に把握する方法に、この残高不一致の課題を調べるとよい。それ程、この課題がその工場の作業習慣や管理の程度を表している。 (2)「いつ」という日程の基盤 <資材管理と工程管理の流れ> 生産管理の計画領域には、調達先(どこへ)の区分けで業務の流れがニ分する。外注先、購買先を対象とする資材・購買管理と内製品の製造工程を対象とする現場の工程管理の流れである。その両者の分岐個所が上流の資材所要量計画である。 (10月号の図参照) 前者の流れでは、発注品の納期を「いつ」にするか。後者の流れでは、内製品の完了日を「いつ」にするか。組立て工程に部品を「いつ」出庫するか。など「いつ」という日程の基盤がシステム運用を支えている。 <製品の納期を厳守する「いつ」という日程意識> 受注生産では、お客と約束した「製品の納期」を守ることが信用を得る大きな要素である。そのためには、会社の全員が「日程」の意識を強く持つことであり、総合的な日程管理のシステムを構築し、日常業務で運用していくことである。 ここで重要なことは、先ず、「日程の計画」を立てることである。計画なしで、現状を追いかけ(進行のこと)ても、行き当たりばったりの処置しか出来ない。正に、忙しいばかりで「ムダ」や「ムリ」が重なる状態になる。会社としての機会損失は大きい。 トヨタ生産方式の「ジャスト・イン・タイム」の思想の一つに「必要なときに」がある。これが極めて大切であり、またこのシステム作りが意外にむずかしい。 (3)人間組織と関連業務の繋がり 生産管理システムの業務領域は広く、基幹業務は上流の計画から下流の実施・コントロールへと流れている。その基幹業務と繋がっている各種の業務が枝分かれして、広範囲に広がって組織の全体をカバーしている。 A業務の処理の結果がB業務の原始データとなり、B業務の処理の結果が関連するC業務やD業務へと繋がっていく。 このような状態を人間組織の中で展開すると、「部・課」の単位で、或いは「係り」の単位で職務分掌していく。そこで必然的に組織の職務分掌による「垣根」が出来上がってしまう。 生産管理システムという一連的な機能からみれば、前述の「垣根」は全く不要である。ここに両者の本質的な違いがある。 (4)生産管理パッケージソフト導入の失敗。その要因 生産管理システムを市販のパッケージソフトの導入で構築する場合、導入後に組織の中で立ち上げて、さらに日常の業務システムを運用していくが、成功と失敗の明暗が甚だしい。これはパッケージ導入の歴史が始まって以来続いている。 そこで、その要因の主なるもの(10項目)を次に掲げる。
----- 第6講 おわり ----- |