第3講 在庫(仕掛品・製品そして部品)という課題

<仕掛品に関して管理のポイント>
 組立て工程では、種々の部品が第1工程に一括出庫されると「仕掛品」という名称になり、最終工程で完了すると「製品」という名称になる。この流れを生産管理から見ると、「仕掛品」は工程管理の領域で「製品」は生産管理から外れてしまう。これが問題になる。
 仕掛品に関しては、次のことが管理の対象となる。
  1. 第1工程から最終工程まで、出来るだけ早く移動するようにしたい(製造期間の短縮化)
  2. 工程間で停滞品が発生しないように流したい(ネック工程の解消と工程系列のラインバランシングの研究)
  3. 仕掛品の工程別原価を算出したい(工程別・総合原価計算)
  4. 仕掛品が増加してくると、日程管理が不徹底になり納期遅れが多くなる。また、運転資金の流動性が悪くなり、資金繰りが苦しくなる  
昔、工程管理とは、「仕掛品管理」であるとまで明言した専門家もいたほど、仕掛品の状態を見れば、その工場の管理の程度が分かる。
仕掛品管理の出発点は次の2項目の把握から始まる。
  1. どの工程に何が(製造番号、品番など)いくつ仕掛かっているか
  2. 何がどの工程にいくつ仕掛かっているか
<製品に関して管理のポイント>
 製品に関しては、受注出荷型モデルの生産体制で次のことが管理の対象となる。 
  (本書 1部第5章 図1-5.1 参照)
1. 生産計画をうまくやって製品在庫をもっと低減したい。
2.
在庫切れでお客に迷惑をかけたくない。(顧客満足度の課題)
在庫切れによる売上の機会損失を防ぎたい
3. 製品在庫を持たない生産形態にしたい(受注生産への移行)
4. 流通拠点の在庫を常時、的確にスピーデイに把握したい
5. 仕掛品の完成予定日(何が、いつ製品になるか)を把握したい
6. 受注した品目の出荷日を把握したい
7.
製品在庫残が帳簿(情報)と現品残がいつも一致しているようにしたい。
(これは基本的な課題で、過去のMRP時代に、この問題でMRPの運用が出来なかった企業が結構あった。また、最近でもこの問題が起きている)

 製品在庫という視点から見ると、仕掛品は工場内在庫であり製品は流通在庫である。更に、仕掛品の上流に部品在庫、材料在庫という節目が繋がっている。先ず、流通在庫と工場内在庫(仕掛品)を関連づけて管理するシステムが必要である。
 それが「有効在庫システム」である。有効在庫という概念は、将来のある時点で「何が」「何個」在庫になっているだろうかという予想である。丁度、資金繰りの予想と同じ考え方である。
 仕掛品は入庫予定の在庫であり、受注した製品は出庫予定の在庫である。これに現物主体の在庫管理で出る在庫現在数がベースになる。更に、「いつ入庫するか」「いつ出庫するか」という日程の要素が入ってくる。ここで前者は「組立て工程の日程計画」と関連し、後者は「受注・出荷計画」と関連してくる。これが有効在庫運用システムである。
 この有効在庫システムに「生産計画」が関連して(第2講 参照)
製品在庫を最低レベルで維持していくシステムが確立する。

<部品在庫とその調達について>
 今度は、部品在庫とその調達との関連について述べる。部品在庫となると、ジャストインタイム(必要なものを、必要な数だけ、必要な時に)のかんばん方式で在庫を持たない政策をとる組立て工業が増えている。ここでは部品在庫管理の必要性はない。
 部品を調達(内製、外製、購入など)して、在庫として運用していく必要性のある生産体制は「受注組立て型」というモデルである。(本書 図1-5.2参照)このモデルでは、製品は受注の都度、組立て生産をし、部品は見込み生産で完成品を常に在庫として持ち、減少してきたら定期的な生産計画で補充発注する。
 組立て工程で必要な部品が欠品していると、受注製品が受注数量だけ納期までに出来ないことになる。また、欠品を防ぐために在庫を大量に持つと企業にとって大きなナイナスになる。そこで、部品在庫の有効な補充システムの確立が必要になる。
 この補充システムで、内製品は社内の製造部へ、外製品は社外の外注先へ、購入品(市販品)は社外の購入先へと調達先のルートが異なる場合に問題化する。その大きな原因は、工場組織の職務分掌で機能が縦割りになって、部課間に垣根が出来ていることである。
 システムの機能では、人間組織の職務分掌の垣根に拘らず機能本位で関連業務が繋がっていく。特に、最近のコンピュータ処理ベースの生産管理システムではその必然性が強いので、組織全体に及ぶ成果も大きい。
 
         ----- 第3講 おわり -----