バーチャル・プロレス2〜王道継承〜 

NINTENDO64用ソフト
2000年1月28日発売
制作:AKI
販売:アスミックエース/角川書店 


 『ファイプロ』と並んで「コアなプロレスゲーマー御用達ソフト」となった『バープロ』シリーズ。実際問題として「プロレス」と「ゲーム」を両立出来ているプロレスゲームというのは、今のところこの2タイトルだけでしょうね。
 当HPでは発売より1年ぐらい前から『バープロ2への要望掲示板』を設置してファンの意見や要望などを集めて来ましたが、どんな些細な意見、突拍子もない要望にも真摯に耳を傾け、出来る限り実現させようとする制作会社、メーカーの方々の姿勢には本当に敬意を表します(要望を寄せた「バープロファン」の名前がエンディングのスタッフロールにスペシャルサンクスとしてクレジットされてます(^^))。
 今回は全日本プロレス公認となり、(元)全日の選手たちが実名で登場します。もちろん、それ以外にも前作に登場した多彩なキャラクターも引き続き参戦。特に新しく加わった「シュート系」というタイプの選手を使用すると、タックルからマウントを取って殴ったり関節を極めたりといった熱い攻防が楽しめます。あと、格闘技ルールが詳細に設定(ロストポイントなど)出来るのがスゴいです。U系ファン涙モノ。エディットモードもかなり充実していて、エディットマニアも満足出来そう。ファイプロのエディットとはまたひと味違った趣がありますね。個人的には「大会モード」(自分でマッチメイクして興業を打つモード)がかなり気に入ってます。

 バープロはここがスゴい

 バープロの魅力は、ずばり言って「プレイすれば分かります」。もちろん100人を超す豊富な登場キャラや相変わらずプロレスファン・格闘技ファンの心をくすぐるような演出も魅力の一つではありますが、それらはごく表面的な事に過ぎないし、このゲームの一部分でしかありません。昨今はビジュアル面や演出のみに傾倒しがちなゲームが多いですが、バープロの操作性は本当に優れているし、考え抜かれて作り込まれたゲームシステム、ゲームバランスは絶品です。また「自由度」も非常に高く、「おおよそ思いつくプロレスの試合中のムーブ」が“自由に”行え、ヤリ込めばヤリ込むほど思い通りに試合を組み立てられるようになります。つまりバープロの面白さの秘密は「ゲーム性」「操作性」「自由度」といった目には見えない部分に集約されているのです。このような部分は制作する側にとっても本当に地味で根気のいる作業になると思うのですが、前作『バーチャルプロレスリング64』、海外版『WCW/nWo REVENGE』『WWF WRESTLEMANIA2000』、そしてこのバープロ2と、新作が出る度に調整が加えられ、着実に進化を遂げています。このように内容面の研究が積み重ねられてしっかり出来ているからこそ、ファンにとっては長く遊べるスルメゲーになるのでしょう。どんなに美麗なグラフィックを出せても、それだけでは何度もプレイしてれば慣れ、飽きというものが出て来ます。発売から何カ月、何年経っても、「プレイしたい」と思うゲームというのは、見てくれだけのゲームでは絶対にないですね。そういう意味ではバープロ2はプロレスゲームの中で最高傑作の部類に入る事は間違いなく、今後発売されるプロゲーは、いかにこのゲームを越えられるかが課題になって来ると言っても過言ではないでしょう。

 でもここがダメだ

 例えば三沢&小川(良)のように、格上選手と格下選手がタッグを組んだとします。我が国のマット界では特別な場合を除き、通常は格上選手のテーマ曲で入場、格下→格上の順番で選手コール、格下が先発で試合開始、という流れになります。これ常識。ところがこんな当たり前の事が再現出来ていないのは残念です。これって技術的にそんなに難しい事なのでしょうか?この点に関してはバープロに限った事ではないので、今後リリースされるプロレスゲームでは、タッグ時における入場曲、選手コールの順番、先発選手の関係をよく注意して作ってほしいところです(まあ、バープロ2はデフォルトキャラの入場曲を変更出来るので、小川の入場曲をスパルタンXに設定すれば問題ないんだけど)。それからタッグと言えばCPUのロジックが結構ポイントになって来ますね。前作からかなり改善されてよくなっているのですが、それでもまだ不満に感じる部分があります。タッチする度に相手パートナーが乱入してくるとか、相変わらずエプロンで待機してるパートナーがうざったいとか。
 その他細かいことなど…
 ・今作では結構あっさりと3カウントが決まってしまうようになり、全日公認ゲームとしてはいささか淡泊な気がします。もっとも、前作では逆に3カウントフォールがなかなか取れないという不満の声が多かったので、この辺のバランス調整はなかなか難しいところなのでしょうか。
 ・タスケスペシャルの1号と2号がアベコベです。あと、相変わらずタスケスペシャルやSFタイガードロップなどが、ニュートラルダッシュから出せません。
 ・場外の相手にコーナーから飛び技を出そうとする時の、コーナーの登り方が変です(一度エプロンに出てから登る)。前作のほうが良かったと思います。
 ・寝関節技の種類が少ない。
 ・入場衣装に使いたいTシャツなどがなぜか試合衣装に。
 ・いくらなんでも隠しキャラや隠し要素を出すのが面倒くさすぎ。もうちと楽でもいいんじゃないですか?
 ・「タイガーフェイクプランチャ」は絶対おかしいって(^^;;。ダッシュトペ扱いならOKだけど。

 出ろ!続編!

 制作者の方は「出来る限りの事はすべてやった」とおっしゃってました。本当にその通りで、前作とは比べモノにならないほどボリュームアップしているし、N64のカートリッジ一杯にプロレスとプロレスゲーム、そしてユーザーへの愛が詰め込まれているのをヒシヒシと感じます。しかし実際にはN64の限界というか、容量の関係で泣く泣く削ったと思われる部分がいくつも見受けられるのも事実です。例えばアメプロゲームでは非常に良く出来ていた入場シーンもスケールダウンしているし、入場曲も少ない。前作ではあった技で削られているものもあります。会場やリングの種類も少ないですね。選手数だって増やそうと思えばもっと増やせられるはずです。これらは、本当は出来るという事が明らかだから、なおさら残念だし歯痒い思いがします。しかしDCやPS2、あるいは任天堂の次世代機「ドルフィン(仮称)」など、高性能のハードがどんどん発売、発表されてますから、次回作はぜひともそういったプラットフォームでの新作を期待したいところです。これらの機種の名前を聞くとつい美麗なグラフィックなどを期待しがちですが、例えばPS2が発表された時に、その脅威的なスペックは「容量による制限を取り払い、自由に制作を行えるようにするためのもの」と説明されていました。実に素晴らしいコンセプトだし、バープロシリーズこそそのような制限の少ない、自由なフィールドで躍動してほしいと思います。グラフィックは現在のクオリティで、モーションも秒間30コマで全然構いません。今回は「削った」部分もそれなら余裕で入るのでは?(ちょ〜素人考え)。
 というわけで次回作以降も期待大のバープロシリーズ。今作で最後なんて話も出てましたが、そんな事は絶対に許しません(笑)。出ろ!バープロ3!

 (00.7.23 ダーク)