ファイヤープロレスリングG

1999年6月発売
プレステ用ソフト
ヒューマン(株)

 名作、ファイヤープロレスリングシリーズ。前作のサターン版『ファイプロS』から約2年半ファンを待たせての登場だ。まず発売までの流れを振り返ってみると、この作品に関しては、かなり前(1年ぐらい前)から噂になっていた。しかし正確な情報はまったく入って来ないどころか、ヒューマンが正式にこの作品を発表したのはなんと発売の1カ月前だった。これは4月に同じヒューマンから全日公認ゲーム『王者の魂』が発売されていた事や、毎度おなじみの各団体レスラーそっくりキャラの問題など、いろいろな事情があっての事だろう。そして待ちに待った発売日だが、各ゲームショップはどこも売り切れ、ファイプロを買えないファンが続出した。3Dポリゴン全盛の昨今、しょぼめの2D画面プロレスゲームなど大して売れないと見込んでいたのかどうかは分からないが、はっきり言ってファイプロをナメすぎでしょう。今までこのゲームがどれだけファンに支持されて来たのか、そしてどれだけのファンがこの作品を待ちわびていたかをまるで分かっていなかったってこと。てゆーかファイプロっていつも品切れにならない?学習能力があるなら、次回作からは大量に生産、入荷させましょうね>関係各位。

 さてさて、肝心のゲーム内容。グラフィック面などは基本的に前作と同じ。伝統の2D画面だが、実はリングはポリゴンで描かれていて、ロープの動きなどは良くなっている。システム面もダッシュダウン攻撃があらたに加わった以外はこれと言って変化はない。ゲームモードはエディットランキングという新しいモードが加わったほか、一徹道場やストーリーモードなどが復活し、かなりボリュームがある。勿論、ファイプロのウリのエディットモードも健在で、今回は団体のエディットまで出来る。団体ロゴもドット絵で自分で書けるところがすごい。サターン版以後にプロレス界・格闘技界で台頭して来た選手をモチーフにしたキャラや新技などもしっかり追加されている。小川の飛行機ポーズやダウンしている相手を持ち上げて投げるカレリンズリフトがイイ感じだね。あとトップロープからのトペアトミコがようやく入ったのが個人的には嬉しい。
 ネット上での反応を見てみると、やはりというか相変わらずの人気だが、それでも不満の声は聞こえてくる。随分と待たせたわりには大きな進化が見られない事や、インディー団体などのキャラが少ない事などが原因のようだが、一説によれば、この作品は「サターン版のベタ移植」という事で話が来ていたらしいし、「マイナーチェンジ(キャラグラフィックや新技モーションの追加)でいいから新作を出してくれ」というファンの声も多かった事を考えれば、これだけボリュームアップしていれば十分と言えるのではないだろうか。特にマルチシナリオのストーリーモードは楽しい。ファイプロスペシャル(SFC)の暗〜いストーリーモードもあれはあれで良かったが、プロレス界の歴史に自分が参加できる今回のシナリオはもっと良い(ヒクソンと対峙した時は緊張したね。しかも秒殺された)。なかなかハッピーエンドが迎えられないが、それだけ長く遊べるので良いでしょう。しかしファミリー軍団に入って終わるのをバッドエンドと言うのは失礼だろ(とか言ってみる(笑))。


 もはや「ファイプロの前にファイプロなし、ファイプロの後にファイプロなし」状態のこのシリーズなだけに、重箱の隅をつつくように欠点を指摘したところであまり意味はない気がするのだが、それでもあえて書くとすれば、エディット機能をもう少し頑張ってほしいという事。エディットに関しては3Dよりも2Dのほうが明らかに有利と言われていたのも、今は昔。国内ではそうでもないが、海外の3Dプロレスゲームの中には、かなりエディット機能が充実している作品もある。キャラの顔などモンタージュ写真のように作成できたり。今はまだ「エディットと言えばファイプロ」という認識がユーザーの中でも高いが、あまりそういう評価の上にあぐらをかいていると、すぐに他のゲームに追い越されてしまいますよ…っと。まあ、これは次回作が出る事を前提にして話しているのだが、どうなのだろう?新作が出るかどうかはかなり微妙な気がする。どうも今作はヒューマン内部のスタッフが作っているわけではないようだし、いくら根強いファンが付いていると言っても、3DCGがどんどん進化している時代の流れに勝てるかどうか…。でもやっぱりファイプロは我々プロレスゲームファンにとって、永遠の名作であってほしいよね。

99.1017(ダーク)


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