幻の『新十二生肖−燃えよテンテン戦え!十二支の大冒険−』を追え! 

 長い間「幻」とされて来たテンテン主演映画『燃えよテンテン戦え!十二支の大冒険』(原題:新十二生肖)のビデオをついに入手した!その内容たるや、稀に見る傑作!我々の知らないテンテンの魅力がこの作品には詰まっていた。


 これまでの経緯 

 『燃えよテンテン!十二勇士の大冒険』なる映画の存在を知ったのは、 キョンシーブームも沈静化して来た89年頃だっただろうか。映画の公開を楽しみにしていた記憶がある。しばらく経ってもこの映画が公開される気配はなかったのだが、それから4〜5年ぐらい後にテレビ東京で『霊幻少女〜帰ってきたテンテン〜』が放映されたのを見て、「これがあの時の映画だろうな」と勝手に思い込んでいた。ところが『アイドル探偵団』という本(何年版かは忘れた)をチェックすると、テンテンの出演作品として『燃えろテンテン十二支の冒険』なるタイトルが記されていた。先に書いたタイトルとは微妙に違うが、同じ作品である事は明らかで、さらに文化放送のラジオ番組『黒BUTA天国』の中で、テンテン本人が「燃えよテンテン〜はウチの近所のビデオ屋に置いてある」などと発言していたため、『霊幻少女』とはまったく別の作品であるという事を認識した。その後インターネット上にChrisさん主宰による『キョンシー掲示板』が開設され、そこでこの作品に関する話題を振ってみた事があるが、有力な情報はまったく得られなかったどころか、「撮影はしたが完成していないらしい」という怪情報(今にして思えば)まで流れたため、その存在すらもあやふやなまま「幻の映画」として永久に謎のベールに包まれたままになると思われていた。
 事態が急変したのは今年に入ってからで、中国語の堪能なHKSARさんがいつものように台湾のサイトをチェックしていた際に、劉至翰(テンテンの実兄)のHP内の掲示板にテンテンファンによる書き込みがあるのを発見した。
 「Aaron」と名乗る人物による書き込みで、その内容は「劉至翰の妹の劉致[女予]の情報を求めている」という主旨のものだった。この書き込みに対して「彼女は映画『十二生肖』に出演していましたよ」などのレスポンスも台湾人から付いていた。スワ!台湾現地のテンテンファン発見!とキョンシー掲示板で話題になったのは言うまでもないが、それと同時に引っかかったのは、「十二生肖に出演していた」というくだりである。『十二生肖』なんて映画聞いた事もない。「生肖」とは中国語で干支(えと)の意味である。「十二支」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、あの幻の『燃えよテンテン〜』であるが、仮にこれとは違う作品だとしても「我々の知らない映画にテンテンが出演している」という重大な情報には違いないので、HKSARさんにお願いしてAaronさんから詳しくこの作品について訊いてもらった。

 
 バラエティ番組『綜藝旗艦』から。
 日本版チラシまで完成していたのに…。
 作品名は『新十二生肖』、公開年度は1990年。Aaronさんは劇場公開された時にこの作品を見てテンテンのファンになったと言う。公開年度から見て間違いない。『新十二生肖』=『燃えよテンテン〜』である。なんと、幻と言われた映画はちゃんと完成していたし、台湾では劇場公開までされていたのだ(今でもたまにテレビで放送するらしい)。その後、Aaronさんの情報提供とHKSARさんの翻訳によって作品のストーリーも明らかとなり、その内容は当HPでも紹介させてもらった(現在はこのページの最下部に掲載中)。
 今年の春からテンテンが台湾の芸能界に復帰し、バラエティ番組に多数出演した事で台湾の有名なBBSなどでもテンテンの事が少し話題にのぼっていた。それらの書き込みを見ると、必ずと言っていいほど「十二生肖」の単語が出て来る。どうやら現地ではこの作品は比較的有名なようで、また評価もそれなりに高いようだ。
 4月にテンテンが出演した『綜藝旗艦』というバラエティ番組のビデオを入手して見たのだが、その中でテンテンの子役時代の活動の記録として、キョンシーシリーズの写真などと一緒に『新十二生肖』の日本版宣伝チラシも画面に映し出された。これまで日本版のタイトルは前述している2通りの説(『燃えよテンテン!十二勇士の大冒険』、『燃えろテンテン十二支の冒険』)があったが、そのチラシを見ると正式タイトルはどちらでもなく、『燃えよテンテン戦え!十二支の大冒険』だった事が分かる。
 釈然としないのは、なぜここまですべて出来上がっていたにも関わらず(日本語吹き替えも完成していたらしい)、日本公開が見送られたかという事である。何か「大人の事情」があったのだろうが、それにしてもである。テレビ朝日で放送されたらしいという情報もあったが、これだけキョンシーHPやファンも増えているのにそれに関する情報(実際に見たという証言など)がないところを見ると、信憑性という点では疑問符が…。テンテンがラジオで「近所のビデオ屋にある」と話していたのも、「華僑向けのビデオ店に台湾製のビデオが置いてある」という意味だったと解釈するのが自然ではないだろうか?

 秀作!新十二生肖 

 
 サンフランシスコの中華街 
 この夏にアメリカはサンフランシスコを訪れたおり、ダウンタウンの中心部に広がる「世界最古にして最大」と言われるチャイナタウンへ足を運んだ。そこで見つけた1軒のレンタルビデオ屋に入ってみた。陳列棚には最近の映画ばかりが並んでいて特に掘り出し物はないなと思った瞬間、店の片隅に汚らしくてやたら分厚いファイルが6個並んでいる事に気が付いた。開いてみると古い作品のパッケージがたくさんファイルされている。どうやら旧作はスペースの関係上、棚には並べずにこのようにすべてファイルにしてあるようだ。その大量のファイルを1ページずつ注意深くめくっていくと……
 「あった……」
 目の前に「新十二生肖」の5文字が!一気に脳内アドレナリンがドバーーっと溢れ出して来るのが分かったが、ここはレンタルビデオ店。高ぶる気持ちを抑えて買い取りの交渉を試みた。すると、意外にもあっさりと20ドル(2000円程度)で交渉成立。テンテン主演の「幻の映画」は、日本でも台湾でもなく、地球の裏側サンフランシスコで手に入った。
 興奮しながらビデオを再生すると、そこに映し出されたのは我々の知らないテンテン、いやベイマの魅力がぎっしりと詰まった映画だった。詳しい感想などは出演映画のコーナーにも書いてあるが、とにかく素晴らしい作品である。多くの台湾人の脳裏にこの映画の記憶がしっかり焼き付いているのも当然と言えよう。これを見ると「リュウ・ツーイー=キョンシーのテンテン」という等式は崩れかねない。それほど彼女の演じるベイマの役はハマっているし、作品としての完成度も高い。映画を見終わった後に、そのまま続けてもう一度最後まで見直してしまったのは初めての体験だ(ちなみにその後3日間で5回見た(^^;;)。
 サンフランシスコのチャイナタウンは香港などと同じ広東語が主流なので予想はしていたが、今回入手したビデオもやはり広東語吹き替え版だった。オリジナルの北京語版じゃなかったのは少し残念だが、それでもこの作品を楽しむには十分だった。


 ♪ベイマチェック♪

 テンテン演じるベイマが登場するのは裸で川を泳ぐシーンから。素晴らしい映像美。その美しさは人魚か天使のよう。

 髪をなびかせる幽幻1の名シーンが再現されている(音楽まで一緒)。思わず「ひゅぅ〜〜」と口笛を吹きたくなる。

 このシーンも幽幻1のカンルーインの術の再現か。

 基本的に衣装替えや髪型のバリエーション、髪飾りなどは一切ない。キョンシーシリーズのイメージとはかなり違うのだ。

 衣装に変化が見られたのはこの帽子とラストシーンだけ。

 ベイマの暖かさは魔王の手先にされていた蛇姫をも目覚めさせたのだ。

 もし日本でも公開されていたら、キョンシーシリーズと並ぶテンテンの代表作になっていたかも…。


 ♪キョンシーズチェック♪

 狗(チェン・トンツン=トンボ)

 ベイマが生まれた時から仕えている。聾唖なので最後までセリフは1つもない。その代わりアクションはいつにも増して冴えまくり。

 

 龍(リン・シャオロウ=大人テンテン、桃太郎)

 なんかカッコいい。アクションも相変わらずキレる。男役なのか女役なのかよく分からない。服装は女みたいだけど…?

 羊(林光栄=道士など)/豬(パン・サン=デブ隊長など)

 パン・サンはいつも通りのキャラ(^^;。おハコの「拷問ネタ」も健在。左にいる羊役のおやじは、よく見たら幽幻1、2の道士じゃん。

 馬(リュウ・ツーハン=スイカ頭)

 飛脚として登場する。ベイマ達と出会う場面が◎。この時点で三枚目からすでに脱却。

 兎(アン・アン=二代目チビクロなど)

 後半で登場するので、出番は極端に少ない。重要なシーンもあまりないが、死に様が見事。

 


 最後に 

 今回、幸運にもビデオの入手に成功したわけだが、この作品をこのまま埋もれさせておくには惜しすぎる。とくにこの作品はキョンシーシリーズを骨の髄までしゃぶり倒した我々日本人こそが一番見なければならないような気がする。今秋には台湾を訪れる予定で、その際に北京語版のビデオも探してみようと思っている。テンテン・キョンシーファンも相当増えて来ているので個人的なタビング等の依頼はお受けしかねるが、必ず何らかの形でみなさんも見れる環境を作るという事をお約束しよう!気長に待っていてください。

『新十二生肖』ストーリー

 この物語の舞台は古代中国。
 悪魔の復活によって人々は暗黒の世に陥っていた。そのためチベットのラマ寺院では生き仏の生まれ変わりであるの女児『貝瑪』(劉致[女予]=テンテン:以下ベイマ)が誕生した。
 九年の歳月が経った後、悪魔が再び復活してしまった。十二支を引き連れ魔王を倒す事がベイマの使命であった。十二支はそれぞれバラバラだった為、魔王の城に向かう途中で団結させなければならなかった。十二支はそれぞれ登場の仕方が巧妙で且つ個性がよく現れている。十二支は魔王の城へ向かう途中でしょっちゅうケンカばかりしてまとまりがなかった。紆余曲折を経ながらもついに魔王の城にたどり着いた。だがこの時点では十二支中一支揃っていなかった。なぜなら蛇が魔王に操られてしまっていたからだ。
 みんなが魔王に立ち向かい一人ずつ犠牲になっていった。のちに、ベイマによって魔王の魔法から解かれた蛇も勇敢に立ち向かったが同じように犠牲となってしまった。ついに十二支全員が皆魔王に殺されてしまい、ベイマだけが残った。ベイマは悲しみながら魔王がしかけた地面の大きな亀裂に身を投じた。勝利を確信した魔王が痛快に笑い出したその瞬間!!ベイマが巨大な如来に変身し、その亀裂の谷間から飛び出てきた! 抵抗する魔王も、その強烈な法力には歯が立たなかった。こうして、魔王は遂に倒された。
  ベイマは深い霧の中にポツンと立っていた。なんと魔王の犠牲になった筈の十二支が復活し、ベイマは彼らのもとへ走り寄った。(劇終)

原文:Aaron/訳:HKSAR

(2000.8.9)