Short Short
- はっとして、辺りを見回すとカトルは大きく溜め息をついた。
・・・・また、此処にきちゃった。
此処は、ピースミリオンのキッチン、台所、厨房、料理場・・・いや、一番近いのは給湯室。
ここでは料理を作る事も、お湯を沸かす事もできない。既に料理はできているし、飲物も豊富にある。只、一つの条件を覗いては。
- カトルは皆の分を用意してミーティング室に向かった。 デュオはアメリカン。トロワはキリマンジャロ。ヒイロが緑茶。五飛が鳥龍茶。それぞれの前に、容器を置いていく。
「カトル。鳥龍茶という物は、小さな器に濃く熱いのを入れて飲むのが、本当だ。こんな薄くて冷たいのは鳥龍茶ではない」
カトルの瞳に涙が潤んできた。大粒の泪がポロポロとこぼれ落ちてくる。
「カトル、気にするな・・・。五飛、カトルは、お前と違って繊細で傷つき易いんだ」
「人に給仕をさせといて文句をいう・・・最低だな。礼儀を知らない奴」
「五飛。カトルに謝れっ」
五飛は息をつめらした。
(作者注・・・繊細な中国人である五飛は、自分の間違いを認めたり、謝ったりするのを凄い屈辱(相手に負けた)と考える)
周りを見回すと、五飛を睨んでないのは泣いているカトルだけだった。
・・・・ナタク。俺の味方はお前だけだ。お前だけでいい。
・・・・ぐすぐす。僕も、僕も、熱い紅茶が飲みたい。
ピースミリオンでは、ホットドリンクは無かった。全ての飲物は、粉末に水を注いで溶かした物になる。ストローでは熱いものは飲めないし、お茶用にお湯を沸かす装置もない。
(作者注・・・カトルにとっては電子レンジで暖めた紅茶は飲み物ではない。)
・・・・贅沢は言わない。縁が厚さ1ミリ以下の陶器いれて、葉は無農薬、有機肥料の地球産。水は南アルプス山脈の湧き水で・・・
(作者注・・・カトルにとって紅茶でコロナが顕れるのは当然であって条件に含まれてない)
「よっ、弱い奴は、給仕をするな」
「じゃあ、お前が給仕をするんだな」
決定事項の様にヒイロは呟いた。
・・・・ナタクッ。俺はお前に載る資格を無くしてしまった。
(作者注・・・中国系社会では、選民意識が極めて強い為、ホワイトカラーは決してお茶汲みや、掃除をしない。その仕事だけの人を別に雇う)
後書き