Short Short


「今すぐ、ウィナー家の資源衛星での作業を全て中止させなさい」
凛とした声が辺りに響いた。弟からの連絡を受けてからの彼女の行動は素早かった。
「しかし、それでは・・・」
資源衛星の封鎖は、ウィナー家に莫大な損害を与える。それは、ウィナー家だけには止まらないL4コロニー群全てを巻き込むと言っても過言ではない。
だが、ウィナー家の意思は固かった。
「お父様の資源衛星は、戦争には利用させないわ」
反論できる者はいなかった。皆、故ウィナー氏に恩のある者ばかりである。故人が戦争を嫌い抜いていたのを知っている。その意思を継ぐ為にも、武力に訴え、復讐に走らない決意は、素晴らしいものに思えた。
彼らは沈痛な思いで、その言葉を受け止めた。
・・・・見ているがいいわ。私達は絶対に許さないからね。
程無く、L4コロニー群の失業率は六十%迄跳ね上がった。その後も戦争が終了する迄増え続けた。議会から幾ら要請がきても、ウィナー家は、当主が死に、跡取り息子がその爆発に巻き込まれて重傷を負った事を理由に事業を再開しなかった。
当主を殺した議会には、返す言葉はなかった。そして、その原因を作り失業問題に何の対策も打ち出せない議会支持率は下がる一方だった。
その数箇月後、待望のウィナー家の後継者の姿が戻ってきた。だが、彼にはまだウィナー家を継ぐ意思はなかった。殆どの機能を停止させた事実を知った少年の一言。
「今の状態で敢えてMSの求人広告を出せば、きっと皆来てくれる」
勿論、カトルは実行し思った通り、やがて彼の仲間が顕れる。
「俺、こんな人数の中でカトルに逢えるのかな」
この唯一人を呼び出す為の偽情報に、応募した求職者の数は数十万を越えた。
だが、デュオの心配杞憂に終わった。すぐさま彼はカトルに逢い、後継者はその後すぐ、ウィナー家を去る。彼以上に今後の生活に憂いていたL4コロニー群の人達は絶望においつめられたが。
この求職の第一次書類選考に合格した者はいなかった。だが、余りの倍率に疑う者もいなかったのである。
そうして失望した失業者達は、ホワイトファングに走る事となり、オズや、ロームフェラ財団は、散々に宇宙を追い出される事になる。
此処に、ウィナー家の悲願は達成された。

余談になるが、あくまでも財団としては断固としてオズと敵対し、それでも平和主義を貫き通したウィナー家は、民衆の支持を受け、戦後益々発展した。

げに、恐ろしきは、ウィナー家のお嬢ちゃん、お坊ちゃんである。

後書き