Multiculturalpedia
異なる文化を楽しみながら学ぶ事典

「世界の当て字」

 現存するもっとも古い歌集、「万葉集」は当時日本には独自の文字がなかったため、すべて中国の文字(漢字)を借りて当て字にして書かれました(「万葉仮名」)。

 足引乃 許乃間立八十一 霍公鳥 如此聞始而 後将戀可聞

 (あしひきの 木[こ]の間[ま]立ち潜[く]く ほととぎす かく聞き初[そ]めて 後[のち]恋ひむかも)


 「このまたちくく」の「くく」はどの漢字に当たるのでしょう。

 「八十一」です。「九九=八十一(くく=はちじゅういち)」万葉集にはこんな茶目っ気ないたずらがいっぱい見られます。これは戯書(ぎしょ)と呼ばれる用字法で、遊びで趣向を凝らして用いられたそうです。当時の中国の文学にも見られ、それを参考にしたようです。

 もう一つ。


 狗上之 鳥籠山尓有 不知也河 不知二五寸許瀬 余名告奈

 (狗上[いぬかみ]の 鳥籠(とこ)の山にある 不知也河(いさやがは) いさとを聞こせ 余[わ]が名告[なの]らすな)


 「いさとをきこせ」の「とを」はどの漢字?

 「二五=十(にご・じゅう)」から、「とを」という次第です。

 万葉集の成立は奈良時代の末か平安時代の初めと言われています。とすれば、九九はその頃には(恐らく貴族の間では)日本に定着していたのかもしれません。

   「世界の九九」というページでは暗唱する文化圏ではその暗唱を流す予定です。ベトナムでも日本と同じように暗唱していて、1x1から9x9まででなく、12x12まで覚えるそうです。 万葉集の引用は『萬葉集全注』(有斐閣)から。


   英語圏で、for you というのを ふざけて(かどうか知りませんが)4 youと書いたりするのもこの部類ですね。

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 京都 (+「世界の当て字』)

 ポストの色の投稿がとても興味深かったです。
もうご存知かもしれませんが、
京都に水色のポストがあった気がします。
中学の時の修学旅行で見かけて、
友達が珍しがって、写真にとってました。
あと、ゴミ箱を「護美箱」と書いてあって、
うまいなーと思いました。
京都ってあこがれます。

 2002年7月6日(土) Junさん
   Junさん、Multiculturalpedia(多文化理解事典)の制作に加わっていただき、ありがとうございました。

 水色のポスト、いいですね。ぜひ見てみたいです。

日本の郵便ポストは初めは黒だったそうですが、赤いポストのアイディアが採用されてこのようになったそうです。←資料の名前を忘れましたが思い出して書きたいと思います。

「護美箱」という当て字のセンスもいいですね。しゃれてますね。スタッフの話ではこれは日本各地にあるそうです。センスがいい京都が発祥の地かもしれませんね。

漱石の作品には当て字がよく出てきて楽しいのですが、その中で有名なのに「五月蝿い」があります。

他にも楽しい当て字をご存知の方、教えてください。
漢字圏の日本にはこういった当て字の文化がありますが、他の漢字圏にもあるのでしょうか。ご存知の方、心当たりのある方、ぜひ教えてください。また、漢字圏のお友達にぜひ聞いてみてください。

Junさんのおかげで誕生した『世界の当て字』で紹介させていただきます。

今後ともどうぞよろしくお願いします。

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『ラはラーメンのラ』 1

   

 おじいさん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。
「なんだい、あらたまって」

 ラーメンはどうしてラーメンって言うの?
連日報道される、拉致事件とどうして同じ「拉」を使って、「拉麺」と書くの? 拉麺の「拉」って当て字?あんな字、使わなきゃいいのに。おじいさん、教えて。

「あれは当て字じゃない」

じゃ、どういう意味なの?

「『拉致』ってどういう意味だと思う?」

無理に連れて行くこと?

「そうだね。本人の意思に逆らって連れ去ってしまうことだね」

それが「らーめん」とどういう関係があるの?

「『拉』にはいろいろな意味があるんだけど、その1つに「ひく」「ひっぱる」という意味があるんだ」

そうか。『拉致』というのは「無理やりひっぱっていくこと」なんだね。

「そうだね。『拉』には「両手でひっぱる」という意味もあるんだ。『拉麺』(ラーメン)にどうして「拉」の字が入っていると思う?」

わかった!ラーメンをつくるとき、粉をこねて、両手でひっぱるからじゃない!?」

「その通り。日本のラーメンは両手でひっぱったりして作ることはないんだ。だから、キミの言うとおり、おじいさんもこの名前はやめてもいいと思うよ。

キミが『拉致』と『拉麺』の『拉』に気がついたのは立派だと思う。おじいさんはね、そんな頭のいいキミだったら、『拉麺』の『拉』をなくすのに努力するより、どうしたら本当に『拉致』がない世界をつくることができるか、ということにがんばってもらいたいな」

うん、大人になったら、ボクもおじいさんたちがつくってるMulticulturalpediaの仲間に入れてくれる?

「もうキミは仲間だよ。情報をくれたり、感想を伝えてくれた人はみんなこの事典をつくった仲間なんだよ」

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参考文献
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『岩波新漢和辞典(岩波書店)』
拉麺
 中華そば。うどん粉をこねて細く長く引き延ばしたものの意。


『学研漢和大辞典(学習研究社)』
「拉」
2 [動]ひく。両手でひっぱる。
「拉致」ラツチ 捕らえて連れ去る。


『明鏡 国語辞典(大修館書店)』
「本来、中国の「拉麺」は練った小麦粉を両手で何度も引き伸ばしたもの」

『はじめての中国語学習辞典(朝日出版社)』
「拉」:2 引き伸ばす
la mian(はじめのaの上に横線、2番目のaの上に左上から右下への線)[拉面]: 麺を延ばす
 「世界の当て字」についてのご感想(一言でも)、情報など何でも、ひろばに寄せていただければありがたく存じます。

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