Multi- Cultural- Pedia
   異なる文化を楽しみながら学ぶ事典

「語りかける風景」

 心が苦しいとき、気持ちが沈んでいるときも、
人には和ませてくれる音楽があるように、
苦痛を柔らげてくれる絵画があるように、
そこに立つと風景が語りかけてくるように感じられる場所が世界のあちこちにある。
 そこに立っていると心が和み、心に詩が満ちてきて、絵が溢れてくるように感じられる場所がある。
 そして、古来、世界のどの文化圏にもその風景が語りかけてくる話に耳を澄ました人がいた。

 このページは、世界のあちこちの、語りかける風景とそれに耳を澄ました人とが一緒に作った音楽のような、絵画のような物語を紹介するページです。
 地図を見ながら、お楽しみください。

「男山・女山」(カンボジア1)

 カンボジアの方からこんな話を聞いた。

 カンボジアの首都プノムペンの約150キロメートル北東に山が二つあります。名前は男山(プノン・プロス)と女山(プノン・スレイ)と言います。女山は高くて、男山は低いです。その二つの山にまつわる話をします。

 昔、カンボジアでは女性が男性に求婚していました。女性はそのことを悲しいと思っていました。みんな集まって、王宮へ行き、王様の前でそのことを訴えました。

 「陛下、私たちは弱いですし、恥ずかしいですし、男性に結婚を申し込むことは不公平だと思っています。」

 王様はそれを聞いて、考えて、
 「ああ、本当だ。それはあまりに不公平だ。どうしたらいいだろう。私が一人で習慣を変えることはできないし。」と言いました。
 「そうですね。私たちは女でも、男性と競争したいと思っています。」と女性たちが答えました。

 王様はその意見を理解して、国の男女を集めて、競争するように命じました。男性グループと女性グループが山を作るのです。もし、女性グループの山のほうが高ければ、男性が女性に求婚する習慣に変えられます。でも、もし、男性グループの山のほうが高ければ、その求婚の習慣はそのままとなります。競争は日没から明けの明星が昇るまでとします。みんな、「はい、わかりました。」と言いました。

 日没になると競争が始まりました。男性グループはあまりがんばらず、みんなお酒を飲んだり、歌ったりしていました。女の人は弱くて、男の人に勝てないと男性たちは考えたのです。酔っ払って寝てしまった男性もいました。

 女性は計画通りにみんな寝ないでいっしょうけんめいがんばりました。真夜中に、人工の「明けの明星」の中にろうそくを入れて、火をつけて、空に飛ばしました。男性はその「明けの明星」を見ると、休みになったと思って、仕事をやめてみんな寝てしまいました。

 女性のほうはみんないっしょうけんめいがんばって続けました。山はだんだん高くなりました。

 朝、起きたとき、男の人たちはびっくりしました。
「どうして私たちの山より女性の山のほうが高いんですか。」と互いに聞き合いました。でも、すべて終わりました。男性は降伏しました。その時以来、結婚の習慣が変わったのです。

 今は、結婚する前に男性の両親が女性の両親の家へ行って、女性の両親に結婚することを頼む習慣になっています。

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「ミーチャウ井戸」(ベトナム1)

 ベトナムの方からこんな話を聞いた。

 ハノイの郊外のコールアというお城に小さい井戸があります。その井戸にミーチャウという昔のお姫様の名前が付けられていて、今日まできれいなミーチャウ姫さまの悲しい愛の物語が伝えられています。

 ベトナムは、昔、よく他の国に侵略されていましたけれども、神様からいただいた特別ないい武器がありましたので、外からのすべての攻撃に勝つことができました。隣りの国の王様はその秘密の武器を手に入れたいと思って、ベトナムに対する戦争をやめて、そしてチャウントウイという自分の息子をベトナムのミーチャウ姫と結婚させようとしました。「ミーチャウ」というのは「美しい玉」、つまり「磨かれた玉」という意味です。ミーチャウ姫は美しく優しい人でした。

 ミーチャウとチャウントウイは結婚して幸せに暮らしていました。ある日、チャウントウイは奥さんに秘密の武器を見せてほしいと頼みました。ミーチャウは迷わず愛する主人を信じて、その武器を見せました。すると、あとからチャウントウイはこっそり武器を偽物と入れ替えて、自分の国に持って帰りました。

 その一週間後に、ベトナムはその国に再び攻められました。ベトナムの王様が貴重な武器を使おうとした時、武器はぜんぜん役に立ちませんでした。慌てて、王様はミーチャウ姫を馬に乗せて逃げましたが、二人はついに追い詰められてしまいました。

 王様は空に向かって、「神様、どうしてベトナムの大切な武器が役に立たなかったのですか」と聞きました。すると、突然、周りの山から大きな声がして、「敵はすぐあなたの後ろにいる」と言いました。

 王様はすぐ後ろを振り返りました。しかし、後ろには娘のミーチャウしかいませんでした。王様は事情が分かって「どうして私の愛する娘が私を裏切ったのだ」と怒ったように叫んで、ミーチャウを殺して、自分も自殺してしまいました。

 ミーチャウが小さい井戸のそばで亡くなったので井戸に「ミーチャウ」という名前が付けられました。そして、こういう諺が生まれました。

 「ミーチャウは間違って心を頭に置いてしまった」

 日本的に言うと、情に流されてしまった。判断をあやまった。というのは自分の主人だけに対する愛情のために大切なことを忘れてしまって国の秘密を漏らしたという意味です。

 また、ミーチャウを探しに行ったご主人のチャウントウイはミーチャウが井戸のそばで亡くなっているのを見つけて、悲しみ、自殺してしまいました。そして彼の流した涙で美しい小川ができました。

 今でもその井戸の水と小川は清らかで鏡のように見えます。私はそこに行くといつも井戸の中をのぞいて、かわいそうなミーチャウのことを思い、胸がつまります。もし、私がミーチャウの立場だったら、私もミーチャウのようにしてしまうだろうと思いながら。  

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グルボエ湖 ベラルーシ編1

  それでは早速ですが、「語りかける風景 ベラルーシ編」です。舞台となるのはベラルーシ北西部にある湖「グルボエ湖」です。
グルボエ湖、とは「深い湖」という意味なのですが、写真で見たところ、谷間にある小さな静かな湖です。ベラルーシには1万を越える湖沼があるという国。湖にまつわる伝説、というものがちゃんとありました。これは中世から伝わる悲しい伝説です。

昔、ベラルーシのある村にイリギニヤという美しい娘が住んでいました。同じ村にイズバールいう若者がいて、彼女に求婚し結婚することになりました。

ところが、それからイズバールは不思議なことに気が付きました。イリギニヤは毎晩、夜遅く包みを抱えて、どこかへ出かけて行くのです。

気になったイズバールはある晩、こっそり彼女の後をつけていきました。すると人がめったこない沼地の奥へ奥へとイリギニヤはどんどん進んでいきます。そしてそこには粗末な小屋があり、一人の男が出てきました。そしてイリギニヤが持ってきた包みを開けると、中からおいしそうな食べ物が出てきて、その男は食べ始めました。

見知らぬ男と婚約者が仲良くしているのを見て、嫉妬したイズバールは二人の前に現れ、その男を殺してしまいました。その後でイリギニヤが言うには
「この人は私の兄さんなのよ! 兄さんは昔、無実の罪で牢屋に入れられたのだけれど、脱獄してほとぼりが冷めるまで、この人目につかない沼地でこっそり暮らしていたの。私は兄さんのために誰にもこのことを言わず、毎晩食事を運んでいたのに。ああ、何てことをしてくれたの。人殺し! もうあなたと結婚できるものですか。」

こうして、人を殺しイリギニヤと結婚もできなくなったイズバールは、もう村にも住めず、落胆のあまり落ちぶれて、ついに盗賊の仲間入りをしてしまいました。盗賊の仲間と一緒に、行く先々で旅人や商人を襲い、追い剥ぎをして、何年も過しました。

ある時、たくさんの荷を積んだ立派な隊商が、街道を通りかかりました。それに目を付けた盗賊団はあっと言う間に商人たちを殺し、一緒にいた商人の妻たちは枯れ井戸に押し込み、逃げられないようにしました。
それから夜になって盗賊たちは順番に、一人ずつ女を井戸から出したのですが、イズバールが引き出した女をよく見ると、それはあのイリギニヤだったのです。イリギニヤは大金持ちの商人の妻になっていたのでした。
イズバールはイリギニヤを自分のテントに連れて行きました。
さて、翌朝、いつまで経ってもイズバールがテントから出てこないのを不思議に思った盗賊の仲間たちが、中を覗いてみると、何とイズバールが血を流して死んでいます。
その傍らには放心したイリギニヤがいました。イリギニヤがイズバールを殺したのです。怒った盗賊たちはイリギニヤの心臓を生きたまま、取り出して殺し、その心臓を近くにあった湖に投げ捨てました。

それが、グルボエ湖なのです。
それ以来、この湖の上にイリギニヤとイズバールの幽霊が出るようになりました。二人の魂は決して結ばれることはなく、またあの世に行くこともできず、湖の上をさまよっては、お互いの名前を呼び合っているそうです。
特に月夜の晩や7月6日の「クパーラ祭」の晩にはよく出るそうです。

また天気の悪いときに、湖底にたまっている赤い粘土が、ぼこぼこ湖面に吹き出してくるそうですが、これを地元の人は「イリギニアの心臓から出た血」と言っています。
また、不思議なことに、この湖ではほとんど波が立たないとも言われています。(私が写真で見た限りでは確かにそうでした。)ただ、谷間にある小さい湖はどこも、あまり波が立たない、と学者は言っています。

というわけで、これでおしまいなのですが、何だか「語りかける風景」というより怪談になってしまいましたね。(^^;)
もっと明るい話があれば、またご紹介します。グルボエ湖に行く機会があれば、写真を撮ってきます。幽霊の写真は撮りたくないですが、もし撮れたらメールで送りますね。(^^;)



 2000年7月5日(水) 「ベラルーシの部屋」のTさん
  ベラルーシのTさんのおかげで、このMulticulturalpedia(異なる文化を楽しみながら学ぶ事典)がとってもおもしろいものになっていっていることを訪れる皆さんが感じていらっしゃると思います。
どうもありがとうございます。

 「語りかける風景」はMulticulturalpediaでもっとも力を入れているものの一つです。だから大変ありがたく読ませていただきました。
深く、考えさせられる話ですね。

 どうもありがとうございました。

 全国の高校生1、2年生向けの情報誌(ベネッセコーポレーション 2001年4月 約10万部発行)
「子どものためのホームページ厳選100(小学館 ドラゼミ・ドラネットブックス 2001年2月)
でこの事典が紹介していただけることになりました。
 若い人達が読んだら私たちが気がつかないようなことも「世界のお父さん、お母さんの呼び方」などについてもアイディアや感想をいただけるようになると思います。世界中の人々と一緒に考えていきたいと思います。

 これを読んで楽しんでくださっている世界中の人々になり代わりお礼を言わせていただきます。
どうもありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

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 ご感想など何でも、ひろばに寄せていただければありがたく存じます。