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「世界の松竹梅」
 どうして「松竹梅」という順なのでしょう、「梅竹松」でも「竹梅松」でもなく。

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松竹梅について

松竹梅は絶対梅が一番高級と思っていたら、寿司屋のチラシなんか見ると松が高い。松は条件の悪い土地にでも生息するどこにでもある平凡な物で、どう考えても梅のほうがありがたいと思うのですが……。実際のところどうなのでしょうか。どなたか御存知ですか。

 2003年6月6日(金) 中学教師さん
   中学教師さん、Multiculturalpedia(多文化理解事典)の制作にご協力くださりありがとうございます。

 おもしろい疑問ですね。

 「松竹梅」という言葉はおめでたいものとして使われていますね。この名前を冠したお酒もあるくらいです。

 この言葉はどこで生まれたのでしょうか。
 日本でしょうか、中国でしょうか、それともKoreaでしょうか。

 中国には「歳寒三友(松・竹・梅)」という言葉があります。
これは『論語』から生まれた言葉で、



 「歳寒」は、

「<子曰>、歳寒、然後知松柏之後凋也(しいわく、としさむくして、しかるのちしょうはくのしぼむにおくるることをしるなり)」(『論語』子罕第九)

(厳しい冬の寒さの中で他の木々が葉を枯らして行く中で、初めて松やこのてがしわ(この柏は日本のかしわではない)がどんな逆境の中でもいつでも緑でいることに気がつく。)

 人から認められない不遇な人生を歩んで、なお常に緑のつややかさを持ち続けた孔子の生き方そのもののようにも思えます。



 「三友」は

「<子曰>、益者三友、損者三友、友直、友諒、友多聞、益矣。友便辟、友善柔、友便佞、損矣」(『論語』季子第十六)

(友には二通りある。自分のためになる友は益者三友といい、自分のためにならない友は損者三友という。益者三友とは、友人のために自分がどう思われようと直言してくれる友人、心に誠がある友人、物事を深く知っている友人で、自分をさらに成長させるために進んで親交をあたためたい。損者三友とは人によく思われようとすることを第一とする友人、人当たりはいいが本心からでない友人、美辞麗句の使い方が天才的な友人で、自分を守るためには近づかないほうがいい。)


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この出典名を間違えていました。正しい題名を教えてくださった若宮さん、ありがとうございました!(2016年2月2日(火))

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 孔子は晩年自分を見限って去っていく弟子たちや自分を裏切った人たちに対して、恨みがましい言葉は残していません。この言葉通りの生き方だったように思います。

 冬の寒さの厳しさ中でも凛とした気高い緑を保つ松、猛風、大雨・大雪の中でも志を曲げず、すくっと生える竹、寒さの中で他の花に先駆けてきりっと美しく咲く梅。

 昔の人は、これに順番や序列をつける心はなかったのではないでしょうか。松・竹・梅のどれに対しても敬意、尊敬の対象であったように思えます。

 序列や順番をつくったのは江戸時代以降の蕎麦屋や寿司屋の洒落っ気のあった人たちらしいです。「特上、上、並み」に対してこの「厳寒三友」を当てはめたらしいです。


「日中辞典」(小学館)にも「松竹梅」が出ています。序列とは言えませんが、言葉だからこの順番は中国でもともとあったようです。

では、どうして中国でも日本でも「松竹梅」という語順なのか。

その理由についてMulticulturalpedia(多文化理解事典)ではずっと考え続けています。今年の2月22日にひろばに書いた文章を再掲したいと思います。

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「世界の右と左」はこんな言葉から始まります。

「日本語を見てみると、高低、明暗、強弱、大小、多少、少年少女、男女、老若、先輩後輩、上中下、松竹梅、前後、表裏などといった熟語は過去に優位と見られていたものが先に来て、それに次ぐとみられていたものがあとに続いているようだ。」

 今考えてみると、日本語にもなっている、この中国語の熟語は「陽+陰」のご順になっているのではないでしょうか。

これからページをつくって展開していく予定の「世界の太陽・月の呼ばれ方(世界の男性名詞、女性名詞、中性名詞)」ではこのことについてこうふれています。

「古代の中国の思想の1つ、陰陽五行説では、
万物を
「陽」のもの(日、天、春、昼、明、南、動、男)と
「陰」のもの(月、地、秋、夜、暗、北、静、女など)に分けていました。

お日様はその最たるもの、根源のもので、「太陽」と命名されたのでしょうか。また、夜の月は日本では「太陰」とは日常会話では呼ばれませんが、新しく入ってきた「太陽暦」に対する、従来の暦、「太陰暦」に名をとどめています。

古代中国のこの陰陽五行説の影響は他のページでも触れていますが、現代日本の随所に見られます。」

もしこの推論が正しいとすれば、日本の随所に見られるどころか、日本語を使う人が自覚しているかどうかにかかわらず、日本語はこの思想の影響をたっぷり受けているようです。ちょうど今、現代日本語が外来語(カタカナ語)にどっぷりと漬かっているように。

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 陰陽五行説では順序がある。

五行 木・火・土 ・金・水
五時 春・夏・土曜・秋・冬
五方 東・南・中央・西・北

五行は曜日とは関係がない。植物の木であり、金属の金を指す。
五時は春夏秋冬の日本語と同じ並びだ。

五方はどうしたことか日本語(東西南北)と順番が違うが、
麻雀では馴染みの語順だろう。
また、「東南アジア」、「都の西北」などにその語順の名残をとどめているのかもしれない。

さて、五行説には五色と五聖獣というのがある。

五色 青 赤 黄 白 黒

これは両国の国技館の相撲の土俵の上にある屋根の四方には、東は青、南は赤、
西は白、北は黒の房が見られる。

つまり、これらは相互に関係している。

五方 東 南 中央 西 北
五色 青 赤 黄  白 黒

そして、五時と重ね合わせると、

五色 青 赤 黄  白 黒
五時 春 夏 土曜 秋 冬

「青春」という言葉や、詩人の北原「白秋」の
名前が見られる。

「松竹梅」に戻るが、
「松」は「白砂青松」と言われるように「青」としよう。
(「人生いたるところに青山あり」という言葉が中国にあるから
緑は古代中国でも青でいいだろう)
「竹」は生えている竹は青でも、切られて用いられる竹や老成した竹は
黄色だろう。
「梅」は万葉集の頃は白梅がもてはやされていたそうだが、平安時代に入ってからは紅梅に人気が移ったそうだ。

この言葉が生まれたそのころの中国では、梅と言えば白梅が思い浮かべられていたとして考えたい。よって、白。

五色の順番から「松竹梅」の並びが一番自然だったのではないだろうか。

五色 青 赤 黄  白 黒
   松  竹  梅

めでたいものとして、日本では正月の門松にこの松竹梅が用いられる。

 また、めでたい松竹梅に、鶴と亀が加わることもある。

ついでに「夜明けの晩に鶴と亀が滑った」の
「鶴亀」の語順も考えてみたい。

 キトラ古墳など、日本や中国やKoreaの墓には、
四面の壁を聖獣が守るように描かれている写真が報道されたのを
覚えていらっしゃる方も多いと思う。

四神(四聖獣) 

 青龍 朱雀 黄龍 白虎 玄武
      麒麟

 松    竹  梅


そして朱雀は鳥、玄武は蛇がからんだ亀なので、

 青龍 朱雀 黄龍 白虎 玄武
      麒麟

    鶴       亀   
    
という語順が昔の人には一番心にすとんと落ちるものだったのではないでしょうか。

陰陽五行説は、陽が良くて、陰が悪いものというものではありません。

木 火 土  金 水
春 夏 土曜 秋 冬

の順番が早いものが後のものに勝るという考えではありません。
互いがこの宇宙を支えあっているという思想です。

だから、一見洒落て見える、寿司屋や蕎麦屋の松竹梅は
陰陽五行説や論語の趣旨を無視した、
実はぜんぜん洒落ていないものなのかもしれません。

 中学教師さん、これからもどうぞよろしくお願いします。

 「世界の松竹梅」についてのご感想(一言でも)、情報など何でも、ひろばに寄せていただければありがたく存じます。

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