映画その他の感想文


模様替えのお知らせ当ページは2004月9月23日をもって「浦川的雑記帖」へ整理統合しました。


過去の感想文 
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過去のマイブーム放談(部分)


チョン・ジヒョン
 香港で買ってきた「僕の彼女を紹介します」VCDを観賞。日本ではこれから公開なのでストーリーについては書かないでおくけれど、すでに見た友人たちから聞いた限りでは、びみょー、という感じだった。ので甘くみていたら・・・な、泣かされてしまった。。。どうも私はクァク・チェヨンという監督さんの狙いにころっとはまってしまうタチなのか、世代的にそうなのか、人によってはクッサ〜と感じるかもしれないそのそこはかとはないやぼったさが好き。なつかしさに満ちた音楽もツボ。そして、何度となく繰り返されるチョン・ジヒョンの泣きっぷりが。。。ほんと身も世もなくというくらいボロボロ泣くんだもん、ついついもらい泣きしてしまいます。「猟奇的な彼女」や「ホワイト・バレンタイン」でも彼女の泣き顔はとてもリアルでした。で、ふと思い出したのが香港のセシリア・チャン。そういえば「星願」でも、あんまりセシリアが豪快?に泣くので完璧にもらい泣きしたっけ。チョン・ジヒョンとセシリア・チャンは泣き顔の可憐さにかけては当代アジア映画界の双璧かも、、、。(2004.09)

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沈黙の聖戦
 別名「セガールのなんちゃってタイランド大作戦」、というのはもちろん冗談だけど、スティーヴン・セガール主演、チン・シウトン監督というスゴイ組み合わせの、タイを舞台に繰り広げられる見どころ満載&突っ込みどころ超満載な基本的にとてもエキサイティングなB級映画である。タイとくればデンジャラス、タイとくれば黒魔術、タイとくればニューハーフ、タイとくればお寺さん、タイとくれば象、とお約束のタイがてんこもり。これで敵が最強のムエタイ戦士とかだったら言うことなしだが、そうではなかった。とはいえ切れまくった感じの悪役がなかなか強そうで良し。やっぱりアクション映画は悪役が存在感うすいとつまらないですから。その点、正しく怪しいものがありました。話はとても分かりやすい展開で、ようするにセガールが悪いやつらと闘うのです(あたりまえか)。そして、「こいつ、実は悪いやつなんだろうな」とか「このキャラは最後に死にそうだな」と思いながら観ていると、ほとんど全部予想どおりになるんで面白いです。ただし、困るのは、セガールがでかすぎる。アジアが舞台なので余計にどうしても1人だけでかさが目立つ。しかも彼、ますます太りましたでしょうか? 力也と曙を足して2で割らないくらいにしもぶくれてて、目をあいているのかつぶっているのかも判然としないし、油断するとすぐに画面から顔がはみだしそう。ただでさえタイなのに暑さがいやましで、絵的にどうかというと正直いってバランスが・・・。だがそこのところはまぁセガールオンステージの映画に対して文句言う筋合いじゃないかもしれない。最大の問題は、必然性なさすぎの恋愛エピソード。あんた娘が誘拐されてなんとかして助けなきゃならないっつーときにラブシーンなどしてるばやいじゃないでしょうがっ。ジェームス・ボンドじゃないんだからさっ。と、そこだけはあまりにアメリカ的発想で萎えまくりました。さいわいクライマックスで「こう来たか!」と大受けしたので良かったけど・・・(2004.08)

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LOVERS
 張藝謀の新作。原題は「十面埋伏」。中国ではすでに公開を終え、いろんな議論というか話題をまきおこし、その中にまともな評論らしきものがほとんどなかったことが私にとってなにより驚きであったが、結果的には中国でのハリウッド映画のヒット記録を超える興収をたたき出した。日本ではこれから公開なのでネタバレは控えるが、簡単にいえば「愛」を軸にしたいくつもの謀略の物語である。どこから見ても武侠映画だが、実のところ「武」があって「侠」はなく、そのかわり「愛」がぎっしり詰め込まれている。その点、張藝謀らしいというべきか、かなり大胆なこころみである。
 で、感想はというと、私自身は小説を読んだあとで映画を見るという、しょっぱなからねたばれまくりな見方をしたため、ストーリーを追うかわりに役者とアクションに集中
した結果、もう単純に「竹林のアクションかっこいい!」という一点だけで基本的にオッケーだったりする。これは半分チン・シウトンの映画、と言ってしまっては張藝謀に失礼すぎるかもしれないけど、アクション映画としては上出来だと思う。そりゃあ「マッハ!」と比べてどうかというような議論はもとより成立しないし、また逆に、スターが怪我なんてとんでもハップンなハリウッドのCG満載アクション映画とも比べようがない(なにしろ金城武は撮影中にマジで疾走する馬から落ちちゃうわ、チン・シウトン自身も飛んできた矢で顔を射られちゃうわで・・・メイキングにはそんな映像まで入っていて驚かされます)。ようするに本職のアクション俳優でないスターたちがこれだけ動いてる、これだけかっこよく撮れてるというのは、やっぱり香港映画の厚い蓄積あってのこと。あらためてチン・シウトンはえらい(そして相変わらずこわいもの知らずだ)と思ったことである。
 役者では、アンディがさすがの貫禄を見せている。彼ほどのスターがこの扱いではもったいないという向きもあるかもしれないが、そうはいっても一番演技力が必要なキャラであり、 「上海13」とかの超ヤングなころをほーふつさせるアクションはどこかクラシックな味わいがなつかしく、かと思うと善悪錯綜する複雑な芝居は余裕たっぷりだ。とある長回しのシーンでは、こう言ってああやってそれから泣くというところで自然に涙がつーと流れ出すその離れわざ(?)に、ストーリーそっちのけで(!)感動してしまった。 金城武は、とっても美しい。こんなに美男子だったのね(今ごろ言うな!とファンに怒られそうだが)
と目からうろこが何枚か落ちた。彼はこれまでけっこう天然キャラを生かして演じてきた面があったと思うのだが、今回は作りこまれている感じが強く、それがコスチュームプレイにうまくはまったような気がする。章子怡は、私は彼女のアクションする時の勝ちッ気な顔とうなり声(うぉぉぉぉ、とか、いぁぁぁぁ、とか)が前々から気に入っているのだが(なんじゃそりゃ)今回も気丈なアクションを存分に見せて大活躍である。ただ、これは決して彼女のせいではないし、もはや言ってもせんなきことなのだが、本来もう1人の主演女優として参加するはずだった梅艶芳がついに出ることなく終わってしまったのはかえすがえすも痛恨のきわみ。2人の濃い男優を前に、ヒロインの重責を章子怡が1人で背負わざるを得なくなった結果、彼女の独壇場という印象がいやおうなしに強まり、逆にアニタ大姐の喪失感をひしひしときわだたせることとなっているのは、いかんともしがたいのである。もっとも、そうした舞台裏を知らずに見る観客のほうが多いはずだし、予備知識があるとないとでこの映画の受け止め方はずいぶん違うのではないか。カンヌで絶賛されたのは、前知識なく見たほうがよい映画という1つの証拠かもしれない。(2004.08)

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「”気”で養う心と身体 〜李霞的中国武術入門〜
 映画ではなく書籍のタイトル(写真は表紙)。著者の李霞女士はかつて北京武術隊に所属し中国の全国武術大会で何度もチャンピオンに輝いた、リー・リンチェ(ジェット・リー)と共に中国武術界のエリート中のエリートだった人である。その彼女が、日本の少年少女に中国武術を教えるため来日してからすでに16年現在も日本で老若男女に中国武術を教え、今回初めて書籍を上梓した。少女時代のことから現在にいたるまでのさまざまなエピソードは、徹頭徹尾、苦労と努力と根性に裏打ちされ、そこからにじみ出る人生訓は1つ1つが重い。すごいもんだなあと凡人の気軽さで感心しつつ、同様に頂点をきわめたリー・リンチェのすごさもまたあらためて認識できたりするのである。もっとも、リンチェ情報目当てで読む内容のものではないし、「ジェット・リーの姉弟子」を売りにすることは著者の本意でないことも明らか。そのスタンスも含め、ガンコなまでの真摯さ、武道家としての純度の高さが、全編を貫いている。中国武術入門とサブタイトルにあるが、中国武術を志す人向けというより、「武士道」や「五輪書」がビジネス書としても読まれているのと同様、ある意味自分の都合(前向きな意味での)に合わせて読める、武術を切り口としたライフスタイルへの提言集ともいうべき1冊である。(近代映画者刊) (2004.08)

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拳覇
 拳覇は中国語タイトル。本来のタイ語のタイトルは「ONG-BAK」、仏頭の意味らしい。そう、「すべては仏頭のために」なストーリーである。小さな田舎の貧村で、村人が心の拠りどころとする仏像の頭が盗まれる。大規模な国際窃盗団が事件のバックに存在した。仏頭を取り戻すため、村人たちの切実な期待を一身に背負って街へ出ていくのが主人公(演じるは、ハンサム&マッチョな若者トニー・ジャー)。僧侶のような物静かな面差しと果てしなく純粋な心を持つこの青年が実は。。。。めっちゃめちゃ強い!!! そのあとの展開はもちろん予想どおりです。武術の鍛錬はあくまで自らの心の鍛錬とわきまえ、喧嘩は師匠から厳禁されているのだが、敵は問答無用で理不尽な仕打ちを繰り返すので闘わないわけにはいかない。そして彼は村のために仏頭を取り戻すために命も捧げる覚悟。てわけで闘う、闘う、どこまでも闘う。そのアクションがすごい!!!  香港映画でいうなら「ポリス・ストーリー」と「プロジェクトA」と「イースタン・コンドル」と「スパルタンX」の見せ場をトニー・ジャーがいっぺんに再現しちゃいましたみたいな感じで、往年のジャッキーやユン・ピョウをほうふつさせる隙間くぐりや火の輪くぐりなど驚きのアクロバットあり、人間も車も屋台も軽々と飛び越えていくカンガルーなみのバネはワイヤーを使ってないと言われてもにわかに信じられない超人的な跳躍力、そしてムエタイで知られるタイゆえに足技の爆発的なスピードと正確さ。あと、香港映画ではあまり見かけない動きとして新鮮なのが、肘と膝の使い方。げんこつじゃなくて肘、肘、肘! かかとじゃなくて膝、膝、膝! 確かに、近距離で打つときはそのほうが効果的かも、という気がしてちょっと感動。そういった一切のアクションが、見ていてアドレナリンが噴出しそうになることうけあい。「ロッキー」の封切当時、劇場から出てくる男たちが一様にスタちゃんになって全身カッカさせながら今にも走り出しそうだったときのように、この映画を観たあとは即刻筋トレやりたくなること必至。アクションのメッカ香港で大ヒットしたのも分かる気がします。だって最近、香港にここまで命知らずにやっちゃう人材いないし(しいて言えば私はアンディ・オンに期待してるんですけど。「ブラック・マスク2」をほめる人滅多にいないけど私あの映画なにげに好きですねん。ストーリーはともかく、アンディ・オンいいっすよ)、こんな分かりやすい話で最後までとことんアクションだけでひっぱっていく原始的な映画も絶えて久しく、寝た子を起こす状態で大受けしたんじゃないでしょうか。。。 さいわい日本公開も予定されているのでぜひまた劇場で見たいものである。タイトルは「マッハ!!!!!!!!」(http://www.mach-movie.jp/)。びっくりマークが8つ付いているあたり、「すげーぜ!」という興奮が素直にうかがえて共感。(2004.04)

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恋情告急
 1にも2にもドニー・イェンを楽しむ映画である。主演のジジ・リョン&古天楽のファンはどう見るか分からないが、少なくとも彼らの代表作にはなり得ないだろう、まあどうってことないラブコメで、1回見れば充分な感じ。とはいえドニーのシーンだけは何度でも見たい。それほどこの映画のドニーはおいしい。
 どういう経緯で出ることになったのかはしらないが、いわゆるゲスト出演で、しかも大詰めになるまで出てこなくて、私は映画館で座りながらほんとに待ちかねてしまった。でも待った甲斐があった。嬉しさと驚きで鼻血が出そうになった。まず、ウルトラリッチなセレブのキャラクターというのが正解である。もともと育ちがいいしびんぼーしたことも多分ないだろう人なのだが、雰囲気的にまったく成り上がりっぽさがなく、演技じゃなくて地で富豪に見えるのがすごい(そういえば「ワンチャイ2」のゴージャスな羽飾り帽とか、「シャンハイ・ナイト」の貴族の正装とかやたら似合っていたもんな〜)。そして、その設定だけでも悶絶ものなのに、いきなりホテルの高級スイートのベッドに寝転がってトランクスいっちょになってモリモリの腕をあらわすので、見ていてキャ〜ッと言ってしまいそうになった。さらに、デートに行ったレストランで彼女のためにピアノを弾くは(ジュリアード音楽院に入ろうかと思ったくらいの人ですから、本人の指もちゃんと出てます。案外そのシーンはわずかで、もっと長く出してほしかったけれど)、デートに横やりをいれた古天楽のズボンのベルトをしゅっと抜き取って鞭となしマッハなアクションを連発するは(楽しそうにビシビシやってます)、などなど、かつて見たこともない俳優ドニー・イェンが次々と展開されていくのである。役柄的に新鮮というだけでなく、演技的にも恋する表情がこれまたハマっており、これまでアクション映画のドニーさんはロマンチックなシーンに関してはちょっと見ていて恥ずかしいものがあったのが、今回はそれがみじんもないのがまた驚きだったり。とにかく、この映画の最大の手柄&収穫は俳優ドニー・イェンの発見といえましょう。(2004.04)

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酔馬■(馬留)
 劉家良まだまだ枯れはせぬ!と血を吐くような雄たけびが聞こえてきそう。還暦過ぎてから大病したり離婚したり波乱多き老境の劉しーふー、その逆境がかえって今ひとたびの映画人魂を奮起させたのだろうか、古巣のショウ・ブラザースで製作された、いろんな意味で壮絶な功夫片である。かつまたシリアスとコメディがみごとに分離してハチャメチャに突き進んでいく、古き良き功夫片でもある。なにしろ、まさか誰かがすべるとでも?と寒い予感がしたバナナの皮ギャグで予感どおりに人がすべったら呆然としたくもなりますわ。でも、そんなこんなを全部含めて、このさいやりたいことは全部やるんじゃ!と言わんばかりの遠慮のない演出と、人間国宝級の存在である劉しーふーが自ら惜しげもなく見せるクンフーの数々、そして劉しーふーと劉家輝の夢のようなバトル。マジでぐっと胸に熱くこみあげるものがありました。
 主演は劉しーふーと呉京(一時期はジャッキー・ウーと呼ばれていたように記憶するが、VCDジャケを見るとジェイソン・ウーとある)。脇を固めるは昨今「Kill Bill」でがぜん人気再燃のゴードン劉家輝と、新人アクション女優シャノン・ヤオ(ちょっと水野美紀似)と
、もう一人誰だか名前が分からなくてキャラクターも破綻しまくっているが多分期待の新人なのであろう青年と、そして、浦川的に一番驚いたのが、あの戚冠軍! 
 あの、と言われても誰のこっちゃと思う人も多いかもしれない今日このごろだが、最盛期の70年代と今と比べて今のほうが断然かっこいいってどーよ! 50過ぎには全然見えないし、しかも昔は確かにクンフーは気合い充分だったものの、ひょろーんとノッポで痩せていてとりたてて二枚目でもなかったのが、いつの間にやら適度にマッチョな、見違えるほどいい男になっているとは!
 ショウブラが凋落しクンフーブームも去って過去の人になってしまったということとはなんら関係なしに、きっと本当に武術が好きで、常に鍛錬し続けてきたんだろうな。そういうのっていいな。とにかく、思いもよらぬ現在の男っぷりに思わず惚れ惚れしちゃいました。
 この映画、日本でもDVDが出るそうで、タイトルが「超酔拳」だとか。なんか今いちイージーなタイトルだなあ。。。どうせなら「チョー酔拳」なんてほうがこの映画のノリに合っているかも。
(2004.04)(資料協力:M小姐)

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大隻■(イ老)
 香港金像奨で最優秀映画賞、最優秀主演男優賞、最優秀脚本賞を獲得。「PTU」と共に「無間道」系列を完全に蹴散らして金像奨トロフィーをいくつもゲットしたジョニ−・トー組には脱帽である。ジョニー・トーはまちがいなく香港映画界をしょってたつ巨匠だと思うが、こんなに多作でかつ質が高く、商業的作品のときはちゃんと当たらせているのがすごい。カンヌだのベルリンだのにこだわらないのがとてもすごい。授賞式にろくすっぽ来ないのもなんだかすごい。
 この映画を私はまったくストーリーを知らずに観た。コメディかと思い込んでいたが、結果的にはそうではなくて、「こうなっちゃうわけ? こうなるしかなかったわけ?」とちょっと怖くもあって、あとからじわじわと、「一見ひょうひょうと見せて、けっこう深かったんだなあ」と分かった(<遅い^^;)。 ことさらに辛気臭く哲学っぽくしないためのマッスルなアンディの造型が、そこまで計算されてのものだったとは。不思議で新鮮な驚きである。
 あんた何様といわれてしまいそうだが、香港映画の成熟というか、金像奨の成熟というか、こういう映画が去年で最高と認められたという事実に対する、意外性を含んだ感心みたいなものを覚える。アクションありコメディあり泣かせありさらに仏教の哲理ありのバラバラになりかねない要素がどう1本の作品としてまとまるか、初めて香港映画としてその実験の成功例を見せてもらった気がする。(2004.04)

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菊の花の香り
 韓国でベストセラーになった恋愛小説の映画化。主演は若手演技派のエース、パク・へイルと、「反則王」のジムの娘チャン・ジニョン。長年にわたる物語を2時間足らずの映画にまとめたのと、込み入ったストーリーでは全然なくどこまでも1本道な話ということもあって、連続ドラマの総集編のような印象も少々あった。パク・へイル君は、大学の先輩をひたむきに想い続ける、純愛度全開の善良な人。これまで「嫉妬は我が力」「殺人の追憶」とたて続けに粘着系ネクラ青年のインパクトが強かっただけに、「あっ、へイル君がさわやかに歌っている」「あっ、へイル君が楽しそうに笑っている」といちいち驚きながら観てしまった。が、まもなくどんより暗い展開となってたちまち観慣れた(?)ネクラ君に。だがそれからさらに一転して、こんな人に愛されたいタイプのスターにランクインまちがいなしのキャラクターに。泣きはらしたまっかな目もリアルな投入演技で最後まできっちり至上の愛を貫くのであった。実に正統派のラブストーリーで、得体の知れない役柄にこわいほどはまる役者にとっては演じやすすぎる役のような気もするが、かといって毎回ネクラ男ばかりでは逆に俳優として狭くなっちゃうだろうから、たまにはまともな役もやらないとね。・・・ヒロインに触れてなくてすみませんが、とことんパク・へイル目当てで見てましたのでご容赦を。(2004.04)

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鬼馬狂想曲
 香港で大ヒットした旧正月映画。監督ワイ・カーファイ。サイトで写真を見ただけで爆笑&期待していたが、ようやく見られました。ストーリーはあってなきが如しというか、「Mr.Boo!」とハリポタのパロディを混ぜてこねた上に「林亞珍」で着色したような、とにかく笑ってくださいそれがすべてですみたいないさぎよい作り。ええ、たっぷり笑わしてもらいましたとも。けっこう全体的にぬるいのだけれど、ちょうどいいぬるさというか、疲れないバカバカしさというか、不満のないぬるさなのだった。
 最高に可笑しいのがラウ・チンワン。劇中、古仔とセシリアが何度も同じ映画の同じシーンで笑う場面で、何回見ても受けるってなんなんだ?とチンワン演じる社長があきれるところがあるのだが、この映画、マージャンシーンのチンワンとかヌンチャクシーンのチンワンは多分わたくし何度見ても繰り返し笑うと思う。ベタなんだけどすごく可笑しい。ベタで可笑しいっていうのはなかなかできないことだ。80年代のころからこの人の可笑しさは頭抜けていたが(そのわりにはシリアス映画の出演が多くて少々物足りなかった)、今やチャウ・センチ−に次ぐ香港のコメディ俳優は彼であると断言したい。今年の金像奨で主演男優賞にノミネートされているのが「忘不了」でなくてこちらの映画だったら受賞まちがいない(<勝手に決めてる)のに、「忘不了」ではチンワン的に普通すぎて、「PTU」のサイモン・ヤムとかに比べてもちょっと決め手に欠けるんじゃないだろうか。思えば「新不了情」で主演男優賞をとりはぐって以来、彼なら一度くらいとって当然の主演男優賞に縁のないのが惜しまれるが、いつかは絶対とると思うので気長に待ちたい。(<って、もう今年はとらないと決めている。失礼な^^;)
 とにかく賞のことはさておき、この映画のおかしさの半分はチンワンがさらっていっていた。あと半分をセシリアと古仔とジャンユーと小春が分けてた感じで、特にセシリアが楽しそうだった。心から楽しそうに演じていたのでこちらも楽しかった。彼女みたいに、香港のいぢわるな芸能記者に追われる日々でストレスたまっている(<推測)スターは絶対こういう映画に出て大バカをやるのがいいと思う。尋常ならざるはじけっぷりを見せてくれるはず。
 小春はリッキ−・ホイ激似で大受けしたのに、思いのほか出番が少なかったのが残念。スケジュールがタイトすぎたのだろうか? Twinsはサイケファッションがよく似合ってチャーミング。可笑しいというより可愛く、どちらかというと友情出演という感じ。マイケル・ホイのゲスト出演や、ジャンユーの、
「Mr.Boo!」を見ている人にはすぐ分かる石堅のパロディなどは可笑しい以上にむしろ私はなつかしさで胸いっぱい。あらためて、70年代は昔になりにけりと思ったことであった。(2004.04)

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紫胡蝶
 カンヌ映画祭参加からもうだいぶ経ち、中国でもとっくに公開され(てコケ)、日本公開はまだ少し先の映画。見よう見ようと思いつつなんとなく先延ばしにしていたのを、ようやく見ました。実は、大陸プレミアの際、とあるシリアスな場面で観客が爆笑したとかでその後の記者会見でチャン・ツーイーが「監督も私たちも真剣に作った映画なのに」とおかんむりだったとか、中国で公開されていた時期、ワケがわからないとか爆睡モノとか監督の自己満足とか、まぁサンザンな言われ方をしていたものだから(少なくともサイトのニュースを見る限りでは)、「完全にいっちゃってるウォン・カーウァイ状態」みたいな感じなのかな〜なんて思っていたら、とんでもない、私としては「ふたりの人魚」と同じくらいか、それ以上に好きかもしれない映画。念入りに計算されたショットと終始一貫した全体のトーンに魅了されました。
 ので、中国でぼろくそ(カンヌでも今ひとつ評価が高くなかったような印象あり)だったことに対して、特に、プレミアで場内に笑いが起こったという問題の(全然問題じゃないですよ念のため)シーンなどは何がおかしいのか私にはまったく理解できず、そんな反応にさらされてしまったこの映画および監督(かなりへこんだ模様)に対して同情を覚えずにはいられない。確かに私自身、いろんな映画で、本来笑うべきところじゃないところで笑ってしまうことはままあるから、「あんたらなにがおかしいのや」と非難することはできなかったりする。事実として笑われてしまったわけで、作り手としても遺憾の一言だったろう。
 構想に十年かけた作品だそうである。だが、いかに監督が心をこめ、真剣に作り、自信作として世界に打ち出したとしても、なにこれツマランの一言で片付けられてしまうのかもしれない映画って、そして映画ビジネスって、残酷なものですね。この映画のことじゃなくても、ハリウッドにせよ香港にせよ、どえらい大金つぎこんでおいてなんでこんなヘタレな映画を作るんか? っていうこと、やっぱり多いし。。。
 で、「紫胡蝶」ですが、抗日映画です。日本人は襟を正して見ましょう。というのがまず重くあるんですが、それはそれとしても、話が作りこまれていてフィクションとしても上出来である。一種、サスペンス映画のよう。そして主演のチャン・ツーイー、仲村トオル、リウ・イェ、それぞれの入魂の演技がひしひしと、決してやりすぎでなく、伝わってくる。たとえば無言の長回しのあとでまばたきもせぬまま目から涙が1粒こぼれおちるリウ・イェの表情とか、絶品である。彼は「藍宇」の名演でいきなり影帝になったあと、映画に出まくりでなんとなくいつも似たようなパターンという印象になりがちだったが、この映画の彼は久しぶりに別人のよう。やっぱ、いい役者だな、と思えてうれしかった。
 とにかく、日本公開が予定されており、こんな言い方は中国の観客に対して失礼以外のなにものでもないかもしれないが、日本の観客はもちょっとこの手の映画に対して理解あるいは興味を示すんではないかという気もするので、応援したいものである。
(2004・02)

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気まぐれな唇
 あたら先入観が邪魔をしていたせいか、かえって断然気に入ってしまったのがこの映画。
 先入観とはつまり、監督のホン・サンスへのそれである。「江原道の力」を見て「ぐえ〜〜。くっら〜〜〜」とへきえきし、「豚が井戸に落ちた日」を見て二度へきえきし、これで懲りて、確かに才気ばしった監督だとは思うが私は苦手じゃ!と決めてかかってしまい、「オー!スジョン」を観る元気が出なかった。が、ひょんなことから「気まぐれな唇」を観た。今度はもちっと前向きに頼むよ、と期待しつつ。そしたら、期待をはるかに上回る面白さだった。
 「江原道〜」や「豚が〜」で痛いほど迫ってきたリアリズム、そこまで徹底的に描写してほしくないと思うような、私小説的な、まるで自分のいやな面まで連鎖的にむきだしにされたみたいな気になるほどの冷徹な視線が、私にはしんどかった。なにも2時間かけて映画観て、こんなに落ち込ませないでほしいよなっていうのがあった。ところが、「気まぐれな唇」に描かれているのも、同じくらい卑小で、どこかしらものすごく分かってしまう、そんな人々が次々と出てくるにもかかわらず、ブラックユーモア的な設定や台詞や俳優たちの迫真の演技(迫真すぎ!)によって、逆に苦笑いしてやりすごせるだけの余裕がこちらに与えられたのである。まあ、一番、映画的な魅力に寄与しているのはこれまでになくルックスの良い(つまりスターとしての存在感であり、その効用で非現実的な物語として受けとめることも可能にする)俳優2人の起用かもしれない。1人は、主人公を演じたキム・サンギョン(すべてがリアルだ。これが映画デビューというのだから驚く。次いで「殺人の追憶」に抜擢されたのも納得)。もう1人が、チュ・サンミ(すごい別嬪。そのせいか逆に安心。たわわなバディーにはびっくり)。もしも彼らじゃなくて、「豚が〜」みたいに、どこにでもいそうなダメっぽいタイプのルックスの俳優たちだったら、果たしてこれだけニヤニヤできたか疑問である。とはいえ、どこにも救いらしい救いのない話であってさえ、コメディととらえることは充分に可能だし、なにしろ全編にわたってがんがんツボに入る台詞に感心してしまったので、きっとそれはそれで楽しめたであろう。
 ともあれこれにて認識を改め、やはり食わず嫌いは損かもしれないと感じている。我ながら移り気というか単純というか他愛ないのだが、せっかくなのでこの勢いで「オー!スジョン」も観ようと思っている。(2004・02)

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チョ・スンウ
 今年も昨年に続き、早く観たいっ!と心待ちな映画というのを頭の中で並べてみると、ぞろぞろ出てくる韓国映画。気になる俳優というのもいきおい韓国映画人がずらり、なのだが、特にこのところコロンでしまってるのがチョ・スンウ君。昨年秋にパク・へイル君に転んだ直後に同じ勢いで転んでしまった。二人ともむちゃくちゃ若いが新人というにはすでにベテランの面構えをしており、アイドルというには「役者」の匂いが強く、呼び捨てでなく「君」を付けてしまいたくなる「おそるべき子供」タイプである。いや今はもう成人ではあるけれども、2人とも10代から舞台で経験を積み、かつての早熟さそのままにすでにしてどこか悟ったような顔つきの青年であるがゆえに。
 で、チョ・スンウ君である。遅ればせながら観たイム・グォンテク版「春香伝」で、若様は春香に一目惚れしたけど私は若様に一目惚れしてしまった。なんと知的で美しい若様だこと。ストーリーも典型的かつ古典的な勧善懲悪モノにつき、過酷な運命を乗り切ったあとの爽快感が渇ききった咽喉に流し込むビールさながら、胸のすくような大団円に決めまくってくれた若様の凛々しさがひときわ映えたことであった。
 次に観たのが「ラブストーリー」。これまた映画が良くて。原題どおりクラシックな、ストレート直球の純愛物語。トウがたったとかヤキがまわったとか照れ隠しな自己弁護はやめとく。乙女ちっくと笑はば笑へ。もーほんとに大好きでしたこの映画。そして、スンウ君の無垢な笑顔が次第に陰影を帯び内にこもっていく切なさよ。。。
 さらに「H」「ワニとジュナ」と観て、この若き名優のポテンシャルの高さを完全に確信して今に至る。演技や存在感そしてルックスにも魅せられた、よーするに好みということで理由は単純なのだが、加えて大事なポイントが1つある。彼の歯並びである。韓国スターというと、とりわけ若手の場合、整然と白い歯が並んでいるようなイメージを私は持っているのだが、彼は「映画デビューにあたり美容歯科行きました」というような歯並びではない。すこぶるナチュラルなのだ。そこが私はとっても好きである。
 (2004.1)

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アニタ・ムイの死を悼む
 12月30日の昼ごろ、携帯メールの着メロが鳴った。ちょうど車の運転中、しかも高速の追越車線をぶっとばしている時だった。同乗の家人が「かわりに見ようか?」と言い、「読んで」と頼んだ。するとしばらくいじってから「メールの開け方がよく分からない」と言うので「じゃ、あとで見るから」と答えた。
 到着後にメールを開き、愕然とすると共に恐怖が胸をかすめた。
あの時悲報を耳にしていたら、驚いてハンドルをきりそこなっていたかもしれない。。。
 自分が香港映画にはまるきっかけとなった映画「アゲイン 明日への誓い」で一目惚れし、以来出演作はすべて過去のものも新作も見てきたアニタ・ムイ(梅艶芳)こそは、香港映画界最高クラスの女優そして香港歌謡界最高クラスの歌手だったと私は心から思っている。天性のプロであり、芸人であり、彼女のやることに一切の手ぬきはなかった。
 レスリーが世を去り、SARSが猛威をふるい、ようやく苦難の1年が終ろうとしていたときにまさかの急死をとげたブラッキー・コーに続いて、香港芸能界の女王であり女神であり救世主ですらあったアニタ・ムイまで失ってしまうとは、香港にとって2003年はあまりにも厄年でありすぎた。一香港映画ファンに過ぎぬ自分でさえ、かつてなくしんとして迎えた新年である。
 香港が生んだ不世出の歌姫の偉業をしのびつつ、合掌。 (2004.1)


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