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「無間道3終極無限」
 ヒット作品の続編、そのまた続編というのは一般に段々つまらなくなっていってしまうことが多いし、こと香港映画で顕著な特徴であるが出演者が次第に豪華になっていくのに比して話より登場人物のバランスとるのにいっぱいいっぱいでとっちらかってしまうというのがありがちなことなのだが、予想に反して「無間道3」は面白かった。しょうじき2より面白かった。でもいちばん面白かったのは1。なので個人的には1の本編と3の続編だけでもよかったかもな〜という気がしている。2については過去の感想文でも書いたとおり事前にストーリーを知りすぎていたせいで面白みが半減してしまった面が大きく、それがなければ1から3まで全部面白かったという感想になったと思うので、ちょっと残念。2の教訓を生かして(?)3は何も新聞記事などを読むこともなくほとんど無知同然で観たのが良かったようである。
 3の特徴を端的にいえば(
以下、まっさらな気持ちで映画を観たい方は読み飛ばしてくださいは、1でトニー・レオンがひどい目にあいすぎた落とし前が3でたっぷりつけられているのと、陳道明がものっすごくおいしいキャラだということである。どちらも、いささか過剰なまでに。。。
 話のしょっぱなからねちっこく●●を苦しめる無間地獄ぶりは、もしかしてこの調子だとラストは●●が彼の某過去作品のラスト(の1つ。バージョンが2つあった)と同様に老人ホームで廃人となっている姿が出るんではないかと予感したほどであった。だがそれはさすがになく(それなりに近いけど)、香港映画もそこまでコテコテにはやらなくなくなったかぁという一種の感慨(?)を覚えたりもした。
 そのかわり思いがけないとばっちりをくらって香港映画らしいストーリー展開の象徴(?)となる黎明は、陳道明の次においしいキャラだった。役者としての彼はのーめんのような顔が善とも悪ともつかないタイプの役が妙にはまる(「三更」しかり)と私は思っているのだが、今回もそれがプラスに作用した。
 でもって陳道明。彼が出演すると知ったときから私は勝手に「秦王と残剣の対決再びだ〜!」と盛り上がっていたのだが、劇中、トニーとのからみ(生きるか死ぬかの状況でスキンシップもばっちり)には「きゃははは〜」と喜んでしまいました(<アホ)。ウォン・カーワイもびっくりの「室内でそれじゃなんも見えんだろう」なサングラスをかけ続け、ワルっぽいおひげと黒づくめのコート姿もとてもお似合いで、うっとりしました。
 今回は中国と合作というだけあって中国当局および陳道明になにひとつ恥をかかせない充分な配慮が感じられ、モロすぎて笑っちゃうくらいだが、それは別にいいとして、じゃあ聞くけどパート1の大陸向けのラストは一体なんだったのかっていう。。。1は中国ではたしか公開はされていなかったと思うのだが(VCDやDVDだけだったのではないかと)、1の大陸版ラストを観て2を観て3を観るという内地的シチュエーション(2と3は内地公開された)なんちゅーものはハナから成立しない今回のパート3は大陸の観客にとって「大陸版のラストのことはつっこまないように、よろしく」と言わんばかりの展開なわけですが。。。どっちみち誰も気にしないささいなことなんでしょうね。。。(2003.12)

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「少年阿虎」
 監督ダニエル・リーはやっぱりショウブラおたくだった!と確信せずにはいられない布陣の浦川的ドツボ映画。なにしろティ・ロンがいれずみもあざやかな腕を剥き出しに詠春拳の稽古をバシバシやってくれる、デビット・チャン(現ジョン・チャン)は病気で寝たきりの役ではあるが(回想シーンではちゃんと動いてる)その若き日の写真という設定で昔のショウブラ時代のスチルとおぼしき写真がバシバシ壁に貼られているし、リウ・チァフィが主人公の通うジムの指導者役でシブイ味出してるし、、、そうした往年のヒーローたちが脇をかためた上で、ティ・ロンの息子ショーン・タムが汗みどろアクションをやってたり、ほんとは個人的にはこの映画のキックボクシング・トレイナーであるビリー・チョウにやってほしかったキャラではあるがロー・ワイコンが相変わらずタフなアクションをちょびっと見せてくれるのもお約束っぽくて納得だし、さらにこのごろ復活モードのマックス・モクが微妙にダークなキャラクターでいいとこもっていったり、なにかとうれしかったりするのである。主人公のヴァネス・ウーのちょっとふてくされた感じのルックスも若々しくていい感じ。でもってヒロインは。。。韓国の美人女優さんで(名前忘れた^^;;)こちらはまぁ「ファイターズ・ブルース(原題:阿虎)」で常盤貴子が出たみたいな、やっぱし海外マーケットは大事だし的な、それほど本筋にかかわってこない(だけでなくちょっと非現実的なというか余計な行動とかもあったりする)ものがある。けれども、もしダニエル・リーがマジでショウブラ(とりわけ張徹映画)おたくだったなら、それはそれでかまわないのである。なにしろ基本的に女優は綺麗どころの域を出ないのが張徹映画だったのだから(多少は例外もあるが)。ほかにも、最強の対戦相手を演じたアンディ・オンも実はけっこう好きだったりするので、一人で勝手に「わーい!」と盛り上がってしまう映画でした。一緒に観た友人は、「なんだか企画倒れな感じ。キャストはいいのに話が。。。」と評価は低かったが、それも理解できる。おそらく私みたいなのだけがやたら受けちゃいました、というようなタイプの作品なのだろう。もったいないといえばもったいない。香港でもヒットしなかったみたいである。残念。。。 (2003.12

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東京FILMeX、とりあえずの感想
 今、せっせと有楽町に通っている。その行先であり今年で4回目になる東京FILMeXは、先に終わった東京国際映画祭中「アジアの風」と似た匂いを持つというか対をなすというか相互補完的な、アジア映画ファンが引き寄せられずにはおかない気鋭のラインナップと、日本の映画祭としては最高レベルのインテリっぽさもあって、すでに充分な固定客と認知度を獲得したように思われる。私自身、作品によっては消化不良になることもあるが、かつて「藍宇」「フラワー・アイランド」といった映画と出会うことができた経験からも自分の年間予定からはずすことはできない映画祭である。
 今年はオープニング作品「春夏秋冬・・・そして春」で、いきなり脳天グワシとやられてしまった。そもそも、キム・ギドクの映画であるというだけでも目ウロコだった。これまでたとえば「受取人不明」ではその煮えたぎるような社会への怒りをもろにぶつけられたような重さに驚き、かたや「悪い男」はそうした怒りにとって替わって「娼婦=天使」願望というか一種の「男のドリーム」的な正直さが感じられてまた驚き、なんにせよストレートで唯我独尊な作風が物議をかもしやすく賛否両論をまきおこしやすいタイプの監督だという程度の認識しかなかったのだが、そのストレートさが、今回「春夏秋冬・・・そして春」でまったく違う様相を呈していることに、またしてもの驚きと共に思いがけない感動で落涙すらしてしまったのである。誰しも程度はそれぞれながらもいろんな回り道を繰り返しつつあらがいがたく年を重ねていく人生っていうものに対して、「遅すぎるということはない」と耳元でささやかれた気がし、しかもそうした煩悩の解放には思考一辺倒でなく肉体的鍛錬も深くかかわるものだという、自分の中で本能的に共感できるものがあった。分かりやすすぎるという印象を持った人もいるかもしれないが、私自身にとってはその分かりやすさがまた驚きだった。
 そしてまた「PTU」。DVDを買ったものの大画面でまずは観たくてがまんしていたので初見。果たしてなるほど「ミッション 非情の掟」以来ひさびさのジョニー・トー節炸裂!という感じで、冒頭からワクワク、ゾクゾクものである。自分にとって「ミッション 非情の掟」はこれまでに見たあらゆる香港映画の中でベスト3に入れたい傑作なので、それを凌駕するとまでは簡単には言えないが、優劣つける必要もないくらい同じ肌触りである。とりわけ最高の存在感はサイモン・ヤム。彼はすでに「ミッション 非情の掟」で役者として1つの到達点をきわめたと私は思うので、そのあと「トゥームレイダー2」あたりでフツーの中国マフィアを演じようがなんだろうが気にならない。作品を選んで寡作をきどる必要などなくて、相変わらずいっぱい出る中から次なる当たり役が抽出されてくればよく、彼はいつでも名役者として胸を張ってていい。
 もう一人の主役である林雪も予想以上にすばらしい。彼の場合、その風貌だけで普通の俳優の何倍も得をしているのだが、それに甘んじることなくさらに怪異さを増しつつ進歩を重ねているのが痛快であり天晴れである。
 初日に「春夏秋冬・・・そして春」でぶっとんだ上に「PTU」も堪能できたおかげで、次の日に見た「地球を守れ!」「鏡の中へ」は一転してどちらも「う、う〜〜〜む」という心境で会場を後にする結果になるのだが、それも帳消しにできるくらい、今回いろいろ買いこんだチケットのもとはすでにとれた気がしている。 (2003.11)

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東京国際映画(含・協賛企画)の感想・その2
 数年前まで香港&台湾映画一辺倒だったのに、今は大陸モノに転び、韓国モノに転び、見たいものの数の多さにあっぷあっぷしている自分。かつて香港映画ビギナーの頃、俳優の顔と名前が分かるようになって一気に面白さが加速したが、今また大陸と韓国の俳優データが次第に記憶庫に蓄積されつつあり、それに比してどんどんはまっていく。要するに白帯から色帯に昇級した程度の段階で、黒帯には全然遠いが、やたら面白くてたまらないという時期なわけである(黒帯になると、客観的になってきて、ただただ面白いではすまなくなってしまうもんです)。
 で、もともとアイドルよりもクセモノ系(悪役&脇役も含めて)好きなので、ウ●ン●ンとかのハンサムたちにはあまりそそられず、「フツーじゃない」っぽい俳優ばかりが気にかかる。今回の映画祭で見た中からいえば、韓国映画ではまず「光復節特赦」(<光沢ピンクのスーツがキョーレツに似合う)と「公共の敵」(<かつてなくマッチョ)のソル・ギョング。カメレオン俳優と言われているだけあって作品ごとに雰囲気ちがいまくりのデ・ニーロ状態が痛快(体型までちがうし)。ただ「オアシス」くらいに突き抜けちゃうと、尋常ならざるなりきりっぷりに平伏しつつもそういうのが何本も続くのはキツかったりするのでたまにで良くて、微妙にギャグ入ってるくらいか、あるいはとことんシブく決めちゃうか、というあたりを個人的には希望。それと前髪は切りそろえすぎないほうがかっこいいと思うんですが(<大きなお世話?)。
 「ワイルド・カード」の主演コンビ
ヤン・ドングンとチョン・ジニョン(名前をようやく覚えた^^;)もいずれ劣らぬ実力派とみた。ヤン・ドングンは「受取人不明」で見てホンモノのハーフだと思い込んでたが(<単純すぎ)、メイクと演技のたまものだったようで、すごい。。。彼はアクションのキレが良く、男前じゃないのが逆に強みで、きっと何歳になってもその年齢相応の難役をこなしていけるはず。チョン・ジニョンは、最初に見たのが爆笑ものの「ガン&トークス」だったので、次に「アウトライブ」で見たときにどうしても笑ってしまったのだが(シリアスな役だったのに)、かっこよくも見えるしトホホにも見える、これまたカメレオン系役者と思われ。未見の「グリーン・フィッシュ」と「約束」を早く見ねば。。。
 韓国映画ではほかにもたくさん気になる脇役がいたのだが、顔はよく見かけるものの名前がわからん。。。今後、地道にチェックしていきます。
 中国映画でいうと、「フツーじゃない」どころかむしろフツーなタイプで、潜在的な大器ぶりを感じたのが「ILoveYou」の■
イ冬)大為。目下、中国4大若手スターの一人とされている彼、大昔のジャッキー・チェンを思わせるルックスはおよそアイドル顔ではないが、若き実力派としてかなり評価されているらしい。マスコミではしばしば、目は小さいが人気スターとかなにやら失礼な書かれ方をしている。中国の芸能界は美形なだけじゃやっていけないはずなのだが昨今のアイドルブームのあおりなのだろうか? ともあれ、役者として、いい感じである。アイドルにして演技派&才媛のほまれも高き徐静蕾との大ゲンカシーンは圧巻。また、サービスショットってわけではなかろうが下着姿になったときの筋肉質ないいカラダは、演技派じゃだけじゃなくて肉体派(なにそれ)でもあることを証明。きっちり鍛えてる!という発見によってひときわ好感度が増したのでした。  (2003.11)

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東京国際映画の感想・その1
 今年もせっせとアジアの風@渋谷に通った。加えて今年はコリアンシネマウイーク@日比谷にもせっせと通った。毎日朝から晩まで、というわけではなかったが、買い込んだチケットの全行程を終えたらさすがに少々疲れた。でも観て損のない映画ばかりだったので満足度はかなりハイ。
 今年の感想は「韓国映画がおもしろすぎる!」に尽きる。そんなの今さら言うまでもないことなんだろうが、まさに狂い咲きのような快作続き。勢い、って、こういうことなんだろうなあと感嘆してしまう。
 その筆頭にして噂にたがわぬ圧倒的な風格を見せ付けたのが、ポン・ジュノ監督作「殺人の追憶」。長らく、すごいぞすごいぞと評判を耳にし続けてきたのでもう見る前から頭の中は期待でいっぱいだったのだが、ようやく自分の目で確かめられた。
 熱くて、どす黒くて、むなしく、せつなく、とりかえしのつかない痛みに満ちた鎮魂の物語。あくまで映画としてみるべきなのだろうか。実話ということにあまりとらわれないほうがいいのだろうか。でもそれはなかなかむずかしい。どこまで実話でどこからフィクションなのかは知らないが、心の中で実際の犠牲者たちに手を合わせないではいられないものがあった。この映画が作られたこと、そして韓国で大ヒット&賞とりまくりという結果を出したことが、ある種、健全な現象だという気がする。
 もちろん映画的な完成度は申し分ないし、役者陣がまたすばらしくよいのである。で、もはや大御所の貫禄のソン・ガンホもさりながら、こいつはとんでもないことになりそうだと思わされたのが最後の容疑者を演じたパク・へイル。この映画よりも前に彼の初主演作だという「嫉妬は我が力」を観て以来、なにやらぞわぞわするものが増殖していたせいもあって、決定的なインパクトだった。彼は「ワイキキ・ブラザース」に出ていたそうだ(観たけど、はっきり思い出せん。。。)が、まずはルックスで売り出す新人というタイプではなく、いきなり最初から個性派で、あれよという間に性格俳優の最先端に踊り出た特異なタイプに思える。映画の中では粘着質でオタク系、でも頭が良くて計算高くて仮面をかぶってるみたいな、現実だったら生理的に受け付けられない感じなのだが、舞台挨拶で登場した姿はさわやかで静かで賢い感じの好青年だったので、すごくほっとした私である。(<こらこら、役柄と本人を一緒にしちゃいかんでしょう)
 とにかく、自分的に目が離せない役者がまた一人、ここに。 かわいいからとか、ファンになっておっかけたいとかではなくて、この役者を今後、黄金期まっただ中の韓国映画界がどう使いこなしていくかがすごく興味深いという意味で今回いちばんの発見というか脳内に刻み込まれた存在でありました。(2003.11)

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「千機変」
 人気アイドルTwinsの魅力をとことん見せる、というはっきりした目的で作られていることが正解。個人的には彼女らがとても可愛く感じられるときと、そんなにいいかなぁと感じられるときが交錯して、あと何年今の人気がもつかなぁみたいな失礼千万なことまで考えてしまったりも(<いやなおばちゃん根性ですね)したのだが、それをさしひいてもアイドル映画としては十分に楽しめた。なんせ彼女らを引き立てるゲストスターが豪華。ジャッキー・チェンがひと昔前のゴールデン・ハーベスト映画時代みたいな愉快なアクションをたっぷり見せてくれたし、イーキンはいつ見てもイーキンなんだけど逆にそれがいいし、カレン・モクもはじけてたし、ジョシー・ホーもかっこよかった。そしてアンソニー・ウォン。まったくこの人は何をどう演じてもいい味出ちゃうんで、たまにはつまらないアンソニー・ウォンも見てみたいと思うくらいなのだが(あ、でも最近では「黒白森林」の彼はもろ「無間道」キャラでどーかと思った)、こうもりのように天井からぶらさがって顔をニットキャップで覆って眠っているバンパイヤ姿のお似合いなこと。彼の独特な混血っぽいルックスがこういうゴチック・ホラーな雰囲気にぴったりなのですね。「無間道2」では大役すぎて荷が重かったえぢそんも、キュートなバンパイヤ王子さまだったら問題なし。素のままでいいから。。。終り方はとっても続編含みに作られており、大ヒットしたからそれもありなんではないだろうか。
 アクションをつけたのはマッハ王子ことドニー・イェン! さすがにシャープでけれん味があって豪快なアクションで安心して楽しめる。せっかくバンパイヤ映画だからちょこっと顔出してくれたらもっとよかったけど(すごくバンパイヤが似合うから)
Twinsに関していえば彼は前に絶賛しており、確かにがんばってて決してへぼくはなかったものの、私としては「修羅雪姫」の釈由美子のほうが一枚か二枚上じゃないかって気がした。ドニーさん再びで「修羅雪姫2」プリーズ!(2003.10) 

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「無間道2」
 日本ではようやく「無間道(邦題:インファナル・アフェア」)が公開となったばかりだが、香港ではすでにパート2が上映中。中国大陸では公開前からさっさとVCDが売り出され、それを買って見てしまった。パート1の前伝であるパート2では、やがて潜入警官となるヤンの複雑な家庭事情や、やがて警察として出世していくラウの青くて熱い駆け出しヤクザ時代を軸に、それぞれのボスである黄Sir@アンソニー・ウォンとサム@エリック・ツァンがかつては仲良くなれあいで共存していたのがどういう経緯で不倶戴天の関係となるに至ったかが描かれる。役者たちの豪華な顔ぶれはすごく(パート3もさらにすごいことになりそうだが)、A級映画で単独で主演を張れるクラスのスターが押し合いへしあいひしめいてしのぎを削っているため、B級映画なら単独で主演を張れるだろうクラスのスターまでは手が回らないといった感じで、アンドリュー連凱だのクララ・ワイだのが惜しげもなくチョイ役で使われては消えていく。ロイ・チョンですら、微妙に重要な役ではあったがいかんせん脇役すぎてキャラ立ちするひまがない。さらに客演のテディ・チャン(監督)やらアーサー・ウォン(名撮影師)やらピーター・グオ(同)等々の芸達者たちがこれまた惜しげもなくひどい殺され方をする。この「出演者バブル」なノリは「古惑仔」シリーズの末期時代を思い起こさせる。ただし、「古惑仔」シリーズは回を追うごとに貯金が減って使い果たされたみたいな感じになってしまったが、「無間道」シリーズに関してはまだ見ぬパート3のほうが2より面白いだろう、と予測できる。
 パート2がつまらないとまでは言わない。「よくある香港映画なみのおもしろさ」だった。いかんせん、前作が「香港映画とは思えないようなおもしろさ」だったのだ。パート2で最も強い印象を残したのは紅一点のカリーナで、久しぶりにこんなに強くて綺麗な彼女を映画で見た気がする。あのいまわしい写真事件に堂々と立ち向かったときのような「大人の女」っぷりにうっとりした。
 困ったのは、正直いってエディソン・チャンとショーン・ユーがど〜にも未熟というか、並み居る先輩たちの貫禄に到底追いつかなかったこと。。。分不相応な横恋慕をしてカリーナ・ラウに張り倒されるラウ@えぢそんは、若気の至りというよりそんなことすりゃぶっとばされんの当り前だろみたいに思えてしまったし、切れ者&野心家すぎてとってもアブない兄ン・ジャンユーの前では、弟のヤン@ショーンはその後有能な警官になるとは思えないほどとろく見えてしまったのだ。前回のトニーとアンディがはげしく良かっただけに、2人ともいくら若いころだったってもうちょっとましだったんじゃないか?というふうに感じてしまったのだ。。。その意味では2人にはこの現場、ちょっと酷だったかもしれぬ。彼らには今後の精進を望みたいところである。まあそういうことで、次回パート3はまたアンディとトニーが主演なので、ぜひまた全体がぎゅっと締まった映画になってほしいと期待する次第である。
 残念といえばもう1つ、ごひいきのフー・ジュン(胡軍)が、なんか彼じゃなくても演れそうな役回りだった。あらかじめどんなキャラでどんな最期をとげるかをそこそこ知っていたせいもある。何も前知識なく見たらもっとインパクトがあったのだろう。「金鶏」で、ちょっとしか出ないのに誰よりもおトク感のあるキャラで欣喜雀躍させられたときのようなわけにはいかなかった。なお、これに限らずパート2は事前にキャラやストーリーが報道されすぎていたような気もする。パート3は記事が出てもなるたけ読まないでおこうと思ったことであった。(2003.10)

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「猟人」「狂恋詩」
 中平康の伝説の香港映画とされる、共に68年のショウ・ブラザース作品。中平監督自身による日本映画「猟人日記」(64)「狂った果実」(56)のリメイクで、当時、井上梅次監督ら日本の著名監督が何人もショウ・ブラザースに招かれ香港映画としてリメイク作品を手がけていた潮流のたまもの。私はあいにくオリジナルの「猟人日記」は見ていない。だが「猟人」のぶっとんだ前衛性から察してオリジナルはさらに一層カルトな傑作だったのではないかとぞくぞくした。昔の日本映画はすごかった、というより(その言い方はひとくくりすぎますからね)、昔も今もすごい映画は古びることなくすごいんだ。今誰かがこういう映画を作ったとしても斬新とかカルトという誉め言葉が与えられるだろう。
 タイトルからして刺激的であり、若い女性が自殺する冒頭シーンで一気につかみは十分。そしてそのあとも「出だしは思いきり期待させたのに段々ゆるくなっていく」ということがなく(そういう映画はままある)、中盤からだいたい全体像が見えてくるものの、なおぐいぐい背中を押すように最後までぴんと張ってく緊張感の痛快さよ。当時の香港スターの厚化粧とオーバー気味な演技も気にならない、というか逆にカルトさ倍増という感じ。ぜひともオリジナルを見てもう一度ぞくぞくしたいものなり。
 「狂った果実」はオリジナルを前に見ていたため、リメイクはキャストの対比(石原裕次郎=金漢、津川雅彦=楊帆、北原三枝=ジェニー・フー胡燕■(女尼))のほうへいささか興味がいってしまったきらいがあるが、名作の香りがそこなわれることはまったくなかった。金漢(周潤發にちょっと雰囲気似てるところあり)は、「猟人」も主演しており、タイプのちがう2つの役を好演。キャスティングは監督の指名なのかそれとも
ショウ・ブラザースから「この俳優を使ってくれ」と言われて撮ったのか分からないが(多分後者だと推測する)、確かに「旬の勢い」を感じさせてまぶしいものがある。そして、最大の眼福は絶世の美女ジェニー・フー。香港映画ファンなら周知(とまでいえないかもしれないが)のとおりテレンス・インのママである。ドイツ人と中国人のハーフで、つやっぽく、時に退廃的、時にきりっと知的で、吸い込まれるような魅力がある。ほれぼれします〜。そして、若いころはすばらしく綺麗で年取ると老けまくってしまうタイプの骨格ではなく、きっと今でも十分に綺麗にちがいないと思わせる顔立ちである。ちなみにテレンスのフッとニヒルに笑う口元はめっちゃママ似なんだな。なんてことを考えながら見てしまったので、「猟人」のような作品そのものへの驚きがなかったのだけれども、ラストの処理などはオリジナルよりちょっとベタで、そのへんは香港らしいのかも、と思ったりもして興味深かった。(2003.9)
(上記2本を含む中平作品が9/20(土)〜11/14(金)「中平康レトロスペクティヴ−映画をデザインした先駆的監督−」にて多数上映予定。詳しくはユーロスペースさんのサイトを参照ください)

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メダリオンと不死身がこの夏ふう?
 香港で何本か映画を見て、あとからつらつら思うに、うち3本も「メダリオン」と「不死身」がポイントに含まれていた。単にありがちなのか、それともある意味流行なのか、ちょっと興味深いことである。その3本とはジャッキー・チェンの新作「メダリオン」、日本でもヒット中の「パイレーツ・オブ・カリビアン」、そして日本公開が近い「トゥームレイダー2」。
 「パイレーツ〜」以外はこれから公開なのでネタばれしない程度に感想を書くと、一番面白かったのが「パイレーツ〜」。夏休み映画にぴったりです。だってとにかく楽しいもん(<そんな子供みたいな感想でいいのか?^^;
。その楽しさの半分以上はジョニー・デップおよび彼が演じる黒真珠号の元キャプテンというキャラクターの魅力によるところが大きいといえそう。何を演じてもオーラをまとっている性格俳優がこういう万人向け娯楽系キャラで笑かしてくれるというのがなんか新鮮だし、ちゃらんぽらんなようでいて実はきっちり状況判断してるあたり「お約束」とはいえ小気味よいし。すでに続編に続投の話も動いているとかで納得できる。で、この映画で主人公(というか、ヒロインの恋人)の出生の秘密を握るもの、かつまた海賊たちに不死身の呪いをもたらしたのが宝箱にざくざくつまったメダリオンなのでした。
 
次に面白かったのが「トゥームレイダー2」。まんまゲームみたいな映画です。安心しきって最後までヒロインの活躍に胸躍らせていればよいのです。なにしろジェームス・ボンドも裸足で逃げ出す美しくセクシーでむちゃくちゃ無敵なヒロインですから。そもそもアンジェリーナ・ジョリーという存在自体が誰にも文句を言わせないほどパワフル&パーフェクト。久しくこんなにいかした女性アクション見たことなかったかも(もちろん要所要所で吹き替え使っているにせよ)。香港映画もこれくらいマブい女優さんが出てこないと、アクション映画ですらハリウッドに負けちゃうぞ、がんばれ、とマジ思いました。で、この映画でも冒頭のほうでメダリオンが出てきて、それをああやってこうやってこうするとやがて秘宝にたどりつくという具合。その宝捜しの過程と、絵にかいたような悪者たちとの相次ぐ闘いを楽しむ映画なわけです。不死身については、そういう題材というわけではないけれど、なんせヒロインが不死身すぎ。悪者に顔面をガラスの破片でごりごりされても次の場面では顔綺麗ですから。
 そういう映画なんで、なまじリアリティ求めてはいけないわけ。しかしこの映画、中国では当局の怒りを買ってしまった。中国や中国人に対して不正確かつ不愉快な表現がいくつもあるとかで中国本土では上映されないことになったようだ。まぁ当局の言い分も多少わからないでもない。それくらい状況設定テキトーだった。でもハリウッドあたりじゃ、日本人だってまだまだめがねに出っ歯、はかまはいて万歳三唱したり切腹したりするような描かれ方をしてますから。。。
 さて、3番めに面白かったというべきか、残念ながら3番目というべきか、ジャッキーの「メダリオン」は監督がゴードン・チャン、アクション監督がサモハンという陣容に少なからず期待したものの、おとぎ話だったのでジャッキー映画としてはちょっと戸惑いを感じたというのが正直なところ。「タキシード」ほどは戸惑わなかったけど。。。
 でもそろそろ我々はジャッキーがワイヤーでびゅんびゅん飛ぶような映画に慣れなくてはならない時期なのだろう。いつまでも「スネーキー・モンキー」のような驚きと興奮を求めてはいけないんだよね。それでも、いや、それゆえになおさら、隙間くぐりみたいなちょこっとしたコミカルアクションでジャッキーならではの動きがいろいろ使われていたのが妙に嬉しかった。で、この映画はずばりタイトルからしてメダリオン、そしてそのブツの効能が不死身なのでした。(2003.08)

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ギャラクシー・クエスト
 2年前くらいに日本でもヒットしたSFコメディで、見たいと思いながらものぐさで劇場に行かず、なぜか今ごろビデオを借りてきて見ました。なんで見たかったかというと、スタトレファンだからではなく、アラン・リックマンファンだからです。おぢさん好きのハートを直撃する、ほんとに素敵なおぢさまです。「ダイ・ハード」の悪役もいかしてたし、「いつか晴れた日に」はもう自分としては彼しか目に入らないくらい素敵だったし、「ハリポタ」シリーズのスネイプ先生の陰険顔も似合いすぎだし、あと何に出てたっけ。。。いやしかし、トカゲ頭のインパクトがこんなに強いとは。そして感動的なのは、ツボつきまくりの自己パロディも含めてこれほどの爆笑キャラを堂々の名演技で最後までまっとうしてくれたことです。だって一度も普通の顔で出てこない、終始一貫トカゲ頭&厚塗りメークですから。すごいな。さすがイギリスの名優! というわけでリックマン@トカゲ頭は私の脳内PCのお気に入りに追加決定。ところで、見ながら時々アンソニー・ウォンを思い出してしまったのだが。。。微妙に似てるのかな? (2003.07) 

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牛頭
 カンヌ映画祭にも参加した、三池崇史作品。日本で劇場公開されないと知らずにいたものだから、ぴあフィルムフェスティバルで見られたのは実はラッキーだったんだと後から実感。ビデオで見ても面白さは変わらないと思うけどスクリーンで見たほうがもっと面白いですから。特にクライマックスの出産(?)シーンとかサイコーね。嬉しいくらい哀川翔さんがつきぬけちゃってます。もう怖いものなし状態です。
 で、映画は何がどう面白いかというのはうまく言えなかったりする。
とにかくヘンな映画。そのヘンさってのが、ヘンな夢をたっぷりと見て、朝目がさめてから「ヘンな夢だったな〜」と照れ笑いをして、誰にも言わずにそのまま段々忘れちゃうような、そんなヘンな感覚というか。
 ヘンな夢って見たことないですか? たとえばトイレに行きたい自分がいて、なぜか広い旅館あるいはがらんとした学校の中でトイレを探してて、トイレルームにドアがずらっと並んでいるのを発見して、なのにどうしてかどこにも入れなくて、なんなんだようと思いながらまた廊下を小走りして別のトイレを探す、とか、そういう(睡眠中にトイレに行きたくなってるときに見てるのだと思われる、いつも似たパターンの)夢って、見たことないですか? もしかして自分だけだったりして(恥)。 ま、とにかくそういう感じの映画
だから、ヘンなのに、およそ実際に起こり得ないことなのに、「あるある、こういうこと」と内心でヘラヘラ笑いしちゃったりする奇妙な既視感におそわれてました。。。 (2003.07)

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愛奴
 長年の念願かなってようやく見られた伝説の武侠映画「愛奴」。ショウ・ブラザースの映画にはほかにも、いつか見られるといいなあと指をくわえて待っていた映画が沢山あるのだが、その筆頭だった。嬉しいことに香港で今どんどんDVD化が進んでおり、日本にいながらにして香港映画の往年の名作を美麗な画面でたんのうすることができるようになった。ありがたや、ありがたや。
 愛奴というのは愛の奴隷のことかと思い込んでいたら、これはヒロインの名前で、しかも芸名じゃなくて本名という設定であった。すごいインパクトの名前だ。娼館に売り飛ばされてきた愛奴が、絶望の淵から這い上がり、自分の人間としての尊厳をずたずたにした奴らに一人また一人と復讐をしていくストーリーは凄絶にして痛快無比。濃厚なエロチシズムもさりながら、リリー・ホー演じる愛奴の激しいキャラと艶めいた毒々しさがなんともかっこいい(鞭をふるうシーンとか鳥肌たつほど綺麗)。愛奴を調教し思いのままに飼いならしたつもりが逆に愛奴の思いのままになっていく娼館の女主人を演じたペイ・ティーの年増の色気と哀しさも一見どころか二見の価値あり。
 等級は今だから2Bになっているが、製作年代が72年であることを思えばレズビアンという題材やSM的シーンの刺激性は今の三級片に匹敵しただろうことは想像にかたくない。すごいのは、一点のくもりもなく美しく気品に満ちた作品であることだ。監督の楚原も、脚本の邱剛健も、おそらくこれを全くもってエロ映画のつもりでなんか作っていないのだ。いきなり終わるラストには一瞬置いていかれたけど(そのへん、映画が終わったとたんに場内に明かりがつき人々がわらわらと席をたつ香港らしさと同じものがあるのかな)、香港からDVDを送ってもらった甲斐がありました。大満足です。できればいつか大画面で見てみたいもの。
 特典映像の1つでクラレンス・フォがたくさんしゃべっているのだが、広東語なのでさっぱり(泣)。字幕プリーズ! どこかの記事で読んだが彼はこの映画を念頭において「香港淫殺倶楽部 ポイズン・ガールズ あぶないカ・ラ・ダ」(この邦題なんとかしてくれ)を撮ったらしく、いわれてみればまったくそうだ。ちなみに「ポイズン・ガールズ」のほうは、美しき殺し屋が3人になっているところが気合いを感じさせ、しかもチンミー・ヤウ、キャリー・ン、ヤオ・ウェイと3人そろってエロ度も女優としてのレベルも高いのがうれしい。映画そのものの出来としては断然「愛奴」が上だと思うが、「ポイズン・ガールズ」も決して見て損はない。あと、もしかしたらチュー・イェンピンの「隷嬢剣 くノ一妖刀秘伝」(この邦題もなんとかしてくれ)もなにげに「愛奴」を意識していたのかもという気がした。原題が「剣奴」ってところからして十分あやしい。チャンスがあったら確認してみたいなり。
(2003.06)

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ブラック・ダイヤモンド

 ジェット・リーが『HERO(英雄)』の撮影を終えて次に出たのがこれ。『HERO』のジェット・リーがすごく良かったのでつい「またジョエル・シルバーだし」とか甘くみて劇場公開が終わりかける頃やっと観に行ったら、おっとっと、面白いじゃん! ワタクシ的には彼のハリウッド転出以来一番面白い英語映画であった。なにしろ『ロミオ・〜』の時とはうってかわって、共演のDMX(ヒップホップ界のカリスマ、だそうです)を始め周りじゅうがでっかい黒人or白人でも全然貫禄負けしてないし、それどころかファンキーな絵ヅラの中で根っからのアメリカ系中国人みたいに全然違和感がない。英語がすばらしく流暢で、ストイックなキャラクターがやっぱり断然お似合いで、そしてアクションがムリなくムダなく彼のいい所だけを引き出して胸がすくようなかっこよさ(コリー・ユエンえらい)。そして、これが畢竟決め手になっている気がするのだが、演出がへんに気負っていないのが正解だ。なまじスタイリッシュな映像に走ったり、荒唐無稽な話なのに要らんリアリティを加えたりしないで、もう状況設定とかわけわかんないけどジェット・リーがひたすら強い、っていうのが嬉しいのね。なんというか彼の場合、ジレンマだの煩悩だのにまみれたキャラクターでなく、どーでもいーから問答無用で強い、っていう方が似合うんで。香港映画時代だったらワンチャイシリーズみたいに人間的なキャラもハマっていたのに不思議だが…。もしかするとハリウッドでは中途半端に込み入ったキャラだとせっかく本物のアクションまでがどこかこじつけっぽくなってしまうのかもしれない。
 というわけで期待の3倍くらい楽しめました。しいて言えばマーク・ダカスコス(はーと)にもアクションの見せ場をもっと与えてほしかった!っていうのはありましたけど…。ちなみに、今後DVDとかでご覧のさいは最後の最後に愉快なオマケがあるので香港の映画館みたいにクレジットが流れ出したとたんブチッと画面消しちゃいけませんヨ。(2003.04)
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ハリウッド・ホンコン

 これまた遅ればせながらに見た話題作。ほめる人と、くそみそに言う人と、評価が極端に分かれていたのでかえって客観的に見られた気がするが、結論からいえば「やられた!」と舌をまいた。陳果映画独特のえぐさ(糞尿やナプキンや使用ずみタンポン入りお茶など)に対する耐性がついに自分の中にできてしまったのかもしれないが、それだけではない。もしかするとこれまでの陳果映画のどれより後をひく魅力が私にとってはまちがいなくあった。ブラックなおとぎ話でありながら笑えないリアルさが充満し、たまらなくおいしそうなチャーシューと、胃酸の分泌を促進するようなげろいシーンが遠慮なしに相互してあらわれ、かげろうのように美しく妖怪のように毒のあるジョウ・シュンの姿が目にやきついて離れず、大デブ親子トリオの日常が香港のくさいものにふたされた暗部そのもののようにいっぱいいっぱいで胸にせまり、夢とも現実ともつかないブランコのきしむ音がなつかしく…。うーん。陳果。やっぱりあなどれない人だった。次に控えし新作のタイトルは『public toilet』だそうで、ああとってもいやな予感がする。でも、きっと見るだろう。見ずにはいられないだろう。『ハリウッド・ホンコン』を見てしまった以上。(2003.04)
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無間道

 昨年の香港映画でぶっちぎり、あわや『少林サッカー』の記録にも手が届こうかというヒットをとばした話題作を遅ればせながらDVDで鑑賞。なるほどアンドリュー・ラウ映画史上の金字塔ともいえるシャープな仕上がりで見応えあり。ただし共同監督アラン・マックの寄与するところも大きいのかもしれず、もしかすると撮影と編集がすばらしいのかも、なんて失礼なことも考えてしまうのは『拳神』のアンドリュー・ラウとは別人のようにしっかりした映画だからだったりする。 
 で、ほとんどなんの不満もないのだが、見た時期がちょっとタイミング的にあれだったようで、●▲■が降ってきたシーンで「あっ!」と動揺し、にわかには映画のリズムに戻れなかった。この調子では今後もしばらくその手のシーンはフィクションとして気楽に見られないかもしれないな、と思ってしまった。嗚呼。
 DVDには香港版ともう1つのバージョン(ラストがちがう)が入っており、もう1つのラストも確認したのだが、自分としてはちょっとやりすぎなくらいの香港版のほうがひと昔前の香港映画みたいで好みだった。せっかくコテコテの香港映画なんだから、ね。ただ、面白かったのに、見終わってみると『鎗火(ザ・ミッション)』のように見終わった途端にもう一回最初から再生、というような愛着はわいていないことに気づいた。どの登場人物にも感情移入できなかったのである。その点『鎗火』はあいつにもこいつにも完全に入れこんでしまったなー、とあらためて思い出した。
 ところで、臥底(潜入警官)ものを見てこれまでもしばしば感じてきたことだが、あそこまで人権がかえりみられない命はった仕事やんなきゃならんのだろうか香港の警官とゆーのは。『友は風の彼方に』なんかもすごかったし、ヒーロー映画として単純に楽しめばいいのだろうが、あまりに悲惨な任務なのでつい気になってしまう。その点、ヤクザが警官になりすますほうがポジティブ(?)で面白いなと思った。それだけアンディがいやらしく演じて魅力的だったからかもしれない。金像奨をとったのはトニーのほうで、もちろん彼も文句なしにうまかったけど。(2003.04)
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レスリー・チャンの死を悼む

 4月1日午後9時半(香港時間8時半)ごろ、香港の友人から電話があって知った。その人は不確かな情報は言わない。信じがたいがきっと本当のことなのだと瞬時に思った。電話を切り、茫然としながら、ふと荒井由美の「ひこうき雲」を思い出していた。私はティーンエイジャーの時期に彼女の歌を浴びるように聴いていた。社会的な問題意識とか、生きている意味だとか、なんにも考えていなかった当時、「ひこうき雲」は自分にとって初めて死の影を脳裏によぎらせた歌だった。といって死の観念にとりつかれたわけではなく、死ぬっていうのはどういうことだろうと初めて考えたに過ぎないのだが、確かにその歌詞は自分の中に深く浸透した。
 彼は、落ちていくとき、何を考えたのか、誰のことを思っていたのか。そしてまた、その目は空を見ていたのか、地面を見ていたのか、それとも目をとじていたのだろうか。
 私は「欲望の翼」で張國榮という俳優のすごさを知った。以来、過去にもさかのぼって見られる作品はほとんど全部見てきた。コメディも、ハッピーエンドの映画もたくさんあったが、今思い起こされるのはなぜか劇中の彼が生き急いでいた(あるいは死に急いでいた)ものばかり。
 天国であれ浄土であれ彼の望んだ安息の場で安らかにと祈るばかりである。合掌。(2003.04)
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ホラー映画

 自分ではかなり肝の小さいほうだと思っているし、ことさらホラー映画好きというわけではないものの、縁あって(?)アジアのホラーを2本続けて見た。1つは韓国でヒットした「ボイス(原題:PHONE)」、もう1つは香港でヒットした「THE EYE(原題:見鬼)」。ホラーという同じ土俵ゆえ、どうしても「●▲よりは怖くない」「××より怖い」という比較を安易にしてしまう面はあるのだが、そこをあえて言えば後者がはるかにぞくっとするもんがありました。作品としてよく出来てるし、主演のアンジェリカ李心傑が出色だ。
 前者は、そのコワさがもっぱら子役に負うところが多く、確かに子どもとかお人形っていうのはその存在感だけでコワさが3割増しくらいになるし、話はけっこう練れていたので最後までひっぱっていかれたのだが、わりと(くるぞ、くるぞ…)と雷鳴や豪雨でぞわぞわと盛り上げてから「ガーン」と大音響と共にコワい何かが映るというパターンが多かったような。映像よりもその大音響が心臓にわるいっていうか。これは「THREE(原題:三更)」の中の韓国パートを見たときにも感じた。韓国映画っぽいということなのかな。で、後者は、私は最後のオチまであらかじめ知っていたにもかからわず、けっこうキました。こちらも(くるぞ、くるぞ…)に続けて「ガーン」でびっくり!というのはやはりありつつ、それ以外の部分で、つまり普通の昼ひなかでもコワいもんはコワいという部分が勝因だ(いや、別に勝ち負けがどうとかではないのですが)。香港とタイの組み合わせっていうところからしてホラー的にはかなり強力な素地(呪い系の伝統)がある上にCGの使い方や編集も巧みだし、パン兄弟、やはりただものではないかも。
 実のところ自分がこれまで見た中で一番あとをひいたのは、月並みだが「リング」。あれほどコワい思いをすると(それは環境ができすぎだったせいもある。なにを思ったかビデオ屋で借りてきて、家族がきっと見たがらないだろうという要らん気をつかって皆の者が寝静まった夜中に1人で見たのだ。すげ〜コワかった〜(泣))、たいていのものは大丈夫という気になってしまったのか、それとも単に年とってすれっからしになったのか、昔に比べるとホラーに対して抵抗感がなくなった。それでも久しぶりに「ホラー映画ってこわいのね」という気がした「THE EYE」。トム・クルーズがリメイクするってほんとですか? どうやってコワくするのかな。香港とタイだからこそ、っていう部分が多かったような気がするのだけれど。(2003.03)
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「ピンポン」

 公開中から「面白いよ〜〜!」と何人もから聞かされていたのに今ごろ見ました噂の「ピンポン」。いやなるほど面白い!! 基本的に体育会系なのでこういう映画はほぼ無条件で好きというのもあります。ただ。。。すいません1つだけ言いたい。それはクライマックスの試合。あの〜、わたし、決勝戦のシーンを自分の中でとても楽しみにしていたんです。「少林サッカー」みたいにアドレナリン炸裂する準備しちゃってました勝手に。それがいきなり数年後にワープしたので、ぽつんと置いていかれたんですが(もしかして原作がそうなのかな。今度読んでみなくては)。。。すいません文句いって。ただ、さいわいそのショックから自分を救ってくれたのが数年後の「スマイル」のネクタイ姿。これで立ち直れました。実は大好きなのですYシャツとネクタイとメガネの3点そろった「れんちゃい」が!(あやしいおばさんでしょう>自分) というわけでハートマークで見終わることができました。話がもう分かったからあとは何回見ても安心して楽しめるはず。へこんだときに見たい映画の仲間入り決定。(2003.03)
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「ガン&トークス」と「処刑人」

 今さら言うまでもないが韓国映画が絶好調。日本に入ってこないローカルな部分では駄作もあるのだろうがそれは知らないので、なんか平均的にかなり出来がいい感じがする。4人組の殺し屋チームが主人公の「ガン&トークス」も面白かった。特にリーダー役のシン・ヒョンジュン@「飛天舞」(←邦題のアウトライブって一体?)と、すぐキレるが人情屋のシン・ハギュン@「復讐者に憐れみを」(←公開予定あるんでしょうか?えぐいけどかなり好きだったんですがこの映画)に座布団3枚。2人とも、シリアス演技もいけてるがリアルで見てて消耗してしまうこともあるのがコメディだと力が抜けてて良い良い。シリアスがうまい役者はコメディもいいし、逆もまたしかり、というのは香港映画ですでに十分認識してきたことながら(ただし例外ももちろんあってたとえばサイモン・ヤムはシリアスに限ると思ふ)、韓国映画はビギナーの域を出ていない我としては妙に発見した気分だ。早く一人前の殺し屋になりたい心やさしいウォンビンは……やっぱりキムタクでした(←禁句?)。そしてもう1人、チョン・ジョエン(「スパイ リ・チョルジン」に出ていたそうだがユ・オソンに目をうばわれてたせいか思い出せない^^;)も百発百中のスナイパーぶりが印象的。で、この人を見ててフト連想したのが「処刑人」(99年 米=加映画)のクールなキラー兄弟(ノーマン・リーダス&ショーン・パトリック・フラナリー)。あの2人の殺し屋っぷりもいかしてたなあ。そういや「処刑人」めっちゃめちゃ面白い映画だったなあ特にウィレム・デフォー! などなどニヤニヤ思い出すうち、ハタと気づいた。「ガン&トークス」と「処刑人」がそもそも似たもの同士なのだ。主人公が殺し屋チームであること。彼らを粘着質な敏腕刑事が追いつめていくこと。ところが段々その刑事の気持ちの中で、キラーたちの腕の良さと、法には背くがろくでもないヤツをきっちり片付けているので思わず快感が湧いてしまうこと(ここがミソ)。うんうんと1人で納得しつつ、がぜん「処刑人」をもう一度見たくなった。(2003.03)
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「英雄」雑感

 念願の「英雄」を見た! 先に見た人たちから様々な感想を聞いていたし内容もだいたい分かっていたしメイキングを先に見てもいたので多少の知識というか先入観はあったが、それがほとんど影響しないくらい予想外の映画だった。目にも耳にも心地よかったことは確かだが、見終わって、だから映画っていいよなァという印象じゃないのだ。映画を見たというより前衛舞踏劇あるいは巨大な絵巻物を朗読付きで見たような後味なのだ。圧倒的なまでの様式美とケレンの嵐が京劇か歌舞伎かはたまたオペラか、みたいな。視聴覚的にそうであるばかりでなく、そもそも話がドラマではないということもあるだろう。神話的なエピソードの多元的な積み重ねで、何がどうなってというストーリーはあってもなくてもいいくらいなのだ。ゆえに、一緒に見た友人とも意見の一致をみたことだが、俳優に求められるのは「演技」というより「パフォーマンス」なのだった。そして、そういう時空間の中でトニー・レオンとマギー・チョンだけが妙に生々しかったというか演技寄りになっていて他の俳優との温度差があって、(名優の名に恥じない極上の表情を見せ続けてくれたにもかかわらず)その不思議なギャップによっていかにも「熱演」に見えてしまったのである。それが監督の狙いだったとしたらそれはそれで納得できるのだが、自分にとっては、大陸の俳優3人(チェン・ダオミン素敵です!惚れます! ジェット・リーはもはや高僧の貫禄で思わずひれ伏してしまいたくなるし、チャン・ツーイーは小さめな役ながらグリデスなみのインパクトだ!)により一層魅せられてしまうという作用を生じた。多分、逆にこれがウォン・カーウァイの映画だったらもうトニーやマギーの独壇場であって、同じ空間にチェン・ダオミンやジェット・リーがいたら浮いてしまうのかもしれぬ。うまく説明できないけど明らかな、色合いもにおいも肌触りもちがうものが、大陸と香港の演技者の間に横たわっていた。ただ、唯一その中で不思議なのがドニー・イェンで(実にカッコいいのだ!)、彼のようなアメリカ育ちのバタくさい美男子が大陸的な重厚な画面に違和感なくはまっていたのは一体なぜなのか。しかも、バリバリの古装をしつつ動きはタイガー刑事かマトリックスかという現代的アクションをガンガン披露するのが似合っているのはなぜなのだ。それが、とてもなぞであり印象に残っている。 って、こんな五感的な感想しかないわけじゃなくてチェン・カイコーの「始皇帝暗殺」とのちがいとか(100%ちがいますけど)ほかにも感想はいろいろあるんですが、日本公開になったらまたあらためて整理してみます。(2003.02)
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ヤクザ映画

 「首領への道」という映画を見た。首領と書いてドンと読ませる。人気劇画(Vシネの人気シリーズでもあるそうな)を原作とし、作者自ら製作総指揮にあたり、豪華キャスト(これ系のVシネで主演・準主演級の方々)をそろえて、も〜その顔ぶれだけで充分コワい。コワいけどクセになりそう。なんというても小林旭の貫禄ありすぎるくらいの貫禄にしてチョウ・ユンファ似の笑顔という味わいがすてき。また、白龍の知的で怜悧なナンバー2ぶりもシブくてカッコイイ。等々。なんというか、すごーく金かけた「新春隠し芸大会」のような見応えである。まあ中には隠し芸じゃなくてモノホンの方々もいそうではある。なにしろ映画自体が「裏社会独特のしきたり、誓盃儀式、賭場の実態などがリアルに再現されている」(チラシより)というのを1ツの売りにしているくらいだから(香港映画でいえば「古惑仔」シリーズに元黒社会の方々が監修や出演で入っていたようなノリか?)。そして今回私がいちばん面白かったのはそうした日本のヤクザ世界の独特な儀式の様子であった。これまでも限りなく映画で見てきた風景ではあるにせよ、手打ち式の具体的な進行やそれらの由来などがナレーション付きで語られるというのは珍しい気がする。で、遅まきながら認識したのだがそうした儀式は神道をベースとし、「天照皇大神」「春日大明神」「八幡大菩薩」をまつった祭壇の前で厳粛に執り行われる。そうしたディテールを見ながら、中国の秘密結社「天地会」をルーツとするとされ目下香港を中心に覇をほこる「三合会」などの中華系ヤクザ世界のいろんなしきたりと、よって立つ宗教的基盤はちがうだろうもののどことはなし共通のパターンが、ある種の必然的な流れに添って成立してきたもののような気がして、妙に「もっと詳しく知ってみたい」という好奇心がむくむくと頭をもたげたのであった。(ま〜だからといってヤクザ世界を美化してとらえているわけではありませんので誤解のなきように。むしろ、映画を見ていて急に、映画に対してじゃなくて現実のことにハラがたった。というのは私の某故郷にて組同士の抗争から一般市民が3人も犠牲になるという物騒な事件がつい最近起きたのだが、ほんとに映画に描かれているようなケジメあるヤクザ世界であれば「カタギをまきこまない」ことが鉄則であるはずなのに、悲しいかな現実はまったくそんなんじゃないのであった)(2003.01)
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クローサー

去年香港でぎりぎりタイミングが合わず見られなくて残念がりつつ何がなんでも見たいほどではなくてつい今になってしまいようやく見ることのできた原題『夕陽天使』こと邦題『クローサー』。監督がハリウッドやヨーロッパでも大活躍のもと七小福コリー・ユン。このおぢさん大好きですアクション監督として&俳優として。ただ監督としてはかなりあたりはずれがあるので勝手にはらはらどきどきしていましたが。。。久しぶりに「レディス・アクションはこう撮れ!」といいたげな団塊の世代の意地を見せてもらった気分です。そうそうこれくらいやってくれなきゃ。冒頭、意外にも(失礼!)スー・チーの脚があがるんでまずは安心。彼女さえ一定以上の動きを見せてくれれば、カレン・モクとビッキー・チャオはもとより心配無用ですから。こうして三女傑はひたすらカッコよくケレン味たっぷりに暴れてくれたのでした。パチパチ。
 別な意味で新鮮な驚きだったのはコリー・ユンにこれほどエッチなセンスがあったこと。といってもヌードやベッドシーンなんかないしセクシーなのはスー・チーだけなんですが、ふと『ロレッタ・リー×スー・チーin SEX& 禅』の艶姿が思い出されたほど、その曲線美といい妖しさといい相変わらずとてつもないクオリティです。なんせ彼女1人でカレン・モクとビッキー・チャオの10人分くらいエロっぽい。ていうか2人には基本的に期待できない(失礼!)。しかしかたやカレン&ビッキーは、ボーイッシュ&キュート&微妙にシスター入ってるというこれまたすばらしいキャラにて面目躍如。3人のバランスがこうして調和されているのは誰の手柄なんでしょう? 脚本のケイ・オン@ジェフ・ラウかな?(だって演出家の手柄とは思えなくて。ドラマ部分とアクション部分の乖離が、まるで2人の監督がそれぞれ分担して撮ってるみたいなんですもん)
 共演キャストたちにもいちいち受けてしまいました。まず我らが倉田保昭先生サイコーです。女傑2人相手に日本刀繰り出す血しぶきアクションのかっこよさったら! それにやさ男デリック・ワンが思いがけず悪役が似合ってて見直したし、ソン・スンホン@コリアンスターはその濃い目鼻立ちとアテレコと全然あってない口パクが逆にフレッシュな印象を与えてクセになりかけたし、黎明くりそつベン・ラムはもう15年くらいいろんな意味で全然変わってないのがスゴいし。ほかにもチラっと出のゲストスターたちが入れ替わり立ち替わりしててニヤニヤできます。
 ツッコミどころや爆笑ポイントはこのさい触れますまい。一番いただけないのはベタベタの音楽。しかし十分楽しい時間を過ごせたので文句はありません(きっぱり)。
(2003.01)
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縁起

 張藝謀監督作『英雄』のメイキング。なんと3時間もあり、これだけで独立した作品として劇場公開してほしいくらいの充実度。そもそも私はメイキングというのが大好きで、スターの素顔はもちろんだが、むしろそれ以上に現場スタッフの表情や仕事の様子をうかがい知ることができるのがたまらない。現場主義、っていうのとはちょっとちがうかもしれないが、今そこにある事実というか、机上の論理してるバヤイじゃないナマモノに惹かれるのだ。そして、どんな小さな規模の映画でもさまざまな苦労と喜びがあるものだと思うが、『英雄』みたいなとてつもない超大作ともなれば、もう天文学的なまでの人的・物的な参与が必要で、監督やスターといった代替のきかない中心人物たちをベストコンディションで仕事させるための進行管理からトラブル対策まであらゆる面ではらわれねばならない無数の努力もさりながら、万里の道を一歩一歩進んでいくような巨大プロジェクトの中に自分の力も寄与しているのだという各自の気概の総エネルギーもまた膨大であるにちがいない。大スターから無名の裏方まですべての人たちの思い入れが去来し横溢する映像を飽きることなく延々と見続けた最後に、打ち上げパーティで誰もがハイになり泣いたり笑ったり抱きしめあっているのを、つい自分までつられて感慨深く眺めていた。(鳴謝:K女士、D先生)(2003.01)
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“過去”3題話

 ここ数日、いろいろ印象的な映画を見た。その中で、主人公が自らの「過去」をどう処理していくかという点から3つのバラバラな作品を横一列に反芻してみる。その3作とは、『終わりなし』(84年・ポーランド・監督:クシシュトフ・キシェロフスキ)『過去のない男』(02年・フィンランド・監督:アキ・カウリスマキ)『モーヴァン』(02年・イギリス・監督:リン・ラムジー)。
 『終わりなし』は、働き盛りの弁護士の夫にある日突然心臓麻痺で死なれたインテリの妻の、夫が不在という現実を受け入れられず陥っていく「崩壊過程」を描く。時代が時代、国が国だけにストーリーは政治色を色濃くはらみつつ、だが表現方法は約20年前の映画であることを感じさせない。『シックス・センス』や『まぼろし』を時折思い起こさせもする、「彼岸」と「現世」の均衡が主人公の内部でコントロールのきかないものとなっていくさまは、時代も国も問わない痛みや哀しみとしてせまってくる。そしてヒロインが出した結論……。彼女は、夫と共に存在した「過去」への執着に執着する。時間がそれを変化させていくことをあえて望まなかったのである。
 『過去のない男』は、暴漢に後頭部を強打され記憶喪失になった壮年の男が主人公。誰ひとり自分を知る者もない土地でとりあえず生きていくしかなく、きわめて限られた社会的空間の中で、男は奇妙な自由さと共に生活の活力を見出してゆく。救世軍に勤める超オクテな中年女性と愛をはぐくみ、過去を失ったまま生きていくのもいいではないかと(本人も観客も)思い始めた矢先、過去が明らかになる。男は万感の思いで恋人と別れ、完全に記憶から消え去っている妻のもとへ……。本人の意思とかかわりなく「過去」を奪い去られ、今また「過去」に引き戻された男の「未来」は? ここから先は見てのお楽しみということで。小粋な仕掛が随所に散りばめられ、映画的悦楽を味わえる。
 『モーヴァン』は、風変わりな映画である。ヒロインのモーヴァン・カラーは、作家志望の恋人がクリスマスの日にいきなり自殺。1編の処女作をディスクに残して…。その日を境に彼女にとって「過去」は意味をなさなくなる。深い喪失感や孤独感はあるものの、彼女は、平凡なスーパー店員だった自分がおそらく望んだこともなかった種類の「自由」に充たされてしまった。恋人の遺稿を「モーヴァン・カラー」著として出版社に送ると、原稿は編集者の賞賛を獲得。モーヴァンは新人作家として多額の報酬を手に入れる。そして彼女はどこへともなく旅に出る。過去は消え去り、展望という意味においての未来もない人生。もはや彼女は社会的存在ではなく、風や雲のようであり、あるいは魂だけが人間のかたちを借りて浮遊しているかのようである。
 突発的な不可抗力によって過去(あるいは思い出)が死に体となってしまったとき、人はどうなるのかという三者三様の「その後」を興味深く見た。(2002.12)
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