藍宇」LAN YU 雑感

「北京故事」と「藍宇」*********************************************
 昨年末、映画を見たあとでオリジナルのネット小説『北京故事』を読み、感動で満ち足りていたせいで、台湾で出版された小説『藍宇』を不覚にも最近になってようやく読んだ。ネット版とちょっと違うというのを聞いてはいたが……驚くほどに違うじゃん! エロ描写が! あらすじそのものは変わっていない。が、オリジナルにこれでもかとばかり展開されていた具体的な手練手管が、根こそぎといってよいほど刈りこまれ、すっかりソフトになっている。あんまり奇妙だったんで、もともと読んだのはまぼろしだったのかしら?などとうろたえて、再度ネット版のほうを確認しちゃったぞ。
 これは誰の意向なんだろう? 小説のトビラには、変更は作者によるものと断り書きがしてあって、そりゃあ作者以外に手を加えることなぞ許されるとは思えないが、では作者が「ネット版の表現だと一般読者に対して不適切である可能性があるので」と自粛したのか、それとも版元が「もう少しお手柔らかに」と根回しをしたのか。そこが気になるところだ。もちろん、オリジナルを先に読んだ身としては、緩和されたバージョンは物足りない。……などというと私がドスケベみたいだが(まあ「ド」は付かないまでも人並みにスケベではある)、たとえば無修正版で見られてたポルノ映画が、あとからぼかし入っちゃったら、「はぁ?」と思うじゃないですか。そんな感じ。
 一般書籍として販売するにあたり、良識ある婦女子も耐えうる程度に抑えましたということなら、そういう理屈はもちろん成立する。ただ、本来はもっと過激なんだというのを読者は知るに違いない。そうなりゃオリジナルのほうも見たくなるのが人情ってもん。でもって見ると。でもってエキサイトしちゃうと。その逆流現象によって『北京故事』が読者の印象として、ストーリーや語り口の味わいをすっとばして色情小説というくくりになってしまうとしたらすこぶる勿体ないことである。
 表現の緩和を除けば、小説版を読んで改めてシミジミ。ウルウル。映画で私が今ひとつ解せない言動がある劉征(雑感其の壱参照)も、小説ではちゃんと筋のとおったキャラクターだ。ちなみに主人公の2人は、小説の藍宇は捍東より背が低いが、小説も映画もほとんどイメージがちがわないのが嬉しい(単に私の思いこみ?)。エピソード的にはなかなか多彩で、2人が東南アジア旅行してシンガポール名物のゲイ・ショーを見たりとか、藍宇に横恋慕するちんぴらがいたりとか、同性愛指向を治療できると信じている困った精神科医が出てきたりとかする。

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