今日のピース君  *Smile       絵 5*SEASON





TODAY MESSAGE
2002/9/28
by 5*SEASON




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美空ひばりさん という我が国を代表する大歌手を、
私は幼い頃「ひばりちゃん」と呼んで、それはそれは好いていた。
私自身が 美空ひばりさんを好き、というより、
むしろ離れて暮らしていた、“母の気を引くため”だったかもしれない。
私の母は、今も昔も大の“ひばりファン”、
私は そんな母を喜ばせたい一心で、ひばりちゃんの唄を覚えようと努力したのだ。
次に母と会う時には、ひばりちゃんの唄を私が唄って聴かせてあげたい、
私は毎晩、寝る前に必ず、親代わりの叔母に こういったものだ。
「ひばりちゃんがテレビに出たら、絶対に けいこを起こしてなっ!」

その当時は、テレビという“楽しい箱”が各家庭に鎮座し始めた頃で、
私が育った叔母の家でも、白黒テレビが存在していた。
私は4歳になるか ならないかだった頃で、
白黒テレビの中では、ひばりちゃんが ハツラツと、
「真っ赤に燃えた〜♪ 太陽だから〜♪」と唄っていた。
その歌詞のせいで、私は「ひばりちゃんは赤いドレスを着ているんだ」、
そう信じて疑わなかった、画面はモノトーンだったのに。
たぶん時代も“赤く燃えていた”のだろう。
日本経済は その後、高度成長期を迎えるのだ。

けれど日本がお金持ちになっていくにつれ、
私は少しずつ“ひばりちゃん”には興味がなくなっていった。
“母のため”ではなく“自分のため”にテレビの歌番組を見るようになり、
私は ひばりちゃんを「美空ひばり」と 呼び捨てにする有り様だった。

やがて昭和が終り、平成という時代がやってきた時、
美空ひばりさんは天国へ召されてしまった。
ひとつの時代が終った、赤い時代が終ったのだ、
そんな確かな 淋しさが込み上げてきたけれど、
私にとっては、しばらく後の松田優作さんの死の方がショックだったりした。
そのことを母に告げると「恥さらしな!」と怒鳴られたものだ。
当時 私は社会人となっていたけれど、まだ先の見えない グータラ者でしかなかった。

しばらくして20世紀が終り、いよいよ21世紀を迎える、そんな時代に差しかかった時、
世は“それまでの歴史”を振り返る風潮になった。人間の歴史って何だったのか?
そして時を同じく、その頃から美空ひばりさんが私にとって、
再び「ひばりちゃん」として存在し、その歌声が やたらと耳に残るようになった。
なぜか、テレビから ひばりちゃんの映像が流れただけで 目頭が熱くなってしまうの だ。

以前は、そんなことで心が動くことなどなかったのに、
きっと、私の中で大きく変わったものがあるのだろう。
ひばりちゃんの歌の上手さに感動することはいうまでもなく、
ひばりちゃんの存在そのものが感動的で、
声、しぐさ、表情、歌への姿勢、全てに気持ちが震えてしまう。
そして気が付いた、ひばりちゃんは“聞く”能力にも秀でていることを。
バックの演奏を聞く、自分の歌声を聞く、客の声を聞く、世の声を聞く、
そして自分の心の声を聞く、歌声を発する前に、より多くの声を受け入れる。
ひばりちゃんの唄を聞いていると“心を込める”、
そんな ありふれた言葉が大きな意味をもって語りかけてくる。

テレビがモノクロだった時代を あっという間に通り過ぎ、当たり前にカラーになっ て、
今や衛生放送、そしてデジタルやワイド画面の時代が到来。
ひばりちゃんの衣装が赤だけでなく、
いろいろな色であることが 当然のごとく明らかであっても、
ひばりちゃんの心だけは、どうしても私には“真っ赤に燃えた赤”に映る。だから泣 けてくる。
母のため、健気に唄を覚えた子ども時代、
“好きなものは好き”と、あどけなく言い切れた純情、
私は それを思い出して、ひばりちゃんの唄に感動してしまう。

そう、ひばりちゃんの唄には“童心”が住んでいる、
私も作り手として それを抱きつつ“赤”を描きたい、
そう願っている 今日この頃です。



5*SEASON



きょうはこちらより抜粋





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