【どんな病気?】
 簡単にいうと、小腸や大腸に潰瘍ができて、それに伴い腹痛や下痢が生じる病気です。薬物療法や栄養療法で症状を抑えることができますが、残念ながら現在のところ病気を完全に治す治療はわかっていません。


【歴史】
 1932年にニューヨーク・マウントサイナイ病院の内科医ブリル・ビー・クローンらにより「限局性回腸炎」として、はじめて報告された病気です。この報告者の名前をとり「クローン病」とよばれるようになりました。


【日本では?】
 1975年に日本消化器病学会および厚生省により、概念・診断基準が欧米の考え方に沿って整理され、共通基準の基に全国規模の研究が開始されました。特に、厚生省の研究班は代々引き継がれ、原因の解明と根治治療の確立を目指した研究が進められています。


【患者数】
 クローン病は厚生省の特定疾患研究班の診断基準で認定された場合、特定疾患治療研究医療受給者証が交付され、医療費の一部負担が行われています。1976年位は交付件数は128件でしたが、以降年々増え続け、1994年度では累積で11337件となり、有病率は人口10万人あたり約8人となっています。


【どんな症状?】
  クローン病の臨床症状が非常に多岐にわたっており、患者さんごとに症状発現のパターンも様々です。
特にその中でも、腹痛、下痢、発熱、体重減少、腹部腫瘤、痔瘻などが特徴的な症状です。ただ腹痛、下痢、体重減少といった症状は徐々に発現してくるため、クローン病と診断が確定されるまでに1〜3ねん経てしまう場合もあります。
これらの症状の多くは、クローン病の活動度を評価するIOIBDスコアの項目に含まれており、現在の病気の状態を知る上でも重要です。


【どんな治療をするの?】
 クローン病は再燃・再発を繰り返しつつ慢性に進行する原因不明の疾患で、現在のところ、これを完全に治す方法は分かっていません。外科的手術も行われていますが、困難なことが多く、できる限り手術を行わないのが原則です。栄養療法と薬物療法を組み合わせた内科的治療が、主な治療法です。