★R数とは「レイノルズ数」の事で、簡単に言うと 「物体の表面を流れる流体の速度と物体の長さに対する、流体の粘性係数」の事を言います。 ( Vは流速、l はその物体の代表長さ、νは動粘性係数です。) 一般に、私たちが扱う動粘性係数は1.46×10の5乗〜1.52×10の5乗u/s程度で、 高度にして500m以下で、無次元数 Re=1.1×10の4乗〜1.0×10の5乗程度と言えるでしょう。
では、R数が模型飛行機にとって、いったいどうゆう意味が有るのかと言うと、 |
★「完全流体の一様な流れの中に置かれた物体には抗力が働かない」 これは「ダランベールの背理」と言い、完全流体には粘性が無いので摩擦応力が生じない。 つまり、流体の粘性が無ければ抗力も揚力も発生しないと言うことです。 これはごく当たり前の事の様に思われますが、実は流体力学にとってとても重要な事なのです。
一般に「飛行機は翼で揚力を発生させる」と言われる方が多いですが、
揚力に変換できる流れのエネルギーの量は大ざっぱに言って、R数の大きい方が多いと言えるでしょう。 |
1)、熱エネルギーに変化してしまう、余分な抵抗を減らす。 翼の前縁の部分で、流れが上面と下面に分岐する点が有ります、これを「よどみ点」と言います。 このよどみ点で流れの速度は0になり、流れのエネルギーは熱エネルギーに変換されます。 この現象を少しでも少なくする方法として、前縁Rを極端に小さくする事が考えられます。 但し、極端な姿勢変化をする機体では、分岐点の移動がスムースに行かなくなり前縁のすぐ後ろから 小さな剥離渦が発生する事があります、これを「前縁剥離」と言い小さな向かい角で下面に発生すると、揚力を完全に失う事もあります。 また、前縁渦を上手に上面に発生させ、外部の流れ場からエネルギーを取り込む方法も有ります。 ★表面の凸凹を減らし流れをスムースにする。 翼面に接している空気は粘性でそこに付着し、それが原因で外部の流れは減速される。 減速作用は、翼面から離れるに従い急激に弱まり、その及ぶ範囲は表面近くのごく薄い層の内部に限られる、 但しこの層は流速によって厚みが変化し、前縁付近では薄く後縁では極端に厚くなる。 この層の事を「境界層」と言いこの外に出ている突起物は極端な抵抗となるので注意が必要です。 |
2)、最大揚力の発生するポイントを後退させ、後流渦を少なくする。 一般に、後流渦は最大揚力の発生点より後ろで発生する、 従って最大揚力の発生点を後退させる事により後流渦を少なくすることができる。 この事は、層流から乱流に変化する遷移点を後退させた層流翼に似ているが、 層流翼はRe=5×10の5乗ていどで成立し、これに似た現象がもっと低いR数で発生していると考えられる。 |
3)、翼面だけでなく、翼面から離れた流れからもエネルギーを取り込む。 エネルギーを失った境界層に速い速度の空気を吹き出してエネルギーを供給するとか、 エネルギーを失った境界層を吸い込むとかの方法を「境界層制御」と言う。 このやり方は理論的ではあるが、現時点ではあまり効果が認められていない。 もう一つのやり方として「ボルテックス・ジェネレーター」がある。 これは、翼面に小さな渦流を発生させて、境界層の内部と外部の流れを混ぜ合わせエネルギーを外部から取り込む方法である。 1)で説明した、前縁渦を上面に発生させるやり方もこれである。 また、翼面に突起物を立て乱流を発生させるやり方もあるが、境界層の外に突起を出す必要があり、 上手にやらないとこれが抵抗になりかえって性能を落とす事もある。 |