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上昇気流が見える時。

2000/01/30日

1)よく晴れた昼下がり

何気なく空を見上げていたら
鳶が気持ちよさそうにソアリングしているのを見かけたことがありますか?。
いつのまにか二羽三羽と数が増え、羽ばたかないのに旋回するごとに高度を上げ
見る見るうちに小さくなってどこかへ消えていった、そんな経験が何度となくあるのではないでしょうか。

鳥たちは生まれついての本能で飛ぶことをおぼえ、空を飛ぶことで気流を体で感じて上昇していく。
まるで気流が見えるかのごとく上手に風に乗って飛んで行く。
自分にも鳥のまねが出来たらどんなに素晴らしいだろうか、そう考えた事はありませんか?。

実は、努力次第で出来るのです。
勿論自分が飛ぶのではなく、模型飛行機を上手に気流に乗せてやることですがね。
そのためにはまず、上昇気流の発生するメカニズムを理解することから始める必要があります。

「地面の輻射熱で暖められた空気が何かの衝撃で地表から剥がれ上昇し、
そこへ周辺から冷たい空気が吹き込んで来る……。」

こんな事はいまさら私が言うまでもなく、
このページを見に来られる人なら殆どの人がご存じだと思いますが……。
それでは実際にどのように気流が流れているかご自分の目で確かめた人はいるでしょうか?。
「そんな事、空気が見えないのだから無理だよ!」なんて言わないで下さい。
人間は考える芦なのです、知恵と努力で見えない気流を見ようではないでしょうか。

 2)よく見かける解説書

上昇気流の発生する原理を書かれた本はよく見かけます。
その殆どが、地面から剥がれた気泡が上昇する事でリング状の「サーマルシェル」
と言う回転するドーナツを作り、このドーナツが外側から内側へ気流を巻き込みながら上昇し、
その後に外側から冷たい空気が吹き込んでくる。
だから気流にはじかれた飛行機は冷たい気流に捕まり降下し、
うまく気流に乗った飛行機は旋回が小さくなり上昇して行く。

まるで絵に描いた様な話で、挿し絵も平坦な場所で水平に流れて来た気流が
サーマルに変わる様子を書いてあるのが普通です。
たしかに間違えではなく基本的な原理はこの通りですし、
実際このサーマルシェルがさらに上昇して入道雲になる事は気象学などの本を読めば書いてあります。
しかし、このようなはっきりとしたシェル状のサーマルになるのは地上400メートル以上の高度で、
私たち模型屋が扱う高度ではよほど条件が整わなければはっきりとしたサーマルシェルにはなりません。

 3)実際の気流を考える

私たちが実際に飛行を行っている環境をもう一度よく観察して見ましょう。
日本では殆どのF/Fフライヤーは稲刈りの終わったタンボで飛行を楽しんでいます。
タンボは決して平坦ではありません、あぜ道あり水路あり、
最近では舗装された道路が縦横に走っているのも当たり前になっています。
比較的近くに人家があったり土手があったり、少し離れれば高層ビルまでが建ち並んでいる時代です。
このような中を流れてくる気流ですから当然三次元的にうねって複雑な動きをしていると考えられます。
ただしここで知っておいてほしい事があります、
それは密度の違う流体は外部からの何らかの働きがないかぎり自分から混ざり合うことはないと言うことです。
つまり、一度暖められた空気は気泡と言う形で一つの固まりのようなふるまいをして流れているわけです。
勿論何かの外力によりいくつかに分解したり複数の気泡がぶつかって結合したりする事も考えられますが……。
少なくとも、一種類の発生パターンのみで全ての上昇気流に当てはめるのは間違いだと思います。

ではどのようにして気流を見極めるのでしょうか・・・。
とりあえず上昇気流の発生するパターンをいくつか書いて見ましょう。

先ずは草の生えていないあぜ道や舗装された道路などで周りのタンボと温度差が生じた場合。
暖められた道から上昇した気流は周辺のタンボで冷やされ下降して対流が発生する。
この流れの一部が風によりちぎれて流れてくる。

次に、乾いて暖められたタンボと草や水などで冷やされたタンボで温度差が生じた場合。
この場合も暖められたタンボから発生した上昇気流は風に乗り風下にと流させて行き、
冷やされたタンボから暖められたタンボへと風が流れ込む分けです。

他にもコンクリート製の建物や金属製の屋根等で暖められた気流は風に乗り風下へと流され、
もとあった場所には近くの冷たい環境から空気が流れ込む分けです。

この事からも分かるとおり上昇気流を見つける鍵は温度差と風であり、
風上の環境をよく観察してどこから発生しやすいか
今の風向きはどちらを向いているかなどをいつも見ている必要があります。
また、風の強さにより発生源から自分の場所までの到達時間も変わることになり、
風が止まった時は今自分が居る場所が上昇気流の発生源か下降気流の場所と言うことになり、
どちらにしてもすぐ近所に降りてしまう一番悪い条件である事は間違いないわけです。

それともう一つ気をつけなければならないのが斜面上昇風です。
これは、土手や建物にぶつかった風が上下方向のうねりになり、
風速の変化により高さや長さが変わるために上昇気流と勘違いしてしまう事です。
特に曳航グライダー等では曳航時に上昇気流と勘違いして離脱してしまうケースがよくあり、
風上に何があるかよく見ておく必要がありますね。

 4)情報は多い方が良い

風上に向かい両腕を広げてゆっくりと深呼吸をしてみて下さい、何か感じませんか?。
風の香りと風の温度と・・・・・・。
そうです、風からのメッセージを五感全てを使って感じ取るのです。

上昇気流が近づいて来るときは風のにおいが変わります、
これが分かるようなら鳥になれますが。
温度も変化しますし風速も変化します。一番変わるのが風上の景色です。
風上で草木のゆれかたが大きくなり、よく観察しているとカゲロウが見え、
そして、そよそよと風が吹き出し温度が急激に下がります。
この瞬間が上昇気流が自分の頭上を通過した時です。
また、常に風が吹き続けているばあいは一瞬だけ風が止まります。
ベテランのフライヤーは体験的にこの辺の感覚を身につけていて気流を捕らえているのです。
まさに「サーマルハンティング」ですね。

まる一日時間を決めて上昇気流の発生する時間と温度と風速を観察してみて下さい。
発生するタイミングがある周期を持っているのが分かります。
これは、その日の気象条件と関連があり、上層の気象が変わると周期も変わります。
私は、飛行に出かける前夜インターネットで天気図を確認して
風速・風向・温度・湿度・前線の位置・等圧線の間隔等をチェックします。
そして、大会当日は上空の雲の動きと地上の風向きの違いを見て気象の変化をチェックしています。
また、0.1度まで計測出来るデジタル温度計で空中の温度変化をチェックし、
サーマルの発生した時間と風速の変化と共にメモっています。
こうすることで当日のサーマル周期を見つけることが出来、事前にスタート準備が出来ます。

世界中のフライヤーが「サーマルハンティング」のやり方を模索しています。
大陸と島国では発生するパターンも違いますし、同じ大陸でも砂漠と緑地では違います。
海外の競技へ参加する場合は事前に情報を入手する必要があります。

これで少しは上昇気流が見えてきましたか?
あとはサーマルハンティングの練習あるのみです。
飛行機を飛ばすだけが練習ではありません、
むしろ目的のないフライトは機体を疲労させるだけで何のメリットもありません。
私が練習に行くときはその日の目的を決めて目的が達成したらさっさと帰宅します。


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Yasuu