10年選手になって
ベスト9
改訂版
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けっこう前ですが、雑誌「Begin」で「僕の10年選手」といったコーナーがありました。ファッション業界を中心としたいろいろな人が登場して、10年近く使い続けている定番を紹介するもので、僕はそのコーナーが大好きだったんです。
もともと何かを使い込んでぼろぼろになっていきつつも、そこに使い手の姿が感じられるようなものが好きです。デニムや革が好きなのもそのせい。新品のときより、何年か使い続けたほうが価値があるように感じられるものっていいです。
以前、鮎川誠さんにお会いしたとき、そのシャツの背中に斜めにギターストラップの跡が付いていて、それを見たときには泣きました。「あれがロックだ」と思いました。
つまりはそういうことです。
その雑誌のコーナーでは、セント・ジェームズのバスク・シャツ、ブルックスブラザーズのポロカラー、ヘインズのTシャツ、リーヴァイスの501、そういった定番ものが紹介されていたように記憶しています。そういうのは僕も着ているけれど、ぼろぼろになる前に致命的なシミを付けたり、サイズの好みが変わったり(体型はほとんど変わってないのに)して、残っていないものがほとんどないのが残念です。
じゃあ他に自分にそういうものがあるかというと、わりに飽きっぽいのか、好みが変わるのが激しく、広い部屋に住んでいるわけではないから、じゃんじゃんものを捨ててしまいます。あとになって後悔することも多いのだけれど仕方ないです。
こういう性格だから、自分にできないこととして10年選手に憧れるのかもしれません。
そんなわけで「これは10年選手になって欲しい」と願っているものを8つ。
+は、2004年10月の追記です。
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1.グローブトロッターのスーツケース
ファイバー製、つまり紙でてきているんですが、象が踏んでも壊れないというくらい丈夫です。デザインもスマートだし、どんな服にもよく似合うし、とても気に入っています。
僕の持っているサイズはSHIPSの別注品で、グローブトロッターの通常のラインにはないもののようです。夏なら一週間、冬なら3〜4泊くらいするのにちょうどよいくらいのものなんですが、わりとそれくらいの旅って機会がないので、出番がそれほど多くないのが残念です。航空会社が貼る小さなセキュリティ・チェック済みのシールがぺたぺたとたくさん増えていくといいな。
10年選手になって欲しいというより、なってくれなきゃ困るものです。
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最近のトロッターはピンクだとかシマウマ模様だとか、ブランドイメージを悪くするようなものを乱発していて、おまけに全体的に質が落ちてきているみたいで残念です。でもかなり売れているようで、友人が買いにいったら「三ヶ月待ちです」と言われたらしい。
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2.オールデンのチャッカブーツ
靴が好きな人たちはそれぞれ自分がいちばん好きなメーカーがあるようです。僕のなかではオールデンでした。
革靴というとイギリスかイタリアに人気の高いものが多いのだけれど、それらに較べるとアメリカの靴はスマートさは欠けるものの、精悍な雰囲気があって、すごく格好良く見えたんです。僕なんかは足幅が広くかたちもよくないから、ウエストンやジョン・ロブみたいな靴は似合わないんじゃないかと思っています。オールデンなら履けるかもしれないという期待もありました。当時はローファーが欲しかったんですけれど。
オールデンというとコードバンを使ったものが有名で、革底のほうがきれいにシワが入ると言いますが、肉体労働の僕としてはビブラム・ソールのチャッカブーツを買いました。雨に弱いのと、根っからの貧乏性のため、それほど履く機会はないんだけれど、長く愛用していきたいものです。
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相変わらず出番は非常に少ないです。履いていったときに限って急な雨が降ったり、満員電車で踏まれたりします。オールデンを愛する人たちがよく口にする「ドレッシーでもカジュアルでも、不思議と似合う」というのは納得です。次に買うならタンカーブーツが欲しいですが、別注品しかなくて、それだとサイズがないみたいです。
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3.バーバリーのステンカラーコート
男物のコートには定番が多く、極端にデザインが変わっているものは少ないのですが、そうは言っても少しずつシルエットに変化はあって、同じピーコートでも去年のものと今年のものは微妙にデザインが違ったりします。
そんななかでバーバリーのコートは、古くさいデザインの代表格じゃないかと思います。ブラックレーベルなどは別ですけれどね。もともとはジャケットの上に羽織るものだからか、腕(とかアームホール)も太いですし、丈も基本的には膝くらいまであります。しかもコートなのにまるっきり防水性がない。
でも逆に考えれば、余計なデザインなどがないってことは、どんな時代でも流行遅れのものには見えないってことです。3年くらい前に大流行したデザインなんてのがいちばん格好悪いわけだから。
少しよれちゃったくらいのほうが素敵なんだけれど、今の僕がそんなのを着たら、ほんとうに生きることに疲れたダメ人間に見えそうなので、10年目を迎える頃にはそれを着ても似合うようになっているといいな。
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洗濯機で洗ってちゃんと糊をかけると、いい雰囲気になることがわかりました。汚れても洗えばいいやって、気楽に着られます。
ぼくにとってバーバリーのステンカラーがもっとも似合う有名人は、スタイル・カウンシルのころのポール・ウェラーです。次は(バーバリーだという確信が持てませんが)「ゲッタウェイ」のマックィーン。
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4.ワケあってメーカー名は伏せますが レザーパンツ
泣きそうになるくらい高かったんですが、ルー・リードが履いているのを見て「俺もこの歳くらいまで履いてやる」と意地になって買っちゃいました。きっとつらいことがあったんだと思います。
でも僕はミュージシャンじゃないし、ここ10年くらいは体型を維持しているけれどこの先はどうなるかわからないので、ちょっとだけ不安もあります。日本の気候じゃ夏は履けないのも哀しい。
普通は10年選手というとリーバイスの501を挙げる人が多いでしょうが、501の場合は大きめに履きたい年があったかと思うと短めに履きたくなったり、濃い色が好みかと思えば薄い色落ちしたものがよくなったり、10年続けて同じものを履き続けるのは難しそうです。レザーパンツはそれに較べると好みの変化は少ないのはよいです。
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ジム通いのせいで体型が変わってしまい、やや腰回りが窮屈になって、逆に腿はゆるいです。今年の猛暑では、さすがに一度も履けませんでした。まずいなぁ。
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5.ルイ・ヴィトンのショルダーバッグ
なんとなくこういうところにヴィトンのものなんか紹介すると、ミーハーな感じがして嫌なんだけれど、30代の半ばくらいになって、ちゃんとした服にもカジュアルな服にも似合って、ある程度は丈夫なバッグを買おうとすると、いいものを見つけるのって大変なんです。フェリージあたりでいいショルダーがあれば理想なんだけれど、ブリーフケースみたいなものばかりでした。
僕は手ぶらで歩きたいからショルダー型がいちばんで、できればメッセンジャー・バッグみたいに後ろに向けてたすき掛けできるものが好きです。本を見ていたらウォルフガング・プロクシュという眼鏡デザイナーが使っているものが目に留まり、高かったけれど買っちゃいました。モノグラムではなくダミエ。自分へ誕生日のお祝いでした。
ヴィトンは有名メーカーのなかでは値段は安めだし、丈夫さをウリにしているし、なおかつ日本で完全に定着しているからアフターケアの心配もありません。ただ誰が見ても「ヴィトンだね、それ」とわかってしまうのが哀しいです。
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今年はメッセンジャー型のバックが流行だそうで、たまに同じものを持っている人とすれ違います。かなり恥ずかしい。女性のヴィトンなんて、一日に何十も同じバックを見かけますが、みんなはどんな気持ちなのか知りたいです。
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6.ファイロファクスのシステムノート 達成!
これはいちばん10年選手に近い位置にいます。買ったのが1994年だから、もう8年間ほど使っていることになります。バイブルサイズと言われる(いまの時代には)大きめのものなので、いつも持って歩くことはできないから、予定表というよりは日記のような役割で使っています。
はじめてロンドンに行ったときに買った思い出のもので、翌年から写真家になったわけだから、写真家としてのスケジュールはすべてここに記されてきたわけですね。思い入れがないわけがありません。
小さいサイズのものや、palmをちょろちょろ使ってみたこともありますが、僕はやっぱり紙にペンで書くほうが合っているみたいだし、このサイズがいちばん好きです。
あと2年、頑張って欲しいものです。
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もう来年のリフィールも買ったので、達成したようなものです。ファイロファクス愛用者として知られたポール・スミスさんも、ついにpalm愛用になってしまったようですが、まだまだ。
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7.このパソコン
この――と書いたけれど、今こうやってHPの更新をしたり原稿を書いたりしているパソコンのことです。僕がパソコンを導入したのはウィンドウズで言えば98の時代で、95は使ったことがありません。だから4年前くらいなのかな。
ショップのオリジナルを買って、時代遅れになるごとにメモリを増やし、CPUやハードディスクを入れ替えて、今日まで使い続けてきました。もう最初から使い続けているのはケースだけかもしれない。
はじめの頃はひとつ何かを増やすと不安定になって大変だったけれど、今とても安定した状態なので、もう周辺機器なども増やしたくないです。
考えてみたら僕が扱うのは90%以上がテキストだし、しばらくはこんな煩わしいことからは遠ざかりたいと思っているので、あと5年くらい、なんとか現役で頑張っていて欲しいものです。
と思っていたら、最初に脱落したのはこれでした。
画像処理なんて滅多にしないし、けっこういけるんじゃないかと考えていたのに……。
一応はサブとして残しておきます。
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8.ライカのM2とズマロン35ミリ 達成!
本来ならば1位にするべきものでしょうが、「なって欲しい」と願わなくても仕事道具みたいなものだから、10年選手になって当たり前ですよね。というか、ほんとうならばもう10年選手のライカがあっても不思議じゃないんです。でも最初に買ったM3は盗まれちゃったわけで、手元に残ったいちばん古いライカがM2だから、来年でようやく10年目くらいになるんじゃないかと思います。
M3を盗まれたときにあまりにつらくて、「こんな思いをするくらいなら、特定のカメラに思い入れを持つことはやめよう」と思ったくらいなのだけれど、それでも共に歩んできた思い入れは捨てきれるものじゃありません。
「ライカ通信」に原稿を書いたように、このM2は黒塗りにしてしまったので、10年経った思い入れだけは残しつつも、少しだけ新鮮な気持ちで接することができるのもよいです。
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20年選手を目指して頑張ってもらいたいものです。可能性は十分にある。
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コンピュータが脱落して、M2が達成して、ファイロファクスももうじきなので、新しいものをふたつ加えます。
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9.マッキントッシュのコート
マッキントッシュと言ってもコンピュータのほうじゃなくて――なんてフレーズはお決まりですね。もしかするとコンピュータが出始めた頃のイギリスでは、「マッキントッシュと言ってもゴム引きコートのほうじゃなくて」なんて言っていたのかもしれません。どちらもマックと略して呼ぶことがあるのは困りものです。「マックの2階で、マックのコートを着た人が、マックに向かって、マック(鈴木)の原稿を書いていた」なんて。
ぼくが持っているのは、定番のダンカンというモデルを細身に改良したダンケルドと呼ばれるもの。黒です。
防水は完璧に近いんですが、新素材を使っているわけではないので蒸れるし、防寒効果はほとんど期待できないため、日本の気候では着られる時期が非常に短いです。ごわごわしているから、脱いで手に持っているのもサマになりません。10年選手になったとしても、袖を通したのは20回以下なんてことになりかねない。
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10.A−2
毎年のように冬になると欲しくなり、実際に何着か買ったことがあるんですが、どうしても馴染まずに手放してしまいました。
サイズ選びが非常に難しく、一般的には小さめに着るのが格好いいとされているようで、胸で着るだの、肩で着るだの、腰で着るだの、いろいろな意見もあります。サイズ選びを間違うと競馬場にいるおじさんみたいになりがちで、「そんなの気にしていたらA−2は着られない」という意見もあるから、最終的には「気持ちで着る」のが正しいのかもしれません。
愛好者たちの世界が非常に厳しく、「○○製のものが優れていて、こんな靴を合わせて、これくらいのサイズで、こういう着こなしをするのが正しい」なんてコンセンサスがあって、言葉は悪いけれどコスプレみたいになりつつあるのが残念です。
軍パンをお洒落に履く人が増えているから、A−2も従来とは逸脱した着こなしをする人がいてもいいと思います。とはいえ、斬新な着こなしなんて考えられないんですけれど。
軍ものにカメラって相性は悪くないですが、その相性のよさが「ちょっと危ない人」に見えないこともないので、気を付けないと。
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11.ホワイツのスモークジャンパー
ブーツです。ホワイツというのはメーカー名で、スモークジャンパーというのが靴の名前。もともとは山火事の消火活動をする人たち(そういう人たちのことをスモークジャンパーと言う)が履くためのブーツだったようです。セミオーダーなので部分ごとに仕様を変えることができて、ぼくのものは本来の仕様よりはかなり「やわなブーツ」にしてあります。もし興味があったら検索して写真を見て欲しいんですが、値段が高いのに驚くかもしれません。たかが作業靴なのに――と言ったら失礼ですが、オールデンとかJ.M.ウェストンなんていう高級靴と変わりませんからね。でも海外から通販で買ったので1/3くらいの値段で買えました。
ぼくのものは赤茶色の革で、高さが20センチくらいあります。もともとの役割を考えれば当然なのですが、街で履くには不相応なくらいごついし、脱ぎ履きするのも大変です。急に友だちと会って靴を脱がなきゃいけない居酒屋にでも誘われたら困るなぁ……とか、アメリカに旅行するときもダメだな……とか、いろいろと不便はあるけれど、けっこう気に入っています。置いてあるものよりも、自分で履いて上から見るほうがかっこいいです。
ぱっと見たときにはレッドウィングと区別がつかないと思っていたのに、デザイナーの知人はすぐに「いいな、それ」と言ってくれました。嬉しかった。
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